『僕がいない世界で君が光を見つけるまで』作者、川奈あさ先生にインタビュー!

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『僕がいない世界で君が光を見つけるまで』作者、川奈あさ先生にインタビュー!

イントロダクション

HAPPY! “本”と“ことば”がなにより大好き、いっちーです!

今回取材するのは、川奈あさ先生!

スターツ出版文庫さんをはじめとするライト文芸作品を多く出されており、そのどれもが面白いというすごい作家さんなんです!

私は、葉方萌生さんの取材の中で『青春小説家の殺し方』をご紹介いただき、読んでみたのですが、そこからハマって、ほぼすべての作品を読んでしまいました!

その中でも、今回取材する『僕がいない世界で君が光を見つけるまで』は何度も泣いてしまって……今年上半期に出会った本の中でもダントツで好きな作品の一つです!

そんな作品を書かれた先生にお話をうかがえるなんて……感動で、また泣きそう! 

なんとか涙をこらえながら頑張ります!

それじゃ~いってみよー!

プロフィール

川奈あさ
ライト文芸作家。
スターツ出版文庫やアルファポリスで青春小説を中心に作品を発表。
「優しい朝を迎える話」が好き。

Chapter01 本を読む

先生の作品は青春を舞台にしたものが多いですが、先生ご自身はどのような青春時代を過ごしていたのでしょう。

こういうと、あれなんですが……めっちゃ普通の女子高生でした。
本も読んではいましたけど、すごく読んでいたというわけではないんです。友達と遊んだり、勉強したり、バイトしたりと、普通に青春を楽しんでいました。

そうなんですね! 先生の作品では、人の心の闇や葛藤がすごくリアルに描かれているので、勝手ながら学生時代もいろいろなことを経験されてきたのかなと思っていました。

学生時代は楽しかったですね。
ただ、全部が全部楽しかったかと言われると、そうでもなくて……というのも私、集団行動が苦手だったんです。

学生時代って、40人くらいのクラスメイトと一年間、毎日同じ場所で過ごすじゃないですか。今思うと、それって結構大変なことだなって思うんですよね。合わない人がいても、簡単には距離を取れないですし。
だから、そういう逃げ場のない場所にいる人が、少しでも楽になれるものがあったらいいなと思って、青春時代のお話を書くことが多いです。

最初に読んだ作品や、本を“自分から”読むようになったきっかけを教えてください。

もともと親が絵本を買いそろえてくれるタイプだったので、物心ついた頃から、本や絵本が身近にある環境ではありました。
初めて自分で集めたなと思うのは、幼稚園の頃にハマっていた『わかったさん』シリーズや『こまったさん』シリーズだったと思います。

『わかったさんのクッキー』
寺村輝夫・作/永井郁子・絵(あかね書房)
『こまったさんのスパゲティ』
寺村輝夫・作/岡本颯子・絵(あかね書房)

これまでの先生の読書遍歴を教えてください。

本にガッツリハマったのは、青い鳥文庫さんの、はやみねかおる先生の『夢水清志郎』シリーズからです。
そこから自分で図書館に行くようにもなって、ミステリー系の本を読むようになりました。
シャーロック・ホームズをはじめとした、子ども向けの少し分厚い児童書とか、あとは赤川次郎先生の『三毛猫ホームズ』シリーズとか。ずっとそういうシリーズものを読んでいましたね。

そのほかには一般文芸系も結構読んでいました。有名どころの作品や恋愛小説も読みましたし、なかでも唯川恵先生の作品も好きで読んでいましたね。
今でもミステリーは好きで、最近はクローズドサークルものをよく読んでいます。

『そして五人がいなくなる 名探偵夢水清志郎事件ノート』
はやみね かおる・著/村田 四郎・絵 (講談社)

先生の作品を読んでいると、人の心のきれいな部分だけではなく、少し目を背けたくなるような感情まで丁寧に描かれている印象があります。
そうした作風には、影響を受けた作品や作家さんがあるのでしょうか。

森絵都先生の『カラフル』という小説がすごく好きです。
有名な作品なので、ご存じの方も多いと思うんですけど、中学生の頃に読んで、自分の人生の中ですごく大きな作品になりました。救われたというか……あの時期に読めて本当によかったなと思っているんです。

『カラフル』は、“人には良いところも悪いところもあって、見る人によってその人の印象が全然違う”ということを教えてくれた作品でした。
すごくいい人だと思っていた人にも実は裏があったり、逆に苦手だと思っていた人にも良いところがあったりする。そして、自分のことも嫌いだったけれど、ある人から見れば、自分という存在がその人を救っていたりする。
そういう“人にはいろいろな面がある”という考え方は、自分の作品にもすごく影響を受けていると思います。

『カラフル』
森 絵都・著(文春文庫)

先生のオススメの本を教えてください。

五条紀夫先生の作品です。最近、めちゃくちゃハマっていて、全部の本を買うくらい大好きなんです!
最初に『クローズドサスペンスヘブン』を読んでから、そこで一気にハマりました。
そこから『私はチクワに殺されます』や『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』、『町内会死者蘇生事件』と読んでいったんですが、読み終わっちゃうのがもったいなくて……実はまだ少し残しています。

『クローズドサスペンスヘブン』
五条紀夫・著(新潮文庫)

どういったところが魅力なのでしょうか。

五条先生の作品は、とにかく文章が面白いんです。
どの文章というか、どの行を読んでいても楽しい感じがあって。そこに、“小説の可能性”みたいなものをすごく感じるんですよね。電子書籍化が難しそうな仕掛けの作品もあったりして、今までになかったようなことをされているのがすごいなと思います。

