各界の第⼀線で「未知なる領域」に挑み続ける方々の思考を紐解くインタビュー連載『挑戦の人間学』。結果だけではなく、そこに⾄るまでの葛藤や、⾔葉にできない過程に光を当てます。
今回は、トレーナー・吉川 太郎さんにインタビュー。
アイドルとして活動し、2025年に所属していた芸能事務所を退所後、トレーナーへとキャリア転換をした吉川さん。そのほかにもYouTubeや生放送番組など多方面にわたって活躍する吉川さんに、「挑戦」の軸にある考え方について伺いました。
プロフィール

吉川 太郎(よしかわ たろう)
2001年10月9日生まれ、滋賀県出身。O型。2025年7月より総合鍼灸整骨院 Zenith Tokyoに所属し、トレーナーとして活動開始。そのほか、YouTubeや冠番組『吉川太郎の天界バズ修行』(ニコニコチャンネルプラス)など広く活動している。
YouTube:https://www.youtube.com/@taro_yoshikawa
Instagram:https://www.instagram.com/yoshikawa_taro_kozzy.s/
アイドルからトレーナーへ。23歳で決意したキャリアの起点

——吉川さんは芸能界を引退後、トレーナーに転身されましたが、キャリア転換のきっかけを教えてください。
退所当時23歳だったのですが、ちょうど年齢的にもまわりの同級生が就職しはじめた時期で。当たり前のことなんですけど「みんな自分で仕事を決めて、就職しているんやな」と実感して、あらためて自分の将来について考えるようになったんです。
トレーナーを選んだのは、「人にものを教えることが好き」というシンプルな理由から。勉強もそうですけど、自分が持っている知識を人に伝えるのが昔から好きやったんですよね。
なかでものめり込むことができたのがトレーニングで、事務所に所属していた頃から筋トレ系のYouTubeなどを見ていたくらいだったので、「トレーナーなら続けられそう」と目指すことを決めました。
——トレーナーとしての活動を発表する前の2025年5月にはボディコンテストに出場していましたよね。
はい。コンテスト前日にSNSを開設するまではいっさい表には出ず、“潜伏”していました。
過去に僕と同じように芸能界を引退した人たちの例も見てきたので、「これまでにないやり方を選んだほうが面白いかも」と思ったんです。
発表したときにはファンの方はもちろん、まわりの人たちにも驚かれましたね。

——2ヶ月ほどの“潜伏期間”はどのように過ごされていたのでしょうか。
当初からトレーナーになることを考えていたので「お客様を集めるなら東京のほうがいいかな」と思い、まず上京しました。
そうしたら、陸上選手をしている幼馴染が、のちに僕がトレーナーをすることになる総合鍼灸整骨院 Zenith Tokyoを紹介してくれて。そこで師匠と呼べる存在と出会い、それからはトレーニングの日々を送りましたね。
ネットなどで栄養バランスといった基本的な知識については知っていたのですが、基礎から学び直そうといろんな教科書を読んで、生理学や解剖学といった座学の勉強をしたりもしました。無事にお客様を持てるようになり、いまでは週5日8時間、みっちりとトレーニングさせてもらっています。
「教科書通り」が通用しない面白さ。個人の特性に寄り添う、パーソナルの魅力

——ご自身でするトレーニングと、対お客様へのトレーニングとだと、どのような違いがありましたか?
なんやろうな……そう考えると、違いばかりですね。
解剖学的に「この動きが正しい/正しくない」「怪我をする/怪我をしない」といった知識は知っていたものの、僕なら動く筋肉が、お客様の場合はうまく動かなかったり、別のフォームのほうが効きやすかったりもするじゃないですか。
僕にとってはやりやすいと感じるフォームでも、それがお客様にとってベストな方法とは限らない。
その場合は、「このフォームだとどうですか?」「そうしたらこっちのトレーニングにしましょうか」と手探りで進めていくしかなくて、パーソナルトレーニングってその繰り返しなんですよね。トレーナーって、奥が深い仕事なんですよ。
——基礎知識はもちろんのこと、「個人の特性を見極める力」も求められるのですね。
むしろ、そのほうが大きいですね。
自分だけを鍛えるなら、骨格を理解して合う方法を追求したらいいですけど、人に教えるとなると、それだけではうまくいかない。
例外やイレギュラーなパターンを想定しないといけないし、そのためには「このパターンの人にはこういう伝え方をしたら改善する」といったように、いろんなケースを知らないといけない。全部を教科書通りに当てはめるわけにはいかないんです。
修行期間も含めるとトレーナーになってもうすぐ1年が経つのですが、少しずつ面白さを掴めるようになってきました。

