『青春テロリズム』作者、朱宮あめ先生にインタビュー!

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「本」の挑戦者たち
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『青春テロリズム』作者、朱宮あめ先生にインタビュー!

イントロダクション

HAPPY! “本”と“ことば”がなにより大好き、いっちーです!

今回取材させていただくのは“朱宮あめ”先生!

いっちーが去年読んだ本の中で、圧倒的に面白かった作品の一つで、絶対に取材に行きたいと思っていたんです!
ダメもとでお願いしたんですが……なんと、ご快諾いただけました!

泣いてしまうほど、大好きな作品の先生にお話をうかがえるなんて感激です……!

それじゃ~いってみよー!

chapter01 本を読むことについて

どんな青春時代を過ごしていましたか。

とにかくマイペースな子だったと思います。

私は女子高に通っていたんですけど、『青春テロリズム』のようなギスギスした雰囲気は全くない環境でしたね。
友達に恵まれていたのもあって、とにかく好きなことばかりやって楽しく過ごした学生時代でした。

当時の本との距離感はどうだったのでしょう。

本は全然読んでいなかったですね。本をちゃんと読むようになったのは、高校生になってからです。
そのきっかけも本じゃなくてプラネタリウムなんですよ。

プラネタリウムが本を読むようになったきっかけ!?

はい。プラネタリウムの番組で『銀河鉄道の夜』を見たのがきっかけです。
番組は物語の途中、列車の中でカンパネルラが消えてしまうところで終わってしまって、続きが気になって仕方がなかったので『銀河鉄道の夜』の本を買って読んだんです。

それがきっかけで「本って面白いな」と思うようになって、朝読の時間に読むようになったという感じです。

最初の読書で宮沢賢治!? なかなかハードな読書体験だったのではないでしょうか。

読みにくいという感覚はあまりなかったですね。多分、わからないところがあったら、すっ飛ばして読んでいたと思います。でも逆に、そうやって抜けた部分を想像して補っていたので、それが自由な今の発想にもつながっているのかなと思っています。

幼いころや学生時代の経験が、いまの創作活動につながっていると感じる部分はありますか。

実は、昔から「この子はどうしてこういうことを言ったんだろう」と考える癖が私にはあるんですが、そうやって人をよく観察してしまうところは、キャラクターを考えるときに活かされていると思いますね。

先生のオススメ本を教えてください。

まずはスターツ出版の本から紹介させてください。丸井とまとさんの『さよなら、灰色の世界』です。

『さよなら、灰色の世界』
著:丸井とまと(スターツ出版文庫)

この作品は、女性同士のちょっとしたすれ違いや、張りつめた関係性がとても繊細に描かれていて。私自身、そういう関係性の物語を書いてみたいと思っていたこともあって、すごく心に残っています。

女性同士の関係性を描きたいと思ったのは、どうしてだったのでしょう。

恋愛ものにあまり気持ちが向かなかった時期があって。誰かと誰かの恋愛を見るよりも、もっと別の関係性の揺れや距離感のほうに惹かれていたんです。
ほかにスターツさんから出ている作品だと、加賀美真也さんの『明日、君が死ぬことを僕だけが知っていた。』もすごく印象に残っています。

『明日、君が死ぬことを僕だけが知っていた。』
著:加賀美真也(スターツ出版文庫)

あとは児童文庫で書いてみたいと思ったので、その勉強も兼ねて児童文庫をよく読んでいましたね。久里いちごさんの『わたしの婚約者は学園の王子さま!』や、みゆさんの『海色ダイアリー~おとなりさんは、五つ子アイドル!?~』などが好きでした。

児童文庫って挿絵もお話もかわいいものが多いんですけど、その中にハッとするようなリアルな感情が描かれていたりして、すごく面白いんです!