特に好きなのは、新潮社さんから出ている『クローズドサスペンスヘブン』と『イデアの再臨』、『町内会死者蘇生事件』です。
中でも『町内会死者蘇生事件』は、殺したはずの町内会長が生き返ってしまって、誰が生き返らせたのかを追うミステリーなんですけど、すごく面白くて。
声に出して笑ってしまうような部分もあれば、じんわりと心に染みる部分もあって、その緩急のつけ方が本当に素晴らしいなと楽しんでいます。

『イデアの再臨』
五条紀夫・著(新潮文庫)
『町内会死者蘇生事件』
五条紀夫・著(新潮文庫)

Chapter02 作品を書くこと

先生のペンネーム“川奈あさ”の由来を教えてください。

これが全然ないんですよね。
もともとウェブ投稿から始めたので、最初は作家になるなんて思っていなくて、適当につけた名前でした。しかも最初は“カワナ”だけだったんです。
いざデビューが決まったときに、慌ててそれっぽいフルネームをつけました。
今は“優しい朝を迎える話”を自分のキャッチフレーズみたいにしているので、後付けではあるんですけど、“あさ”という名前にしておいてよかったなと思っています。

デビューしたいと思ったのはいつごろからですか。

友達が小説家デビューしたことで、投稿サイトの存在をしって、最初は軽い気持ちで投稿をしていました。
そこからデビューしたいと思うようになったのは、ノベマさんのキャラ短コンテストを知ったからですね。短編から応募できるということだったので、挑戦してみよう!と思ったんです。

最初に書いた作品は、どのような作品だったのでしょうか。

投稿サイトでそのとき流行っていた“転生もの”を書きました。

えっ、そうだったんですか! 今の先生の作風からは、最初に転生ものを書かれていたというのは想像できず、意外でした。

そうなんです。ただ実は当時は、ちゃんと転生ものを理解できていなくて……。
転生ものって、本当はヨーロッパ風というか、RPGでよく見るような異世界に行くものなのに、少女漫画に転生するっていう現代転生する話を書いてしまったんです。なので、もちろん全然ビュー数も伸びませんでした。
ただ、なんとなく書き始めたわりに、最初から10万字くらい書き切ることができたのはよかったなと思っています。

最初に書いた作品で10万字!?

もちろんプロットも何もなく、バーッと書き進めていった感じだったので、ストーリー展開とか、いたるところに破綻もあるとは思うんです。それでも、この文字数を書き切れたことは自信になりましたね。

もともと文章を書かれるのが得意だったのでしょうか。

さすがにこんなに多くの文字数を書いたのはそれまでなかったですが、友達と夢小説を書いて読みあうことは何回かしていたので、文章や物語を書くこと自体は、そこまでハードルは高くなかったですね。

作品を書くときに、どんなことを大事にされていますか。

読後感ですね。
自分の中で“優しい朝を迎える話”を書くと決めているので、最後はそこにたどり着くようにしています。
全部が全部、ハッピーエンドかと言われると微妙なんですけど、たとえ完全なハッピーエンドではなくても、ちょっと希望が見えるような終わり方にしたいなと思って書いています。

執筆時のルーティンやこだわりを教えてください。

私はアイデア出し、執筆、確認をそれぞれ別の媒体でするようにしています。
アイデア出しは、床に寝そべって紙に書きます。落書きや絵を描きながら、考えていく感じですね。
それがまとまってきたら、パソコンで執筆します。
ある程度できてきて読み返すときは、少し暗い部屋でスマホを使うことが多いです。そのほうが気持ちが乗るというか、感情を入れやすいんですよね。

書く時間など、制作環境のこだわりはあるのでしょうか。

書く時間帯は、日中のほうが合っていますね。音楽はエモくなりたいときは感動系の曲をかけたり、テンポよく進めたいときは明るい曲をかけたりすることもあります。そういうときは歌詞の意味が入ってくると集中できないのでK-POPを聞くことが多いですね。

デビューまでにどんな努力をされましたか。

自分が書いたお話を毎回振り返るようにはしていました。

たとえば、最初に書いた転生ものの話で言うと、そもそもそのサイトに載せるにはミスマッチだったなとか。最初の作品は文字数こそ書けたけれど、いらないシーンが多すぎたなとか。
そういう反省点を自分で見つけて、次はその反省を活かした話を書こう、ということを毎回やっていました。

そうしてデビューをつかみ、いざ完成した本を手に取った瞬間、どのような気持ちでしたか。

結構、信じられない感じでした。「へえー」というか、びっくりというか。
親は喜んでくれましたけど、私自身は、今でもまだあまり実感がないんです。これが本当に本屋さんに並んでいるんだ、というのは、いまだに不思議な感じがします。
本が出て書店に行ったときは、こっそり見てニヤニヤしていました。

ご自身にとって、転機となった作品を教えてください。

二つあります。

まずやっぱり、一番初めに本になった『卒業 君との別れ、新たな旅立ち』に収録されている『卒業日カレンダー』です。アンソロジーという形ではありますが、初めて書籍に収録していただいた作品で、単著デビューのきっかけにもなったお話なので。

『卒業 君との別れ、新たな旅立ち』
櫻いいよ 、 遊野煌 、 時枝リク 、 川奈あさ・著/げみ・イラストレーター(スターツ出版文庫)

その次に書いたスターツ出版さんから出ている『私を変えた真夜中の嘘』に収録された『僕たちが朝を迎えるために』というお話も転機になった作品ですね。
タイトルからもわかる通り、そのときに「優しい朝を迎える話を書こう」と決めたので、転機であり、原点かもしれないなと思います。

『私を変えた真夜中の嘘』
夏木志朋 、 春田モカ 、 雨 、 川奈あさ・著/アキヤミ・イラストレーター(スターツ出版文庫)

