各界の第⼀線で「未知なる領域」に挑み続ける方々の思考を紐解くインタビュー連載『挑戦の人間学』。結果だけではなく、そこに⾄るまでの葛藤や、⾔葉にできない過程に光を当てます。
今回は、ダンス&ボーカルグループ「ENJIN」の一員として活動しながら、ミュージカル『テニスの王子様』や舞台『おそ松さん on STAGE』など2.5次元舞台でも幅広く活躍されている草地 稜之さんにインタビューさせていただきました。
草地さんは「ミスター明治学院大学2018」をはじめとした大学生ミスターコンテストで三冠を達成し、2019年には人気オーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』に挑戦。華やかなスポットライトを浴び続ける草地さんの根底にある、泥臭く、誠実な「挑戦」への想いに迫ります。
プロフィール
草地 稜之(くさち りょうの)

6月17日生まれ。東京都出身。ダンス&ボーカルグループENJINのメンバー。アイドルだけではなく俳優としても活動中。主な出演作品は、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 忍足侑士役、『絶対BLになる世界vs絶対BLになりたくない男』滝本役などがある。
ENJIN公式サイト:https://enjin-official.jp/
X:https://x.com/RyononK
Instagram:@18mgumr_no1
等身大の目標をひとつずつ積み上げて身につけてきた「自信」
——草地さんは音楽活動だけではなく、2.5次元舞台、映像作品と、芸能活動のなかでもさまざまな領域で「挑戦」をされています。幼少期から挑戦を厭わない性格だったのでしょうか。
それが、僕はもともと引っ込み思案かつ受動的で、新しいことに挑戦することが苦手だったんです。もともと芸能界に興味はあったものの、自信がなくて……。
そんな僕が変わるきっかけとなったのが、ミスターコンです。当時通っていたキャンパスが戸塚にあったんですけど、距離があったので通学までの時間にSNSを見ていたら、たまたまミスターコンの応募要項が流れてきて。「何かに繋がるかな」という気持ちから応募したんですよ。
そうして活動を続けていくうちに、『PRODUCE 101 JAPAN』をはじめとしたいろんな挑戦に繋がっていって、この世界に入らせていただけた。その成功体験から「挑戦することって大切なんだな」と身を持って感じられたから、今こうやって挑戦し続けられているんだと思います。
——一歩踏み出した先での成功体験があったからこそ、今の草地さんがいらっしゃるのだと感じます。ただ一方で、一度成功すると、同じパターンでできる“安全な”挑戦ばかりを繰り返してしまうこともあると思うんです。
確かに、おっしゃる通りだなと思います。
——草地さんが新しい領域で挑戦をし続けるために、どのようなことを心がけていますか?
僕は、小さな「挑戦」を積み重ねるようにしています。
今でこそ、挑戦して成功したと言える体験が増えましたが、それでも新しいことに挑戦するときは、毎回「今持っているものを失ってしまうかもしれない」という、ちょっとした怖さや葛藤が未だにあります。ただ、そこで立ち止まるのもつまらない。好奇心が尽きないんです。

