“書きたい”だけで終わらせない。未経験から2ヶ月で本を作ったクニマツミナミさんの“挑戦”。

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「本」の挑戦者たち
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“書きたい”だけで終わらせない。未経験から2ヶ月で本を作ったクニマツミナミさんの“挑戦”。

イントロダクション

HAPPY!

“本”と“ことば”がなにより大好き、いっちーです!

今回取材させていただいたクニマツミナミさんは、子どもの頃から“作ること”への憧れを抱きながらも、なかなか一歩を踏み出せずにいたそう。
しかし、ある出来事をきっかけに創作を始め、文章だけでなく、表紙や絵本のイラストまでご自身で制作。わずか半年で本を完成させ、さらに即売会で販売するまでに至った挑戦者なんです!

今回は、本を書くことに挑戦したきっかけや、本づくりの裏側、そして創作への思いについてたっぷりお話をうかがいました!

それじゃ~いってみよー!

Chapter1 小さい頃からあった、“作る側”への憧れ――クニマツミナミさんの人となり

半年で本を制作し、販売するという大きな挑戦をされたクニマツミナミさん。
その挑戦について詳しくうかがう前に、まずはクニマツミナミさんご自身について少しお聞きしました。

まずはクニマツミナミさんの好きな本を教えてください。

絵本だと、『バムとケロ』シリーズがすごく好きです。
バムちゃんとケロちゃんの家の中にある小物や背景まで細かく描かれていて、その一つひとつが世界観につながっている感じがあるんです。
そういう、すみずみまで作り込まれた作品がすごく好きですね。

『バムとケロのおかいもの』島田ゆか/作・絵(文溪堂)

小説だと、よしもとばななさんがすごく好きで、とくに『もしもし下北沢』という作品が好きです。
よしもとばななさんの作品全体に言えることなのですが、情景描写だったり、ありのままの気持ちが表現されていたり、肩肘張っていない感じだったり。読めばそのまま情景が想像できるような、色や光や匂いの描写がすごく好きなんです。

『もしもし下北沢』よしもとばなな/著(幻冬舎)

本以外に、好きなものや大切にしている時間はありますか。

マラソンですね。1年くらい前から始めたんですけど、走っていると“ここにこんな道があったんだ”“今、このお花が咲いているんだ”みたいな小さな発見があって、それがすごく気持ちよくて好きです。
それに、走っている時間は自分と向き合う時間でもあって。足は重いし、息も苦しいし、“なんで私は走っているんだろう”と思うこともあるんですが、同時にそれでもやめたくない自分もいるんです。
苦しいけど、もう少し先まで行きたい。もう少し頑張りたい。
そういう自分に出会える時間でもあるので、私にとってマラソンはすごく大切ですね。

もともと本を読んだり、物語に触れたりすることは好きだったのでしょうか。

人並みぐらいです。
小説や絵本は小さい頃からずっと好きで、実は小さい頃から“絵本作家になりたい”と思っていたんです。
なので、物語を読むことも好きだったんですけど、それ以上に“絵を描きたい”という気持ちのほうが強かったかもしれないですね。

小さい頃から、“自分でも何かを作ってみたい”という気持ちがあったんですね。

そうですね。“作る側になりたい”という憧れは、小さい頃からずっとあったと思います。

それでも、すぐに“作る側”へ踏み出せたわけではなかったのは、どうしてなのでしょうか。

自分が作る側になんてなれるわけないだろうと思って、諦めていたからです。
芸大や美大に行ったわけでもないですし、小さい頃に周りから“絵が上手いね”と言われていたわけでもなかったので。
“作る側になりたい”という気持ちはあっても、それはあくまで憧れで、自分が立てる場所ではないと思っていたんです。

Chapter2 小さい頃の憧れから、“作る側”へ――作品を作るという挑戦

小さい頃から“作る側”への憧れを抱きながらも、自分が立てる場所ではないと思っていたクニマツミナミさん。
そんな思いが、“作品を作る”という挑戦に変わったきっかけはなんだったのでしょうか。

