イントロダクション
HAPPY!
“本”と“ことば”がなによりだいすき、いっちーです!
今回ご紹介するのは、主婦の友社から誕生した新たな小説レーベル“キャンドルライトブックス”
“少し不思議で、すごくやさしい”をコンセプトに、一日の終わりに、読者の心へそっと寄り添う物語を届けています。
今、この時代に、新たな小説レーベルを立ち上げ、文芸書サイズの作品を2冊同時刊行!?
その挑戦の裏側には、どのような思いが込められているのでしょうか。
今回は、担当者の大松さんに、レーベル誕生の背景や本づくりへのこだわり、創刊2作に込めた思い、これから目指す未来について、たっぷりお話をうかがいました!
それじゃ~いってみよー!
Chapter01 一日の終わりに、“少し不思議で、すごくやさしい”物語を――新レーベル“キャンドルライトブックス”とは

プレスリリースで公開された情報では、“少し不思議で、すごくやさしい”をコンセプトにしたレーベルと紹介されています。改めて、編集部の皆様が考えるキャンドルライトブックスとは、どのようなレーベルなのでしょうか。
現実に寄り添いながら、人の心の動きや、人と人とのつながり、過去の思い出を大切にする物語を届けていくレーベルだと考えています。

この“少し不思議で、すごくやさしい”というコンセプトは、どのようにして生まれたのでしょうか。
実は、このコンセプトになったのは、『かわよこ食堂〜眠る前の思い出ご飯〜』と出会ったことがきっかけです。
近年のネット小説には、ハイファンタジーや転生ものなどが多くの支持を集めています。その一方で新しくレーベルを立ち上げるなら、そうした作品とは異なるものを届けたいと考えていました。
そんな中、『かわよこ食堂〜眠る前の思い出ご飯〜』を拝読して、近年のネット小説大賞の流れとは少し異なる、温かみのある作品だなと感じたんです。ただ癒やされるだけではなく、少し不思議で、読んだあとにさまざまな思いが心をよぎる。そうした作品を届けていくと面白いのではないかと考え、現在のコンセプトが生まれました。
もう一つ、プレスリリースのなかで印象に残ったのが、“仕事や学校を終えた一日の終わりに、心をほどくような読書体験を届ける”という言葉です。こちらには、どのような思いが込められているのでしょうか。
今は、SNSやゲーム、動画配信サービスなど、家で楽しめるものが増えています。そのためテレビやスマートフォンから離れ、本を読み、物語に集中する時間を作ること自体が、以前よりも難しくなっていると感じます。
だからこそ、せっかく本を読むために時間を使っていただくのであれば、読後感のよい作品や、少し前向きになれるような作品を届けたいと思ったんです。
せめて本を読んでいる時間だけでも、仕事や学校であった嫌なことや、SNSで目にした心ない言葉から離れてほしい。その時間に寄り添える作品を作っていきたいと考えています。
Chapter02 今、この時代に新たな小説レーベルを立ち上げる――主婦の友社が挑む、新しい本づくりの舞台裏
出版不況と言われている今この時代に、こうした新しいレーベルを立ち上げようと考えたのにはどんな背景があったのでしょうか。
私たちが所属する事業開発部では、従来の書籍制作とは少し異なるアプローチで本を作っています。
主婦の友社は、これまで実用書やファッション誌など、人の役に立つものを数多く作ってきました。そうした本を作り続けながら、会社の財産として長く残るIPやキャラクター、将来的にメディアミックスへ展開できるものも育てていく必要があるという話が、社内で出ていたんです。
その挑戦の一つとして生まれたのが、キャンドルライトブックスです。

