イントロダクション
HAPPY! “本”と“ことば”が大好き、いっちーです!
今回取材したのは、女性向け恋愛小説レーベル“ベリーズ文庫”で多くの作品を出されている“蓮美ちま”先生。
初恋♡生活に来店していただいたことをきっかけに、作品を読んでみたんですが、これがもう面白くて!
毎度のごとく、すぐに先生に取材を依頼しました!
前編のインタビューでは、先生がどんな本と出会い、書くようになったのかなど、読むことと書くことについてお話をうかがいます。
それじゃ~いってみよー!
プロフィール

蓮美ちま
恋愛小説を執筆しています。
主に小説投稿サイト『Berry’s Cafe』で活動中。
受賞歴
◇第5回ベリーズカフェ恋愛小説大賞『身代わり結婚の行方』で大賞受賞。
『激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす』と改題し書籍デビュー。
◇第1回ベリーズカフェ短編小説コンテスト【職業ヒーロー】で『私だけのヒーロー』が優秀賞受賞。アンソロジー『職業男子図鑑【ベリーズ文庫溺愛アンソロジー】』として書籍化。
◇第8回スターツ出版文庫大賞『それでもキミと、愛にならない恋をしたい』で特別賞受賞。
(1)本を読むことについて

本日は取材をお受けいただき、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。


まずは本を読むことについておうかがいしていくのですが、その前に、先生がどんな幼少期を過ごしていたか教えてください!
活発で、目立ちたがり屋な子どもでした。と言うのも私、小学生の頃から高校生まで、学級委員や代表委員、生徒会役員と、ひと通り全部やっていたんですよ。
ひと通り全部!? かなり前に立つタイプの子どもだったんですね……。
そうですね。クラスの代表の立場になることが多かったので、何か決め事があるたびに黒板の前に立っていました。いわゆる「男子、静かに!」みたいなことを言う委員長タイプでしたね。
生徒会のときは、全校集会で歌う曲を決めたり、先生の送別会でやる劇の内容を考えたり、朝は校門の前に立って挨拶活動もしたり、選挙のときはお昼休みの校内放送で「清き一票をお願いします」って言ったりもしていました。
その頃の経験で、“今の活動につながっている”と感じることはありますか。

中学で宝塚に出会えたことがすごく大きかったです。目立ちたがり屋というのもあって、お芝居が好きではありましたが、宝塚はほかの何よりも強い衝撃でした。
「自分もあんなふうになりたい」と思って、元タカラジェンヌの先生がやっている教室を探して通ったんですよ。
レッスンもそうですし、観るほうでもそうですし、宝塚と出会えたことは、今の創作にもすごく活きているなと思いますね。
どういったところで活かされているのでしょう。
私は物語を誰の視点で見ても辻褄が合うように書いているんですが、これは、ヒロインやヒーロー以外のキャラクターを誰かが演じることになっても、ちゃんと役作りがしやすいようにしたいという思いからなんです。
こういったところは、お芝居で役作りをしていた経験が活かされていると感じますね。

最初に読んだ作品や、読書にハマるきっかけになった本を教えてください。
私が最初に読んだ本は漫画です。
両親ともに本が好きだったので、家にはたくさんの作品がありました。でも両親が読んでいたものは子どもの頃の私には少し難しくて……それで漫画を選んだんです。
たしか小学2年生とか3年生の頃で。作品も『タッチ』とか『ガラスの仮面』とか、親世代やもっと上の世代の作品が私の読書体験の始まりだと思います。
最初に読まれたのは漫画だったんですね! 小説を自分から読むようになったきっかけは、何だったのでしょうか。
藤本ひとみ先生の『ブルボンの封印』を読んだのがきっかけです。


たまたま本屋さんで見かけて、表紙とタイトルに惹かれて手に取りました。
ちょうどその頃、宝塚で『ベルサイユのばら』を観ていたこともあって、フランスを舞台にしたお話ということや、その本の宝塚ぽい雰囲気に惹かれたんだと思います。
で、読んでみたら、それがすごく面白くて! 今思えばそれが自分から小説を読むようになった始まりでしたね。
そこから榛名しおり先生の作品にもハマって、全部読むほど夢中になりました。
まさか小説にハマったきっかけにも宝塚のお名前が挙がるとは……。先生がその世界観が好きなことがお話を聞いていてひしひしと伝わってきます。他にはどのような作品を読まれていたのでしょう。
榛名しおり先生のほかには、折原みと先生ですね。中でも『アナトゥール星伝』というシリーズが好きで、ずっと読んでいました。
『アナトゥール星伝』は、少女漫画がそのまま小説になったような感覚の作品です。
簡単に言えば、“女子高生が異世界に行って冒険していく物語”で、その壮大な冒険にも惹かれましたし、感情移入しやすい文章で描かれていたのも印象的でした。そしてなにより、主人公の女子高生の考え方がすごく自分に近かったのもあってハマって……気づいたら全部読んでいましたね。