今後は、どんな作品を書いていきたいと考えていますか。

私は小説を読むことで、新しい世界を知ったり、自分の考え方が変わりました。小説の力ってすごい!と思っているので、世界が広がるような小説を書いていきたいです。また、五条先生のように小説のフォーマットに縛られず自由な発想で楽しめる小説にもいつか挑戦したいですね。

先生がよくおっしゃっている、“優しい朝を迎える話”という言葉について、もう少し詳しく教えていただけますか。

これは、雷句誠先生の『金色のガッシュ!!』に救われた経験からです。
作中に大好きなシーンがあって、絶望しているシェリーに、ココが「出口のないトンネルはないもの…がんばって歩き続ければいつか光を浴びれるわ」と言葉をかけるんですよ。その言葉が、ずっと心に残っていて。

結局、そのあと今度はシェリーがココを助ける側になるんですけど、“明けない夜はない”とか、“終わらないトンネルはない”とか、そういう言葉って、ある意味では綺麗事じゃないですか。でも、私はそういうものを信じていたいなと思うんです。

だから、完全なハッピーエンドじゃなくてもいいんです。たとえ物語がどん底で終わったとしても、その先に少し光が見えるとか、もう少し進めば朝が来るかもしれないとか。そんな“優しい朝を迎える話”を書きたいと思っています。

『金色のガッシュ!![完全版]』
雷句誠・著(クラーケンコミックス)

Chapter03 作品について

A:『#消えたい僕は君に150字の愛をあげる』について

『#消えたい僕は君に150字の愛をあげる』
川奈あさ・著/寝路・画(アルファポリス)

柊マグネタイト氏コラボ小説が待望のコミカライズ!!

周囲の顔色をうかがい本音を隠してしまう雫は、誰にも伝えられない想いを150字のSNS『Letter』に綴る日々を送っていた。そんなある日、クラスメートの駆から、『Letter』のコンテストに応募するために「一緒に物語を作ってほしい」と頼まれる。物語の種を探して共に過ごすうち、雫と駆の心は少しずつ通い合っていく。しかしそれは、互いの心の奥に隠した秘密に触れることでもあった――。誰かになりたくて、なれなかった。透明な二人の物語が、今、始まる。

アルファポリス作品ページから引用

企画や制作の経緯を教えてください。最初のアイデアは、どこから生まれたのでしょうか。

今の時代、SNSがあっても、なかなか本音って言えないじゃないですか。だから、“助けて”と一言でも言えるようになるお話にしよう、というのが最初にありました。

今作は音楽ともコラボレーションされていますよね。

はい。受賞した作品をもとに曲を作っていただける、「青春小説×ボカロPカップ」というコンテストがきっかけでした。
受賞作をもとに柊マグネタイトさんが楽曲・MV化してくださったという流れです。
そのおかげで、普段あまり小説を読まない方にも作品を手に取っていただけたので、アルファポリスさんのそういう取り組みは本当に素敵だなと思っています。

私は“小説の可能性を広げたい”という気持ちがあるので、普段小説を読まない方にも、小説に触れてもらって、好きになってもらえたらうれしいんです。こういう本を広めていく活動は、これからもしていきたいなと思っています。

執筆中ではどんなことが大変でしたか。

そもそも、青春小説で長編を書いたのが、この作品が初めてだったんです。なので、まず長編として書き切ることが大変でした。
それに加えて、作中に出てくる150字の投稿をたくさん考えないといけなかったので、そこも苦労しました。

読者に「ここを読んでほしい!」というポイントや、好きなエピソードはありますか。

クライマックスのシーンですね。駆が来て、150字の投稿をどんどん重ねていくシーンが好きです。150字ではおさまりきらない気持ちがあふれていくような場面になっていると思います。

ネタバレ注意!(クリックしてお読みください)

今作の面白さの一つが、作品全体に流れる“色味”だと思っています。
家族や、本当は少ししんどい友人との会話のシーンは、どこかグレーというか寒色がかっている印象がある一方で、駆とのデートシーンでは、世界が一気に色めき立ち、パステルカラーのような明るさすら感じました。
こうした色の雰囲気は、意識して描かれていたのでしょうか。

そうですね。コンテストに出したときの原題が『透明な僕たちが色づいていく』で、もともと、色のない子たちが関わることで色づいていく、というお話にしたかったので、色はかなり意識して入れました。

それと同時に、いろんな人にはいろんな面がある、ということも意識して書いています。
悪意があるわけではないけれど、誰かを傷つけてしまうこともある。逆に、暗く見えていたものが、別の角度から見ると違って見えることもある。
そういう人の見え方の変化も、色の変化と重ねて書けたかなと思っています。

色のシーンといえば、やはり紅葉のシーンは外せません。

紅葉のシーンは、恋心がバッと芽生えたようなイメージで書いていました。
コミカライズでも、そのシーンをすごく素敵に描いていただきました。小説で自分が力を入れて書いた場面を、漫画では見開きで大きく見せてくださっていて、担当さんと寝路先生が、このシーンで描きたかったことをすごく理解してくださったんだってうれしくなりましたね。

視覚的にもとても印象的な場面になっているので、コミカライズならではの表現として、ぜひ見ていただけたらうれしいです。

『#消えたい僕は君に150字の愛をあげる(漫画版)』
川奈あさ・原作/寝路・漫画(アルファポリス)
アルファポリス作品ページ

友人二人の会話をトイレで聞いてしまうシーンも、とても印象に残っています。
初読時は、青春小説によくある“いじめの導入”のようにも感じたのですが、二度目に読むと、実は特別ひどいことを言っているわけではないんですよね。
でも、主人公の気持ちに寄り添って読んでいると、「なんでそんなことを言うの!」と感じてしまう。
これも“悪意はないけれど、傷ついてしまう”出来事であり、すごく良いミスリードだと感じました。
このシーンは、どのように意識して書かれたのでしょうか。