『わたしの婚約者は学園の王子さま!』
著:久里いちご(アルファポリス)
『海色ダイアリー~おとなりさんは、五つ子アイドル!?~』
著:みゆ(集英社)

本以外に好きなものを教えてください。

舞台が好きですね。特に宝塚歌劇が好きなんです。
舞台って、現代ものよりも昔が舞台の作品が多いじゃないですか。そういった今とは全然違う価値観に触れられるのが面白くて! 好きすぎるがあまり、自分の小説にも取り入れていたりします。

chapter02 作品を書くことについて

最初に書いた作品のきっかけと、書かれた作品について教えてください。

本当に最初に書いた作品は正直あまり覚えていないので、投稿サイトでのお話をします。

私は、最初は『小説家になろう』に投稿していました。ですが、自分が書いていた作品がスターツ系のジャンルだったので、なかなかビュー数が伸びなかったんです。
新しいサイトで書こうと思って探していたところ、スターツさんがやっているノベマを見つけました。
そこで初めて書いたのが、あやかしのお話です。

先生が最初にノベマに投稿した作品『潔癖男子荒矢田君は、今夜も華美さんの夢に魘される。』

https://novema.jp/book/n1672026

先生の作品ページを見ると、たくさんのジャンルの作品数がありますね。

当時はノベマでどういうジャンルが人気なのか全然知らなかったので、男性向けのラブコメみたいなものや恋愛ファンタジーも書いてました。どれもコンテストは落ちてしまったんですが、恋愛ファンタジーの超短編でアンソロジー収録のご連絡をいただいたときは驚きました。

書き始めたきっかけについても教えてください。

私は医療系の仕事をしているんですが、医療系ってお昼休みが長いんですよ。最初は仕事を覚えるのに必死で勉強の時間に使っていたんですけど、慣れてきてからはドラマやアニメを見るようになりました。で、それも一通り見てしまって、「お金のかからない趣味がほしいな」と思って書き始めたのがきっかけです。

“お金のかからない趣味”にもいろいろあると思いますが、そこから「書こう」と思ったのは、どんな流れだったのでしょう。

一緒にお昼休みを過ごしていた先輩に、「小説とか書けそうだよね」とぽろっと言われたのがきっかけです。

その一言がなければ、先生が小説家になることはなくて、ぼくも『青春テロリズム』を読むことはなかったのかもしれないと思うと、その方の慧眼はすごいですね……。

そうですね。あとは私がフットワークが軽かったというのもあります。言われたときも「確かに、スマホで書けるな~じゃー書いてみるか」みたいな感じで始めましたしね。
なので、そのときはまだ小説家になりたいという気持ちはあまりなくて、その翌年にアンソロジーで出版させていただいてから「本当に小説家になりたい」と思うようになりました。

書いてみたらデビューにつながったということは小説家の素養があったんですね。やっぱりそれを見抜いた同僚の方がすごすぎます。

本自体はそれまであまりたくさん読んでいたわけではありませんが、もともと妄想することが好きだったのは大きいと思いますね。それを文章にしたような感じでした。

最初は一人称や三人称もわからずに書いていたので、かなりひどかったと思います。でも、そこから勉強のために本を読むようになって、少しずつ上達していったと思いますね。

きっかけをくれた先輩には、その後お話しされたんですか。

はい。「小説家になったよ」と伝えたときは、すごい驚いていましたね。多分、本人もそこまで本気にするとは思っていなかったんじゃないでしょうか(笑) 。
ちなみに今もたまに一緒にお昼ご飯を食べる仲です。

作品を書くときに大切にしていることはありますか?

キャラクターの背景をかなり深掘りして書くようにしています。

人って生まれてからしばらくの間は関わる人が少なくて、家族の影響が大きいと思うんです。家庭環境で人格形成が決まる部分もあると思うので、この子がこういう性格なら、こういう家庭環境じゃないと矛盾するよな、というところは意識していますし、読者の方が違和感を覚えないようにしたいと思って書いていますね。

ルーティンやこだわりについても教えてください。先ほど、スマホで書くことや、お昼休みに執筆されているというお話がありましたが、普段はいつ書いているのでしょうか。

基本的に書くのはお昼休みだけですね。まとまった時間が取れるのがその時間くらいなので、その時間に書いています。ご飯を食べてから書くことが多いですね。コーヒーを飲みながらだったり、お菓子を食べながら書くこともあります。

食後に!? 血糖値が上がって眠たくなって、集中できなさそうにも感じますが。

私はあまり眠くならないタイプですね。というより明るいところでは眠れないたちなんです。
集中の仕方で言うと、XやSNSの通知は基本オフにしていますね。通知が来ると集中が途切れてしまうので。

通勤中には書かれたりしないのでしょうか。

周りの声があると雑音になってしまうので、通勤中は難しいですね。その分、私の職場のお昼は静かなので、とても執筆に向いていると思います。

デビューのために努力されたことについて教えてください。

努力とは少し違うかもしれないんですけど、やっぱり人をよく見てきたことは大きいのかなと思います。無意識にそれが小説にも出ているみたいで、担当さんから「人物の心理描写がすごく良かった」と言っていただけることもあって、すごくうれしかったですね。

完成した本を手に取った瞬間の気持ちはいかがでしたか?

