展示会『バース』参加者インタビュー:イラストレーター aoさん

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若きアートの炎
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展示会『バース』参加者インタビュー:イラストレーター aoさん

プロフィール

作品名『金魚』

ao
のろのろと絵を描いて楽しんでいる不動産営業人間です。ちょくちょく依頼を頂きながら似顔絵やイラスト風景など描いております。気分が落ちている時ほど筆が進みます。
X:@aoaoaoi_b

aoさんの展示会出展作品、左から『サラダ』『ゆめのなか』『宝物』

作者について

――まずは絵との出会いを教えてください。

中学生のときにバレー部に入っていたんですが、そこか結構厳しめな部活でして……。
心にゆとりがない生活をずっと送っていました。

そんなある日、とある漫画に出会って、そこから絵を描くようになったんです。
といっても最初は、絵というより落書きといった感覚でした。
でも、私にとってはとても大事な時間でした。というのも、絵に没頭しているときは、自分を忘れられたんですよね。実生活とは別の世界に逃げ込むような感覚に近かったと思います。

つらいときの一つの逃げ道というか、人生の“避難場所”のようなものを確立できたことが、私の中では大きかったです。

――それはすごいですね。多感な時期を乗り越えるために描いていた絵が、こうして今につながっているというのがとても素敵です。

――ちなみに、そのとき描いていた漫画は何だったのでしょう?

『ヘタリア』です。イラストをたくさん描いて、SNSに投稿していました。同じものを好きな人とつながれて、とてもうれしかったですし、楽しかったですね。
そこから、学年が上がるにつれて、オリジナルも描いていこうかなという気持ちになっていきました。

――オリジナルの描き方などは、大学や専門学校で学ばれたのでしょうか?

全くですね。完全に独学でした。

――独学で、あんなにすごい作品を……。
いったい、どうやって力をつけていったのでしょうか。

ありがとうございます。私の身の回りには絵を描く人がいなかったのもあって、もっぱらインターネットでしたね。
といっても、講座で学ぶというよりは、ネットで上手い人の作品をまねる中で、自分の好きなものを突き詰めていった感じです。

――やはり一日に何時間も描いていたのでしょうか。
中学ではバレー部をやっていたというお話でしたし、なかなか時間を捻出するのは難しそうですよね。高校に入ってからのお話ですか?

中学生のときは、部活の息抜きのような側面もあったので、描ける時間があれば描いていましたね。
でも高校生のときは、バイトで忙しかったこともあって、絵にがっつり時間をかけることはできませんでした。

ただ、完全にやめていたわけではなくて。例えば、休み時間に友達の似顔絵を描いたり、誕生日にイラストを描いてプレゼントしたりして、ゆるくではありますが、絵は描き続けていました。
本格的に時間をかけて描き始めたのは、大学生になってからですね。

――大学生になってから本格的に描くようになったきっかけには、どのようなことがあったのでしょうか。

コロナです。家にいる時間が長くなって、外とのつながりがなくなったことが、自分にとってはしんどくて。
そのときに寄り添ってくれたのが、絵を描くことでした。それで、のめり込むように描いていましたね。

――これまでに影響を受けた作家や、「この人の作品が好きだな」と思う方はいらっしゃいますか?

特定の人に強く影響を受けたということは、あまりないですね。むしろ、いろんな人に影響を受け続けているというほうが近いです。
誰かの創作物を見たときに意欲が湧くことが多くて、美術館や博物館にはよく行きますし、ときには建築物からインスピレーションを受けることもあります。

――建築物からインスピレーションを!?

はい。といっても有名な建造物だけじゃなくて、そのへんのビルでも全然あります
あるとき、空とビルの輪郭がすごくきれいに分かれて見えたことがあって、そのパキッとしたコントラストに、「いいな」と思ったんです。
そういう建造物の形そのものに惹かれて、そこから絵を描くこともありましたね。

――建造物そのものを描くというよりは、そこからインスピレーションを受けて描く、ということですね。

そうですね。そのパキッとした輪郭やコントラストなど、良いなと思ったものを絵の中に取り入れたり、背景に使ったりしています。
そのまま描くというよりは、色や形といった要素を抜き出して、混ぜ合わせる感覚ですね。
要素を一つずつ組み合わせながら、いい感じになるまでひたすら試していく、という感じです。