“作る側になりたい”という憧れが、実際に作品を作る挑戦に変わったのには、どんなきっかけがあったのでしょうか。

半年前にコーチングを受けたことが自分の中では大きかったです。

コーチングとは

コーチが一方的に答えを教えるのではなく、対話や問いかけを通して、その人自身の中にある思いや答えを引き出していくもの。

その頃の私は結構悩んでいる時期で。
“自分は何がしたいんだろう”“なんで仕事をしているんだろう”“なんで生きているんだろう”“なんで生まれてきたんだろう”みたいなことをずっと考えていて、考えすぎて分からなくなってしまっていたんです。
でも、コーチングの中でたくさん問いを投げかけてもらううちに、“私は小さい頃から絵を描きたかったんだ”“何かを作る側に回りたかったんだ”という気持ちを思い出したんです。
それで、“じゃあ作ってみるか”と決断しました。

“じゃあ作ってみるか”と決めてから、実際に一歩を踏み出せたのはすごいことですね……。
“やってみたい”と思いながらも、そこで止まってしまう人も多い中で、実際に行動に移せたのは、どんな思いがあったからなのでしょうか。

コーチングの中で“できるかできないかって、人が決めるものでも、誰かが許可を出してくれるものでもないんだな”と気づいたんです。
“自分がやるかどうか、やり続けるかどうかなんだな”って思ったら、そこからの行動は早かったですね。
もちろん、決めたからといって怖さがなくなったわけではないんです。
でも、やらなかったら、きっとどんどん後悔が大きくなるだろうなと思って。
不安はあっても、“やらない”という選択肢はなかったですね。

実際にやってみて、“もっと早くやればよかった”と思ったりはしなかったのでしょうか。

その感情はなかったですね。多分、今のタイミングだからこそ、私は本を作ることに挑戦したし、できたと思っています。
例えば、これまでの選択の中で、芸大や美大に行く選択肢もきっとあったと思うんです。でも、行かなかったからこそ今の私がいますし、別の大学で人類学を専攻したからこそ持てた観点があるから書けているものもあると思うんです。
だから、“もっと早くやっておけばよかった”とか“あのときこうしていれば”といった気持ちはないですね。

実際に書き始めたことで、気持ちにどんな変化がありましたか。

すごく解放された感じがありました。
私が自分でそう感じるというのもありますし、友人からも「ミナミ、元気になったね」と言われることがすごく増えたんです。
それは多分、本を書いていることもあると思うんですけど、自分がやりたいことをやれているという実感というか、自信があるからなのかなと思います。
“自分はこれを頑張っていくんだ”と決めたからこそ、自分の中でブレなさみたいなものが生まれたと思っています。

Chapter3 “伝えたい”を形にするために――初めての本づくりで向き合った、自分自身

コーチングでの自己対話を経て、自分の中にあった思いに気づき、“本を書く”と決めたクニマツミナミさん。
しかし、いざ本づくりを始めてみると、そこには想像以上の難しさもあったそうです。
初めての本づくりの中で、クニマツさんは何に悩み、どのように作品を形にしていったのでしょうか。

実際に本づくりを始めてみて、どんなことが大変でしたか。

一番難しかったのは、“自分が本当に伝えたいことをつかむこと”です。
なんとなく“これかな”という感覚は、書こうと思った最初からあったんです。
でも、読んだ方に“なるほど。クニマツはこういうことで悩んでいたんだな”とか、“自分だったらこう置き換えられるな”と思ってもらえるところまで、その感覚を言葉にするのが本当に難しくて。
私は、読んでくださる方に自分を大きく見せたいわけでもないし、反対に“自分なんて”と卑下して受け取ってほしいわけでもないんです。
自分が感じたことや悩んできたことを、できるだけそのまま受け取ってほしい。
そのうえで、読んだ方にも“ありのままの自分でいいのかもしれない”と思ってもらえたらいいなという気持ちがありました。
だからこそ、そう感じてもらえる言葉遣いや表現を考えるのは、結構難しかったなと思います。

途中で、“これは形にできないかもしれない”と感じることはありましたか。

めちゃめちゃありました。
私は正直、自分のためだけに書き続けることがあまりできなくて。
“自分はこれを表現したい”という気持ちだけでは、なかなか最後まで進められないんです。

