クロストーク Vol.1 つるこ。先生と兎束作哉先生にガチなクリエイティブ話を聞いてみた!

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「本」の挑戦者たち

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クロストーク Vol.1 つるこ。先生と兎束作哉先生にガチなクリエイティブ話を聞いてみた!

イントロダクション

HAPPY!

“本”と“ことば”が何より大好き、いっちーです!

ありがたいことに、『「本」の挑戦者たち』もたくさんの挑戦者の方々にご協力いただき、ついに20記事を突破しました!
そこで今回、新たに“作者同士のクロストーク企画”に挑戦!

記念すべき第1回にご登場いただくのは、ピッコマで大人気連載中『無能な継母ですが、家族の溺愛が止まりません!』の原案・脚本を手掛ける、つるこ。先生と、
2025年にデビューながら、すでに4作品も刊行されている大注目作家・兎束作哉先生です!

実は兎束先生は、実際にご自身がデビューする前からつるこ。先生の作品を追いかけていた大ファン。
「いつかお話してみたい」という想いから、今回のクロストークが実現しました!

WEBTOONと小説。
媒体は違えど、第一線で活躍するお二人。

“読者に刺さる恋愛とは?”“すれ違いをどう作る?”“商業と趣味の違いとは?”
そんな超実践的な創作論から、作家同士だからこそ話せる孤独や距離感まで、かなり踏み込んだ“ガチのクリエイティブトーク”になっています。

創作をしている人も、作品を読むのが好きな人も、きっと「わかる……!」となるはず。

それでは、お二人の熱量たっぷりのクロストークを、どうぞ!

作者紹介

つるこ。 先生

2014年頃からゲーム、PBW、音声脚本中心に何でも書く系シナリオライターとして10年ほどマイペースに活動。2018年頃から広告・広報のお仕事も受けるように。
クリエイティブとマーケティングの2つの視点を活かし、幅広い物語を制作しております。
趣味でミュージカル、ベリーダンス、忍者見習いなどやってます。でも運動音痴。
三重の山の上で、子育て中。

現在『無能な継母ですが、家族の溺愛が止まりません!』をピッコマにて連載中。6月に4巻と5巻が発売!

兎束作哉 先生

現役大学生作家。
普段はweb小説投稿サイトで、 TL やBL を書いています。

スターツ出版 第 2 回 青春 BL 小説コンテスト大賞受賞
アルファポリス 第 12 回 BL 大賞 小説部門「学園 BL 賞」受賞
アルファポリス 第 17 回 恋愛小説大賞奨励賞
Teller Novel 第 4 回テノコン総合特別賞受賞

著書に
『ヤンデレだらけの乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、美形執着騎士に迫られています』(Noche BOOKS)
『君と同じ気持ちになるその日まで』(BeLuck文庫)
『夜野くんは事故チューの責任をとらせたい』(BeLuck文庫)
『みんなの心の傷になる死にキャラなのに、執着重めの皇太子が俺を死なせてくれない』(&archeNOVELS)
などがある。

互いの作品の感想

――まずはお互いの作品についてお伝えしたい感想はありますか。

すごくみずみずしくて。まぶしいなと感じました。
どんな方が書かれたんだろうって、すごくドキドキしていたんですけど、実際にお会いしたら先生ご自身もみずみずしくて、まぶしくて……勝手に作品と作者が解釈一致の気持ちでおります。

私は、先生が出されている作品もインタビューも全部拝読しているくらい、先生の作品が大好きなんです。読者としてもですが、作者としてもたくさん学ばせていただいています。今、本当にすごい人にお会いしている! って感激でいっぱいです。

感想としては、全作品好きなので、これというのが難しいんですが……。
最近拝読した作品ですと『暴君一家の嫁ですが、この執着は間違ってませんか?』がすごく好きで、刺さりました。
とくに、子どもへのヘイト管理が一貫してすごく上手いんです。少し分析っぽくなってしまうんですが、つるこ。先生の作品で長く連載されているものって、子どもが可愛くて活躍しているものが多いんですよね。

そう言っていただけてうれしいです! ありがとうございます。

この間始まった『悪役継母として生き残る方法』もすごくよくて! 登場する子どもたちが、それぞれ違うタイプとして書かれているのがすごいなと思いました。私もキャラクターの幅を広げないと、と思いながら読んでいます。

キャラクターの幅

――さきほど、キャラクターの幅についてお話がありましたが、よければ詳しくおうかがいしても良いでしょうか。

ありがとうございます。私は兎束作哉先生の作品をすべて拝読しているわけではないんですが、一つのキャラクターがすごく丁寧に掘り下げられていると感じました。なんというか、キャラがみずみずしいというか、生き生きしているなと思ったんです。私もそうしたいなと思いながら読んでいましたね。
というのも、私の作品は、同じ媒体で出させていただいていることもあって、読者さんの需要に合わせると、キャラクターが似たり寄ったりしてしまうところもあるんですよね。

