イントロダクション
HAPPY!
“本”と“ことば”がなにより大好き、いっちーです!
突然ですが、みなさんは“本って何人で読みますか?”
同じ本をそれぞれ持つのではなく、一冊の本を読むとしたら……普通はひとりですよね。
今回取材したライターのまいしろさんは、そんな本のイメージを逆手にとって、
『ふたりじゃないと読めない本』を制作されました。
タイトルの通り、この本は“一冊の本をふたりで読む”ために作られた本。
向かい合ったふたりが、それぞれ別の視点から同じ物語を読み進めていくものになっています。
今回はそんな挑戦的な作品『ふたりじゃないと読めない本』について、その作者である“まいしろ”さんにお話をうかがいました。
それじゃ~いってみよー!
プロフィール

まいしろ
エンタメライター。専門家へのインタビュー、やってみた系記事が得意です。音楽や映画が特に好き!

Chapter01 一冊の本を、ふたりで読む――『ふたりじゃないと読めない本』が生まれた理由


『ふたりじゃないと読めない本』とはどんな本なのでしょうか。
タイトル通り、“ふたりじゃないと読めない”というコンセプトの本で、ふたりで向かい合って、一冊の本を一緒に読んでもらうものになっています。
内容は飼い猫のお話で、片方は飼い主、もう片方は飼い猫の視点と、それぞれ別のお話が展開されています。自分の読んだほうだけでは全容がわからないんですが、だからこそ読み終わったあとに、「そっちはどうなってたの?」「あそこってそういうことだったんだ」とふたりで話すことで、読んだあとも楽しんでもらえる本になっています。
このアイデアは、どのように生まれたのでしょうか。
“本を買ってもらうことのハードル”から生まれました。
私は普段、ウェブでライターをやっていますが、記事は気になったらすぐに無料で読んでもらえますし、読み終わるのにそこまで時間もかかりません。
ですが、本はお金がかかりますし、時間もかかります。それに文学フリマには本がたくさんあるので、買ってもらうには工夫が必要だと感じました。
そこでまず“自分だったらどういう本なら買うか”と考えて、アイデアを100個、200個くらい出したんです。
その中から最後に残ったのがこの『ふたりじゃないと読めない本』でした。
数あるアイデアの中から、この『ふたりじゃないと読めない本』が選ばれたのはなぜなのでしょう。
“友達と一緒なら、本を読むきっかけになるかもしれない”と思ったからです。
映画やゲーム、音楽って、それ自体にものすごく詳しくなくても、友達と一緒だから楽しめることってありますよね。
でも、本って基本的にひとりで楽しむことが多いですよね。
たとえ本好き同士でも、小説を読む人もいれば、エッセイや学術書を読む人もいるから、同じ本を読んでいるとは限らない。本って、“読んだあとに感想を言い合える相手が少ないコンテンツ”なんです。
だから、最初から誰かと一緒に読む本があれば、本を読む入口にもなるし、読み終わったあとに感想を言い合えるんじゃないかなと思って、このアイデアを形にすることにしました。
なぜ、黒い猫と飼い主の物語に?
自分が書けるものと、読んでくれる人が手に取りたくなるもの。その両方を考えた結果、猫ならいけるかもしれないと思ったんです。
そこに至るまで、本当にいろいろな案を考えました。
たとえば“探偵とスパイ”はミステリーを書くのが難しくてボツ。“男女のカップルの話”は私があまり恋愛ものを読まないのでボツ。ほかには“天使と悪魔”なんてのもありましたね。
「これ絶対面白いじゃん」と思っても、「あ、自分には作れないな……」となってボツになる。そうやって、“自分が書けるもの”と、“みんなが読みたいと思ってくれそうなもの”の間を考えていった結果、黒い猫と飼い主の物語に落ち着きました。


Chapter02 本を読まない人にも届く入口を――“ふたりで読める形”へのこだわり
『ふたりじゃないと読めない本』は、向かい合って読む本ということもあり、文字の向きなど制作で大変なところも多かったと思います。どのように制作していったのでしょうか。