会社として新しいことに挑戦していくなかで、このレーベルが生まれたんですね!
そうですね。
また、キャラクタービジネスに携わるなかで、疲れた自分を肯定してくれるキャラクターや、心を癒やしてくれるキャラクターが、多くの人から求められていることも感じていました。
“現代を生きる人たちは、少し疲れているのではないか。そんな人たちの心に寄り添う物語を届けたい”という思いも、キャンドルライトブックスのコンセプトにつながっています。
主婦の友社様は、これまで実用書や児童書、絵本など、さまざまな形で暮らしや心に寄り添う本を刊行されてこられました。そのなかで、今回あえて“小説”という形を選ばれたのはなぜでしょうか。
実用書には、読者の暮らしに直接役立つという大きな価値がある一方で、小説には、一つの物語やキャラクターが読者の記憶に残り、そこからさまざまなメディアへ広がっていく可能性があります。
私たちの部署にとって新しいジャンルに挑戦し、物語やキャラクターを一から育てていく方法として、選ばれたのが小説だったんです。
この時代に新レーベルというのも驚きましたが、刊行された作品が文庫本ではなく、文芸書サイズだったことにも驚きました。なぜこのサイズでの刊行を選ばれたのでしょう。
文庫にしなかった理由の一つは、数多くの作品のなかに埋もれてしまう可能性があるからです。文庫は刊行点数が非常に多く、新しいレーベルが一冊一冊の存在感を出していくことは簡単ではありません。
私たちは刊行点数を増やすことよりも、作品を吟味して丁寧に作る姿勢を大切にしたいと考えたんです。そのため、作品の世界観をしっかりと伝えられる、四六判といういわゆる文芸書的サイズを選び、口絵や挿絵、扉絵も充実させる形を考えていきました。そこにさまざまなものがデジタル化されている今だからこそ、手に取ったときに存在感のある本を作りたいという思いも重なり、その結果、このサイズになったんです。
いくつかの書店で平積みや面陳列されているのを拝見しました。そこでは一般文芸に並べられていることもあれば、ライト文芸に並べられていることもありました。どちらとも明言されていないのはあえてなのでしょうか。
文庫やライトノベルだけに限らず、一般文芸としても手に取っていただける内容や装丁を意識しました。実際に、東京の書店では文芸書のコーナーに置かれていることも多いですね。
地方の書店でも、平積みにして目立つように展開していただいており、しっかりと並べていただけている実感があります。ライトノベルと文芸書、どちらの読者にも届く本になればと思っています。
キャンドルライトブックスを立ち上げるなかで、挑戦だったことや大変だったことはありますか。また、それをどのように乗り越えられたのでしょうか。
私自身、小説の編集やレーベルの立ち上げは初めてで、これまでとは異なるジャンルへの新しい挑戦でした。そのため制作に関する人脈や経験がなかったことが大変でした。
これまでファッション関係の仕事に携わることが多かったので、小説をどのような流れで作ればよいのか、どのデザイナーやイラストレーターにお願いすれば作品に合うのか、一つずつ幅広くリサーチしました。新レーベルの創刊だからこそ、読者の目を引くきっかけになり、私たちの本気度も伝わるようなクリエイターにお願いしたいという思いがあったので、著者とも相談しながら一つずつ制作体制を整えることで、乗り越えていきました。
クリエイター選びにもこだわったとのことですが、創刊2作品の装丁や口絵には、どのような思いが込められているのでしょうか。
異なる2作品から、レーベルの幅を感じてもらえるようにしたいという思いがありました。装丁も、一方はどこか不穏さを感じさせる海を、もう一方は暗闇のなかに温かな明かりがともる情景を描いていただき、対照的な雰囲気に仕上がっています。
ただ、物語を読み終えてから改めて表紙を見ると、最初に見たときとは印象が変わると思います。
たしかに! 拝読してみて、最初に表紙から受けた印象と、読み終えたあとの印象が大きく変わりました。読後にもう一度、表紙へ戻りたくなるんですよね。
そうですね。口絵をしっかりと描いていただいたのも、読み終えたあとにもう一度絵へ戻り、物語の世界を改めて味わってほしいという思いがあったからです。読後にも作品の世界が残るような本にしたいと考えました。
Chapter03 異なる物語が、奥では緩やかにつながる――創刊2作『かわよこ食堂〜眠る前の思い出ご飯〜』と『君が待つ海へ』に込めた思い

さきほど、話の中で『かわよこ食堂〜眠る前の思い出ご飯〜』が選ばれた理由をお聞きしましたが、もう一つの創刊作品『君が待つ海へ』が選ばれたのにはどんな理由があったのでしょうか。
キャンドルライトブックスの方向性に合う作品を探すなかで出会ったのが、『君が待つ海へ』でした。
『かわよこ食堂〜眠る前の思い出ご飯〜』とはまったく異なるジャンルで、少しホラーの要素もありますが、物語が骨太で、とてもしっかりと描かれていると感じ、創刊作品に選びました。