なので、たとえばグループでの活動でも、いきなり「武道館に行く」と大きな目標を掲げる前に、「まずはZeppに立とう」と手が届きそうな距離の目標を小さく積み立てていくんです。
人によっては高い目標を掲げることで燃えることもあると思いますが、僕の場合、高すぎる壁はどこかで「叶わないんじゃないか」と諦めてしまいそうになる。
だとしたら、少しずつ確実に上に進めるような小さい目標を立てて、一つひとつクリアしていきたい。それを達成していった先に、いつか思い描いていた大きな目標に届いているはずだと信じています。
——「挑戦」というと大きなものが浮かびがちですが、「小さな挑戦」もある、と。
はい。僕は、小さな挑戦によって小さな成功体験を積み重ねてきたからこそ「きっとこの挑戦も、また次の成功に繋がっているはずだ」と前を向くための自信がつきました。
ちょうど先日も高校の同級生から「昔と比べて変わったな」と言われて。一見小さなことであっても、積み重ねていけば人は必ず変われるんだと思います。ですが、これに関しては自分の「運」もかなり関係していると思っています。
「直感」を信じてマイルールをやりきる――“運”を大切にする理由
——「運」についてのお話、もう少し詳しくお伺いしたいです。
僕、めちゃくちゃ「運」がいいんです。もちろん、ミスターコン時代にはライブ配信を頑張ったり、SNS発信なども続けていたりと努力も重ねてきました。ですが最後の一押しは、自分ではコントロールできない「運」だったなと思っていて。いまだに人との巡り合わせや出会いといった「運」に助けられているなと感じることも多いです。
——ともすれば、草地さんが通学時間にSNSを見ていなかったら今こうして取材をお受けいただけていないかもしれないじゃないですか。それもひとつの「運」ですよね。
そうですね。僕が「運」を信じるようになったのは、『PRODUCE 101 JAPAN』の最中に浅草寺へ行ったことがきっかけでした。ダンスも歌も未経験のなかで「挑戦するからには本気で頑張りたい」と参拝をしたら、本当にファイナリストに残ることができたんです。
もちろん、参拝によって覚悟が決まったことも大きいと思います。ですが特にこの世界では、オーディションの合格/不合格も含めて「努力」だけでは語れない領域も大きいと実感していて……。「運のおかげ」と考えることで、あらゆることを「チャンス」と捉えられるようになったし、「ならば、その運に乗るために努力をしよう」と考えられるようになりました。

——「挑戦」というと根性論的な発想になってしまう印象がありますが、努力を重ねたうえで、自分ではコントロールできない部分は「運」として受け止めている、その考え方が印象的です。それが謙虚さや軽やかさにつながっているのかもしれませんね。
「直感」といえば、僕、独自の「マイルール」がめちゃくちゃあるんです(笑)。小学生の頃、「道路の白い線しか踏んじゃダメ」みたいに自分だけのルールを作って遊んだ経験って、誰しも一度はあるじゃないですか。僕の場合、大人になった今でもそういうミッションがふと頭のなかに浮かんでくるんです。
「今から乗り換えるまでの間、この色を踏んで歩いてはいけない。失敗したら明日のオーディションに落ちる。成功したら受かる」みたいな。はたから見たら歩き方も変で怪しい自覚はあるのですが(笑)、直感的にミッションが浮かんでしまったからには、絶対にやりきる。「よし、やりきったから大丈夫」とも思えるし、実際、このマイルールをやり遂げたときほど、良い結果に繋がることが多いんですよね。

こう振り返ると、人生のあらゆる面で、自分の「直感」を信じているのかもしれません。
役作りやSNSの発信でも、周りの人のやっていることを見て「あ、これいいな」と思ったものは、積極的に取り入れるようにしています。ただ真似るのではなく、自分の色に変えてアウトプットしていく。そこに「努力」があるような気がしていて……。
そうやって、自分の直感が「良い」「面白そう」と反応したものを信じて、行動し続けてきたからこそ、今の自分ができあがってきたのかなと思っています。
「端っこ」から「センター」へ。“ギャップ”で掴んだ自身の武器

——順調に挑戦を重ねてきたようにも見えますが、グループ活動においてはいかがでしょうか。
結成1〜2年目までは「このグループにいていいのかな」と悩んでいたこともありました。というのも僕、本当に人気がなかったんですよ。歌もダンスも下手くそだし、個人で輝けるものもないし、ファンの数も少ない。
本心ではセンターに立ちたかったけれど、当時は「真ん中に行きたい」という自主性を前に出す勇気も持てなかった。そこで「スタッフさんから『RYONOは真ん中に立って』と言ってもらえるようになるくらい頑張ろう」と決意したんです。
——「努力をしてその場所を掴み取ろう」と。
はい。そのために、まず「自分に何ができるんだろう」と考えました。歌やダンスは、実力のあるメンバーに追いつくにはどうしても時間がかかる。だとしたら、並行してSNSを本気で頑張ってみようと思ったんです。リール動画を作ってみたり、配信の仕方を工夫したりと、いろんな角度から手探りで試していくなかで「自分にはこれが合っているな」というものを絞り込んでいきました。

