6月20日(土)、21日(日)に、パルテノン多摩にて“TAMAインディーゲーム展覧会 Dissonance #1「不穏」”が開催されます。
その名に偽りなく、“不穏”を存分に感じられる15のタイトルが展示されるこのイベント。「不穏なゲームだらけって……どういうこと⁉」と興味津々である我々トガゲーチームとしては、主催者であるfuturala(フツララ)の渡部さん、そして.iris(ドットアイリス)の古田さん、金さんにインタビューさせていただくことに成功しました。
“不穏”というテーマに注がれるお三方のアツいパトスが感じられる内容になっていますので、ぜひご一読ください!
TAMAインディーゲーム展覧会 Dissonance #1「不穏」 公式サイト


お話を聞かせてくれた方々

フツララ 渡部恭己さん
ゲームメーカーで20年以上に渡って3DCG、シナリオ、ゲームデザインなどを手がけ、2022年に独立。現在は「失踪した科学者が残した研究施設で謎めいた生命体を培養する」というコンセプトのもと、不穏ながらも心地よい空間へ没入するアドベンチャーゲーム『CultureHouse(カルチャーハウス)』を制作している。

.iris 古田 浩文さん、金 ユニスさん
「.iris」として夫婦でゲーム開発を手掛ける。鋭意開発中となる三人称視点のアドベンチャーゲーム『A Passing in the Night』では、古田さんがプログラミングとカラーリングなどのデザインを中心に担当。金さんがストーリーや音楽、アートなどを担当している。

ゲームの展示会はクリエイターが発信する時代に⁉
しかしこのイベント、どうやら一筋縄ではいかなさそう……
今回の“TAMAインディーゲーム展覧会 Dissonance #1「不穏」”、その主催者的な立場であるお三方にお集まりいただきましたが……まずは開催に至るまでの経緯と、イベントの趣旨について教えていただけますか?
きっかけは、毎年京都で開催されているインディーゲームイベント“BitSummit2025”で、フツララと.irisさんのブースが近くだったことから始まります。
お2人とはそこで初めてお会いしたのですが、活動拠点がたまたま同じ市内で、どちらも不穏なゲームを制作していることから、だったら自分たちで“不穏なゲームの展覧会”を開催しようということで、その日の内に話が進みました。
BitSummitは国内最大級のインディーイベントということで、出展作品も非常に多くてバラエティに富んでおり、つまるところすごく華やかなんですね。
一方で、我々が手掛けている『A Passing in the Night』やフツララさんの『CultureHouse』はどちらかというと静謐で少し暗めの作品。どうしても場の雰囲気とのズレが生じる部分があったんです。ならばいっそのこと、「我々と同じような方向性の作品だけに絞ったゲームの展覧会を自分たちで催したら面白いのではないか?」というお話になりまして。渡部さんにぐいぐい引っ張っていただく形で、このようなイベントを主催させていただくことになりました。
「やりましょう!」ってなってから、はや10カ月も経過してしまいましたが、おかげさまで色々な部分にもこだわりを詰め込めました。
インディーゲームゲームの展示会ではありつつ、アートの要素も加えた、少し異色のイベントになっているのではないかと思います。
“不穏”というイベント名から察するに、ホラー作品が多く体験できる形になっているのかと想像していますが、実際のところはいかがでしょう?
出展作品の中にはホラーゲームもありますが、ジャンルを「ホラー」に限定しているわけではありません。“不穏”という言葉には、たとえば正体不明であるとか、先行きが不透明だとか、そういう「良いのか悪いのかすらわからない」というニュアンスが含まれていますよね。
今回のイベントは、そういった“不穏”が持つ奥行きや懐の広さにスポットを当てています。
いかにも“インディーゲーム”らしいというか、挑戦的なテーマですね。
最近は“インディーゲーム”というジャンル自体がメジャーに近づいていて、販売本数や評価の最大化を目標に作られるタイトルが珍しくないと感じています。
それはビジネスとしては正しいのかもしれませんが、すべての作品がそこばかりを突き詰めると、インディーゲームの本来の魅力であった個性や未知のものに触れるどきどきする感覚が失われる気がします。
最近はインディーゲーム市場も大規模化してきていますからね……。
その一方、インディーゲームの原点って“多くの人に受け入れられるものではないかもしれないけど、オレはこういうゲームが遊びたいんだ!”という、己の趣味嗜好を形にしたものだとも思うので。渡部さんが今おっしゃったジレンマのようなものは、我々も感じる瞬間はありますね。
そういったインディーゲームのメジャー志向に対するアンチテーゼとして、“どれだけ売れるかはわからないけど、自分が作りたいものはこれなんだ!”という作品が集まるイベントを目指しています。
出展タイトルの選定基準などはあったのでしょうか?
ゲーム性や完成度というよりも、あくまでも“その作品のコンセプトや表現が不穏であるか”という部分、そして“展覧会の空間に置いたときに不穏な魅力を醸し出すか”ということを基準に声をかけさせていただきました。
なかには値段をつけて売ることが難しそうなほど実験的なものや、「これはゲームなのか?」という作品もあります。
出展タイトル紹介①