レーベルによっては、“この系統でお願いします”みたいなのってありますよね。とはいえ、前回と同じものを出すのはもちろんまずいので、どう掘り下げていくか、はすごく考えます。
その点でも、つるこ。先生の子どもキャラは、全員本当に可愛いですし、いろんな子どもキャラを書かれていてすごいと思います! もしかしたら型のようなものがあるのかもしれないんですが、型は一緒でも、そのキャラクターが楽しそうで、幅を感じるんです。

多分、私が中高生ぐらいからアドベンチャーゲームとかノベルゲームをよくやっていたからですね。
そういうゲームって、だいたいメインのルートは一緒で、キャラクターを選ぶとちょっと派生があって、また戻って、みたいなのをずっと繰り返すんです。下手をすれば“ハンコ”って言われるような展開が続くんですけど、私はむしろそれがすごく楽しかったんですよ。
ルートによって全く違う表情が見えたり、最終的に違う結末を迎えたりするのがすごく楽しくて、私は絶対に全ルートやるタイプでした。女性向け男性向け関係なく、こいつ嫌いって思うキャラでも最後までプレイしていたんです。
多分、それと自分がやっていることは似ている気がします。王道から大きくは外れられないので、ちょっとの変化をどれだけ、読者さんにも楽しんでもらえるかは意識していますね。

キャラクターの描き分け

――ご自身のキャラ同士でも、似てしまうことがあるんですね。それをどう差別化しているのでしょう。

構成って正直“変えようがない”というのが、もう結論なんですよね。恋愛ものにしろファンタジーにしろ、必ず目的があって、そこに向かっていく展開は大きく分解したら全部ほぼ一緒なので、勉強すればするほど困るようになっていきます。
全部同じだけど、どうしたらいいんだろう、みたいな感じに本当になってくるので、どこで差をつけるか。そのほんのちょっとに命をかけるような気持ちで書いています。

つるこ。先生がおっしゃる通り、肉付けの部分でどう差を出すかっていうのが、すごく難しいですよね。

難しいです。私は、とくにヒーローを書くときにそう感じますね。
よく編集さんからの指摘が入る部分でもあるんですが、ヒーローはビジュアルと性格、そして“なるべく喋らせないこと”が大事なんです。余計なことを喋らせてしまうと、物語がすぐに進んでしまうからですね。
ただ、喋らせない場合、どの作品でも行動が似通ってしまうんですよね。言ってしまえば、顔も性格もほぼ一緒で、そこにしゃべらないところまで一緒になると、どう違いをつけるかは本当に難しいです。

レーベルの傾向に沿って書くのは、私は今は楽しくて好きなんですが、話をうかがっていると、作品数が増えれば増えるほど、同じキャラクターになりそうですごく怖いですね

同じことをしていたら、だんだんそれも売れなくなってくるし、幅がただただ狭まって、寿命が縮まっていくだけなので、それに似た何かで、同じように面白い作品にするにはどうしたらいいんだろう、と日々戦っています。
“ああ、これはダメだったんだ”とか、“これは違ったんだ”。でも、全部がダメだったわけじゃなくて、“これは刺さったから、じゃあここは次にまた使えるな”と。本当に0.1を拾い上げて、拾い上げて、頑張って差分化しています。

キャラクターを動かすこと

つるこ。先生の作品って、キャラクターがとても多いのに、全員をすごく動かせているなって感じるんです。
私は“自分は動かせない”っていうのがちょっとわかっているので、あまり出したくないタイプなので、本当にすごいです。

実は私は、出さない方がいいと思っています(笑)。
本当はもっとキャラクターを減らしてやりたかったんですけど、長編にしようと思うと、最初に愛着を持ってもらうキャラクターがある程度いないと、膨らませるときに困ってしまうので。
長編を狙っているから出す、みたいな感じですね。
ただ、そうすると、短く終わったときが地獄です。何も回収できない、“どうしよう”ってなるので。読者の皆さんには申し訳ないです。
だから正直、2人だけの関係にフォーカスを当てて、一生それを深掘りして書きたいなって思います。
その点においては兎束先生の作品は“これ、いいな……”って、すごく思いました。

ありがとうございます。ただ、メディアミックスを狙うとなると、やっぱり人数はいた方がいいんですよね。
出したくはないんですけど(笑)。目指して書いているところがあるので、キャラクターを増やすかどうかは、いつも悩みます。

そうなんですよね。友達の“いつメン”とか、ちょっとしたときに出せるキャラクターを、魅力的かつ簡潔に出せるのが理想なんですけど、ついつい楽しくなっちゃって、脇役を書きたくなっちゃうんですよね。
それで途中で後悔します。“書きすぎたな”“設定盛りすぎたな”“むしろこれもう主役じゃん”ってなるんです(笑)。
それが私の欠点かもしれないですね。

面白さとリアリティがぶつかったとき優先するのはどっち?

