イントロダクション
HAPPY!
いっちーです!
今回取材したのは、ボードゲーム制作ユニット“愉快班”のお二人!
前半は、ボドゲ制作初心者必読の一冊『あたしのボドゲができるまで』を刊行し、愉快班ではアートワークを担当している水田ことみさんへのインタビュー!

実は、わかさ生活が運営する、初恋♡生活では、愉快班が制作した『ギャル短歌七七』を使って、ギャル短歌会を開催したことも!

プライベートでも、友達と集まったらまずこれをやっちゃうくらい、好きなボードゲームなんです。
そんな大好きなボドゲを作った方に取材できるなんて……感激です!
それじゃ~、いってみよー!
Chapter01 「ルイージくんをもっと活躍させたい!」――水田ことみさんの“絵を描く原点”
幼いころから、絵を描くことが好きな子どもだったのでしょうか。
幼稚園のころから、よく絵を描いていたそうです。
小学1年生からは、“アトリエ・ブラン”という図工教室にも通い始めました。
実は『あたしのボドゲができるまで』に登場するボードゲームカフェの名前も、この教室から取っているんです。

最初に描いたものはどんな作品でしたか。
最も古い創作の記憶は、幼稚園のころに描いた『スーパーマリオくん』の漫画ですね。
なぜか私はマリオくんよりルイージくんが大好きだったんですよ。でもルイージくんって劇中で見せ場の少ないいじられキャラ扱いだったんです。それで“もっと活躍させたい”と思って見よう見まねで物語を作りました。
今の丸っこいキャラクターのデザインは間違いなく『スーパーマリオくん』の影響を受けていると思います。





ルイージが登場するページ
まさか絵の原点が『スーパーマリオくん』だったとは……。
そこからはずっと漫画を描いていたのでしょうか。
はい。高校生ごろまでは、紙と鉛筆で漫画を描いていました。
高校時代には、つけペンを使って30ページほどの漫画を描いたこともあります。ただ、あまりにも大変で、一度挫折してしまったんです。
でも社会人になってからもう一度筆をとりました。
そのきっかけは自宅が漏水被害に遭ったことです。
再び筆をとったきっかけが自宅の漏水被害!?
5日間ほど水が漏れ続けまして……正直、“どうしてこんな目に遭わなければならないんだ”と思っていたんです。
この怒りを、誰かに話すだけではなく、一度形にしなければやっていられないと思い、久しぶりに漫画を描きました。
それをきっかけに、自分の体験を1、2ページほどにまとめたエッセイ漫画や、長くて18ページほどの漫画を少しずつ描くようになったんです。
それを漫画にしたのが……こちら!
Chapter02 遊んだ先に広がる“楽しさ”――夢中になって遊んだボードゲームたち
ボードゲームとはどのように出会われたのでしょう。
出会ったのは、大学を卒業した後です。
同級生が参加するボードゲーム会で欠員が出て「水田、来ない?」と声をかけてもらいました。
私はそれまで、ボードゲームで遊んだことがほとんどなかったので“トランプや『人生ゲーム』のようなもので遊ぶのかな?”という感覚で参加したんです。
そこで初めて、ボードゲームにはさまざまな作品があり、ものすごく面白いものなのだと知りました。それをきっかけに一気に夢中になり、今に至ります。
そのときはどんなボードゲームを遊ばれたんですか。
いろいろ遊んだんですが、そのとき遊んだ中で特に印象に残っているのが『タイムボム』です。
このゲームは爆弾の解除を目指す側と、爆発させようとする側に分かれるのですが、誰が味方で誰が敵なのかはわかりません。お互いの正体を探りながら、会話を通してゲームを進めていくところが面白くて。今でも本当におすすめしたい作品です。

『タイムボム』
時空警察かボマー団の陣営になってお互いの正体がわからないままに解除の導線を切っていくか、BOOMの導線を切らせるかでゲームが進行していきます。新たに2人用のルールに登場するNPCプレイヤー「オオタさん」や、ストーリーカードがつくようになり、様々な環境で楽しめるようになっています。
このゲームのどのようなところに惹かれたのでしょうか。
私は、コミュニケーションを取りながら遊ぶところに惹かれているのだと思います。このゲームのように、“誰が嘘をついているのか”“誰が味方なのか”を、会話や出されたカードから探っていくのが好きなんです。ジャンルでいうと、“正体隠匿系”のゲームが近いですね。
最近気になっているボードゲームや、好きな作品はありますか?
最近遊んで、特に面白かったのが『グミチョコパパイヤレボリューション』です。
『たった今考えたプロポーズの言葉を君に捧ぐよ。』を手がけたClaGlaから発売された作品で、言葉を組み合わせて遊ぶゲームの進化版のように感じました。
“グリコ”のような階段じゃんけんをもとにしたゲームで、じゃんけんに勝つと、出した手に対応する言葉の文字数だけ進めます。面白いのは、負けた人がカードを引き、自分の“グミ”“チョコレート”“パパイヤ”に言葉を連結させて、その手を強くできるところです。
たとえば、“グミドットコム”という言葉にできれば、次にグーで勝ったときに、7文字分を一気に進めます。カードは何枚も連結できるので、負ければ負けるほど一発逆転の可能性が高まっていくんです。最後まで勝負がわからなくて、ものすごく面白いゲームでした。愉快班でも、ぜひ遊びたいと思っています。