もちろん感動しました! ただ私より周り、特に家族が喜んでいましたね。
私は家族に書いていることを話していなかったので、家に本が届くことでそれがバレたんですけど、それはもうすごく喜んでくれましたよ。

私自身、これまであまり何かを成し遂げてきた人生ではなかったんです。それこそ皆勤賞をとったこともないですし、学生時代もこれといって優秀な成績だったわけではありませんでした。なにか賞を取ったのも小説のコンテストがはじめてだったくらいなので、親が喜んでくれている姿を見て、やっと親孝行できたなという気持ちになりました。

そういう意味でもうれしかったですね。

書店にも行かれましたか?

行きました。やっぱり感動しましたね。そうそうたる作家さんの本と並んでいて、その中に自分の本があるのがすごく不思議で。思わず写真も撮ってしまいました。

やはりサインなどされたのでしょうか。

はい、担当さんと一緒に書店に行かせていただいて、そのときにサインもさせていただきました。うれしい反面、少し気恥ずかしいというか、「何をやっているんだろう」という気持ちにもなりましたね。

今後、どんな作品を書いていきたいですか?

作品でいうと、妖や和風といった世界観がやっぱり好きなので和風のものを書いていきたいです。
実は4月にコミカライズしていただいた作品あやかし花嫁の告白~ごきげんよう、旦那さま。離縁してください。も和風なんですが、小説でも和風の作品を書いて出したいなと思っています。

あやかし花嫁の告白~ごきげんよう、旦那さま。離縁してください。』
原作:朱宮あめ 作画:網戸スズ(ブックライブ)

あらすじ

田舎の旧家・九条家の養女として育った彩葉(いろは)は、血は繋がらないながらも家族に愛されて幸せに過ごしていた。
いつか家への恩返しをしたいと考えていた彼女は、病弱な姉の礼葉(あやは)に代わり、あやかし祓いの名家・天月家へ嫁ぐことに。
これから私は、”九条彩葉”ではなく”天月礼葉”なんだ。
そう意気込む彩葉に対して、夫となった楊(よう)は彼女が触れることすら拒むほどの冷たい態度。
しかし、彩葉はむしろそんな楊にほっとするのだった。
彩葉には姉の身代わりであること以上に、隠さなければならない”秘密”があったから――。

人の心がわからないあやかしの少女と愛を知らないあやかし祓いの、「離縁」の一言からはじまる大正純愛物語。

(ブックライブ商品ページより引用)

漫画作品ページ(ブックライブ)

https://booklive.jp/product/index/title_id/10016016/vol_no/001

あとは児童書や異世界恋愛など、これまで書いてこなかった新しいジャンルにも挑戦していきたいと思っています。

舞台作品には興味はありますか。

そうですね。いつか、舞台の戯曲も書いてみたいです。
舞台って2〜3時間の中に一人の人生がぎゅっと詰め込まれているのが魅力だと思っていて、それをどう不自然にならないように描くかは、小説とも通じる部分があると感じているので、挑戦してみたいです。

舞台がお好きといった点から、脚本ではなく小説家という道を選ばれたのが意外です。

小説も脚本もどうやって書くんだろう、というところはありました。ただ小説は、本として形がある分、入りやすかったんですよね。舞台を見ることはあっても脚本に触れられる機会がなかったので、自然と小説を選んでいました。あとは、やはり「小説とか書けそう」と言ってくださったのが大きいです。

そのとき言われた言葉が「脚本とか書けそう」だったら、脚本家になっていたかもしれないんですね!

そうかもしれません(笑)。

chapter03 『青春テロリズム』について

『青春テロリズム』
著:朱宮あめ (スターツ出版文庫アンチブルー)

あらすじ

高2の亜子には誰にも言えない”いじめを受けていた”という過去がある。そんな彼女にとってクラスの1軍に属することは生きるための絶対条件だった。新しいクラスでもその立ち位置を守るため、美人で優しいカースト上位のみやびと友達になる。彼氏を作り、誰もが羨む日々を送っていた。この“完璧な日常”は絶対に揺るがない、そう思っていたのに…。校外学習の班決めで、自分勝手なクラスの腫れ物、茉莉奈と同じグループになってしまい――。完璧な青春が崩れていく。彼女たちが迎える予想外のラストとは?