――面白さとリアリティがぶつかったとき、どちらを優先しますか?

リアリティの配分にもよるなと思っています。
“リアルではありえないけど、演出としては絶対その方がいい”みたいなことってあるので、私はやっぱり演出を優先したい、面白さを優先したいなと思っています。
でも、どうしてもリアリティに寄せた方が面白くなる部分もあるので、7対3とか6対4とか、そのぐらいのバランスですかね。そんなにリアリティをガンガン出す感じではないかもしれないです。

作品のテイストによって“リアリティレベル”ってだいぶ違いますよね。
コメディだったら、空から落ちて地面に墜落してもみんなピンピンしていますが、リアルものだったら“殴られるだけで痛い”みたいな。
編集さんから「このリアリティレベルどうですか」って聞かれることもありますが、その度に、この作品ってどこまでセーフなんだろうって、いつも迷います。
特に日常ものとか現代ものだと難しいですね。

私も、「等身大の高校生でお願いします」って言われたときは悩みました。
というのも私が、田舎の高校生だったので、“イマドキの高校生ってなんだろう?”と考えました。履物一つにしても、スニーカーが多いのか、ローファーが多いのか……なるべくリアルにするためには、自分の経験も混ぜる必要がありますが、同時に一般的かどうかも大事。なので、自分の経験が一般的かどうかはすごく調べました。

私自身も田舎の学校だったんですけど、高校はローファーしかダメでしたね。しかも指定のものじゃないとダメだったので、1ヶ月に1回穴開いたら買ってもらってという学生生活でしたね。
あまりにも壊れるので、高校までは別の靴を履いて、着いたら履き替える、みたいなことをしていました。
そういうのって、体験しないと難しいですよね。

――つるこ。先生の作品はジャンルとしてはファンタジーで魔法も出てきますが、人間の感情はすごくリアルなのがすごいですよね。

実は私、田舎の山奥育ちで、友達も多いほうではなかったので、人と接する機会は相当少なかったんです。
ただ、映画がすごく好きで。昔の映画って、ものすごい余白とか、生々しさとか、商業主義じゃないからこそ“リアル”を優先したり、リアルではないけど“表現したい感情の生々しさ”を優先した表現がめちゃくちゃ出てくるじゃないですか。
そういうもので育ったので、リアルさと同時に、そういった演出をちょっとでも混ぜ込みたいな、とは思っています。

創作するうえで“これはしない”と決めていること

――創作するうえで“これはしない”と決めていることはありますか。

あります。私、基本的にBLはやらないです。

――まさか兎束先生の前で、BLをやらないとおっしゃるとは!

あ、嫌いというわけではないんです。むしろ読む方ですし、昔から読んできた方です。
というのも私、女子高育ちなので、周りみんなそんな子ばっかりで(笑)。
うちの学校の漫画研究会は、BLとR指定のあるものは禁止だったので、「ベーコンレタス買いに行かない?」とか、「今日のベーコンレタスいいよね」みたいな隠語を使っていたぐらい、すごく身近だったんです。
その一方で、BLに熱意がある人って、本当にみんな深くて、熱くて、強いんですよ。
隠語を使ってまで守りたい人たちを見てきたので、“私じゃ絶対叶わない”って、もう腑に落ちてしまっているというか。
その人たちの執念には勝てないし、その執念を満たせるほどの熱量が、自分には足りないなっていうのが、はっきりわかったので、“これは書かない”って決めています。
兎束先生はありますか?

これはしないと決めていることはあまりないんですが、“今の自分には書けない”っていう意味なら、近いものはあります。
私は“子どもが書けない”んですよ。

――こちらもまたつるこ。先生の前で!!

