プロフィール

moku2
社会人をしながら絵を描いています。人には言えないこと、内面的なものをイラストとして表現していけたらとおもっています。
細々と制作しており、今回の展示会は主催の三好さんから声をかけていただき参加させていただきました。
X:@M0ku_M0ku_2

作者について
――まずは絵との出会いを教えてください。
ほんまに小さいころから絵を描くのが好きやったので、これといったきっかけは覚えてないですね。父も絵を描く人やったんで、家には道具もそろってましたし、絵画教室に通いたいって言ったときも「やってみたら?」って二つ返事でOKをもらえました。そういう意味では、絵を描く環境にはかなり恵まれていたと思います。
――絵画教室に通われていたんですね。小さいころから展示会などにも参加されていたんでしょうか?
いえいえ、まったくです。子どものころは、どちらかというと家で一人で絵を描いているようなタイプやったんです。
あるとき、運動会のパンフレットの表紙を描いたり、ポスターを任されたりすることがあって、そうなるとやっぱり人の目につく機会が多いやないですか。そこで「上手やね」って言ってもらえたのが嬉しくて、それで今まで続けてこれたんやと思います。
――絵画教室に通われていたということは、やはりそのころから芸大や美大を志望していたのでしょうか?
もちろんその気持ちはあったんですけど、うちちょっと家庭環境が複雑やったのもあって、あんまり親に迷惑かけたくなくて、結局は経営学部のある大学に行きました。
――絵から経営学部! 家庭環境が複雑と聞くと、大学進学自体を諦めることが多いと思うのですが、なぜその道を選ばれたのでしょう?
美術の道に進むってなると、やっぱりお金もかかるし、その先自分が食べていけるかも分からへんっていう不安もあるやないですか。なので、経営学部っていう、ある程度お金の勘定とかも学べて、社会に出てもやっていけそうな、いちばん無難というか、コンスタントな道を選んだんです。
――それはかなり思い切った進路変更ですね。そうなると、絵を描く機会は減ってしまったのではないでしょうか。
それはほんまにそうです。絵を描く機会はほんまにぐっと減ってしまいました。
この先一生、絵は趣味でたまに時間があるときにやるくらいになるんやろうなーって思ってました。
――それが今ではこうして展示会に参加されていますよね。いったい、どんな転機があったのでしょうか?
主催のミヨシさんから「お前、高校の時に絵描いてたやんけ。展示会やるねんけど、一緒にやらへんか」と言っていただいたのがきっかけです。
絵を描きたいけど、なかなか機会もないなと思っていた私に、場を与えてくれるっていうベストなタイミングで神対応でしたね。
それで、ずっと展示会に参加させてもろてる感じです。
――ここまで展示会の参加者にインタビューをうかがっていると、ミヨシさんのヒーローエピソードは何度か聞いてきましたが、「神様」は初めてです。
――ずっと参加されているとのことですが、もしかして第一回から今回の第四回までですか?
はい。皆勤賞です!
――初めて参加されたときのことを教えてください。
第1回目に参加したときは、そもそも展示会がどんなもんかも分からん状態でした。なんせ初めての展示会ですからね。まず何を描いたらいいのかも分からへんかったし。
それに他の参加者は芸大や美大で学んできた人たちやったんで、みんなが一生懸命作ってきた作品の中に、自分だけ“とりあえず出してみるか精神”で作った作品でええんかな、って思いもありました。
その経験から、なるべく自分の中でも「展示会に出せるくらいのものにはなったな」と思える作品を出せるようにしようって思えたので、良かったんですけど。当時は申し訳なかったですね。
――申し訳ないという気持ちから、次はもっとレベルを上げようと思われたのがすごいです。
お話を聞いていて、芸大や美大、専門学校で絵を学んでこなかったことに、コンプレックスを感じている部分もあるのではないかなと思ったのですが。私からすると、moku2さんの作品もすごいです。
――学校で学んでいないからこそ、絵以外のいろいろなものから影響を受けているのではないかな、と感じたのですが、どういったものに影響を受けていると感じますか?
一番影響を受けているのは、たぶん椎名林檎さんですね。
あの人の作品って、内容的には結構鬱々としているんですけど、その中に強さがある気がしていて。傷ついた女の子たちへのアンサーソングっていう側面もあるとインタビューかなにかで見て、そういう女性の強さみたいなところがめっちゃ好きです。
――音楽や、その思想から影響を受けているんですね。
そうですね。音楽以外だと、本にも影響を受けています。谷崎潤一郎さんが好きなのですが、彼の書く耽美的なものがとくに好きなんですよね。
スカトロジーとか、ドSとかドMとかって言われるサディズムやマゾヒズムもそうなんですけど、そういうものって結局、その人の過去の経験とか内面から出てきているものやと思うんです。そういうものが耽美的なかたちで作品になっているのを見るのが好きです。
私には、自分のフェチみたいなものを作品の中に出していく感じや、汚いものとか、鬱屈とした面とかが作風に表れているのを見ると、「なんでこれが出てきたんやろう」って考えてしまうところがあって。
自分の作品も、そういった自分の中にある鬱屈とした部分とか、逆に良かった思い出とか、いろんなものを混ぜ込んで形にしていけたらなと思っています。
作品について
――今作は、どのような発想から生まれたのでしょうか。