(Amazon.co.jpから引用)

Amazon.co.jp 商品ページ

https://x.gd/btX91

ノベマ! 作品ページ

https://novema.jp/book/n1733711

今作はどんな経緯で生まれたのでしょうか。

最初は3万字くらいの短編として書いたのが始まりでした。コンテスト用ではなくて、“女の子同士の恋愛ではない話”を書きたいと思って書いた作品だったんです。

ただ、当時は出せるコンテストがなくて、そのまま置いていたんですけど、スターツのコンテストで“アンチブルー”ができたと知って、「これなら合うかもしれない」と思って、長編に書き直して応募しました。
締め切りギリギリの応募でしたね……。

作品はどのように作られていったのでしょうか。

 「女性同士の恋愛ではない関係性を書きたい」という思いが先にあって、そこからキャラクターを作り始めましたね。

3人のキャラクターを出したいというのは最初から決めていたので、せっかくならそれぞれ全く違う性格にしようと考えました。そうしないと、誰が話しているのか分かりづらくなってしまいますからね。

一人は一軍にこだわるプライドの高い子、もう一人は容姿や才能に恵まれているけれど孤独を抱えている子、そしてもう一人はマイペースな子という形で、役割を分けていきました。

そこから物語を組み立てていったんですね。

そうですね。キャラクターを決めて、その3人の関係性を描いていく中で、気づいたら今の形になっていたという感じです。

今作の執筆中ではどんなところに力を入れましたか。

私はあまり本を読むタイプではなくて、地の文を読むのが苦痛に感じることもあるんです。なので、初めて本を読む方でも楽しめるように、“地の文自体が面白くなるように”意識しました。
一人称にしたのも、感情がにじむように書くことで、地の文をセリフに近い感覚で読んでもらえると思ったからです。

そのおかげでテンポもよくなりましたし、かなり読んでもらいやすくなっていると思います。

読者に「ここを読んでほしい!」というポイントや、好きなキャラクターについて教えてください。

キャラクターそれぞれにしっかり個性を持たせているので、3人の関係性の違いは注目して読んでいただきたいですね。それぞれ考え方や立場が違う中で、どう関わっていくのかを見てもらえたらうれしいです。

今作は青春がテーマになっていますが、朱宮あめ先生にとって青春とは?

今の自分を作っているもの、ですかね。青春というと学生時代を思い浮かべる方が多いと思うんですけど、私にとっては、その頃に出会った友達との関係が今にもつながっていて。嫌なことがあったときや、話したいことができたときに、今でも話したいと思える存在に出会えたことが、私にとっての青春だったと思います。

そういう友達との関係が今の私を作ってくれているので、青春は“今の私”そのものなのかなと思います。

クラスの〈一軍〉に属することに強く固執するキャラクターは、どのような過程を経て形づくられていったのでしょうか。

キャラクターの個性をしっかり出したいというのと、コンテスト用でもあったので、読者にとって分かりやすい人物像にしたかったんです。これは3人全員そうしているのですが、亜子で言えば、ただ“プライドが高い”だけだと伝わりづらいので、“一軍に固執している”という言葉を使うことで、イメージしやすくなるようにしています。

クラスの〈一軍〉という概念や、学校という場所のリアリティ、学生らしい口調のセリフなど、今作の大きな魅力のひとつが解像度の高さだと感じました。こうしたリアリティはどのように高めていかれたのでしょうか。

作品の舞台は高校なんですけど、自分の中では中学校のイメージで作っています。

私が通っていた中学校がマンモス校で、1000人くらい生徒数がいたんですよね。毎年クラス替えがもちろんありましたし、人も多いので小学校からの友達と同じクラスになれることもほとんどありません。そうなると毎年、新しい人間関係を作らなきゃいけなくなりますよね。

そのときの、新学期の緊張感や空気感がすごく印象に残っていて。ピリピリした雰囲気だったり、関係性が固まるまでの不安定さだったり、そういった記憶を思い出しながら書いていました。

今作の魅力の一つが、リアルな会話ですよね。解像度が本当に高くて、どうやって調べて書かれたのか気になります。

ありがとうございます。会話がすごいと言ってくださることは結構あるんですけど、実は特に調べて書いたとか、当時を思い出して書いたというわけではないんですよね。

多分“友達と話しているときの感覚”が近いんじゃないかと思っています。仕事上や特に親しくない人に対しては敬語を使いますが、昔からの友達と話すときは、その頃の話し方に自然と戻るじゃないですか。書くときはその感覚を頼りに書いていましたね。