先ほどは学生時代に読まれた本のお話をおうかがいしましたが、最近読まれた本の中で、おすすめの作品も教えてください。
小原燈先生の『双子の姉にすべて奪われた私が、軍神に愛されています』がめちゃめちゃ良かったです!


この作品は“不遇だった女の子がヒーローに出会うことで救われていく”という王道のシンデレラストーリーです。
二人の甘い関係も素敵ですし、展開にも爽快感がありますし、応援したくなるヒロインも良いんですよね。
導入も上手くて、読んでいると、自然にその世界観が分かるように書かれていて、すごいなと思いました。
最初は“これまで読んだことのなかった和風ファンタジーを勉強したい”と思って読み始めたんですけど、導入が上手いので引き込まれて……。気づいたら最後まで読んでしまいました。それくらい面白くて、大好きな作品です!

(2)作品を書くことについて


先生が作家になったきっかけを教えてください。

実は私は小さいころから小説家を志していた、というわけではないんです。
実際に書き始めたのも2020年とかですから。
いったい、どんなきっかけがあって、目指されるようになったのでしょう。
あさぎ千夜春先生の『初めましてこんにちは、離婚してください』という小説に出会ったことがきっかけですね。

この作品に出会ったのは、コロナ禍のときです。
その頃の私は、お腹の中に子どもがいて、つわりがしんどく、外には出られない状態でした。
なので家でずっと漫画を読んでいたんですが、あまりにも家にいる時間が長すぎて、読みたいものはあらかた読み尽くしてしまったんです。
そんなとき、この作品に出会いました。
ただ……実は最初、私は漫画だと思ってこの作品を買ったんですよ。
確かに、これは表紙だけ見たら漫画と勘違いしてもおかしくないですね……。
最初こそ「うわ、間違えた!」と思いましたが、実際に読んでみたらすごく面白くて!
それでベリーズ文庫の作品を読むようになりましたね。
いくつか作品を読んでいるうちに『Berry’s Cafe』という、作品をアップできるサイトのことも知りました。そんなとき、夫から「書いてみたら」と言われたのをきっかけに書くようにもなったんです。
なのできっかけとしては、あさぎ千夜春先生の作品からベリーズ文庫を知ったこと、夫に背中を押されたこと、家にいるのが長くて時間を持て余していたという3つが書くようになったきっかけかなと思います。

先生のペンネーム“蓮美ちま”の由来を教えてください。
“蓮美”は、旧姓を少しもじったものです。
“ちま”は、私の小さい頃からのあだ名ですね。
私の地元では小さいことを“ちまい”とか、“ちまっとしてる”って言うんですが、私は昔からずっと背が小さかったこともあって、よく“ちまちゃん”って呼ばれていました。
ペンネームをつけてくださいと言われたときに、ほかにあまり思いつかなかったので、昔のあだ名をそのまま使うことにしたんです。

最初に書いた作品はどのような作品でしたか。
最初に書いたのは、オフィスラブでした。
当時読んでいたのが、仕事のできる上司とのオフィスラブみたいな作品だったので、同じようなものを書きたいと思ったんです。
ただ、全く同じ設定をなぞるだけでは意味がないと思ったので、ケンカップルの関係にしました。最初は異性として意識しているわけではなかった二人が、相棒のようにずっと一緒にいて、喧嘩しているうちに、気づいたら恋仲になっている、という感じです。
今の作風とは少し違うんですね。
そうですね。当時はヒロインの設定も、今書いているものとは少し違って、“自分の可愛さをちゃんと理解している女の子”でした。少し見方を変えるとナルシストっぽくも見えるような子ですね。
私がそういうヒロインが好きだったのもあって、自分が読みたいと思うものを書こう、という気持ちで書いたのが初めての作品です。
それまでの私が読んだ作品では、「私なんて平凡で……」という自信がないタイプのヒロインが多かったので、そうではないヒロインを書いてみたかったのもあります。