異なる物語である一方、この二作品に共通する“キャンドルライトブックスらしさ”は、どのような部分にあると思われますか。
まったく異なる物語ですが、どちらも根底に“記憶”というテーマがあります。
過去の記憶や人とのつながり、大切なものに思いを馳せるような読後感が、“キャンドルライトブックスらしさ”のひとつだと思っているんです。
たとえば、『かわよこ食堂〜眠る前の思い出ご飯〜』を読むと、“自分だったら、どんな思い出のご飯を選ぶだろう”“自分も死んだあとに、この食堂へ行くのだろうか”と考える方も多いと思います。それによって、読者自身の大切な記憶もよみがえってくる。そうした心の動きを生み出す物語という点も、2作品で共通しているところですね。
個人的に拝読する中で両作品とも“喪失”がテーマの物語でもあるように感じたのですが、意識はされていたのでしょうか。
そうですね。どちらの作品にも喪失が描かれてはいます。ですが、大切なのは、喪失感そのものではなく、それをどのように受け止めるのかだと思います。
『かわよこ食堂〜眠る前の思い出ご飯〜』は、喪失を描きながらも、最後には心が温かくなるような感覚があります。
一方、『君が待つ海へ』は、終盤の展開をどのように理解し、どの登場人物に共感するかによって、受け止め方が変わる作品です。
記憶や人とのつながり、喪失を描きながら、読者自身の思いとつながる余地を残すこと。それが、現時点で2作品に共通している“キャンドルライトブックスらしさ”だと思います。
そもそもなぜ新レーベル発足として二作品を刊行することにしたのでしょう。
一作だけで創刊すると、“このレーベルは、こういう作品を刊行する場所なんだ”という狭い印象を与えてしまう可能性があったからですね。なので、かなりイメージの異なる二作品を組み合わせることで、レーベルの幅を見せようと考えました。
『かわよこ食堂〜眠る前の思い出ご飯〜』と『君が待つ海へ』は、ジャンルも物語の雰囲気も大きく異なります。一方で根底では共通点もある。表面的には異なりながらも、奥の部分では緩やかにつながっている。その組み合わせが、創刊ラインナップとしてちょうどよかったと思います。
両作品とも、恋愛やミステリー、ホラーなど、さまざまなジャンルを横断しているところが印象的でした。ジャンルを一つに絞らない構成は、意図されたものなのでしょうか。
そうですね。
たとえば『かわよこ食堂〜眠る前の思い出ご飯〜』は、それぞれの物語が緩やかにつながる4部構成になっていますが、これは書籍化にあたってWeb版から構成を広げた結果なんです。その際、編集部からも“これまでとは異なるジャンルの物語を加えてみませんか”と提案しました。
結果としてさまざまなジャンルが集まりましたし、意図的に異なるジャンルの要素を持たせたことで作品もより魅力的になったと思っています。
『君が待つ海へ』ではWebから書籍化するにあたり、どのような加筆修正をしていったのでしょう。
実は『君が待つ海へ』は、もともとの結末が、書籍版よりも少し厳しい展開だったんです。
それを作品の持つ強さは残しながらも、読者がどこかに救いを感じられる形にしたいと考え、著者と相談しながら調整し、今の形になりました。
どちらの作品も、レーベルのコンセプトへ無理に当てはめるのではなく、もともとの魅力を生かすことを前提にしています。そのうえで、書籍として世界を広げたり、読後に残る感情を整えたりしながら、著者と一緒に作り上げていきました。
Chapter04 境界を決めすぎず、“らしさ”を育てていく――キャンドルライトブックスが描く未来と読者へのメッセージ
コミカライズや映像化も見据えて作品を発掘していくと紹介されていました。今後、どんな動きを予定しているのでしょうか。
コミカライズや映像化は、今後の目標の一つです。ただ、それ自体が目的なのではなく、作品をどのように読者へ届けていくかが最も大切だと考えています。
まずはレーベルとして作品を着実に積み重ねながら、それぞれの作品に合った展開を検討していきたいです。