『瓶の中のサカナのために』
作者:makina game
奇妙な砂漠でサカナを救う短編パズルアドベンチャーゲーム。

『SOLASTALGIA』
作者:Farfama & Sivani
インタラクティブなビジュアルポエム。
参加者のなかには「何を考えてこのラインナップにしたのか?」と感じる方もいるかもしれませんね。
お話を聞いているだけでどんなイベントになっているのかドキドキします(笑)。
私たち自身もドキドキしていますよ。イベント自体が不安定というか、先行きが不透明なところがありますから(笑)。
そうなんですか?
我々全員にとって初めての自主開催イベントということもあり、行き当たりばったりなところも……まさにイベント自体が“不穏”なんです(笑)。渡部さんが引っ張ってくれたおかげでなんとか形にはできましたけど、色々と二転三転した部分もたくさんありました。
二転三転ですか……具体的にはどのへんでしょう?
最初は来場者数を最大化するために、クリエイターさんから出展料をいただいて、入場料を無料にしようと考えていました。
しかし、来場者数という数を追うよりも、出展作品のラインナップや空間設計という1人1人にとっての質を目標にするのがこのイベントの本来の姿なのではないか、ということから、出展料は無料で、来場する方から入場料をいただくという形にしました。
それはかなり勇気がいる決断だったのでは?
主催者側が「来場者数にはこだわらない」というのも、めったにないことだと思いますし。でも、そういう側面がまさに……。
“不穏”ですよね(笑)。そこが面白い部分だと、我々自身が楽しんでいる部分もあります。
イベント会場が都心のど真ん中ではなく多摩地区というのも、個人的にチョイスの妙を感じました。アート的なイメージがあるんですよね。多摩美術大学の影響もあるかもしれませんが(笑)。
会場がある多摩センターには月に何度も行くのですが、すごく面白いんですよ。
計画的に開発されたニュータウンで、小さな子どもから高齢者まで幅広い年齢層が生活する暮らしやすい街という一方で、丘陵地帯を切り開いて広大なデッキでつないだ構造は独特ですし、夕暮れを経て夜になると、不穏な雰囲気に変わるという二面性もあるんです。
夜中は街灯が明るく照らしているのに周辺に誰も人がいない……なんて時間帯もあったりして。現実離れしたリミナルスペースの妙というか、街全体から“非現実”を感じる瞬間があるのも、イベントの展示場所としてコンセプトに沿っているなと感じました。
都内でトップ10に入る床面積の書店が存在するなど文化面も強く、かと思えばサンリオピューロランドのようなレジャー施設もあったりして、住んでいて飽きない街だと思います。
会場があるパルテノン多摩は、多摩中央公園につながる丘陵地の斜面そのものを建物にした構造で、完全に地形と一体化した建築なのも面白いですよ。
なんだかゲームのダンジョンっぽくていいですね。『女神転生』とかに出てきそう(笑)。
そういう狙いもあります。
イベントは6月20日と21日の夏至の2日間で開催しますが、20日の夜に、不穏なゲームについての座談会も計画しているんです。その時間まで残っていただければ、お昼~夕方~夜と時間が経過することで、雰囲気が変わる多摩センターという街の面白さにも触れてもらえるかもしれません。
楽しみです。
会場のお話になりますけど、ブースの見せ方ひとつとってもこだわりが詰め込まれていそうですね。