最初に考えたのは“本の向き”です。
向かい合って読める形を考えて、最終的に文字の向きが向かい合うように配置して、片側から見ると上下逆になっているようにしました。
制作にはAdobe Illustratorというソフトを使用しています。
縦書きのテキストボックスと、横書きのテキストボックスそれぞれに文章を書いて、それを逆さまにするというやり方で制作を進めていったんですが、いちいち文章を修正するたびに文章の方向を戻さないといけないので大変でした(笑)

次に考えたのが“本のサイズ”です。
ふたりで読む本なので、小さいと読みにくい。かといって大きくしすぎると持ち運びに不便。
いろいろなサイズで印刷してみて、友達と一緒に持ったり、机に置いたりしながら読んだりして、最終的に開いたときにA3サイズになるようにしました。

また、あえて“ページ数は少なめ”にしています。
というのもこの本は“読むことが目的じゃない”んです。どちらかというと、“読んだあとにふたりでワイワイ話してもらうこと”がメインの本なので、物語自体は短いほうがいいと思ったんです。

縦と横が混在した本でサイズも通常よりは大きめとなると、印刷も難しそうです。
そうなんです。
縦書きと横書きが混在することについては、データさえ作ってしまえば簡単にできますが、問題は本のサイズでした。
というのも、私が探した限り、通常の同人誌を作っている会社ではなかなか合うサイズがなかったんです。
結局、最終的には会社のパンフレットやリーフレットを作っている印刷所さんにお願いしました。なので文庫本やハードカバーのいわゆる本の紙より硬めの紙になっています。
ほかにも制作するうえで難しかったところはありますか。
ふたつの視点で、お話の展開スピードがある程度そろうようにするのが大変でしたね。
Excelで、1ページ目は人側ではこういう展開、猫側ではこういう展開、というようにページごとに整理していたんですが、実際に書いているとズレてくるんですよね。それを調整しながら文章を修正していくのは大変でした。
なぜ、そのような制作方法を選んだのでしょう。
読んでいるふたりに、なるべく一緒にページをめくって話を体感してほしかったからですね。
片方が読み終わってしまって、相手が読み終わるのを待っている状態になると、読むのが苦手な人からすると焦ってしまいますよね。そうなると、読書を楽しんでもらえなくなってしまうと思ったんです。
普段、本を読まない人にも配慮して制作されているんですね。
はい。その点はかなり意識しました。
この本を買ってくださる方は、文学フリマまで来ている方なので、本や文章が好きな方だと思うんです。
でも、(この本を)一緒に読んでくれる人が本好きとは限りません。
だから、本を読み慣れていない人でも読みやすい形にしたいと思っていました。
縦書きと横書きに分けたのも、普段あまり本を読まない人にとっては、横書きのほうが読みやすいと思ったからなんです。分量も横書きのほうを少なめにして、読書慣れしていない方は横書き、読書好きの方は縦書きのほうを読めばふたりでも読むペースが合うよう調整しています。
制作の中で「これは挑戦だった」ということはありましたか。
物語を書くこと自体が挑戦でした。
私は普段ライターなので、企画や流れを考えるところは普段やっているウェブライターの仕事に近かったんですが、小説を書くことはほとんどやってこなかったので、かなりチャレンジでしたね。


Chapter03 “ふたりで読む”が伝わった日――文学フリマで生まれた手応え
実際に文学フリマで販売してみて、お客さまの反応はいかがでしたか。
最初は伝わらないかもと不安でした。
でも実際、ふたを開けてみると「なにこれ、なるほどね、面白い」みたいな感じで、みなさんすぐに理解してくださって。
しかも「アイデアが面白いですね」と言ってくださる方も多くてうれしかったです。
もちろん私も面白いとは思っていたんですけど、みんなはどうなんだろうという不安もあったので、「よかった、私だけじゃなかった」と安心しましたね。