すれ違いって、ひも解いていけば、一つ一つは些細なことなんですよね。
人間関係の誤解もそうですけど、小さなすれ違いが積み重なって、どんどん問題になってしまうことがあると思うんです。
誰かに大きな悪意があるわけではなくても、受け取る側の気持ちや、そのときの状況によって傷ついてしまうことがある。
そういう、日常の中にあるすれ違いを書きたかったんです。

お話をうかがっていると、先生の作品には、明るく見える人の中にも苦しさがあったり、逆に暗く見える人の中にも優しさや魅力があったりするように感じます。
『青春小説家の殺し方』にも通じる部分だと思ったのですが、これは先生ご自身の創作ともつながっているのでしょうか。

これは、自分が単純に“太陽のようなキャラが闇を抱えているのが好き”だからというのもあるんですが、ただ単に闇を描こうとしているわけじゃないんです。

私は、闇以外も人のいろんな面に惹かれるところがあって、登場人物を書くときも、良いところも悪いところも描こうと思っています。そうやって人を書いていくと、結果的に光の部分も闇の部分も自然と入ってくるんです。
なので、そういう要素は自分の作品全体につながっているのかなと思います。

作中に登場するSNS「Letter」は、どのように作り上げていかれたのでしょうか。
また、Letterに投稿される作品から感じられる学生らしい初々しさも、とても印象的でした。そういった空気感は、どのように表現されていったのでしょうか。

『Letter』は、Twitterみたいな気軽さはあるけれど、もっと“言葉”や“作品”そのものを大切にできる場所があったらいいな、という思いから生まれました。

もともと、文字だけでつながれるSNSがあったら面白いなと思っていたんです。
私の作品って、『卒業日カレンダー』や『僕がいない世界で君が光を見つけるまで』もそうですけど、結構SNSやスマートフォンが出てくることが多いんですよね。
というのも、今って本を読まない人も多いじゃないですか。そんな中で、冬野夜空先生の作品がTikTokをきっかけに広がって、普段本を読まない子たちが本を手に取るようになったのを見て、すごく素敵だなと思ったんです。

だから私も、若い世代が自然と興味を持ってくれるようなものを書きたいという思いがあって、SNSを題材にすることが多いのかもしれません。

個人的にもっとも印象に残っているのが、弟の壮太との衝突から、翌日の謝罪に至るまでのシーンです。
最初は、「なんて素直じゃない弟なんだ」と思っていましたし、あまり言葉を使わないところが父親に似ていて、だから父親のほうにつくのかなとも感じていました。
一方で、お母さんはよく話すタイプで、雫もLetterに投稿していることから、言葉を多く使う人物として描かれているように思います。
こうした家族間での“似てしまう要素”は、意識して描かれていたのでしょうか。

あまり意識はしていなかったので、そういうふうに読んでもらえたんだ、と思いました。
自分で書いているときには気づいていなかった部分を、そういうふうに見てもらえたのはうれしいです。

壮太の“俺はお姉ちゃんの選んだ方についていく”という言葉には、思わず胸がきゅんとなりました。
正直に言うと、そのあとの駆の告白シーンがかすんでしまうほど、個人的にときめいたシーンです。

壮太は実は、私の妹がモデルなんです。もう、私の妹にそっくりなんですよ。
妹は愛情表現が下手というか、私のことをすごく好きでいてくれるんですけど、かなりツンデレなんです。でも、なんだかんだ私についてきてくれるだろうな、という感じがあって。
だから、壮太にキュンとしてもらえたと聞いて、妹にキュンとしてもらったような気持ちです。

父親の不倫や、それが発覚しかけたことで家族の会話が増えていく場面、「お姉ちゃんなんだから」と無意識に雫を頼ってしまう母親、そして、それに気づきながらも、自分だけやりたいことをやらせてもらっている負い目から、何も言えずにいる壮太。
家族一人ひとりの解像度がとても高くて、みんなが暮らしている家の間取りや、そこに置かれている小物まで、はっきりと想像できました。
こうした家族像は、どのように作り上げていかれたのでしょうか。

この作品の家族が、そのまま自分の家族というわけではないんですけど、自分の経験だったり、ネットで見かけた話だったりは参考にしています。

たとえば、Xで“長女が家族の中で我慢をしている”という話題が流れてきたり、弟がいる長女についての議論を見かけたりすることがあって。そういう、実際にいろいろな人が感じていることを、自分なりに取り入れながら書いていきました。
だから、一人のモデルがいるというよりは、そういういろいろなものを少しずつ重ね合わせて、この家族ができていった感じですね。

今作は、エンディングもとても印象的でした。
悪役が倒されてすべてが解決するわけでもなく、主人公だけが劇的に変わるわけでもない。それでも、友人にちゃんと断りを入れられるようになったり、クラスが変わっても集まれる居場所ができたり、一度は壊れかけた家族も少しずつ関係を取り戻していったり……。
それまで「嫌だったこと」が、嘘のようにひっくり返っていくのではなく、“少し見え方が変わる”ことで世界が変わっていくようなラストが、とても印象に残りました。
先生ご自身は、この結末をどのような思いで描かれたのでしょうか。

やっぱり、自分が書きたい話の根っこには、『カラフル』に影響を受けている部分もあるんです。

学生時代ってどうしても世界が狭いじゃないですか。苦しくても、その環境の中で三年間は過ごさないといけない。仕事だったら辞めるという選択肢もあるし、学校だって最悪辞めることはできますけど、基本的にはその場所で生きていかなきゃいけないことが多いと思うんです。
だからこそ、少しだけ物事の見方を変えることで、自分がちょっとでも楽になれたらいいなと思って、私は青春小説を書いています。