そうした気持ちを乗り越えて、作品を形にされたわけですね。いったいどうやって乗り越えられたのでしょう。

自分のためだけには書けないんですけど、“これを誰かに届けたい”と思うと、書く理由が生まれるんですよね。
ただ、どれだけ届けたいと思っていても、自分が形にしなければ、その思いは誰にも届かない。
だから、どれだけ苦しくても、うまく形になっていないと感じても、とりあえず形にすることは大切だと思ったんです。
不完全でも、形にした先で初めて届くものがあると思って書くことで、なんとか完成させています。

ここまで大変だったことをうかがいましたが、逆に、“意外と楽しかった”“思っていたよりできた”と感じたことはありましたか。

自分の感情が大きく動いたときに、文章がすごくスラスラと出てきましたね。
“あ、これだ”という感覚があったり、頭の中に絵や映像が浮かんできたりすることがあるんですけど、それが明確であればあるほど書きやすいってことに気づきました。
そういう瞬間は、書いていてすごく楽しいです。

次は実際の制作についてお聞きします。作品のアイデアは、どのようなところから生まれることが多いのでしょうか。

日々の中で悩んだことや、その悩みに対する答えが少し見えたときに、“これを書きたい”と思うことが多いです。
あとは、マラソンをしていると、普段だったら見過ごしてしまうような景色に気づけたり、自分の中の気持ちと向き合えたりするので、走っている時間も作品のアイデアにつながることがあります。そういう日常の中で見つけたものが、作品につながっていますね。

実際に書きたいものが決まってから、どのように作品にしていかれたのでしょう。

まずは書きたいことを書いて、その後に順番を入れ替えたり、何度も読み返したりしながら整えていきます。
一気に書き上げるというより、少し書いて、見直して、“ここ違うな”と思ったら修正して、また書いて……と繰り返しながら、少しずつ形にしていく感じですね。
書いている最中はなかなかうまくいかなくて心が折れそうになることもあるんですけど、見直して整えていく作業は好きですね。

作品を作ってみて、これまでとは本の読み方や感じ方に変化はありましたか。

今までは流して読んでいたところでも、“なんでわざわざここでこの言葉を言わせるんだろう”とか、“なんでここは切り取られていないのに、ここは切り取られているんだろう”とか、そういうことを考えるようになりました。
何か表したいものがあるから、その言葉や場面が選ばれているんだなと見えるようになった感じがするんです。

作品を本という形にしたことで、気づいたことはありましたか。

本づくりの難しさを感じる一方で、“正解はないんだ”とも思いました。
“こうじゃなきゃいけない”とか、“この完成度じゃなきゃ出しちゃいけない”とか、別にないじゃないですか。
それこそ『きらきら』は8ページくらいの絵本なんですけど、それでも買ってくださる方がいらっしゃるんです。
“これでも受け取ってくださる方がいるんだ”と思えたことで、本づくりに正解はないんだなと感じました。

初心者として本を作ってみたからこそ、感じたことはありますか。

知識がなかったからこそ、自由に作れた部分は大きかったです。
もちろん、知識を身につけることも大事です。ただ、最初からいろいろ知りすぎていたら、“こうしなきゃいけないんじゃないか”“この形じゃないと出しちゃいけないんじゃないか”と考えすぎて、動けなくなっていたかもしれないって思うんです。
何も知らなかったからこそ、まずは自分が作りたいものを、自分なりに形にすることに向き合えたんだと思っています。

Chapter4 悩みも、景色も、走る時間も――日常から生まれた作品たち

初めての本づくりの中で、“本当に伝えたいこと”と向き合いながら、少しずつ作品を形にしていったクニマツミナミさん。
では、実際に生まれた作品には、どのような思いや景色が込められているのでしょうか。
ここからは、クニマツさんが制作された作品についてお聞きします。