もちろん私も嫌いだからというわけではないです。
そのジャンルが本当に好きな人に喜んでいただけるような子どもキャラが、自分には書けないって気づいたんです。
だから、“書いてみたい”って気持ちはあるんですけど、同時に“多分私は書けないだろうな”とも思っているんですよね。
あとは私がまだ子育てを経験していないからというのも大きいと思います。経験してないから書いたらいけないということではないんですが、リアルが入っているからこそ、共感できる部分は少なからずあると思うんです。
経験できないという意味では、あと、御曹司ものとかも書けないですね。パイロットとか、公務員とか、オフィスものとか。

オフィスものこそファンタジーですよね。“こんな部長いないじゃない”“こんな社長いないじゃない”って(笑)。
むしろリアルなオフィスを書こうとすると、オフィスものの王道から離れてしまうくらいです。
それに“現代ハイスペヒーロー”って、偶像化された王道なので、どこを取材すればいいのかって話ですし、これ以上さらに追加で要素を足すのも難しいので、書いている方々は本当にすごいと思います。
どこまでやったら読者さんが喜んでくれるのか、それでいてリアルに感じてもらうには。その塩梅が現代ものって難しいですよね。

――書かないという話と少しずれてしまうかもしれないですが、つるこ。先生の『無能な継母ですが、家族の溺愛が止まりません!』でウィルバートとヒューは学園に通う方向へ行くと思っていたので、行かなかったのがすごく意外でした。

それには理由が二つあって、まず“ファンタジーだと学園ものがあまり人気がない”って言われがちだからです。
私、学園ものめちゃくちゃ好きなんですけど、“学園はなぁ……”って、界隈では10年20年前からずっと言われていて。もちろん売れている作品もあります。少女漫画なら『花より男子』とか、すごく売れていますし。
もう一つの理由はキャラのいる場所を分けちゃうと長くなるからですね。
今回は学園編で、夫婦サイドは出てこないみたいなのって読者さんにとってすごくストレスになるんです。
だから分けるのは、できれば避けたいなって思って、二人は学園に通わない方向にしました。

私も、学園ものすごく好きなんです。
というか、“学園以外でBLってどうやって作るんだ?”って思っていたくらいです(笑)

最近だと、オフィスものとか、“行きつけの飲み屋で毎回会う”みたいなパターンも増えましたよね。
全然違う境遇の人たちが、同じ場所でだけ交わる、みたいな。

物語にはご自身の好きなものや経験を反映させますか?

――経験や好みはあまり反映させないのでしょうか? それこそ、“BLでこういう展開が好き”みたいな。

好みは反映させますし、実体験も上手くフィクション化はします。
ただ、実体験で“嫌いな人”をそのまま全部出すことはしないですね。
もし出す場合も一人の嫌な人を、別々の作品のキャラに分けて出したりします。一人そのまま出すと、濃すぎるので(笑)。
リアルとフィクションのバランスで言うと、リアル1に対して、フィクション9とか10ぐらいの感覚かもしれないです。

もちろんこういうのが書きたいなと思って提案することはあります。やっぱり好きなものじゃないと続かないところがあると思うので。でも、“商業で生きていきたい”“読者に刺さるようにしたい”ってなると、やっぱり決まった型やレーベルのカラーや読者層を考えることになります。

どうしてもそうなりますね。
だから私は、長い目で見て“サブキャラで読者を教育する”みたいな気持ちでいます。
最初は脇役として出して、いつか別作品で主要キャラに昇格させる、みたいな。
たくさんキャラクターを出すのって、私の趣味でもあるんですけど、その一方で、“読者さんの性癖の幅を広げる行為”だとも思っているんです。
これが種まきになって、ジャンルが広がってくれたらいいな、みたいな気持ちはあります。

――素敵な考え方です!
魅力的なサブキャラって、ときに主人公よりも好きになってしまうことがありますが、まさかあれが教育だったとは……!

教育、というとちょっと違うかもしれないんですが、勝手にそういうので育つとも思ってるんですよね。
例えば私は『カードキャプターさくら』が大好きなんですけど、あれって世の中のオタクの性癖をかなり育てた作品だと思っていて。
あの作品って、本当にいろんなカップルが出てくるんですよ。BLもGLも、年の差も、“女が上×男が下”も、“男が上×女が下”も、本当にいろんな関係性がある。
小学生の頃に自然に見て、“そういうもんなんだ”って刷り込まれていたので、大人になってから“あれ、そういうもんじゃなかったの?”ってなったぐらいで(笑)。
だから、たくさんキャラクターを出して、たくさんの関係性を刷り込んでいけば、土壌は育っていくと思っています。
次の世代だったり、大人になったときに、“これも読んでみるか”ってなるきっかけになればいいなって。

書いていて楽しい恋愛と、読んでいて好きな恋愛の違い

――書いていて楽しい恋愛と、読んでいて好きな恋愛の違いはありますか。

実は書くのは、“喋る男”が好きなんですけど、読むと“喋らない男かっこいいな……”ってなります(笑)