——実際に「掴めてきた」と感じた瞬間のことを覚えていますか?
「あの瞬間にそう思った」というよりは、もう「常に面白い」という感覚ですね。
たとえば、足の指って動かせますか?
——足の指、ですか?
そうそう。実は人間って、足の指を1本ずつバラバラに動かせたり、グー・パー・チョキの形にできたりするんです。筋肉を使わなさすぎて動かなくなっているだけで、本来はできるはずの動きなんですよ。
——いま試してみたら、できませんでした。そもそも動くことさえ知らなかったです。
でしょう。もちろん僕にもできないことはたくさんあるんですけど、僕が担当している生徒さんの多くは、最初は僕ほど身体を動かすことができない状態だったので、こんなふうに、まずは「何ができるか/できないか」の擦り合わせからはじめて、「僕ができることをどうやったらできるようになるんやろう」って試行錯誤を繰り返すんです。
それが、僕の考えるトレーナーの役割なんですよ。
芯にあるのはトレーナーとしての自覚。「まわりの人に活かされる」ことで加速する挑戦
——自分の身体も未知だなと思いましたが、それが他の人の身体となるとなおさら面白そうですね。では、トレーナー以外の活動についてもお聞かせください。YouTubeや生放送の冠番組などいろいろ挑戦されていますが、それぞれどのくらいの割合でお仕事されているのでしょうか。
トレーナーとそれ以外の活動で9:1です。やっぱりトレーナーに転身すると決めた以上、芯はブレたくないので、「まず1年はトレーナーとしての仕事に集中しよう」と決めています。
2年目以降はSNSの発信なども強化していきたいなと思っていて、いまなかなか更新できていないYouTubeもさらに力を入れていく予定です。
独立して気づいたのが、まわりの人たちに活かされてきたということ。YouTubeが続かないのは、ありがたいことに忙しくさせてもらっていることもありますが、一番はひとりで企画を考えたり、喋り続けたりすることに限界を感じたからなんです。ちょっと喋っても、誰も何も突っ込んでくれへんし……(笑)。
そもそも僕は「まわりの人が動いてくれているから頑張ろう」「まわりの人に迷惑をかけへんようにしよう」という考えから動けるタイプなので、人と作業をする環境のほうが向いているな、と思います。
——フリーランスとして活動されている方の中には「自分主導でやっていきたい」というスタンスの方もいる印象ですが、吉川さんはまわりに人がいてこそ、なのですね。
そうですね。きっと僕は、引き出してくれる人がいてこそ活きるタイプなので、一緒に取り組んでくれている仲間にはとても助けられています。

2025年11月からはニコニコチャンネルプラスで冠番組『吉川太郎の天界バズ修行』を持たせてもらっていて。
それもはじめは僕がひとりで番組を回していく流れだったのですが「僕の特性上、そのやり方だと難しいかもしれません」とお伝えして、“天の声”として作家さんに参加してもらう形で進めているんです。
実は、その作家さんにお声がけして一緒にYouTubeも作っていく予定で。いまは企画から撮影、編集まで僕ひとりでやっている分なかなか投稿できていないので、しっかりと期限を決めて、週に一本は投稿していきたいな、と思っています。
——スタッフさんを含めて、吉川さんのまわりにいる人たちの特徴をあげるなら、なんでしょう?
いやあ、面白い人ばかりですよ。なんやろう、表現が難しいんですけど、イエスマンではなく、同じベクトルで議論できる人たちなんです。
僕、自分のことを常に疑っているんですよ。何かを思いついても「たぶんこれでいけると思うけど、どうでしょう?」って、いつも思っていて。
だから、その「どうでしょう?」の部分に答えてくれる人が必要なんですよね。
もちろん「絶対に外したくない」と思うポイントはあります。なのでそこは意識しながらではありますが、自分の意見を100%貫くよりも、他の人の意見を取り入れることでもっと面白いものが生まれるのなら、それが一番いいかな、と。
客観的な視点で守り抜く、“吉川太郎”としての軸