89ページで、亜子がしきりにストローをかじっている描写があります。こうした細かな仕草に感情が重なり、人物像が立ち上がってくる印象を受けましたが、こうした描写を書く際に意識されていることはありますか。

キャラそれぞれに癖を入れるようにしましたね。

亜子でいうと、ストレスをかみしめるようなタイプの子というか、歯ぎしりのようにして発散するイメージで書いています。ほかにも茉莉奈だと、ゆっくりまばたきをする描写を入れていたりするんですけど、そういう細かい癖を入れることで、そのときの感情が伝わりやすくなるかなと思いました。

小説は絵がない分、文章で表現するしかないので、そういう部分で補っている、という感覚ですね。ただ、そこまで強く意識したわけではなくて、自然と出てきた部分は大きいです。

今作では加害者側としての視点で語られる時間が長い点が印象的でした。こうした構成や読後感は、意識して描かれたものなのでしょうか。

実はあまり“加害者を書こう”という意識はなかったんです。自分の中では、悪い子を書いているつもりもなくて。人間って誰しも、こういう感情を持つことがあるんじゃないか、というものを少し極端に描いた、という感覚に近いですね。

例えば、合わないなと思う人がいたとしても、どこかには共感できるところがあったりするじゃないですか。そういうふうに、一人の中にいろんな側面がある、ということを今作では書きたかったんです。

私は、被害者・加害者という立場は絶対的なものではなく、見る視点によって変わるものだと思っています。その人にとっては、自分を守るためにそうせざるを得なかった行動でも、外から見ると良くないことに見えることもある。そういった“立場の揺れ”のようなものも、書きたかった部分の一つです。

作中にある「青春はままごとである」という言葉について、「ままごと=大人の真似事」や「ママのこと」といった意味合いも重なっているように感じました。この表現にはどのようなニュアンスを込められているのでしょうか。

あえてそこまで強く意識していたわけではないんですけど、言われてみると、たしかにそういうふうにも捉えられるなと思います。無意識のうちに、そうした意味が重なっていた部分もあるのかもしれません。

というのもこの作品では、社会と学校を対比させるようなイメージで書いていました。学校という空間を、海と水槽の関係のように、少し閉じられた、作られた世界として捉えていて。その中で生きている学生たちは、本当の社会にいるわけではないけれど、その一部を切り取ったような存在でもある。そういう“どこか擬似的な世界”としての青春を書きたかったんです。

「好きでも、不満があっていい」といった言葉をはじめ、読者の心が軽くなるようなフレーズが印象的でした。こうした言葉は意識して書かれているのでしょうか。

こういうセリフは、自分が言ってほしかった言葉を入れていることが多いです。学生時代に欲しかった言葉は、どの作品にも意識して入れるようにしています。
中には、説教くさいと感じられる方もいるかもしれないんですけど、それでも伝えたいという気持ちがあって書いています。

実際に読者の方からの反応はいかがですか。

ファンレターなどで「このセリフがすごく響きました」と言っていただけることが多くて。自分が伝えたかったことが届いていると感じられるので、すごくうれしかったですね。

今作のラストについてお聞きします。関係が壊れてもおかしくない状況の中で、なぜあのラストになったのか、その意図をぜひお聞きしたいです。

物語的なラストだと言われることもあるんですけど、私の中ではすごく自然な流れでした。私は女子校出身なんですが、女子校って異性の目がない分、みんな言いたいことをはっきり言うんです。でも、次の日には普通に仲が戻っていたりして。

そういう環境で過ごしてきたので、“言いたいことを言わないと仲良くなれない”という感覚が自分の中にあって。この作品のラストも、その延長にあるものだと思っています。

なので、意識して作った結末というよりは、書いていく中で自然とこの形になりました。

三人が真正面からぶつかり合ったことで、「誰かが作った青春という型」から抜け出せたような感覚がありました。個人的には、そこに微かな光というか、ちゃんと自分たちの足で立ち直っていくような希望を感じたラストでもあって、とても印象に残っています。