読むのも書くのも、好きじゃないと続かないですよね。
実は私……一人称が“僕”の主人公を書くのが結構つらくて。

――たしかに、兎束先生の作品にはあまり僕っ子主人公はいないですね。

“僕”っていう主人公を一人称で書くと、筆が止まるんですよ。
なのであまりいないんです。いたとしても、元気なタイプの僕っ子になるかなと思っています。
あとは書いていても読んでいても、“年下わんこ執着系”が好きなんですけど、商業だと“年下はあまり……”って言われるんですよね。

BLだと特にそういう傾向ありますよね。

特に女性向けだと、年下ってメインヒーローになれないんですよね。

女性向けでも、今まで年下ってサブヒーローとか幼馴染ポジションが多かったんですけど、最近は“年下激重感情執着男×年上女”みたいなのが、読者層の変化に合わせて増えてきているので。BLにも、多分あと5年、10年ぐらいしたら、その流れ来ると思います。頑張りましょう!

恋や愛に“発展していく”という展開について

――お二人の作品って、“最初から好き”では始まらないところが共通しているのかなと思っていて。恋愛も“発展していく”構図ですよね。

そういう系ではあります。
でも逆説的なんですけど、私“大好きMAXスタート”の作品、ヒーローが最初から主人公のことを大好きで、“なんなんこの人”みたいな作品、めちゃくちゃ好きなんですよ(笑)
ただ、それの難しさを知っているから、今みたいな形になるんだと思っています。
例えば、LINE漫画だと『枯れた花に涙を』とか『私の夫と結婚して』とかも、ヒーロー側の好感度が最初からMAXなんです。

――どうして、大好きMAXスタートの作品を書かれないのでしょうか。

大好きMAXスタートって短く終わっちゃうんですよ。
“好き!”“好き!”“わーい!”で終わりになっちゃうんです(笑)

“とりあえず隠さなきゃ”って、書いていて思います。

そうなんです。だから、ゆっくり育んでいく形になるんですよね。
MAXスタートって、読む分には楽しいんです。でも、作るとなると、“どれだけ続けられるんですか?”って話で。編集さんを説得するのがすごく難しいんです。

――確かに、“この先どうなるんだろう”と思っていたら、急に終わっちゃうことってありますよね。

そうなんです。
でも、『枯れた花に涙を』は、その構成で今も熱量を保ち続けているので、本当にすごいなって思います。
“このジャンルで、この書き方で、こんなに読者さんの熱量を上げ続けられるんだ”って。
私も、こういう構成を書けるようになりたいなと思いながら読んでいます。

すれ違いの作り方

――両先生の作品ともに、すれ違いがすごく面白く書かれていますよね。どうやって制作しているのでしょう。

すれ違いを作るのは本当に難しいですよね。

すれ違わせること自体はできるんですよね。でも、“いつ引き合わせるか”のタイミングがすごく難しくて。
今ってストレスフリー社会なので、すれ違いが長すぎると“もうつらい”ってなっちゃう読者もいらっしゃいますし、かといって、全くないのも物語として面白みがなくなりますし、短すぎると “すれ違う必要なくない?”ってなっちゃいますし。

そうなんです。
すれ違いって読者さんは大好きなんですけど、その一方で、すごくストレスに感じる読者さんもいらっしゃるので、管理が難しいんですよね。
小説だったら、1巻の中で“2回すれ違って、最後に回収する”みたいな構成ができるじゃないですか。だから、“回収して気持ちいい”でまとまる。
でも、週刊連載はそうもいかないんですよね。例えば“すれ違って終わり”にした回の翌週に読者がごそっと減ることもありました。そういう意味で、商業ですれ違いをやるのって、本当に難しいです。

本当に難しいです。私自身は長めのすれ違いも好きなんですけど、読者さんは許してくれないんじゃないかなあって。

すれ違いって、“そこを成立させる”ために逆算で作るじゃないですか。
でも、一個“ハマった!”と思ったら、別のところがズレるんですよ。“あれ? おかしいな……”みたいな。
だから、プロットの時点でかなり完成させておかなきゃいけないんですが、筆が乗って膨らませすぎると、すれ違いまでの時間が長くなって、またトラブルが発生する。
すれ違いは本当に、書いていてしんどいです(笑)。
でも、そこを上手くできている作品はめちゃくちゃ面白くて。上手く使うことで読者さんが離れなくなるんですよね。だから、“それを使いこなせるようになりたい”っていうのが、今の大きな課題です。

作者同士の創作論について

――作者同士で創作論について話すことはあるのでしょうか。

創作論については、あまりないですね。
私が、“人の創作に口出すな”って思っているのもありますし、多分、商業で書かれている皆さんそういう感覚だと思うんです。
なので、ワークショップなどで求められない限り、自分からはしないですね。

