各界の第⼀線で「未知なる領域」に挑み続ける方々の思考を紐解くインタビュー連載『挑戦の人間学』。結果だけではなく、そこに⾄るまでの葛藤や、⾔葉にできない過程に光を当てます。
今回お話を伺ったのは、キャビンアテンダント(CA)からグラビアアイドルに転身し、現在はバラエティ番組やドラマなどで活躍する、風吹 ケイさん。「自分に自信がない」と等身大の葛藤を明かしながらも、お芝居という新たな挑戦へ一歩ずつ歩みを進める風吹さんに、CA時代から続く仕事の美学について伺いました。
プロフィール

風吹 ケイ(ふぶき けい)
1999年4月5日生まれ。大阪府出身。2022年グラビアデビュー、同年グラビアオブザイヤー2022グランプリ受賞・グラビアン魂アワード2022リリーフランキー大賞・初代ミス呂布カルマ2022・グラビアアカデミー賞2022グランプリを受賞する。江頭2:50のエガちゃんねる・佐久間宣行のNOBROCK TVの出演をきっかけに新たなファン層の幅が拡がる。現在もバラエティ番組から映画、ドラマ出演と役者としての活動を拡げている。
事務所公式サイト:https://www.primecorp.co.jp/talent/fubuki_kei/
X:https://x.com/kei_fubuki_
Instagram:@kei_fubuki_
YouTube:https://www.youtube.com/@kei_fubuki
当たり前を積み重ねる。“風吹ケイ”を作った「数値化される努力」
——現在はバラエティ番組、ドラマなどでご活躍されていますが、風吹さんの姿を見ていると、随所にその「真面目さ」や「誠実さ」が垣間見えます。幼少期からそういうお子さんだったのでしょうか?
真面目なほうだったと思いますね。勉強も嫌いじゃなかったですし、テストの点数みたいに、しっかりと“数字”として結果が出るものが好きだったんです。頑張ってきたことが目に見えてわかるというか、努力が数値化されるのが嬉しくて。
私はそんなに裕福な家庭で育ったわけではなかったのですが、日々のなかで、誰にでもできる当たり前のことを頑張ったら、ちゃんと褒めてもらえてきた。お金があるかないかに関係なく、地道に頑張ることが将来にも活きてくるんじゃないかと、子どもながらに感じていました。
——少し抽象的な質問になりますが、「結果が出てはじめて存在価値を認めてもらえる」と感じるのか、それとも「積み上げていく努力の過程そのものに意味を見出せる」のかで言うと、風吹さんはどちらに近いですか。
それで言うと、完全に前者だと思います。私は、周囲から評価されることや、目に見えてわかる結果を得ることによってはじめて自信がつくタイプなんです。今の仕事でも「わかりやすい形」として現れるものに救われている部分は大きいですね。

……ただ、その根底にあるのは、自分に対する「自信のなさ」かなと思っています。
学生時代から培われてきた「努力して頑張ったら、その分結果が出て、自信につながる」という価値観を前提に「やればやるほど自信はつくものだ」と言い聞かせながら日々向き合い続けている。そのことに迷いはないのですが、同時に、その努力のサイクルに頼っているのは「自信のなさの裏返し」なんだろうな、と。
それは、この仕事をはじめてからより強く感じるようになりました。
実は、自宅のリビングに「誰にも負けない、絶対負けない、誰よりも先に」と書いた紙を貼っているんですよ。芸能界は自信がないと生きていけない業界だからこそ、なるべく自信がつくように、毎日目に入る場所に貼って自分を奮い立たせていますね。
代替不可能な存在なんてない。その現実と向き合うために