——吉川さんが仕事をするなかで大切にしている美学のようなものはありますか?
「ファンの人が僕にやってほしいと思わないことはしない」ですかね。芸能界で仕事をしていたときから「どう見られているか」については真剣に考えてきたし、それが現在も続いているんです。
もともと自分らしく活動させてもらってきたので、僕のなかの「吉川太郎像」とファンの方が思うそれとはブレが少ないのかなと分析していて。なので、新しい人たちとお仕事をするときには、その「吉川太郎像」を守るように意識しています。
YouTubeのコンテンツひとつとっても「吉川太郎をよく知る人」と、「なんとなく知っている程度の人」とだと、母数は後者のほうが圧倒的に多いじゃないですか。
そのなかで「吉川太郎像」を守りながらも「どの層に向けて届けるか」については常に考えないといけないし、その軸になる考え方は持っておきたいなと思っています。
あとはもう、感覚的に「楽しそうやな」と思ったらだいたい何でもお受けしていますね。
——直感で決めるタイプなんですね。
もちろん自分なりに考えてはいますけど、「楽しいか」「楽しくないか」といった感覚は大切にしています。
とは言いつつも、それは「楽しくない仕事はやらない」というわけではなくて。
たとえ楽しくないと思う仕事であっても、取り組むことで成長することもあるし、結局は全部つながっていると思うんですよね。いまは好きなことにひたすら向き合ってるほうがいい気がする、ただそれだけの理由で。
だから「楽しくないと思う仕事は絶対にやりたくない」とは言いきりたくなくて、「いまは楽しくないと思う仕事はやらんでもいいフェーズかな」「きっと好きなことだけに取り組むほうが、自分にとってもファンの人にとってもええタイミングなんやろうな」みたいな感じで動いています。

——お話を聞いていると、程よい緩急があるのかな、なんて思いました。
確かに、そうですね。トレーナーというとストイックな印象を持たれるのですが、決してそうではなくて、オフのときはひたすらゴロゴロすることもあります(笑)。
でも結局、ゴロゴロし続けていると罪悪感が沸き起こってくるじゃないですか。「ああ、今日何もせんかった……」って。そう思っても「まあ、そう感じるだけいいんかな」「今日1日休んだところでそんな変わらんわ」と切り替えて、明日以降の自分に託します。
——そういったバランス感覚が吉川さんの魅力なんですね。
そのくらいのスタンスのほうが親近感を抱いてもらいやすいかな、と思うんですよね。
でもそれもやっぱり適性があって。「もうほんまに四六時中ずっと動いていないといけない!」という人はそれが薬になるけど、僕はそうじゃないほうがいい気がする、というか。
トレーニングも、人生のすべてを筋トレに注いだほうが筋肉も大きくなると思うんですけど、同時に、「そこまでやらんでもいい身体にはなれるし」とも感じるんですよね。週5日の筋トレを1日減らしたところで大きく変わるわけでもない。だから、トレーニングも何事もゆとりを持って取り組むようにしています。

生徒さんに対する食事指導も、しっかりメニューを見て決めていくというよりは「最近どうですか?」「何を食べていますか?」といった質問からはじめて、「じゃあこう変えてみたらどうですか?」ぐらいのアドバイスに留めるようにしていて。
ときには「週1回ぐらい普通に飲みに行ったらいいんじゃないですか」なんてことも言いますが、それも、そのくらいの緩さを持ったほうがダイエットも長続きすると思うから。
短期的に痩せるというよりは、一生続けられる取り組みとして、トレーナーの僕が教える時間を作り、生徒さんに吸収してもらおうというマインドで進めています。
僕自身も、今年中にまた大会に挑戦しようと思っているので、皆さんに去年とは違う仕上がりを見せられるように頑張ります。

取材・執筆:高城 つかさ
撮影:長野 竜成