特に、創作論が対極にいる人とやると、バチバチの見解になることもありますよね。

基本的に“何かの道を極めている人”と話すのは楽しいです。意外な共通点があったりしますし。
ただ、ジャンルは違っても同業者との創作談義は難しいですね。
スタンスも人によって違いますし、場合によっては“ネタ取った・取らない”みたいなトラブルも発生するので。

私も同業者とはあまり関わらないようにしていますね。理由としてはつるこ。先生がおっしゃったのとほとんど同じなんですが、もう一つとして私の同ジャンルを書いている年齢層が私より上かなと感じているので、“入っていけない”って感覚が強くて。

30代、40代の方が多いですよね。

50代の方もたくさんいらっしゃいますね。
20代後半ぐらいから少し増えていくかな、という感じで。

同年代の方はこれから入ってくると思いますよ。
10代でデビューされて、しかも商業的な意識をちゃんと持っている方って、すごく少ないので、仲間づくりは難しいかもしれないですけど。
それに年齢って意外と関係なかったりします。
私も、仲の良い人は創作者に限らず年齢がバラバラなんですよ。
ママ友も同年代のほうが話が合わなくて、年上の方ばかりと話が合ったりすることもあったりします。

――プロになったら創作仲間がたくさんできるのかなと思っていたので、意外です。

全然できないですね。“創作者のママサークル”はありますが、創作の話というよりは、子育てしながら創作していると、外には出せない悩みもあるので、そういった話になりがちです。
もちろん同業者の中にも仲が良い人はいますが、そういった方とするお話も、創作に関係ないことか、業界の情報交換くらいですね。
ただ、今は忙しくて参加できてないんですけど、“創作そのもの”というより、“完成された作品を分析する”といった場所には参加していました。
読者視点・創作者視点で、“なぜこれは刺さったのか”を揉み続ける場所でした。

――作品の好き嫌いや面白い・面白くないではなくて、分析をする場所だったんですね。

そうです。
いろんな立場、いろんなジャンルの人が、一つの作品を分析するのって、本当に勉強になるので。

他作家と比較する?

――他の作家と比べてしまうことってありますか?

あります。でも、それで悔しくなるというよりは“なんでこの人は成功してるんだろう”っていう分析の方向にいきますね。 “自分に足りないものは何なんだろう”“なんでこの作品は売れてるんだろう”って、自分のロールモデルとして見に行く感覚です。

――感情で終わるというより、作品に持ち帰る感じなんですね。

私もそうですね。ただ時には落ち込むことはあります(笑)。
でも、そもそも私は“自分は全ての創作者より劣っている”ぐらいの前提でいるので、“そりゃそうだよな”って思うようにしています。自分より売れてる人なんて絶対たくさんいますし、ランキングだって毎日入れ替わるじゃないですか。そのたびに折れていたら、キリがない。

影響を受けたものの取り入れ方と距離感

――影響を受けたものをどう取り入れていますか。また、取り入れられないものとの距離感も教えてください。

私は、どんどん取り入れちゃいますね。取り入れられないものも、“ストック”しています。
タイミングだったり、“これはここにバチッとはまる”みたいな瞬間があったりするので。
取り込めないときは、“じゃあ取り込める作品を作ろう”って思います。“次の企画を作ればいいや”って方向に行きますね。

創作との距離の置き方、休み方

――創作を続けるため、どう体や脳を休めていますか。創作について考えない時間を意識的に作ったりされているのでしょうか。

結論から言うと、創作について考えない時間はほぼないですね。
強いて言うなら、筋トレしている瞬間は頭が筋トレに集中しているので、そのときでしょうか。
意識して、“今はインプットの時間です”と切り替えているときはあります。アウトプットのために分析する時間じゃなくて、“今は自分の感情を引き出すために楽しんでいる時間です”と。後で分析するから、今は考えない。今はこの作品に浸るんだ、みたいな。

私もないですね。強いて言うなら……寝る時間でしょうか。
寝るって、すごく回復するんですよね。それ以外は、ほぼ創作に関連している気がします。

そうですよね。
たとえば変な話、意味のわからないおじさんに怒られた瞬間も、“ああ、創作に使えるな”みたいな感じになるじゃないですか。使えないものはないんですよ。いつかこのおじさん絶対出してやろう、と思うんです(笑)