今回の作品は、SNSでよく見かける“これをやるだけで人生が変わります”みたいなお金や資産のアドバイスをモチーフにしています。
最近、物価高とか将来の不安とかもあって、そういう情報をSNSで調べることが増えたんですけど、正直ちょっと胡散臭いものも多いやないですか。
でも、自分がしんどい状況になってくると、普段なら騙されへんようなものでも、ついタップしてしまいそうになる瞬間がある。その感覚が最近自分の中で強いなと思っていて、そこから今回の作品の着想が生まれました。
――今回の展示のテーマである「バース」を、どのように作品へ落とし込んでいかれたのでしょうか。
私は“生まれる”という意味じゃなくて、詩の一節とか、繰り返されるフレーズという意味のバースで描きました。
着手し始めたころ、社会の教科書に出てくる空也上人のことを思い出すことがありました。空也上人は南無阿弥陀仏と念仏を唱えることで人々を救おうとした人物です。今作はそこから発想を広げていきました。
念仏は本来、徳のある言葉として人を救うものやった。それに対して現代のSNSで使われる言葉って、本当に人を救う言葉なんかどうか分からへんものも多い。そこを対比させて考えました。
――この作品には、どのような仕掛けや意味が込められているのでしょうか。
今作は、人が持っているペルソナ、もう一つの顔みたいなものを、一つの顔を半分に分ける形で表現しています。
作品の右側の顔は、光が当たっていて穏やかで優しそうな表情にしています。これは“信じたい側”の顔ですね。
一方で左側の顔は、口角が少し上がっていて目つきも違っていて、どこか人を騙そうとしているような表情にしています。
ぱっと見ると右の顔が明るくて印象的で、よさげなイメージなんですが、よく見てみると耳のピアスや指のリングなど、実は利益のために人を利用してるんじゃないかと思わせるヒントを入れてるんです。
あと、南無阿弥陀仏は本来6文字なんですけど、作品の中では鳥を5羽しか描いてないんです。鳥はTwitterの“さえずり”をイメージしていて、言葉が足りない、根拠も足りないということを表しています。
下に描いている花も、椿ではなく椿と山茶花が混ざった“半椿”というものなんです。本来の高貴な椿に、混ざりものが入ってる。
つまり、“本当に徳のある言葉なんか”“信じて大丈夫なんか”という疑問を込めた作品になっています。
……と、いろいろお伝えしましたが、最終的には見る人それぞれの捉え方で、自由に見てもらえたらええなと思っています。
メッセージ
――moku2さんにとって、芸術とはどのような存在でしょうか。
みんなが思っているより、そんなに難しいものやないんちゃうかなと思っています。確かに、余裕がないと作り出せないし楽しめないものという意味では高尚なものでもありますが。
でも、余裕がないからこそやってみたくなったり、楽しめたりする部分もあると思うんですよね。私もそれでやってみたからこそ、今があると思っていますし。
だから、芸術って言われるとすごく難しく感じてしまうと思うんですけど、そんなに肩肘張って接するものでもないんちゃうかなと思っています。
スマホを見るくらいの感覚で、興味のあるものにどんどん触れていく。それくらい日常的なところにある存在として、みんなが芸術を捉えていけたらええんちゃうかなと思います。
――最後に、社会人になってもアートの炎を燃やし続けたいと考えている方、もしかすると未来の参加者になるかもしれない方々へ向けて、メッセージをお願いします。
私自身も社会人になってから、しばらく絵を描かへん時期があったんです。でもミヨシさんに声をかけてもらって参加してみたら、気づけば毎回出るようになっていて。ここでいろんな人とも出会えましたし、何より自分の好きな絵や芸術に触れていられる時間が増えたんです。
なので、もし少しでも興味があったら、ぜひ気軽に挑戦してみてほしいですね。
作品も、別に絵じゃなくてもええと思います。文章でもいいですし、造形でもいいですし、そもそも売ることを目的にしなくても全然いいと思うんです。
昔はやっていたけど社会人になって離れてしまった人とか、本業ではないけどもう一度やってみたいと思っている人にも、ミヨシさんの展示会はすごく参加しやすい場所やと思います。
「やったことはないけど、ちょっとやってみたい」くらいの気持ちでも大丈夫な場所なので、よかったらぜひ参加してみてください。
たぶん私もこれからも参加していくと思うので、そのときはぜひ仲良くしてもらえたら嬉しいです。