このラストをこうした形にされた理由や、込められた思いがあれば教えてください。

そうですね。最初は、この結末で本当にいいのかな、という不安はありました。もう少しわかりやすく整理された終わり方のほうがいいのかなとか、これで読者の方に受け取ってもらえるのかなとか、迷いはあったと思います。

ただ、自分としては、無理に明るいラストにしようとか、希望を描こうとしてそうしたわけではなくて、書いていく中で自然とこの形になったんです。

前の質問でもお話ししたように、私の中には“言いたいことを言わないと、本当の意味では仲良くなれない”という感覚があって。この三人も、ぶつからずにきれいに収まるより、一度ちゃんと感情を出し切ったからこそ、あの形にたどり着けたのかなと思っています。

なので、希望のあるエンディングにしようと意識したというよりは、あの三人にとって自然な着地があの形だった、という感覚に近いです。でも、結果的に賞をいただけたことで、「この結末でよかったんだ」と自分でも思えるようになりました。

chapter04 メッセージ

改めて、朱宮あめさんにとって「本」とはどんな存在でしょうか。

“栄養素の一つ”ですね。自分を構成するものの一つではありますが、絶対にないといけないものではないと思っていて。本を読まなくても生きてはいけるとは思うんです。でも、読んだら自分の価値観がどんどんアップデートされていきますし、結果的に、読むことで生きやすくなっている部分もあると思います。

そういう意味で、私にとっての本は“栄養”みたいな存在ですね。

最後に、これからの“本の挑戦者”へメッセージをお願いします。

私自身も、まだ書き始めたばかりで、誰かに何かを言える立場ではないと思うんですけど。楽しいと思えるうちは、やって損はないのかなと思います。逆に、楽しくないなら無理にやる必要もないと思います。

仕事もそうだと思うんですけど、“生きるためにやる”というよりは、“好きだからやる”“好きなことをしたいからやる”という考え方ができるなら、そちらを選んだほうがいいと思いますし、もしそう思えないなら、無理に続けなくてもいいと思います。

それと、これは学生の方に向けてなんですけど、学生時代ってどうしても“そこがすべて”みたいに感じてしまうと思うんです。でも実際はそんなことはなくて、一つの水槽の中にいるようなものなんです。

なので、もしそこが合わなくても外に出ることもできますし、違う場所に行くこともできると思います。どこかに自分に合う水槽もあると思うので、あまり重く考えすぎずに、自分が楽しいと思えるほうに進んでほしいなと思います。

chapter05 インフォメーション

書籍情報

『青春テロリズム』
著:朱宮あめ(スターツ出版文庫アンチブルー)

あらすじ

高2の亜子には誰にも言えない”いじめを受けていた”という過去がある。そんな彼女にとってクラスの1軍に属することは生きるための絶対条件だった。新しいクラスでもその立ち位置を守るため、美人で優しいカースト上位のみやびと友達になる。彼氏を作り、誰もが羨む日々を送っていた。この“完璧な日常”は絶対に揺るがない、そう思っていたのに…。校外学習の班決めで、自分勝手なクラスの腫れ物、茉莉奈と同じグループになってしまい――。完璧な青春が崩れていく。彼女たちが迎える予想外のラストとは?

(Amazon.co.jpから引用)

・Amazon.co.jp 商品ページ

https://x.gd/btX91

・ノベマ! 作品ページ

https://novema.jp/book/n1733711

『あやかし花嫁の告白~ごきげんよう、旦那さま。離縁してください。』
原作:朱宮あめ 作画:網戸スズ(ブックライブ)

あらすじ

田舎の旧家・九条家の養女として育った彩葉(いろは)は、血は繋がらないながらも家族に愛されて幸せに過ごしていた。
いつか家への恩返しをしたいと考えていた彼女は、病弱な姉の礼葉(あやは)に代わり、あやかし祓いの名家・天月家へ嫁ぐことに。
これから私は、”九条彩葉”ではなく”天月礼葉”なんだ。
そう意気込む彩葉に対して、夫となった楊(よう)は彼女が触れることすら拒むほどの冷たい態度。
しかし、彩葉はむしろそんな楊にほっとするのだった。
彩葉には姉の身代わりであること以上に、隠さなければならない”秘密”があったから――。

人の心がわからないあやかしの少女と愛を知らないあやかし祓いの、「離縁」の一言からはじまる大正純愛物語。

(ブックライブ商品ページより引用)

・漫画作品ページ(ブックライブ)

https://booklive.jp/product/index/title_id/10016016/vol_no/001

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