本当に“これは使えない”っていうのはないですよね。

本当にないです。

創作環境やスタイル

――環境や時間帯など、制作する際のご自身のスタイルについて教えてください。

最初は、膝の上にノートパソコンを置くスタイルで執筆をしていました。で、それが疲れてくると、床にパソコンを置いて書くという感じで、それを続けていたら腰を痛めちゃったので、今ではちゃんと椅子に座って机で書くようになりました。
デスク周りにはお花とか置いています。見える範囲だけ、緑とか花とかを置いて、“いい生活をしている気分”にしているというか。疲れた瞬間に、ふっと視界に入って休めるようにしています。振り返ったら資料の山なので、振り返れないんですけど(笑)。
切り替えのための匂いとかも使っています。ハンドクリームを何種類か使い分けて、“今から仕事をする時間です”って塗るんです。
あと最近は、ミントとかグレープフルーツ系ですね。交感神経がぐっと上がるので、始める前にシュッとかけて、“今からセットアップします”みたいな、物理的なスイッチを作っています。

私は、時間です。
スマホを見ていても、“きっちり休む時間”ってあるじゃないですか。10分とか5分とか。
“今ちょっとできないから、この時間までは休もう”みたいなのは意識的にしています。
私は小説って、“何分で何文字書ける”みたいなのが感覚としてあるので、“この時間から始めたらこれだけ書けるな”っていう体感で動いているので時間はすごく見ますね。

私もついつい書きすぎちゃって、過集中で体を痛めることがあるので、ポモドーロタイマーは使っています。25分集中したら5分休憩、みたいなやつです。
最初は、“そんなので集中できるのかな”って思っていたんですけど、25分間グワッと集中して、5分でストレッチして、もう一回集中して、みたいな感じで、結果的に長時間フルで回せるんですよね。

――書くときは脳を、休むときは体を動かしているんですね。

5分休憩のときは、なかやまきんに君さんの動画を流して、一緒に運動しています(笑)
全身ストレッチできるので、めちゃくちゃやっています。本当に、目と体は大事です。

クリエイターへのメッセージ

――最後に、クリエイターの方々へメッセージをお願いします。

個人でインタビューしていただいたときと同じになってしまうんですが、“分析しよう”と伝えたいですね。
商業と趣味って違うので、そこの視点は持っていた方が有益なのかなって。
クリエイターと芸術家って、また違うと思うんです。
芸術家は、その人自身の価値や表現が中心になる部分があると思うんですけど、クリエイターは“作ってなんぼ”というか、それを一般的にしていく仕事でもあると思うので。
自分がどっちになりたいのかは、一度自問自答した方がいいのかなと思います。

兎束先生の言う通り、分析はとっても大事です。
くわえて“あなたがそう感じた”と“構造としてこうなっている”をちゃんと分けられることも、意識するといいかもしれません。
中には趣味で書いている方が絶対に幸せな人もいると思います。
だから、自分はどっちなのか。まずはその目標や目的を見てほしいなと思います。

――作品とどう向き合うか、どうコミュニケーションを取るか、自分がどちらの方向で頑張りたいのか。
それらを考えることが、創作を続けていく上で大事なのかもしれない。今回のクロストークはそんなことを考えさせられる時間でした。
記事を読んでくださった人の中には、創作の道のプロを目指している人もいらっしゃると思います。お二人に協力していただいたおかげで、そういった方々の気づきがたくさんあるクロストークになったと思います。
本日はありがとうございました。

インフォメーション

つるこ。 先生

『無能な継母ですが、家族の溺愛が止まりません!』 つるこ。/原案・脚本 SORAJIMA/制作

現在ピッコマにて連載中。6月に4巻と5巻が発売!

ピッコマ
https://piccoma.com/web/product/153515 (作品ページ)
https://piccoma.com/web/author/product/list/45984/K (作者ページ)

兎束作哉先生

『ヤンデレだらけの乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、美形執着騎士に迫られています』(Noche BOOKS)

https://www.alphapolis.co.jp/novel/561381049/746812190 (アルファポリス作品ページ)
https://media.wakasa.jp/articles/book/3244/ (DEKIRU! 兎束作哉先生インタビュー記事)

『君と同じ気持ちになるその日まで』(BeLuck文庫)
https://novema.jp/bookstore/n13689 (ノベマ 作品ページ)

『夜野くんは事故チューの責任をとらせたい』(BeLuck文庫)
https://novema.jp/book/n1759479 (ノベマ 作品ページ)

『みんなの心の傷になる死にキャラなのに、執着重めの皇太子が俺を死なせてくれない』(&arche NOVELS)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/561381049/169905404 (アルファポリス作品ページ)

初恋♡生活では全力PUSH中です!

〇8月末までSORAJIMA FAIRを開催中!

パネルや書籍などがずらり……!