制作されたそれぞれの作品について、まずは教えていただけますか。

今回紹介するのは『イエローデイジー』『uzu.』『きらきら』という3作品です。
どれも、自分の中にあった悩みや、日々の中で心が動いた瞬間から生まれた作品です。

『イエローデイジー』『uzu.』『きらきら』クニマツミナミ

『イエローデイジー』は、どのような思いから生まれた作品なのでしょうか。

『イエローデイジー』クニマツミナミ

▼あらすじ

仕事がうまくいかず、自分自身にも、自身の人生にも自信を持てていない、「わたし」。

体調不良で早退するも、突然の雨に雨宿りをしていたら、不思議な世界に迷い込む。

そこは静かな夜の海とつながっているカフェだった。

「わたし」は、カフェのマスターの陽助さんとの対話を通じて、少しずつ前向きになっていく。

『イエローデイジー』は、コーチングを受けた中で自分が気づいたことを、誰かにも届けたいと思って作った作品です。
自分の中にある気持ちに気づくことや、“自分はどう生きていきたいんだろう”と考えることって、すごく大事だなと思っていて。
私自身、コーチングを通して“小さい頃から絵を描きたかったんだ”“作る側に回りたかったんだ”という気持ちを思い出したので、そのときに感じたことを作品にしたいと思いました。
ただそのまま書くのではなく、コーチングで感じたことを軸にしつつ、いろいろなキャラクターの設定やセリフにそういったものを込めています。

    

『uzu.』についてはいかがでしょうか。

『uzu.』クニマツミナミ

▼あらすじ

いつも余計なことまで、延々と考え込んでしまうタイプの私。

ぐるぐるぐるぐる、いつも、答えのない考えごとに頭を捻り続けています。

ぐるぐる悩むんじゃなくて、もっと割り切ってシンプルに考えたいと思い続けていましたが、このぐるぐる思考は、私の大切な個性のひとつなのかもしれないと、受け入れることができるようになった瞬間がありました。

そんな個性を抱きしめながら、私は文章を書いていきたいんだという思いを綴った、初エッセイです。

『uzu.』は、自分の弱さを受け入れることだったり、苦しんできた時間も、これからの自分に生かせるんだと思えた瞬間を書いたエッセイ作品です。
悩んでいるときって、その時間が全部無駄だったように感じてしまうこともあると思うんです。
でも、苦しかった時間があったからこそ気づけることもあるし、その時間も含めて自分なんだと思えたら、少し前に進める気がして。
そういう思いを込めた作品になっています。

  

『きらきら』は、また少し雰囲気の違う作品ですよね。

『きらきら』クニマツミナミ

▼あらすじ

誰もがめまぐるしい毎日、忙殺される日々を生きている現代で、「ここではないどこか」を誰もが心のどこかで求めてしまうもの。

でも、うつくしいもの、こころをうごかすもの、大切なものは、すぐ近くに落ちているのでは?

そう思い、私の日常の素敵なワンシーンを切り取った絵本です!

『きらきら』は、日常の中で見つけた綺麗な風景や、心が動いた瞬間から生まれた作品です。
たとえば、道を歩いているときや走っているときに、“あ、今の景色が綺麗だな”と思うことがあって。
そういう何気ない瞬間を、自分の中だけで終わらせずに、作品として残したいと思いました。
また、この作品では、絵の色味も結構気にしています。
あまりビビッドな色や、はっきりした原色を使うというよりは、淡い色や、少し曖昧な色味の方が自分らしいなと思っているので、こういった色づかいにしているんです。実際に、この雰囲気が好きと言ってくださる方もいらっしゃるので、ぜひそこに注目して読んでみてほしいですね。

    

これから作ってみたい作品はありますか。

春についての絵本を描いています。
もうすぐ春が終わる(取材時期は5月)ので、私が走ったり、生活の中で見て感じた、桜が綺麗だったなとか、お花が綺麗だったなとか、春の空気感が綺麗だったなとか。
そういった気持ちや景色を絵本で表現したいです。

▼あらすじ

様々な花が咲いて、新しい命が芽吹く、美しい季節、春。

でも同時に、ゆらゆら、ゆらゆら、曖昧に揺れ続けている、そんな季節。

その揺らぎは波紋のように広がって私の中にも大きな揺らぎを作ります。

春に感じた感覚。心に残っている風景などをことばと絵、そして色で表現した、全12ページのフルカラー絵本です。

〇クニマツミナミさんが作られたほかの作品

『Enjoy the Way!(エッセイ)』クニマツミナミ

▼あらすじ

季節の移ろいから人生そのものに関することまで、走った先にはいつも何かしら、新たな発見がある。

だから走るって面白い。

そしてその気づきたちは、得てして私の日常生活にも深く紐づくものばかりだ。

42.195kmという、人が走るには長すぎる距離。

春先の荒川を走っていく。

私はマラソンが趣味なのですが、この前の3月半ばに、私にとっては初めてのフルマラソン大会である、板橋シティマラソンに出場しました。

なんだかんだ言ってきっと完走できるだろうと思っていたのですが、折り返しの段階で足が痛み出す事態になってしまいました…。

その際に感じた、人生に関する気づきや、最近見つけた自分の悩みに関する答えを、マラソンになぞらえて形にしました!