そうしていたら、2023年にミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン(テニミュ)に忍足侑士役として出演できることになったんです。まさにこれも「運」だなと思いましたし、「このチャンスは絶対に逃さない」と決めて、テニミュを通して僕に興味を持ってくれた人が、どうやったら僕のことをより好きになってもらえるのかを必死に考えました。
——具体的に、どのようなことを意識したのでしょうか。
テニミュだけではなく、役者としてクールなキャラクターを演じることが多いのですが、だからこそ、インスタライブなどであえて“ギャップ”を出すことを意識しました。
最初から意識していたわけではないのですが、ファンの方に「ギャップがある」「ふわふわしている」といったことを言っていただけることが増えて、これこそが自分の武器であり、愛してもらえるポイントなんだと気づいて「隠さずどんどん出していこう」と。「役はすごくクールでかっこいいのに、配信で見せる素顔はふわふわしているぞ。このギャップは何だろう?」って、ファンの方が楽しんでくれたら嬉しいなと思ったんです。
そこから、本当に驚くほど急激にファンの方が増えて。あのときの必死だった自分が、少しずつ報われているなと感じます。
——個人活動やグループ活動では自ら“強み”を打ち出したり、“正解”を探していくところがあると思っていて。ですが一方で、草地さんが多数出演されている2.5次元舞台では原作が存在しますよね。ある種の“正解”が決められているなかで、どのように役作りをされているのでしょうか?
本当に難しいところですよね。僕は、「声」の表現に人一倍こだわっています。喋り方、ちょっとエッジの効いた声、かすれた声や吐息など、随所随所でキャラクターの特徴をかなり意識的に取り入れていますね。
もちろん、漫画やアニメを繰り返し見て、立ち方や動き方の特徴を自分なりに補完して体に染み込ませる作業も行います。その上で、本番が始まってから一番大切にしているのが、原作ファンの方々の声なんです。

実は僕、エゴサをめちゃくちゃするんですよ(笑)。なぜかというと、作品を心から愛しているファンの皆さんの生の声が聞ける貴重な機会だから。「自分は無意識に演じていたけれど、ファンの方からはこういう風に見えているんだな」と気づかされた部分は、翌日の公演からすぐに意識して反映させてみたりもしています。
そのなかで「自分はこういう確固たる意図を持って演じているから、この意見は今回は反映しないでおこう」と線引きをすることもありますが、ファンの皆さんの客観的な視点をエゴサから取り入れて、自分に反映させることはとても多いです。
——まさに直感的に「良い」と思ったものをすぐに取り入れているのですね。
そうですね。本当に、2.5次元舞台は僕にとって「天性の場所」というか、自分に最高に向いているフィールドだなと確信しています。今後はさらに表現の幅を広げて、ちょっと狂気じみたマッドサイエンティストのような役にも挑戦してみたいですね。
今、僕を応援してくださっているファンの多くは、舞台をきっかけにENJINの活動にも足を運んでくれるようになった方々なんです。そうした皆さんから「新しい世界を見せてくれてありがとう」と言ってもらえたり、反対にアイドルとしての僕をきっかけに初めて舞台を観にきてくれた方が「舞台ってこんなに面白いんだね」と言ってくれたり。どちらの世界にも全力で立っているからこそ、それぞれの魅力がちゃんとファンに伝わっているなと感じられて、すごく嬉しいです。
後悔を乗り越えて、挑戦を続ける。草地稜之さんから送る「挑戦者へのメッセージ」