SORAJIMA展の詳細はコチラから!

兎束先生のコーナー。
背面にはいっちーの溺愛コメントも掲載されています!
『ヤンデレだらけの乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、美形執着騎士に迫られています』(Noche BOOKS)のサイン本もあるので、ぜひ行ってみてください!

初恋♡生活HP

ライター紹介

いっちー

平成10年、四国の田舎で生まれ育ち、京都芸術大学文芸表現学科で文章や創作について学ぶ。
月に10冊、年間で100冊以上読み、取材相手には長文の感想を送りつけるなど、本についてアツいヤツ。

わかさ生活のオウンドメディアDEKIRU! で
『「本」の挑戦者たち』
『UNDERUMBLE!』(音楽記事)
『言の葉を紡ぎし者たち』
『若きアートの炎』
『パピー/盲導犬の物語』の連載を担当している。

いつか自分の本を出すことが夢。

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クロストーク Vol.1 つるこ。先生と兎束作哉先生にガチなクリエイティブ話を聞いてみた! 『僕がいない世界で君が光を見つけるまで』作者、川奈あさ先生にインタビュー! 『わたしと古民家と毎日 ~古民家ベーカリー&カフェとまり木~』作者、衿乃光希さんにインタビュー! 歴史小説は勉強じゃない! 歴史小説家、白蔵盈太さんにインタビュー! 『三月は、所によりオフライン』作者、篠也マシンさんにインタビュー! “地域の書店マップ”担当、名古屋市鶴舞中央図書館 河合さんにインタビュー 『勝手に覗いて幻滅すんなよ』作者、微炭酸先生にインタビュー! 『成人式の二次会はデスゲームです』作者、くじら先生にインタビュー! 『双子の姉にすべて奪われた私が、軍神に愛されています』作者、小原燈先生にインタビュー! 『青春テロリズム』作者、朱宮あめ先生にインタビュー! 『きみが明日、この世界から消える前に』作者、此見えこ先生にインタビュー! 『フライトドクターの独占欲が熱情一夜で溢れ出し――逃げ出しママを燃え上がる愛で絡めとる』作者、蓮美ちま先生にインタビュー!(後編) 『フライトドクターの独占欲が熱情一夜で溢れ出し――逃げ出しママを燃え上がる愛で絡めとる』作者、蓮美ちま先生にインタビュー!(前編) 『伯爵家の五男ですが、婿入りして公爵になりました。 前世知識で領地を復興して嫁や家臣と幸せになります』作者、灰紡流さんにインタビュー! 放送作家、山田ボールペンさんにインタビュー 『君がくれた魔法は解けない』作者、伊瀬ハヤテ先生にロングインタビュー! 『最高な恋リアの作り方 #誰にでもヒミツはある』作者 音はつき先生にインタビュー! 『ヒロインが最後に死ぬラブコメ』作者 神岡鳥乃先生にインタビュー! 青春は綺麗なだけじゃない……スターツ出版 アンチブルー担当者さんにインタビュー! 『ヤンデレだらけの乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、美形執着騎士に迫られています』作者、兎束作哉さんにインタビュー! 動物を研究しながら、動物の絵と物語を書く!? キツネ月さんにインタビュー! 左京区を本の街へ! 左京区役所勤務 松本さんにインタビュー! タイトルが『ぽ』や『へ』や『ぽぽぽぽぽ』!? へにゃらぽっちぽーさんにインタビュー! 自由に描く絵本!? 作家のしもむらにいなさんにインタビュー! 『マッチングアプリで出会ったクセつよ男子図鑑』収録『泣き落とし男子』作者、葉方萌生さんにインタビュー! 『傷だらけ聖女より報復をこめて』原作者 編乃肌先生にインタビュー! 絵本作家を呼んでのイベント!? その主催の学生さんにインタビュー!  漫画に小説の二刀流!? コミティアや文学フリマにも参戦! まさに本の挑戦者な有理まことさんにインタビュー! 話さない読書会!? シェア型書店で自作本を売り、イベントも開くはやしあやかさんにインタビュー! シェア型書店で自作本を売る!? 夏迫杏さんにインタビュー! 『本を売る、という冒険のつづき』――手渡すその瞬間まで。本って、ほんとうにURERU!(後編) 『本でつながる、物語が輝く集会所』――まっさらな紙の、その先へ。ZINEは、きっとDEKIRU!(中編) 『本をつくる、という冒険のはじまり』 ――のんびりゆったり長居OK。そんな場所にSURU!その2(前編)  『本をつくる、という冒険のはじまり』 ――のんびりゆったり長居OK。そんな場所にSURU!その1(前編)
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「本」の挑戦者たち