——過去のインタビューで、「芸能界で代替不可能な存在になりたい」とお話しされていたのが印象的でした。
会社員としての経験がなかったら、そこまで強く感じることはなかったと思います。
CAとして働いていたときには、最終目標は「飛行機が無事に飛ぶこと」であり、私はその一員として従事してきましたし、決められた役割を全うする生き方に違和感を抱いていませんでした。
ですが今では「風吹ケイ」という存在を選んでお仕事をさせていただいている。そうしてはじめて「私じゃないとダメなんだ」と気づかされて、「代替不可能な存在になりたい」と思うようになりました。
ただ、矛盾するようですけど、「代替不可能な存在でありたい」と強く願う一方で、基本的には「何だって代替可能なんだろうな」とも思っているんです。
——今回のインタビューもそうですが「風吹ケイさんと仕事をしたい」と言われる立場になっても、そう感じられるのですね。
これは決してネガティブな意味ではないんです。たとえば映画を作るとき、監督が「絶対にこの役者さんでやりたい!」と熱望したとしても、スケジュールや大人の事情で断られてしまったら、結局は二番手、三番手候補の方に代わりますよね。
今回このインタビューの依頼を受けて、私を選んでいただいたことは本当にありがたいですし、そうやって選ばれ続ける存在でありたいとあらためて感じました。ですが同時に、もし私が今日ここに来る途中で、事故に遭ったり入院したりしてどうしても来られなくなったら、きっと別のどなたかでこの連載の穴は埋められてしまうのかもしれない、とも思っているんです。
何に関しても、どこかで代わりがきいてしまう。こうやって言葉にすると、悔しいし、悲しくなるけれど、それが現実なんだろうなとどこかで感じています。

今「DЯAW♡ME」の一員としてアイドル活動もしているのですが、メンバーのみんなと似たような仕事をしているので、仕事の候補としてメンバー同士が比較されることもあるんです。場合によっては私が選ばれることもあれば、別のメンバーが選ばれることもある。メンバーのことは本当に大好きで大切な存在だと思っていますが、そのたびに「私じゃないといけない理由なんて、本当はどこにもないのかもしれない」と現実を突きつけられています。
「風吹ケイにお願いしたい」と言ってもらえることはもちろん嬉しいし、期待に応えたい。ですが同時に、責任感や「いつこの椅子が奪われるかわからない」という焦燥感が生まれているのも事実です。
この現実のなかでどうすべきかと何度も考えてきたのですが、「それでも自分を選んでもらえるように、必死に努力を続けるしかない」という結論にしか行き着かないんですよね。
本当の意味での「代替不可能な存在」なんて、きっとこの世界にはない。そうなれないとわかっているからこそ、私はもがき続けているのかもしれません。
巡ってきたチャンスを絶対に離さない。努力で磨く、運を掴むための「握力」

——少し話が逸れてしまうのですが、今のお話を聞いて「運」についてお伺いしたいと思いました。
「本当は二番手だったけれど、代役で出演したことによってブレイクした」みたいな話って、よくあると思うんです。とくに芸能界においては「努力」で解決しきれない領域が明確にあると感じています。
風吹さんは、どのように考えられていますか?
なるほど、面白いですね。
おっしゃる通り、この世界において「運」や「タイミング」という要素は、間違いなく存在していると思います。ただ、これは自戒の念も込めて、というか、それでしかないんですけど……(笑)。いくら目の前に素晴らしいチャンスが巡ってきたとしても、それをしっかりと掴み取るための「握力」を日頃から鍛えておかなければ、掴めるはずのチャンスもすり抜けていってしまうのかもしれない、と考えています。
——「運」を掴むための「握力」。素敵な表現ですね。
実際、今回出演させていただいた地上波ドラマ(中京テレビ『おちたらおわり』)の現場でも、共演した先輩方からたくさんのことを学ばせていただきました。
私から見れば、皆さんはすでに第一線で活躍されている方ばかりです。それにもかかわらず、話を聞くと、多忙なスケジュールの合間を縫って他の方の舞台を観に行かれていたり、睡眠時間を削ってまで読書に励まれていたりする。
そのような先輩方の「努力」を見て「ああ、自分のしている努力なんて、本当にまだまだちっぽけなものなのだな」と身が引き締まって、最近はこれまで以上に本に触れる時間を作ろうと心がけるようになりました。