――今回、展示会「バース」に参加された経緯を教えてください。

“誕生”という言葉をきっかけに、新しい自分の表現を模索してみたいと思ったからです。
私は、社会人になってから、新たなことを生み出したり、何かを強く感じたりする機会がこれまでより減ってきたように感じています。
だからこそ、こうした場に参加することで、自分なりに表現を深めたり、気持ちを整理したりできたらいいなと思って参加を決めました。

作品について

――今回出展された3作品について、どのような作品か教えてください。

『サラダ』

今回の3作品は、すべて初めてアクリル絵の具を使って描いたものです。
これまではデジタルで制作していたので、新しい技法に挑戦するという意味でも、一つの“誕生”として、『バース』というテーマにも合っていたのではないかと思っています。

アクリル絵の具には、後戻りができないという特徴があります。だからこそ自分の心のままに色を重ねていくのが新鮮で楽しかったですね。
思った色をのせて、さらに重ねていく。その積み重ねの中で生まれたものの一つが、この作品です。

『ゆめのなか』

2作品目も、私の中では新しい試みでした。
実は、自分が眠っているときに見た夢から着想を得て描いたんです。夢の中に出てきた形を実際に表してみようと思って制作しました。
人の頭のあたりが雲のような形になっているのですが、それは頭の中にモヤがかかった状態を表現しています。

『宝物』

3作品目は、私自身の感情を重ねた作品です。
というのも、私、結構泣き虫なんですよね。
仕事のことで悩んだり、悲しくなったり、悔しくなったりすることがよくあるんです。でも、それを吐き出すタイミングって、大人になるとなかなかないじゃないですか。
だから、その気持ちをこの子に託して、代わりに泣いてもらう。そんな思いで描きました。

――どの作品も素敵です。独学だとは思えません……!

――バースというテーマをどう捉え、これらの作品に落としこんでいかれたのでしょうか?

作品ごとにそれぞれ異なる“バース”があるというよりも、3作品でひとつのバースを解釈している、という感覚ですね。
今回、初めてアクリル絵の具に挑戦したこと自体が、私にとっての“誕生”という意味でのバースだったと思います。

――これまで、アクリル以外にはどのような制作をされてきたのでしょう。

これまではデジタル一本で制作してきました。
今後は、油絵に挑戦してみたり、粘土を使って何か表現してみたりと、いろいろ気になっている状態です。

――その中のでも今後、特に挑戦してみたい表現や画材、技法はありますか。

本当にいろいろ興味があって、一つに絞るのが難しくはあるのですが、その中でも今いちばん興味があるのは油絵への挑戦です。

――それはまたどうしてでしょうか?

以前、美術館で私が表現したかった黒に、すごく近いものに出会ったんです。それが油絵だったんです。
アクリルではどうしても出せない凹凸や、色の奥行き、深みのようなものが、油絵からは強く伝わってきて。
その質感や色の重なりに、とても惹かれました。

――2作目『ゆめのなか』の黒い部分はその作品を意識されているのでしょうか?

そうですね。ただ本当は、もっともっと、暗く、暗く、真っ黒にしたかったんです。ただ、やはり画材の特性の違いもあって、アクリルでの表現だと、どうしても今のかたちに落ち着いてしまって。
なので、もし次にやるのであれば、黒を重点的に、自分の思うままに表現してみたいなと思っています。

メッセージ

――aoさんにとって芸術とはどんな存在ですか。

感情を昇華できる場所ですね。

私は怒りや悲しみといった負の感情を、実生活の中でうまく外に出すことがあまり得意ではありません。
でも、それを芸術に当てはめることで、自分なりに一番いい作品が描けると感じています。
そういう意味で、私にとって芸術は、感情の逃げ道とも言えるし、逃げた先で昇華させてもくれる存在だと思います。

――最後に、社会人になってもアートの炎を燃やし続けたいと考えている方、もしかすると未来の参加者になるかもしれない方々へ向けて、メッセージをお願いします。

仕事をしながら制作するのは、時間の余裕もなく、決して簡単なことではないと思います。
それこそ、一人で目標もなく続けていくのは本当に大変です。

だからこそ、社会人アートサークル『エン』はおすすめですね。自分の“やってみたい”とか“興味がある”という気持ちに、すごく寄り添ってくれるグループなので。

あまり気負わずに、“やってみたい”という気持ちだけを持って来てもらえたらうれしいです。いつでも参加できる、あたたかい場所なので、いつでもお待ちしています。

展示会『バース』ルポはこちら

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