両作品とももし映像になったら、どのように表現されるのだろうと想像しながら読んでいたので、今後の可能性が楽しみです。
コミカライズでは、作品の世界をどのように絵で表現するのか、その世界観を描ける方と出会えるかどうかが重要です。急いで進めるのではなく、もともとの魅力を新しい表現へ広げてくださる方と、きちんと出会うことを大切にしたいと考えています。
私たちは次々とコミックを生み出さなければならない部署ではないため、作品に合う方と出会うまで、時間をかけて丁寧に進められます。さまざまな事例をリサーチしながら、一作ずつ大切に育てていきたいですね。
今後は、どのようなところから新しい作品や書き手を発掘していく予定ですか。
投稿サイトだけに限らず、幅広い場所を見ていきたいです。ファッションや芸能、ドラマの脚本など、ほかの分野で活動しているクリエイターのなかにも、小説を書きたいと考えている方は意外と多くいらっしゃいます。
まだ知られていない才能を持つ方は、たくさんいると思います。さまざまな仕事を通して異なるジャンルの方々と出会えることを生かし、ほかのレーベルとは違うアプローチから、新しい物語や書き手を見つけていきたいです。
今後、キャンドルライトブックスをどのようなレーベルにしていきたいですか。
刊行点数を増やすことを優先するのではなく、一作ずつ吟味し、大切に作っていくレーベルにしたいです。
定期的に作品を刊行していきたいとは考えていますが、現状の体制では、毎月のように刊行することは難しいため、その分、一作一作と丁寧に向き合っていきたいと思っています。
新レーベル発足で二作品刊行した理由のところで「レーベルの幅を持たせたい」とおっしゃっていましたが、今後、刊行する作品が増えていくなかで、現在の“少し不思議で、すごくやさしい”というコンセプトは、変化していくのでしょうか
根底にあるコンセプトは大切にしていきたいと思っていますが、解釈は広がっていくと思います。
現在のコンセプトに合った作品だけを探してしまうとどうしても視野が狭くなってしまいますし、まだ始まったばかりのレーベルだからこそ、何でもできるとも思っているんです。
これから作品が増える中で、現在のコンセプトが変化したり、広がったりする可能性もあります。レーベルを囲う境界は少しずつ薄まりながらも、その中心にある“キャンドルライトブックスらしさ”は、だんだんと固まっていく。そんな風にこのレーベルを進めていきたいです。
最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。
毎日の生活やSNSに触れるなかで、疲れてしまったり、気持ちを切り替えたいと思ったりすることもあると思います。キャンドルライトブックスでは、そんなときに、そっと心へ寄り添えるような作品を作っていきたいと考えています。
まだ二作品から始まったばかりで、レーベルとしての形も、これから少しずつ作られていくところです。だからこそ、一作一作を大切にしながら、丁寧に育てていきたいと思っています。
これから書店などでキャンドルライトブックスの作品が目に留まったときには、ぜひ手に取っていただけると嬉しいです。

インフォメーション
書籍

https://books.shufunotomo.co.jp/book/b10169427.html(主婦の友社HP作品ページ)

https://books.shufunotomo.co.jp/book/b10169425.html(主婦の友社HP作品ページ)
https://shufunotomo.co.jp (主婦の友社 HP)
キャンドルライトブックス創刊2冊のうちの1冊『かわよこ食堂』の作者、またり鈴春さんにも取材しています!
名古屋にあるWAKASA&CO.BOOKSは皆さんの本への挑戦を応援しています!
一冊目の本との出会いも、久しぶりのチャレンジにもぜひ当店をご利用ください。
各種店舗の情報はHPにて
(画像クリックでHPに飛べます)
ライター紹介

いっちー
平成10年、四国の田舎で生まれ育ち、京都芸術大学文芸表現学科で文章や創作について学ぶ。
月に10冊、年間で100冊以上読み、取材相手には長文の感想を送りつけるなど、本についてアツいヤツ。
わかさ生活のオウンドメディアDEKIRU! で
『「本」の挑戦者たち』
『UNDERUMBLE!』(音楽記事)
『言の葉を紡ぎし者たち』
『若きアートの炎』
『パピー/盲導犬の物語』の連載を担当している。
いつか自分の本を出すことが夢。
記事サムネイル作成
屋号:prism Art & Design
氏名:小林茜
ポートフォリオ:https://fori.io/prism