ふたりで来られている方の反応はいかがでしたか。
おふたりで来られている方に説明すると、その場で「じゃあ、このあと一緒に読もうか!」と盛り上がってくださることが多くて、それがすごくうれしかったです。
店頭では、この本をどのように説明されていたのでしょうか。
読む場面が想像できるように伝えていました。
たとえば、どうしようかなと悩んでいる方には、「家に帰ってお友達と読んだら、こういう楽しみ方ができますよ」と話したり、ふたりで来られている方には「このあとランチのときに読んでみたらどうですか」と話したりしていました。
ただ“ふたりで読む本です”と説明するだけではなくて、“いつ、誰と、どう読むか”まで見えるようにすると、実際に読む場面まで想像してもらえて、手に取ってもらいやすくなるんだなと今回のことで強く感じました。
お客さまから直接反応を受けて、いかがですか。
直接リアクションをいただけて、すごく元気が出ました。
普段はウェブの記事を書いているので、感想をいただくとしてもコメントが多いんです。なので、目の前で直接、感想を言っていただけるのが新鮮で! 「めっちゃ面白いですね」と言ってくださったときは、もう今日の目的は果たしたから帰ってもいいな……と思ったくらいでした。
中には「記事を読みました。買いに来ました」という方も来てくださって、“読んでくださっている方って本当に実在していたんだ”と実感できたのもうれしかったです。
次回作の予定はありますか。
『ふたりじゃないと読めない本』の続編かどうかはわかりませんが、なにか新作は出したいですね。
でも、ただ出すのではなくて、今回のように、“こういう形だったら読んでもらえる”と思えるものを考えたいです。
たとえば前回は、チョコレートの包み紙に短編小説を書く『おかしな文庫』というものを出しました。
お菓子の包み紙って、本を読まない人でも読むことがありますよね。だったら、そこが小説になっていたら読んでもらえるんじゃないかと思って、3分くらいで読める500字ほどの小説をつけたんです。
前回は“ここだったら読むよな”という場所を考えて作って、今回は“ふたりだったら読むよな”“友達がいたら読むよな”というところから作ったので、“本好きじゃない人でも、これだったら読みたい”と思えるものを、これからも作っていきたいです。


Chapter04 本を、もっと誰かと楽しめるものに――まいしろさんからのメッセージ
まいしろさんにとって本ってどんな存在ですか。

“一番身近な娯楽”ですね。
私はあまりテレビを見ないので、家でなにか娯楽を楽しむとなったら、本や漫画が多いんですよ。図書館には昔も今もよく行きます。なので、本は自分にとって最も身近な娯楽として、これまでもこれからもずっと接するものだと思います。
最後に、これからの本の挑戦者たちへメッセージをお願いします。
本を作っている方や、これから書きたいと思っている方に対しては、“一緒に頑張りましょう”と伝えたいです。
というのも本って、アニメや漫画、映画、音楽などに比べて触れづらいものになっていて、書き手にとっては難しい市場だと思うんです。
だからこそ、私は普段本を読まない人にも届けるための努力をしていきたいですし、みなさんとも一緒に、“どうすれば届くのか”を考えていけたらうれしいです。


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まいしろ
エンタメライター。専門家へのインタビュー、やってみた系記事が得意です。音楽や映画が特に好き!
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あらすじ
優雅に楽しく、芸術×筋肉の痩身美!
アート作品には、さまざまな肉体の持ち主が描かれたり、モチーフとなったりしている。本書ではアート作品に表現されている筋肉に注目し、女性専門のジムトレーナーが徹底解説。さらに、そんな「芸術的ボディ」を目指すための、自宅でできる筋トレを部位別に紹介する。「ミロのヴィーナスは腹筋だけ超強い!」「じつはストレートネックだった王妃ネフェルティティ」など、新たな視点でアートを楽しみながら、体を美しくすることができる。https://dailyportalz.jp/kiji/totsuzen-kintore-bon
(記事『突然「筋トレ本」を出すことになった私の実録ドキュメンタリー』)
https://x.gd/pkeRj (さくら舎 作品ページ)
名古屋にあるWAKASA&CO.BOOKSは皆さんの本への挑戦を応援しています!
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ライター紹介

いっちー
平成10年、四国の田舎で生まれ育ち、京都芸術大学文芸表現学科で文章や創作について学ぶ。
月に10冊、年間で100冊以上読み、取材相手には長文の感想を送りつけるなど、本についてアツいヤツ。
わかさ生活のオウンドメディアDEKIRU! で
『「本」の挑戦者たち』
『UNDERUMBLE!』(音楽記事)
『言の葉を紡ぎし者たち』
『若きアートの炎』
『パピー/盲導犬の物語』の連載を担当している。
いつか自分の本を出すことが夢。