まさにそこにこだわっています。
この手のイベントって各ブースが理路整然と並べられている印象があるかと思いますが、今回の展示会はブースの配置自体が“不穏”になるように熟考しました。あえてアシンメトリーにしていたり、隙間のある空間を残していたり、ゲームのイベントではあまり見ない構造に仕上げているつもりです。
極端なことを言うと、来場者が多いとそれはそれでコンセプトが崩れるというか……。
興味を持ってもらえることは嬉しいんですが、会場が混雑すると、あえて隙間を残すことで生まれる不穏さが無くなってしまうおそれもあり、痛しかゆしなんですよね(苦笑)。
お客さんが増えすぎるのも困るというのは……主催者側の言葉とは思えませんね(笑)。
でもここまでお話を聞かせてもらったぶん、お気持ちは理解できます。皆さんにとっての矜持というか、こだわりが感じられますよ。
先ほどイベント後に座談会が催されるというお話もおうかがいしましたが、クリエイター同士の横のつながりもあったりはするのでしょうか?
当初はそれほどでもありませんでしたが、Discordに参加してもらっていることもあって、現在はゆるいつながりが生まれつつあります。
そうですね。
先ほど、金から「会場の構造はアシンメトリーになっている」とお伝えしましたが、これはまさに出展者さんとのコミュニケーションで決まった部分なんです。レイアウトを考えるにあたって「シンメトリーでカチッとした案」と「洞窟のようなカオスな案」を提案し、これに対して出展者全員にDiscordで投票してもらいまして。
結果的に「カオスな案」が選ばれたってことですか?
出展者さんもだいぶ面白い方々が集まっているようですね。
出展者の来歴も良い意味でばらばらです。古田さんや金さんの縁もあって、海外出身のクリエイターさんにも出展してただけることになりましたし、郊外の開催なのにすごく国際色豊かなイベントになっています。
そういった部分も含めて“カオス”なので、興味を持ってくれた方には楽しんでもらえると思います。
出展タイトル紹介②

『Meet Me At Shinjuku Station』
作者:Rinoaskyes
新宿駅で必ず迷子になるという現象を、日本に住む外国人の視点でゲーム化。

『Re:Re:Re:Respawn』
作者:Studio非
死を繰り返しながら巨大建造物””BOX””の秘密に迫っていくリスポーンアクション。デモプレイができるのは今回が初とのこと
渡部さんはフツララブースで、古田さんと金さんは.irisブースで、それぞれゲームを展示されるんですよね?
せっかくなので、ここでどんなゲームなのかを少しアピールしていただければと思います。
フツララブースでは『CultureHouse』という、奇妙な建物で奇妙な生物を培養するアドベンチャーゲームを展示します。3DCGやゲーム制作を仕事にした理由でもあるのですが、子供の頃から“空間”というものが大好きで、この作品にはそういう“空間への偏愛”が盛り込まれています。