『グミチョコパパイヤレボリューション』
「グミ(グー)」で勝てば2段、「チョコレート(チョキ)」で勝てば6段、「パンダちゃん激おこアゲアゲレボリューション(パー)」なら一気に22段!!!!!ガチャで手に入れたカードを組み合わせて、自分のグーチョキパーをどんどん強化しよう!
しかし、強すぎる手は相手に読まれてしまうかも…。次の手を読み合い、勝利を掴もう!
さらに、「寿司」「感謝祭」「の民」「侍」「ちゃん」など、さまざまなワードカードを組み合わせれば、思わず笑ってしまうグーチョキパーができあがる?
かけ引きと笑いが生まれる「魔改造階段ジャンケン」ゲーム!
Chapter03 作り終えた先にある“ご褒美”――遊ぶ側から、ボードゲームを作る側へ
なぜ、ボードゲームを“自分でも作ってみたい”と思うようになったのでしょうか。
きっかけは、当時、会社の同期だったつるおか君です。
彼もボードゲームが好きでしたが、一緒に遊べる友人が少ないと話していました。
それで私を最初にボードゲーム会へ誘ってくれた友人と一緒に遊ぼうと声をかけたんです。
そうして何度か一緒に遊ぶうちに、つるおか君から「こういうボードゲームを作ってみたいんだけど、一緒に作らない?」と誘ってもらったんです。そのアイデアがとても面白そうだったので、“私も作ってみたい”と思い、2人でボードゲームを制作する愉快班を結成しました。
実際にボードゲームを制作する中で、どんな困難や苦労がありましたか。
これほど多くの制作物を一度に作ったことがなかったので、その量に驚きました。
まず、カードは、1枚ずつ表と裏をデザインする必要があります。それぞれが使いやすく、並べたときに配置のずれが出ないように、一つひとつ考えなければなりません。
すべてのカードを作り終えたら、今度は説明書やパッケージが待っています。パッケージにはロゴが必要ですし、プレイ人数や時間を示すアイコン、箱の裏面も作らなければなりません。
一つのボードゲームを完成させるために、これほど多くのものが必要なのだと気づき、“今まで気軽に遊ばせてもらっていたボードゲーム、すごすぎる!”と思いましたね。
もう一つ大変だったのが、完成したカードを組み合わせて箱に詰める“丁合”です。
ゲームマーケットなどの販売用に一度に50個や100個を作らないといけないんですよね。
実は、届いた時点でカードが1デッキずつ組まれているわけではないんですよ。なので種類の異なるカードを1枚ずつそろえて1デッキにし、箱へ詰める作業が必要なんです。初めて自分たちで丁合したときは、“途方もない作業だ”と思いましたね。
反対に、ボードゲームを制作する中で「これが楽しい!」と感じるのは、どんな瞬間ですか。
製作中というよりは作り終わった後にはなっちゃうんですが、作者がほかの人と一緒に遊べることがうれしいですね。私はそれを“ご褒美”と呼んでいるくらいです。
自分たちが作ったボードゲームを、遊んでもらえて、悩んだり、楽しそうにしてくれているのを見られると、言葉にできないくらいうれしいんです。“作ってよかった”“やってきてよかった”と心から感じます。
制作でうれしいこととしては、先ほどは大変なことだけ挙げてしまいましたが、ゲームの世界観をすべて自分で作れることには、面白さややりがいも感じます。
これまで作った作品の中で思い入れの強い作品を教えてください。
二つあります。
まず『ギャル短歌七七』シリーズです。
たくさんの方に楽しんでいただけましたし、ある声優さんが推してくださった結果、なんと、その方のリアルイベントに『ギャル短歌』を遊んでいただけたということもあって、印象に残っています。
ほかにも作った短歌を写真に撮ってSNSへ投稿してくださる方や、YouTubeで遊んでいる様子を公開してくださる方もいました。
自分たちはその場にいなくても、皆さんが遊んでいる様子を見せてもらえることが、とてもうれしかったです。