——草地さんは「声」が非常に魅力的で独特だなと思っていて。ENJINの楽曲を聴いていても、艶っぽさと繊細さ、その奥にある芯の強さが一瞬で伝わってきます。
初めてENJINの楽曲を聴いた友達からも「リョウの声は一瞬でわかる」とよく言われます。ただ、僕の声って複数の「音の層」が重なっているような響き方をするので、ピッチが少し低く聴こえやすくて、合わせるのが難しいんです。高い声を綺麗に出せる人を見て「羨ましいな」と思うこともありますが、最終的には「まあ、この声は自分だけの唯一無二のものだから、これでいっか!」と毎回自分の声を愛せるようになってきました。
特に、8月26日に発売される2nd EP「BRAZE」に収録されている『SWEET SLOW MOTION』では、僕がすごく歌いやすいキーと、僕らしい表現を乗せやすい歌詞を当てていただいたんです。なので、今回はいつも以上に「切なさ」を自分なりにしっかりと歌声に乗せることができたと思っています。
——その豊かな表現力には、やはりこれまでの舞台での経験も活きているのでしょうか?
間違いなく活きていますね。2024年に出演したミュージカル『暁のヨナ』の演出家・元吉庸泰さんに、「稜之くんは声が良いのはもちろんだけど、わからないことや表現方法を自分で徹底的に考えて提示してくれる、そのまっすぐな姿勢がすごく応援したくなる」と言っていただけたことがあって。
そのときに元吉さんから教わったのが、「歌を表現するときは、声だけで出そうとするのではなく、まず体全体で表現して、その延長線上に自然と声を乗せていくんだ」ということでした。
基本的なことのようですが、実際に舞台の上でやってみて「身体を動かすことで、初めて深みのある表現が生まれるんだ」と、腑に落ちるように学べたんです。その学びは、ENJINのパフォーマンスでも常に意識して大切にしています。
ENJINも、現在の6人体制になってからより全員が一緒に同じ時間を過ごす機会が増えて、これまで以上に絆が深まってきたタイミングでのリリースなので、また受け取り方も変わるんじゃないかな。ぜひ、細かいところまで耳を澄ませて聴いていただきたいですね。

——ここまでお話を伺っていると、「運を待つ」のではなく、「運が来たときにつかめる準備を続ける」という姿勢が一貫しているように感じました。草地さんがこれから積み重ねられていく「挑戦」の先にどんな未来が待っているのだろうと思うと、これからのご活躍がますます楽しみです。
最後に、草地さんと同じように新たな一歩を踏み出そうと迷っている同世代へ、背中を押すメッセージをいただけますか?
僕の経験ベースになっちゃうんですけど……。「俺は挑戦して本当に良かった。だから絶対に挑戦してほしい」と伝えたいです。
今でこそ「挑戦っていいことだと思う」とお話できていますが、これまですべてが順風満帆だったわけではありません。いまだに「あのときこうしておけばよかったのに、自信がなくて逃げてしまった」と後悔していることもあります。でも、その苦い経験があったからこそ、「これからは絶対に逃げない。迷ったら自分の直感と運を信じて全力で向き合おう」と決めることができたし、この世界に入ってからは、二度と後悔する選択はしないと心に決めています。
だからもし今、何かに挑戦しようか本当に迷っているなら、自分の「やりたい」という直感を信じて、一歩を踏み出してみてください。大きな目標でなくても大丈夫です。今日できる小さな挑戦を積み重ねていけば、人は変われると思います。
ENJIN待望の2nd EP 「BRAZE」発売!

ENJIN 2nd EP『BRAZE』
発売日: 2026年8月26日(水)
品番: UMCK-1834
価格: ¥1,400(税込)
形態: 通常盤・1形態
封入特典: ランダムトレーディングカード(全12種のうちランダム封入)
収録曲
1. Right Now, この夏
2. SWEET SLOW MOTION
3. Evolution
4. SUPER DIVE
予約リンク:https://enjin.lnk.to/2ndEP_CD
先行配信情報
ENJIN「Right Now, この夏」
配信日: 2026年8月5日(水)0:00
ヘアメイク:中山 伸二
取材・執筆:高城 つかさ
撮影:小泉 佳