『CultureHouse』
作者:futurala
失踪した科学者の住宅兼研究施設「カルチャーハウス(培養荘)」で謎めいた生命体の培養実験を行うADVゲーム
渡部さんの“ヘキ”が存分に盛り込まれているってことですかね(笑)。
ええ。物語は失踪した科学者の住宅兼研究施設で展開します。ストレートな怖さを目的としたホラー作品とは異なりますが、奇妙なバックグラウンドを持つ空間で昼夜を通して生活するなかで、奇妙な存在や出来事と遭遇してゆく……そんな、穏やかな空間を不穏が侵食していく違和感を味わってもらえればと思います。
.irisさんのほうはいかがでしょう?
.irisは『A Passing in the Night』という、深夜の街を1時間彷徨うアドベンチャーゲームを展示します。我々は本作を“サイコロジカルファンタジー”と呼称していまして、ホラー的な怖さというよりは「奇妙だけど切ない」という側面に注力しています。

『A Passing in the Night 』
作者:.iris
限られた時間の中で散歩し、放浪者や亡霊と対話をしながら、奇妙な夜の街を彷徨う三人称3Dアドベンチャーゲーム
ゲーム内の1時間は、現実の1時間と連動しているのでしょうか?
そのとおりです。展示会では1時間を丸ごと遊んでいただけるわけではありませんが、その一端を体験していただく想定です。じつはこの展示会用のアレンジデモも準備中なのでお楽しみに。
つまり、このイベントでしか体験できない特別バージョンになっているってことですか。これは要注目ですね!
では最後に、この記事を読んでインディーゲームの開発に興味を持った方に対してのメッセージやアドバイスをいただけますか?
まだイベントも実施前ですし、ゲームも開発中なので、確かなことは言えませんが……。
イベントでもゲーム制作でも自分が面白そうと感じるイメージが湧いたら一歩を踏み出すことが大事だと思います。先が見えない道を進むのは勇気が必要ですが、逆にいえばそんなにわくわくすることもないですよね。その結果、予期しない事態に出会ったとしても、それを受け止めて先へ進むのが”不穏”を愛し、”不穏”に向き合うことなのかなと。
インディーゲームのクリエイターにはそんな心構えが役に立つと思います。
プレッシャーを平常心で受け止められるかは大事な素養かもしれませんね。特にインディーゲーム開発はすべての判断が自分の責任なので、プレッシャーも多くなりますが、その中で楽しく制作できるクリエイターは強いと思います。
クリエイティブの判断もすべて自分たちにのしかかってきますが、やっぱり自由にモノを作れるというのは楽しいですからね。そのぶん自己チェックのハードルも上がるので、放っておくとずっと同じものを作り続けてしまいかねないのですが(汗)。どこで線を引くのか……その判断もまた自分自身に委ねられていて、それがまた楽しい。
渡部さんの言葉どおり、何かを表現してみたいと思っているならまずは行動あるのみだと思います。
今後は今回の“不穏”のようなクリエイター発のイベントも増えていくとお考えですか?
そうですね。たとえば美術展でも、都心で開催される大きなイベントばかりではなく、公民館などで行われる絵画とか彫刻とか書道などの展覧会もあるわけじゃないですか。ゲームイベントも今後はそういった地域とか創作グループの交流から発生するものが増えていっていいと思います。
そういったイベントを主催するにあたって、大事な心構えってなんでしょう?
先ほどの話にも通じますが、とりあえずやってみてしまえばいいのかなと。とはいえ、なかなか踏ん切りがつかない場合は、我々のように、先に会場を押さえてしまって、細かいことは後から決めると良いかもしれません。
やると決めてしまった以上、もう進むしかありませんでしたもんね(笑)。
そうですね(笑)。始めてしまえば、思わぬところで計画に参加してくれる同志と出会ったり、応援してくれる人が増えていったりもしますから。
何かを作りたいという衝動がある方は、ぜひ思い切って前に進んでほしいと思います。
素敵なお話をありがとうございました!
イベントもぜひおうかがいさせていただきますね!
ライター紹介

タダツグ
締め切りはケツ合わせ系のゲームライター。業界歴は20年以上で、1日のうち大半の時間をゲームに注ぐほか、アニメや映画、マンガなども大好物。仕事柄、多数のゲームに触れる機会が多いものの、趣味の範囲ではお気に入りのゲームをずっと遊び込むタイプ。