『Along the Coastline(エッセイ)』クニマツミナミ

▼あらすじ

こちらもマラソンについてのエッセイです!3月1日に開催された、三浦国際市民マラソンに出場したときのことを綴りました。

走り終わった後、夜に、アドレナリンが出まくっていたからか分かりませんが、

「この楽しかった気持ちと、走っている最中に考えたことを、とにかく形にしなければ!」

と思い、勢いで書き始めました(笑)

東京では見ることのできない海岸線や畑たちを見て、心地良かったこと。

走るという行為そのもの、だれかと一緒に走ること、それを通して感じた「人生」に対する気づき。

走ることを通して得た私の気づきを、たっぷりの臨場感を込めて言葉にしました。

Chapter5 気持ちを文章に、景色を絵に――ふたつの表現で届けたいもの

日々の悩みや、走る中で見つけた景色、自分の中に生まれた小さな気づき。
そうしたものを作品として形にしてきたクニマツミナミさん。
さらに今回の本づくりでは、文章だけではなく、絵もご自身で描かれています。
言葉と絵、どちらも自分の手で届けることには、どのような思いがあるのか、うかがっていきます。

今回の作品では、文章だけでなく絵もご自身で描かれていますよね。このスタイルを選んだのには、どういった思いがあったのでしょうか。

私にとっては文章も絵も、自分が届けたいものを届けるための手段だからですね。
文章だけでは伝わらない空気感や景色を絵で伝えたり、絵だけでは届かない気持ちを文章で伝えたり。
そうやって、文章と絵、それぞれのいいところを補い合いながら、自分が届けたいものに近づけていきました。

久しぶりに筆をとってみてどうでしたか。

全然上手く描けませんでした。
技術的に描けないものはたくさんありましたし、“やっぱり自分には無理かもしれない”と思うこともありました。
でも、近所で見つけた綺麗な風景を描いてみたときに、“あ、描けた”と思えた瞬間があって。
そのときに、上手い下手だけではなく、自分が見たものや感じたものを、自分なりに形にすることが大事なのかもしれないと感じたんです。

“やっぱり自分には無理かもしれない”と思う瞬間もありながら、どうやって作品を完成まで持っていったのでしょうか。

完成させる前にZINEフェスへ申し込んだことは大きかったですね。
締め切りがないと、きっとずっと直し続けてしまうと思ったので、先に出る場所を決めて、“そこに持っていく”と決めたんです。
おかげで、完璧じゃなかったとしても出さないといけない状況にできました。

そのように考えられたのはどうしてなのでしょう。

形にしなければ、誰にも届かないからです。
自分の中ではまだ足りないと思う部分があっても、出してみないと分からないことがありますし、実際に本にして、誰かに手に取ってもらうことで、初めて見えるものもあります。
だから、完璧じゃなくても、まずは形にして届けることが大事ですね。

クニマツミナミさんが描かれた絵

Chapter6 “届けたい”が、誰かに届いた日――初めての即売会へ

「形にしなければ、誰にも届かない」
そう考え、ZINEフェスへの出店を決めたクニマツミナミさん。
実際に自分の作品を並べ、誰かに手に取ってもらう経験は、クニマツさんにとってどのような時間になったのでしょうか。

ここからは即売会に参加したことについてお話をうかがっていきます。

なぜ即売会への参加を決められたのでしょうか。

作品を作る動機のひとつに、誰かに届けたいという思いがあったからです。
でも、どれだけそう思っていても、自分の中だけで抱えていたら、誰にも届かないじゃないですか。
なので、実際に誰かに手に取ってもらえる場所へ、自分の作品を持っていく必要があるなと思ったんです。

初めて作った本を、初めて売る。この挑戦には、やはり緊張や不安もあったのではないでしょうか。

もちろん、“本当にこれを出していいのかな”という気持ちはありました。
でも、怖いからといって自分の中だけにしまっていたら、結局誰にも届かないと思ったんです。
だから、届けたいと思うなら、ちゃんとその場所に立ってみようと思いました。