この作品も、読んだ方にとって、そんなふうに少しだけ気持ちが軽くなるヒントになってくれたらうれしいなと思っています。

B:『青春小説家の殺し方』について

『青春小説家の殺し方』
川奈あさ・著/雨森ほわ・イラスト(スターツ出版)

新人編集者の槇原羽菜は、念願だった超人気作家“葉空ヨリ”の担当編集になることが出来た。その物語を読んで救われたという10代からの支持が絶大なヨリ。羽菜もまた、かつてその一人だった。そんなある日、小説投稿サイトにある物語が投稿される。【葉空ヨリは人殺し】著者は、過去に自殺したはずの少女。ヨリが彼女をいじめ、自殺に追い込んだ過去を告白する物語だった――。世間のイメージと正反対なその告白を覆すべく、羽菜は無実を信じて奔走するが、更なる事実が発覚し…。少女の正体、青春小説家の一番隠したい過去とは?

ノベマ! 作品ページから引用

今作『青春小説家の殺し方』は、どのように企画が生まれたのでしょうか。

きっかけは、スターツ出版文庫大賞でした。そのときのテーマが“自分を暴くアンチ青春エンタメ”で、誰かを暴くような要素が求められていたんです。
そこから、神格化された自分と、本当の自分とのギャップに苦しむ人を描こうと思いました。槇原羽菜が主人公ではあるんですけど、私の中では葉空ヨリも含めて、二人でこのテーマを背負っているような感覚があります。
憧れや理想と現実、人の期待に応えられない苦しみ。それに加えて、ネットの炎上が真偽よりもエンタメとして消費されてしまう怖さも、いつか作品に書きたいと思っていました。
その二つが重なって、この作品が生まれた感じです。

これまでの作風と比べて、大きく違った部分はどこでしたか。

一番大きな違いは、主人公ですね。青春小説って、基本的には主人公を共感される人にすることが多いと思うんですけど、今回はあえて共感されにくい人にしました。

あとは、ライトミステリーやサスペンスの要素があるので、構成も難しかったです。読者が初見で読んだときにどう感じるのか、ミスリードや伏線がちゃんと機能しているのか、自分だけでは判断しづらいところがあって。
「これ、どういうふうに見えているんだろう」というのがわからなくて、誰かの意見がほしいと思いながら書いていました。

ミステリーが好きとおっしゃっていたので、悩まれたと聞いて、意外でした。

自分で読むのと、実際に書くのとでは全然違いますね。ミステリーを書かれている方って、本当にすごいなと思いました。

今作で、特に苦労された部分はどこでしたか。

一番苦労したのは、槇原羽菜がめちゃくちゃな子だったことです。彼女を放って物語を進めるとバッドエンドになってしまうんですよね。
実際、最初は完全なバッドエンドだったので、そこから軌道修正していくのが大変でした。

まさかバッドエンドだったとは! いったいどんな話だったのでしょう。

墓場のシーンが少し違いました。
本編では、そのあと“休ませてあげよう”という判断になるんですけど、最初はそうならなかったんです。

バッドエンド案だと、槇原羽菜にとって大事なのは“葉空ヨリ先生”という偶像であって、小田切本人はもうどうでもよくなってしまうんですよ。だから、普通に見殺しにしてしまうんです。
小田切は亡くなってしまうんですけど、その前に母親のもとへ行って、これまでの出来事を世間に公表する。そうすると、世間から見た葉空ヨリは、一生神格化されるんです。槇原羽菜は、それに満足してしまうんですよね。

読んだ後にお話を聞くと、その結末も、すごく槇原羽菜らしい気もしますね。

そうなんです。やっぱり、自分の神様って壊れてほしくないじゃないですか。
今は美しくても、生きていれば年を重ねていくし、もしかしたら作家として終わってしまうかもしれない。それなら、このまま美しいまま完結して、永遠の存在にしてしまいたい。そういうバッドエンドでした。
私はその結末も結構好きだったんですけど、合わない方も多いと思ったので、最終的にはやめました。
もし一般文芸として、もっと“偶像崇拝”というテーマに寄せていたら、そういう終わり方もありだったのかなと思います。

逆に、その没案を知ると、本編の結末がより印象的に感じます。

そうですね。ああいう、最後にぶつかり合う感じは、『金色のガッシュ!!』の影響もあると思います。

この作品は、結構、葉空ヨリ側に共感する話かなと思っていたんですけど、感想を読ませてもらうと、本当に賛否両論で。“主人公が合わなかった”という声も結構ありました。
でも、それは狙って書いた部分でもあるので、全然いいんです。スターツ出版さんの作品としては、なかなか珍しい主人公だったかもしれません。

ネタバレ注意!(クリックしてお読みください)

主人公を編集者にされた経緯を教えてください。

最初は、葉空ヨリを主人公にして、追い詰められていく話にしようと思っていたんです。
その中でまず、“悪質なファンレターが届いたときに、それを編集部の人が隠すのかどうか”を考えました。そこで、編集部とのつながりを描くなら、編集部側の人間を主人公にしたほうが進めやすいなと思って変えたんです。

あとは、“本当の自分から解放されたい”というテーマがあったので、だったら葉空ヨリを崇拝している人が必要だなと考えました。その役割として、担当編集が彼女を強く崇拝している、という形はありだと思ったのもあります。

ただ、編集者を主人公にするのは少し不安もありました。コンテスト作品だったので、編集さんに取材して聞くことができなかったんです。しかも、審査するのは編集部の方じゃないですか。
もし編集部の描写が間違っていたら落とされるんじゃないかと思って、めちゃくちゃドキドキしていました。校正のときに特に指摘されなかったので、大丈夫だったのかなと思っています(笑)。