「爪痕を残そう」と力むほど空回る。実力を発揮するための引き算
——風吹さんの出演されている映像を見ていると、求められていることに対して、100%以上の熱量で返そうとする姿勢を感じます。それもひとつの「努力」であり、「運」を掴むための「握力」になるのかな、と。
芸能のお仕事では、その塩梅が難しいですよね。
CAのときには保安要員として飛行機に乗務していたので、明確なマニュアルがあって、「こういう事象が起こったらこう対応しましょう」というフローチャートがしっかりと決まっていたんです。臨機応変さが求められる業界ではありましたけど、決まった枠組みのなかで「自分の振り幅の100%」を出せばよかった。
それが、芸能のお仕事では毎回「正解」が変わります。
たくさんの現場を経験させていただいてくなかで感じたのは「爪痕を残しに行こう」とすると、逆に空振ってしまうことが多い、ということでした。
もちろん「100%以上の力を出そう」という心づもりや準備はしっかりしていきます。ですがいざ本番となると「120%できた!」と実感できることは正直あまりないんです。とくに私はバラエティのエピソードトークが苦手なので、苦戦することも多々あります。
ですが、バラエティのなかでも「何かに成りきる」部類のものに関しては、自分のなかで「爪痕を残してやろう」というよりも「好き」「楽しい」という感情が先に来るんです。だからこそリラックスしてやれているし、それが結果として、120%の力を発揮できたり、観てくださる方にいいと思ってもらえたりするのかな、と思います。
——ついつい「爪痕を残そう」と力んでしまいがちですが、本当の意味で自分の実力を発揮するためには、一度肩の力を抜いた方が、良い部分を引き出してもらえるのかもしれないですね。
もっと身近なところでいえば、彼氏を作りに行こうとして参加した飲み会は、絶対に成功しないですからね(笑)。でも、本当にそんな感じな気がします、何事も。

——本当にそうですね(笑)。こうしてお話を伺っていると、風吹さんはご自身のことをすごくシビアに、客観的に見つめられていますよね。バラエティ、ドラマとさまざまな挑戦をされていますが、どのようにキャリアの目標を立てていますか?
私は、目指すべき大きな目標という「旗」が一本しっかりと立てられたら、そこに向かって自分が今何をやるべきかが自然と見えてくる性格なんです。今でも「何をやるべきか」をよく紙に書き出したりもしています。
幼い頃は「シンデレラになりたい」なんて可愛らしい夢でしたけど(笑)、その後は「CAになりたい」と具体的に描くようになって。そして今は「小池栄子さんのような俳優になりたい」という明確な目標があります。
今の私にとって一番大きな目標は、やっぱり俳優業。お芝居の道を突き詰めていくことです。その大きな旗のために、まずはどんな役でも全力で向き合って演じようと決めています。

演じる側に立って知った、芝居の難しさと面白さ
——風吹さんは、お芝居のどういった部分に魅力を感じられているのでしょうか。
観ている人のいろんな感情を引き出してくれるところです。
私の実家って、一日中テレビがついているような家だったんです。小さい頃からテレビドラマが大好きで、今でも放送されているドラマはほぼ全部観ているんじゃないかというくらい観続けています。
ドラマって、映画などと比べるとたくさんの人の目に触れやすい媒体ですよね。だからこそ、コミカルに描かれていたり、わかりやすいお芝居をされていたりすることが多いという印象があって。幼少期の私にとっても感情やストーリーが伝わりやすかったですし、そのエンタメに救われた瞬間が何度もあったんです。
たとえば、中高生のころのやるせない恋心を月9を観て消化したり、『メイちゃんの執事』『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』を観て「きゃー!」と騒いだり……(笑)。本当にたくさん笑わせてもらったし、怒らせてもらったし、泣かせてもらった経験が数え切れないほどあります。

——お芝居に挑戦するなかで、視聴者として感情を“引き出される側”から、“引き出す側”になった。実際に演じる側に回ったことで、お芝居に対する価値観に変化はありましたか。今後の展望を教えてください。
映像として編集されたものを観ていたときは、登場人物の感情が一直線に繋がっているように見えていたのですが、実際に自分で演じてみるとものすごく難しいことに気がつきました。
あとはまだ勉強中なんですけど、演じるようになってからドラマを観ると、「あ、ここはこういうカメラワークなんだ」と、制作の裏側に意識が集中してしまう自分がいますね。
ドラマの現場ではスタッフの皆さんともたくさんお話させてもらって、また新たにドラマや映画を観るのがより面白くなるような価値観を与えてもらいました。そしてそれが、次のお芝居にも活きる気がしています。
キャストの皆さんと接していて思うのは、それぞれに素晴らしい魅力があるということ。「正解」のない世界ではありますが、むしろそこが面白みに繋がるのかもしれない、と思うんです。
この世界は、本当の意味で「代替不可能な存在」はいないのかもしれない。でもだからこそ、努力をし続けたいと感じられる。これから出会う作品を通して、観てくださる方の心にいろんな感情を届けられる俳優を目指して、一つひとつ、努力を積み重ねていきます。
取材・執筆:高城 つかさ
撮影:長野 竜成
撮影場所:WeWork 丸の内北口