実際に即売会で作品を販売してみて、いかがでしたか。

買っていただけるのはもちろん、手に取ってくださるだけでも、本当にうれしかったです。
自分の書いたものや描いたものに惹かれて、足を止めてくださる方がいるんだと思うと、“ちゃんと届いているんだな”と感じられました。
正直、即売会に出るまでは、“本当にこれでいいのかな”と思うことも多かったんです。
でも、実際に手に取ってくださる方がいると、“あ、届けてもいいんだ”と思えて、それは私の中でとても大きな変化でした。

ZINEフェスに初出店したときの様子(noteより引用)

即売会で印象に残っている出来事はありますか。

買ってくださった方が、あとから戻ってきて、ほかの作品も全部買ってくださったことがあったんです! それがすごくうれしくて……!
一度読んで、“ほかの作品も読みたい”と思ってくださったのかなと思うと、本当に作ってよかったなと思いましたね。

実際に読んだ方からは、どんな感想がありましたか。

「泣きました」とか、「頑張ろうと思いました」とか、「勇気をもらいました」という感想をいただきました。
自分が悩みながら書いたものが、誰かにとって何かしらの意味を持てたのかなと思うと、すごくうれしくて……本当に書いてよかったです。

そうした言葉をもらって、どんな気持ちになりましたか。

次の作品を作る力になりました。
感想をいただくと、“続けなきゃ”と思うんです。
自分が書いたものを受け取ってくれる人がいるなら、これからも書き続けたいですし、届け続けたい。
これはもう、使命みたいなものだなと思っています。

Chapter7 “作ってみたい”をあきらめないために――クニマツミナミさんからのメッセージ

自分には作る側になんてなれない。
そう思いながらも、コーチングをきっかけに、自分の中にあった思いに気づき、本づくりに挑戦したクニマツミナミさん。
そんなクニマツさんだからこそ、これから本を書いてみたい人、何かを作ってみたい人に届くメッセージがあると思います。

最後の章ではクニマツミナミさんの想いをうかがっていきます。

初めて取材を受けてみて、いかがでしたか。

取材はもちろんですが、文学フリマで取材をさせてくださいと言っていただいたとき、“まだ何も実績がない、まだ何者でもない私に価値を生み出してくれる方がいるんだ”と思えて、それがすごくうれしかったですね。
実際に取材を受けてみても、普段自分が思っていることを口に出すことで、“やっぱり自分はこう思っているんだ”と再確認できたり、新たな発見があったりしました。
私の話したことで、少しでも誰かが挑戦するきっかけになったら、めちゃくちゃうれしいです。

クニマツミナミさんにとって、“本を書く”とはどんな行為ですか。

“人のためでもあり、自分のためでもある行為”ですね。
人のためというのは、自分が書いたものを届けることで、少しでも前向きになれる人や、ピュアな気持ちになれる人がいたらいいなと思っているからです。
一方で、自分のためというのは、私自身が感じたことや心が動いたことを忘れてしまうことが多いので、ちゃんと形にして、文章に落とし込むことで、記録しておきたいなと思っているからです。
後々、同じようなつまずき方をしたときや、悩みに引っかかったときに、“あのときの私は、こういうふうに悩みやしんどさを乗り越えていたんだな”と思える場所として、自分なりの軸や原点、悩んだ証、歩いてきた道を残しておく。
私にとって本を書くことは、そういう意味もあるのかなと思っています。

最後に、実際に本を作る挑戦をしたクニマツミナミさんから、これから本を書いてみたい人や、何かを作ってみたい人へメッセージをお願いします。

まずは、やってみてほしいです。
もちろん簡単なわけではないですし、悩むこともたくさんあります。私も実際そうでした。
でも、今振り返ってみると、始めることが一番難しかったなと思います。
私も、書きたい、作りたいという気持ちはずっとあったのに、“怖いから書かない”という期間が20何年もありました。
だから、怖いと思うのはすごく自然なことだと思うんです。
でも実際にやってみたら、得られるものがすごく大きかった。
うまくいくかどうかは、やってみないと分からないですし、形にしてみないと誰にも届かない。
失敗したとしても、それが擦り傷くらいで済むなら、始めた方が得られるものは絶対に大きいと思います。
そういう私もまだまだこれからですし、完璧にできているわけではありません。
でも、作りたいと思ったなら、その気持ちはきっと大事にした方がいいものだと思うんです。
だから、書きたい人も、描きたい人も、何かを作ってみたい人も、一緒にやってみましょう!