物語としては、あまり早い段階で真相を明かさないほうが面白いという判断もあったと思うのですが、葉空ヨリが自分から「もうやりたくない」とはっきり言わず、あえて遠回しに、少しずつ真実を明かしていくところが印象的でした。
途中で、一連の出来事が怖いと言っていたり、痩せていく描写があったりしたので、もしかしたら先生本人が“偽物”なのではないか、と考えながら読んでいたんです。
もちろん、当時の関係者への復讐という側面もあったと思うのですが、葉空ヨリはなぜあの方法を選んだのでしょうか。

これは、少しずつ真相を明かしていったほうが、物語としてどんどん追い詰められていく感じが出て面白いなと思ったからですね。
葉空ヨリが一番復讐したかった相手は、実は周りではなく自分自身だった。だから、自分から炎上を起こして、世間の注目を集めて、周りの人たちまで巻き込みながら、自分ごと壊れていく。そういう、自滅に向かっていく終わり方、自分に一番ダメージがくる方法を選んだんです。

99ページで、葉空ヨリがタクシーに乗り込んだあと、槇原にメールを送っていますよね。その直後に“偽物”の記事が公開される流れが、二度目に読んだときにとても胸に残りました。
励ましのお便りや槇原の言葉に苦しみ、いっぱいいっぱいになっている一方で、それでもそうして支えてくれた相手を傷つけたくないという気持ちもある。そんな相反する感情が同時に存在しているシーンなのかなと感じたんです。
また、実家に帰る際に槇原へ手紙を残していく場面にも、同じような感情を受け取りました。
こうした、二度読むことでより深く伝わるキャラクターの細やかな心情は、どのようにつくりあげていかれたのでしょうか。

これは、 “人にはいろんな面がある”というところにつながるんですけど、葉空ヨリって、ずっと筋が通っている人ではないんですよね。
やっていることと言っていること、それから本当に思っていることが、結構バラバラだったりするんです。

だから、誰かを傷つけたくないと思いながら傷つけてしまったり、自分でも整理できない感情を抱えたまま行動してしまったりする。
そういう、人のちぐはぐな部分を書きたかったので、葉空ヨリもあえてそういう人物として書いています。

10年以上前のいじめのブログが発見されるシーンは、とても衝撃的でした。
その内容はもちろん、ネットが今ほど主流ではなかった時代のブログの雰囲気や、それを消していないというリアリティ。さらに、卒業アルバムの写真を、ほかの生徒も映っている状態でネットに上げてしまうリテラシーの感覚もすごくリアルでした。
こうした設定は、どのように詰めていかれたのでしょうか。

今って、Xなどでリアルタイムに炎上することが多いじゃないですか。でも、インターネットが今ほど身近ではなかった世代のSNSやブログって、もう少しクローズドなものだったと思うんです。

たとえば、ちょっと危ないことを書いていても、その場ではすぐに大きく広がらない。でも、そのコミュニティの中にあったものが外に持ち出されたら、かなり危ないものもあるよなと思っていました。

クライマックスである墓場のシーンについてお聞きしたいです。
きれいごとに苦しんでいることを打ち明けた小田切に対し、葉空ヨリがかける言葉には、きれいごとでは片づけられない強さを感じました。
このような結末にしようと決められた経緯を教えてください。

最初は、以前お話ししたようにバッドエンドの案もあったんです。でも、ここでは羽菜の中で少し成長というか、考え方が変わる展開にしたいと思いました。
それまで葉空ヨリという偶像しか見えていなかった羽菜が、ちゃんと小田切という一人の人間を見るようになる。そういう物語にしたかったんです。

この墓場のシーンは、担当さんとも一番話し合ったところでした。受賞後の打ち合わせで、「この二人って、友達でも恋愛でもないけれど、ある意味では誰よりも深い絆で結ばれていますよね」と言っていただいて、たしかにそうだなと思ったんです。
憎しみみたいな感情も混ざっているけれど、この二人にしかない唯一無二の関係性を、最後まで書き切ろうと思った結果、ああいった結末になりました。

作中の「完全にきれいな人じゃないと小説を書いてはいけないんですか」や、「読者の感情は作家にも否定できない」という言葉も、とても印象に残っています。

私はK-POPが好きなんですが、アイドルが不祥事を起こしたり、脱退したりすると、裏切られたような気持ちになるじゃないですか。
でも、とあるファンの方が「それでも、この数年間で受け取ったものは本物だった」というようなことを話しているのを見て、すごく印象に残ったんです。
どんな終わり方をしたとしても、その作品や、その人から受け取った感情まで否定されるものではない。そういう思いがあったので、“読者の感情は作家にも否定できない”という言葉を書きました。

『青春小説家の殺し方』というタイトルも、とても印象的ですよね。
「殺し方」とありながら、実際には人が死ぬ結末ではなく、“社会的に殺す”ことや、“ここで一度終わりにする”ことが描かれている作品だと感じています。
このタイトルや結末には、どのような思いを込められたのでしょうか。

タイトルは結構悩みました。もっと直接的に、『神様の殺し方』みたいなタイトルも考えていたんです。
でも、いろいろ考えた結果、このタイトルになりました。
一番大きいのは、葉空ヨリが、自分自身を殺したかったということなんです。だから、『青春小説家の殺し方』というタイトルにしました。
そう考えると、この作品は、やっぱり葉空ヨリが主人公の物語なんだろうなと思います。

そして、ラストには『青春小説家の殺し方』という本も登場しますよね。
あの演出によって、この物語が現実と地続きになったような感覚があって、とても印象に残りました。あのラストには、どのような意図があったのでしょうか。

そこは、あえて読者の方に委ねたい部分ですね。
いろいろな意味を込めてあのラストにしたので、それぞれ自由に想像してもらえたらうれしいです。

C:『僕がいない世界で君が光を見つけるまで』について

『僕がいない世界で君が光を見つけるまで』
川奈あさ・著/ゴル・装丁イラスト(アルファポリス)

TikTokで話題!『#消え僕』著者が贈る、泣ける最新作!