『ギャル短歌七七』『働くギャル短歌七七』(愉快班)
100種類のギャルマインドカードを組み合わせてバイブスぶち上げなギャル短歌を作っちゃお!
上の句(お題)を出題する「上の句ギャル」に
「下の句ギャル」は上の句に合う下の句を提案!
いちばん心に来るギャル短歌を詠んだ人に“ギャルピース”を送る…
令和の「ギャルマインド歌会ゲーム」ここに爆誕…!(説明は『ギャル短歌七七』のもの)
もう一つは『半額ハンターロワイアル』です。
こちらは誤植だらけの半額シールを出していき、正しい“半額”のシールが出た瞬間に、誰よりも早く取る対戦ゲームです。
今作を思い入れのあるゲームに選んだのは、“ゲシュタルト崩壊するほど文字を見つめたから”です。
制作中は、誤植とほかの文字を混同しないように、正しい“半額”の字だけ文字の色を変えて作業していました。
それでも、作り続けるうちにゲシュタルト崩壊が起きてしまったんです。一度お手洗いへ行き、作業画面に戻ってきたとき、画面にこの世に存在しない文字ばかりが並んでいるように見えて、頭がおかしくなりそうでした(笑)
正直、“うわー!”となって、家を飛び出して川でぼーっとしちゃったくらいです。

ゲシュタルト崩壊で川に!?
はい。最初は商店街に行ったのですが、看板に書かれた文字が全部この世のものと思えなくなって怖くなっちゃって……。
“自然物だけを見たい”と思って近所の川辺にしばらく座っていたのを覚えています。
おそらく、人生で一番危ない瞬間だったと思います。それほど限界まで頑張って作ったので、強い思い入れがありますね(笑)
それはいろんな意味で思い入れのある作品ですね……。
そうですね(笑)。
ただ、この作品を挙げたのはそれだけではありません。
自分がストレスに感じた部分は、きっと遊ぶ人も同じように感じるだろうなと思ったので、このゲームでは“正しい半額を素早く見極める”以外のストレスはできるだけ減らしてあります。
たとえば色覚特性のある方にも楽しく遊んでいただけるよう、カードに載せる要素をできるだけ少なくし、一番見せたい部分が目立つようにメリハリをつけました。
制作中は大変でしたが、そういったアートワークの工夫も含めて愛着のある作品です。

スーパーの半額タイムセールがボドゲに!?
次々と繰り出される「半額シール」から正しい半額を見抜いてゲットする半額弁当争奪ゲーム。
10種類以上もある「半額」に似た誤植でゲシュタルト崩壊必至!
誤字のタイムセールを始めます!
いらっしゃいませ!!「スーパー ゴショク」です。 只今よりお弁当コーナーで半額タイムセールを開催いたします! なお当店は地域で一番誤植の多いスーパーでございます。 半額セールのシールも「羊額」や「半客頁」など誤植だらけです。

Chapter04 ZINEから全国の書店へ――『あたしのボドゲができるまで』ができるまで

『あたしのボドゲができるまで マンガでわかる! ボードゲーム制作入門』は、どのような経緯で出版されることになったのでしょうか。
きっかけは、この本の前身となる、ボードゲームを紹介するZINE『れっつぷれいぼーどげーむうぃずみー』を作ったことです。それを駒沢大学駅の近くにあるZINE専門店“MOUNT ZINE”に置かせていただいていたところ、ボードゲームに興味のあるフリーの編集者さんが、たまたま手に取ってくださって。
それをきっかけに、「本を出版してみませんか」と声をかけていただき、『あたしのボドゲができるまで』を作ることになりました。
……でも、実は最初は今のようなストーリーのある話ではなかったんです。
ストーリーのある話ではなかった、というと?
私はそれまでコミックエッセイを中心に描いていたこともあって、私自身を主人公にして、主観で語る形式を最初は考えていました。ただ、そうするとどうしても私自身の話が中心になり、ボードゲームの魅力を伝える方にうまく結びつかなかったんです。
そこで編集者さんと相談し、“一からストーリーを作りましょう”ということになりました。そのときは素直に“はい”と答えたのですが、それが全ページ描き下ろしという大変な作業の始まりでした……。
書き始めから苦労があったんですね……。
ほかにも執筆中に、苦労したことや工夫したことはありますか。
ボードゲームを物語へ組み込み、その魅力も紹介しながら、一つの話として成立させるのが難しかったです。
一つ目に登場する『ヒュードロドロップ』は、手のひらに小物を乗せ、指定されたものだけを落とすゲームなので、比較的物語の展開を作りやすかったんです。一方、『犯人は踊る』には推理要素があります。推理とどんでん返しの展開はすぐに思いついたのですが、それが実際のルールで成立するのかを検証する作業に、とても時間がかかりました。
どのように検証していったのでしょうか。
ひたすら1日中、部屋でカードを並べ替えていました。
作業を始める前は顔が白かったのに、終わるころには血流が集まったのか、おでこが赤くなっていましたし、38度くらいの熱が出て、鼻血も出たんです(笑)。
さらに最後の最後にキャラクターの配置を間違えていたことがわかり、ネームを一からすべて作り直すことになったんです。
たくさんの苦労があって、今作が出来ているんですね……そんな今作品で、特に挑戦したことを教えてください。
特に大きな挑戦だったのは、主人公が物語の中で完成させる架空のボードゲーム『それタコ入ってる?』を、一から作ったことです。
“初めてボードゲームを作る子が頑張って完成させた”という説得力を持たせながら、ゲームとしても成立させる必要がありました。