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連載

“書きたい”だけで終わらせない。未経験から2ヶ月で本を作ったクニマツミナミさんの“挑戦”。 クロストーク Vol.1 つるこ。先生と兎束作哉先生にガチなクリエイティブ話を聞いてみた! 『僕がいない世界で君が光を見つけるまで』作者、川奈あさ先生にインタビュー! 『わたしと古民家と毎日 ~古民家ベーカリー&カフェとまり木~』作者、衿乃光希さんにインタビュー! 歴史小説は勉強じゃない! 歴史小説家、白蔵盈太さんにインタビュー! 『三月は、所によりオフライン』作者、篠也マシンさんにインタビュー! “地域の書店マップ”担当、名古屋市鶴舞中央図書館 河合さんにインタビュー 『勝手に覗いて幻滅すんなよ』作者、微炭酸先生にインタビュー! 『成人式の二次会はデスゲームです』作者、くじら先生にインタビュー! 『双子の姉にすべて奪われた私が、軍神に愛されています』作者、小原燈先生にインタビュー! 『青春テロリズム』作者、朱宮あめ先生にインタビュー! 『きみが明日、この世界から消える前に』作者、此見えこ先生にインタビュー! 『フライトドクターの独占欲が熱情一夜で溢れ出し――逃げ出しママを燃え上がる愛で絡めとる』作者、蓮美ちま先生にインタビュー!(後編) 『フライトドクターの独占欲が熱情一夜で溢れ出し――逃げ出しママを燃え上がる愛で絡めとる』作者、蓮美ちま先生にインタビュー!(前編) 『伯爵家の五男ですが、婿入りして公爵になりました。 前世知識で領地を復興して嫁や家臣と幸せになります』作者、灰紡流さんにインタビュー! 放送作家、山田ボールペンさんにインタビュー 『君がくれた魔法は解けない』作者、伊瀬ハヤテ先生にロングインタビュー! 『最高な恋リアの作り方 #誰にでもヒミツはある』作者 音はつき先生にインタビュー! 『ヒロインが最後に死ぬラブコメ』作者 神岡鳥乃先生にインタビュー! 青春は綺麗なだけじゃない……スターツ出版 アンチブルー担当者さんにインタビュー! 『ヤンデレだらけの乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、美形執着騎士に迫られています』作者、兎束作哉さんにインタビュー! 動物を研究しながら、動物の絵と物語を書く!? キツネ月さんにインタビュー! 左京区を本の街へ! 左京区役所勤務 松本さんにインタビュー! タイトルが『ぽ』や『へ』や『ぽぽぽぽぽ』!? へにゃらぽっちぽーさんにインタビュー! 自由に描く絵本!? 作家のしもむらにいなさんにインタビュー! 『マッチングアプリで出会ったクセつよ男子図鑑』収録『泣き落とし男子』作者、葉方萌生さんにインタビュー! 『傷だらけ聖女より報復をこめて』原作者 編乃肌先生にインタビュー! 絵本作家を呼んでのイベント!? その主催の学生さんにインタビュー!  漫画に小説の二刀流!? コミティアや文学フリマにも参戦! まさに本の挑戦者な有理まことさんにインタビュー! 話さない読書会!? シェア型書店で自作本を売り、イベントも開くはやしあやかさんにインタビュー! シェア型書店で自作本を売る!? 夏迫杏さんにインタビュー! 『本を売る、という冒険のつづき』――手渡すその瞬間まで。本って、ほんとうにURERU!(後編) 『本でつながる、物語が輝く集会所』――まっさらな紙の、その先へ。ZINEは、きっとDEKIRU!(中編) 『本をつくる、という冒険のはじまり』 ――のんびりゆったり長居OK。そんな場所にSURU!その2(前編)  『本をつくる、という冒険のはじまり』 ――のんびりゆったり長居OK。そんな場所にSURU!その1(前編)
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