「明るい私」の仮面を被り、息苦しい毎日を生きる高二の一花。唯一、自分らしくいられるのは、幼馴染の瀬里の前だけ。しかし、突然の事故により、彼は命を落としてしまう。一花は希望を失い、モノクロな日々を送るが、ある日、いつもと変わらない様子の瀬里が目の前に現れた。そして、彼の心残りを解消するために奔走することに。一緒に夏を過ごすうちに、一花の世界に光がだんだんと戻っていく。だが、残酷なカウントダウンは始まっていて…… 切なすぎる奇跡に涙が止まらない感動作。

アルファポリス作品ページから引用

企画や制作の経緯を教えてください。最初のアイデアは、どこから生まれたのでしょうか。

最初は、“みんなの前では明るく振る舞ってしまう子”の話を書きたいなと思ったんです。
『卒業日カレンダー』に出てくる主人公の友達みたいな子を主人公にしてみたい、というところから始まりました。

言われてみると、『卒業日カレンダー』にも、どこか無理をして明るく振る舞っているような子が登場しますよね。

そうなんです。同じ人物ではないんですけど、イメージとしては近いところがありますね。

執筆中に、特に苦労されたのはどんな部分なのでしょう。

登場人物がすごく多い作品なので、それぞれのキャラクターがごちゃっとならないように気をつけるのが大変でしたね。
主人公たちだけじゃなくて、あかね側の友達と学校側の友達、それぞれに役割があるので、その描き分けには結構苦労しました。

読者の方には、特にどんなところに注目して読んでほしいですか。

最後ですね。花火のフィナーレみたいに、一気に盛り上がるクライマックスを意識して作りました。
あとは、ルナがお気に入りのキャラクターなので、ぜひ注目してもらえたらうれしいです。

ネタバレ注意!(クリックしてお読みください)

亡くなった友人が幽霊として現れ、願いを託されるという設定だけでも一つの物語になり得る中で、“仮面をかぶって周囲に合わせてしまう主人公”という、もう一つの軸が重なっている点が印象的でした。
この二つの要素を組み合わせた構成にされた経緯が気になります。また、先生の作品にたびたび登場する“仮面”というモチーフについても、どのような意識があるのか教えていただければと思います。

私は青春小説を書くとき、まず“どんな主人公を書くのか”というテーマを考えるんですが、それとは別に、この作品全体を読者にわかりやすく届けるためのギミックというか、もう一つの軸も同時に考えることが多くて。

たとえば『#消えたい僕は君に150字の愛をあげる』なら、“SNS”と“助けてと言えるようになること”という二つの要素がありますし、この作品でも、主人公のテーマと物語を動かす仕掛けの両方を組み合わせています。だから、自然と二つの要素が重なる形になることが多いですね。

仮面については、“人にはいろいろな顔がある”というのが、自分の作品でずっと書いているテーマなので。それが、この作品では仮面という形になったのかなと思います。

先生のこれまでの作品では、人によって見せる顔が違う人物が多い印象がありますが、今作の主人公は“こう見られたい”というより、場の空気を壊さないように、自分を調整し続けている人物にも感じました。

そうですね。この子は、誰かによく見られたいというより、とにかくその場の空気を調整しようとする子なんです。
みんなの意見の真ん中に立って、場が丸く収まるように振る舞ってしまう。だから、仮面をつけているというより、自分自身がどこにいるのかわからなくなっているような子なのかもしれません。

今作には読んでいて胸が締め付けられるようなシーンが多く描かれていました。特に、いちかが“仮面をかぶっている”ことのリアリティがとても高くて、父親との距離感にも強く胸を打たれました。
父親は妻を亡くしていて、いちかも同じように大切な人を亡くしている。けれど、お互いにどう向き合えばいいのかわからない。いちかも、本当なら父親に「嫌い」とぶつけてもいい年頃なのに、それすらできなくなっているように感じました。こうした展開や描写には、どのような意図が込められているのでしょうか。

今作はコンテスト作ではなく、企画から担当さんと一緒に作った作品なんです。
その中で、いちかが苦労しているエピソードや、いちかが調整役になっているところを、わかりやすく具体的に書いてほしいと言われました。

たしかに、ただ“仮面をかぶっている”という言葉だけでは伝わらないと思ったんです。
だから、いちかがどれだけしんどい状況にいるのか、読者の方にも具体的に伝わるようなエピソードを書いていきました。

「みんなと仲良くしなくてもいい」という価値観や、「作られたキャラクターに救われる人がいる」といったメッセージに、従来の青春小説とは少し異なる視点を感じました。
こうした思いは、どのような気持ちから作品の中に込められているのでしょうか。

これは、この作品に限らず、私が青春小説でずっと書き続けているテーマなんです。
学生時代って、本当は合わない人とも同じ教室で毎日過ごさなきゃいけないし、“みんなと仲良くしなさい”という空気もあるじゃないですか。
でも、全員に合わせなくてもいいし、周りよりまず自分を大切にしてほしいと思っています。どんなに頑張っても、全員に好かれることはできないので、もう少しわがままでもいいんじゃないかなって。
見方を少し変えることで、中学や高校の苦しい時間が、ほんの少しでも楽になってくれたらいいなという祈りは、青春小説を書くときはいつもあります。