どうやって成立させていったのでしょう。
まず、そのゲームの魅力を見せるにはどのような展開がふさわしいのか、登場人物には物語の中でどのような変化が起きてほしいのかを、それぞれ箇条書きにしました。そこから会話を書き出し、盤面をノートに描いて、一手ずつゲームの流れを検証していったんです。
一度流れを作ったあとは、翌日に改めて見直し、物語にとって都合のよすぎる手になっていないか、普通なら選ばないような悪手を打たせていないかも確かめました。
“この人物は賢い設定だから、この手は打たない”“この子なら、この選択をするかもしれない”と、キャラクターの性格との整合性も確認しています。
そうして将棋でいう棋譜のようなものを作り、それをもとにネームを描きました。ゲームの面白さを伝えることと、登場人物の変化を描くこと。その両方を、一つの物語として成立させることは、大きな挑戦でした。

読者に、特に「ここを読んでほしい!」というポイントを教えてください。
たこ焼きパーティーの日常回ですね。
ゲーム制作から少し離れた回なのですが、これが作中のゲームができるきっかけにもなる大事な回なんです。
ここを選んだのは、ボードゲームのことばかりを考え続けなくても、アイデアは日常や身近な出来事から生まれることを伝えたかったからです。読者の皆さんにも、日々の暮らしの中から発想を広げていただけたらと思います。

なぜ、作中で紹介するボードゲームを『ヒュードロドロップ』『犯人は踊る』の2作品にされたのでしょう。
どちらもルールがとてもシンプルで、実際に遊んでみると、面白さや遊び方がすぐに伝わるゲームだからです。
少人数から大人数まで遊べるので、初めてボードゲームに触れる方でも、集まった人数にかかわらず楽しめます。また、小箱に入っていて持ち運びやすいところも、おすすめしたいと思った理由の一つです。
そして何より、2作品とも私自身がとても好きなゲームだからです。私は、勝っても負けても楽しく、待っている時間までずっと楽しめるようなゲームが好きなのですが、この2作品には、特にそうした魅力を感じたので選びました。
作中に登場するカードやコンポーネントは、どのように掲載したのでしょうか。
当初は、実物をスキャンして掲載しようと考えましたが、権利上の理由からスキャン画像の掲載はNGだったんです。
なので作中に登場するカードやコンポーネントは、すべて実物を模写して描き起こしています。そのため、細かく見ると、実物とは少しずつ異なっているんです。手元の本物と見比べてみると面白いかもしれませんね。

今作は漫画パートだけでなく、ボドゲに関する本格的な解説ページも魅力です。こちらを組み合わせた理由を教えてください。
初めてボードゲームを作りたいと思っている方や、興味はあるけれど、どのようなものなのかよくわからない方にも、気軽に読んでいただける本にしたいと考えたからです。
そのため、漫画パートは、特にわかりやすさを重視しました。そのうえで、さらに興味を持った方や、実際に作ろうとしたときに“どうすればいいのだろう”と思った方には、詳しい解説ページまで読んでいただくことで、しっかりと知識が身につく構成にしたかったんです。

今作を読んだ読者から届いた反響の中で、特に印象に残っているものを教えてください。
「もともとボードゲームを作りたいと思っていて、この本を読んだことで“やってみよう”と思った」と実際に声をかけてくださった方がいたことです。これからボードゲームを作りたいと思っている方の背中を押せたら、という思いでずっと書いていたので、その願いが実際の反響として返ってきたことが、すごくうれしかったです。
ボードゲーム制作ユニット愉快班さんにインタビュー! 【後編】
愉快班のゲームデザイン担当、つるおかさんにインタビュー!&愉快犯さんのボードゲームについて深堀り!につづく!
インフォメーション
〇書籍情報

https://www.kadokawa.co.jp/product/322512001685/(作品ページ)
https://note.com/safa_san/n/nf71978681287(作者による登場人物紹介:note)
〇SNS
水田さんX:https://x.com/umashikasafari
note:https://note.com/safa_san
愉快班X:https://x.com/yukaihan_game
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