それから、“作られたキャラクターに救われる人がいる”ということも、私の中ではつながっています。
人にはいろいろな顔があって、受け取る側によって見え方も変わる。誰かにとっては苦手なものでも、別の誰かにとっては救いになることもあるし、自分では嫌いだと思っている部分が、周りから見たら魅力だったりすることもある。
そういうことを、作品を通して書いているのかなと思います。

ラストにかけての展開は、非常にテンポよく畳みかけるように進んでいく印象を受けました。
あの終盤の構成やリズムは、どのように組み立てていかれたのでしょうか。

この作品は、企画の段階から担当さんと一緒に作っていった作品だったので、その影響がすごく大きいですね。

私自身、最初からやりたかったことはいくつかあって、たとえば最後「100年分仕込んだ」というセリフも、その一つでした。
そこに対して担当さんから「せっかく映画というモチーフがあるなら、もっと作品全体をつなぐものがほしい」とか、「セリがいちかを好きになった理由が、読者にももっと伝わるようなエピソードがほしい」といったお話をいただいたんです。
そのやり取りを重ねる中で、「じゃあキャンプのときのエピソードを入れよう」「それなら花火を見る場所はジャングルジムがいいよね」というように、一つひとつの場面がつながっていきました。

具体的に、こういうシーンを書いてくださいと言われたわけではないんですけど、担当さんがキャラクターや関係性を深掘りしてくださったおかげで、“じゃあこのエピソードも今の物語に生かしたい”という発想がどんどん出てきたので、あの終盤は担当さんと一緒に作り上げた部分が大きいなと思っています。

Chapter04 メッセージ

川奈あさ先生にとって、「本」とはどのような存在ですか。

自分の世界や価値観を広げてくれる、祈りみたいなものだと思っています。
自分の知らない価値観や考え方を教えてもらえる機会って、日常ではあまり多くないじゃないですか。でも、本にはそれがあると思うんです。
青春小説だけじゃなくて、異世界でも何でもいい。自分とは全然違う世界を知ることで、今いる場所が窮屈でも、“いつかこんな世界に行けるかもしれない”って思える。
本は、そういう希望をくれるものなのかなと思っています。

これからの“本の挑戦者”へ、メッセージをお願いします。

本を書く人がもっともっと増えたら、本の世界はもっと広がって、素敵な場所になると思っています。
だから、もし書いてみたいという気持ちがあるなら、ぜひ挑戦してみてほしいです。誰かが書いた物語に救われる人がいるように、あなたの物語に救われる人も、きっといると思うので。

最後に、今回たくさんお話をうかがってきて感じたのですが、先生の作品には一貫して、“少しでも誰かの世界の見え方が変わって、楽になってほしい”という願いが込められているように思いました。

そうですね。主人公や物語は違っても、結局ずっと同じことを書いているのかもしれません。
青春小説を書く理由も、ちょっと見方が変わることで、苦しい毎日が少しだけ楽になったらいいなと思っているからなんです。

みんな、優しすぎるというか、人に気を使いすぎてしまうことがあると思うんです。でも、自分のことを大切にしてくれる人を大切にして、自分のことを大切にしてくれない人のために無理をしなくてもいい。
そんなふうに、自分を少しだけ大事にできるきっかけを、本を通して届けられたらうれしいなと思っています。

インフォメーション

書籍情報

『#消えたい僕は君に150字の愛をあげる』
川奈あさ・著/寝路・画(アルファポリス)

柊マグネタイト氏コラボ小説が待望のコミカライズ!!

周囲の顔色をうかがい本音を隠してしまう雫は、誰にも伝えられない想いを150字のSNS『Letter』に綴る日々を送っていた。そんなある日、クラスメートの駆から、『Letter』のコンテストに応募するために「一緒に物語を作ってほしい」と頼まれる。物語の種を探して共に過ごすうち、雫と駆の心は少しずつ通い合っていく。しかしそれは、互いの心の奥に隠した秘密に触れることでもあった――。誰かになりたくて、なれなかった。透明な二人の物語が、今、始まる。

アルファポリス作品ページから引用

『#消えたい僕は君に150字の愛をあげる(漫画版)』
川奈あさ・原作/寝路・漫画(アルファポリス)
アルファポリス作品ページ
『青春小説家の殺し方』
川奈あさ・著/雨森ほわ・イラスト(スターツ出版)

新人編集者の槇原羽菜は、念願だった超人気作家“葉空ヨリ”の担当編集になることが出来た。その物語を読んで救われたという10代からの支持が絶大なヨリ。羽菜もまた、かつてその一人だった。そんなある日、小説投稿サイトにある物語が投稿される。【葉空ヨリは人殺し】著者は、過去に自殺したはずの少女。ヨリが彼女をいじめ、自殺に追い込んだ過去を告白する物語だった――。世間のイメージと正反対なその告白を覆すべく、羽菜は無実を信じて奔走するが、更なる事実が発覚し…。少女の正体、青春小説家の一番隠したい過去とは?

ノベマ! 作品ページから引用

『僕がいない世界で君が光を見つけるまで』
川奈あさ・著/ゴル・装丁イラスト(アルファポリス)

TikTokで話題!『#消え僕』著者が贈る、泣ける最新作!

「明るい私」の仮面を被り、息苦しい毎日を生きる高二の一花。唯一、自分らしくいられるのは、幼馴染の瀬里の前だけ。しかし、突然の事故により、彼は命を落としてしまう。一花は希望を失い、モノクロな日々を送るが、ある日、いつもと変わらない様子の瀬里が目の前に現れた。そして、彼の心残りを解消するために奔走することに。一緒に夏を過ごすうちに、一花の世界に光がだんだんと戻っていく。だが、残酷なカウントダウンは始まっていて…… 切なすぎる奇跡に涙が止まらない感動作。

アルファポリス作品ページから引用

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連載

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