書くときにどんなことを大切にされていますか。
“誰視点で書いても成立するようにすること”です。
基本的にはヒロインの恋愛小説なので、ヒロイン視点で進んで、たまにヒーロー視点が入るという構成ではありますが、ライバルや嫌な上司みたいな人物の視点でその物語を書いたとしても、ちゃんと辻褄が合うようにしたいと思って書いています。
なので、“物語を動かしたいからこのセリフをこのキャラに言わせる”ということはしていません。そのキャラクターにはそのキャラクターなりのポリシーや気持ちがあって、その結果として物語が動いていく。そうすることで、誰視点で読んでもおかしくない物語になるように意識しています。
読者や主人公たちにとって「嫌だな」と思うキャラクターで物語を書いたとしても、辻褄が合うようにされているんですね。
そうですね。その人にはその人なりの考えで嫌なことを言っているわけなので。そこは自分の中でちゃんと説明できるようにして書いています。
たとえば『君のすべてを、俺にくれ~秘密に隠されたエリート弁護士の溢れるほどの忠愛~』に出てくる弁護士の岸田も、主人公にとっては嫌な人物ですけど、彼には彼なりのポリシーがあるんです。依頼人を守ること、そして自分の弁護士事務所を潤わせること。そのためなら手段は選ばない、という考え方なんですよね。

先生はどんなルーティンで作品を書かれているのでしょうか。
執筆環境という意味では、自分専用の仕事場や書斎といったものはないので、リビングとかダイニングの片隅で書いています。
作業する時間帯という意味でも特に決まったルーティンはないのですが、子どもたちが学校や幼稚園に行っている午前中と、寝た後の夜の時間に書くことが自然と多くなりますね。
気持ちの面で言うと、“書きたくないときは書かない”ようにしています。
書きたくないときは書かない!?
はい。もちろん締め切りの関係でそうもいかないことはあります。
無理に書いても、結局翌日全部消すことになることが多いので、書きたくないときはなるべく書かないようにしていいるんです。
疲れているときもそうですし、あとは“これ面白いのか病”にかかったときも書かないですね。
“これ面白いのか病”というのは……?
“自分の書いているものが本当に面白いのかわからなくなってくる状態”のことです。たぶん、どの作者さんも経験があることだと思います。
プロットを作っているときは、基本的にポジティブなので、「これは面白い、いける」と思って完成させるんですよね。
でも、いざ書き始めて2章、3章あたりで小さな山場ができてくると、「この山場、面白いのか?」って急に不安になってくるんです。そこで引っかかると、プロット自体まで面白くないんじゃないかと思えてきて、詰まってしまう。そうなると、いったん書かないようにしますね。
それをどう乗り越えているのでしょうか。

1日、2日くらい書かないでいます。そうすると、気になってきて、そわそわしてくるんです。
それでもう一度手を付けてみると 「やっぱり面白い」って思えるときもあるんです。
それでもどうしても気に入らないときは、そこまで書いたものはいったん置いて、もう一度最初から書いてみることもあります。
同じプロットでも、日を置いた自分が書いてみた方が良かったりするんですよね。ときには前の原稿と新しい原稿のいいところ取りをすることもあります。
もう一度最初から!? すでにプロットがあるとは言っても、とても大変そうです……。
この間、8万字(短編小説2本分くらい)捨てたときはもう泣きながら書き直しました。
でも、これが自分の名前で出るのは、「許せない」と思ったんです。
その“許せない”の基準は、どこにあるのでしょうか。
ストーリーは、自分の好みで作っているので、気に入らないことはほとんどありません。
ただ、そこにたどり着くまでの主人公たちの心情だったり、文章のリズムだったりはすごく気にしています。とくに私は文章のリズムにこだわりがあるので、読んでいて流れが途切れてしまう感じがすると、それが許せなくて。
そういうときは、何度も何度も書き直します。
それでもどうしてもうまくいかないときは、どうされているのでしょうか。
文章が上手く書けないときは、「こういうリズムで書きたい」という方の本を読むようにしています。表現をそのまま真似するというよりは、好きなリズム感覚を取り戻すためです。
「今ちょっと3拍子になっているから、4拍子の曲を聴こう」みたいな感覚に近いですね。
先生にリズム感覚を取り戻させる本……気になります!
過去に読んで面白いと思った作品もそうですし、「美しい文章を浴びたい」と思ったときには小原燈先生が別名義で書かれている作品を読んでいます。
本当に美しい文章で……。なんというか、“文章に切れ目がない“んですよね。ここで一旦やめようと思えるところもなければ、今なんて言った?と戻ることもなく、自然に読み進めてしまうんです。それでいて雰囲気のある言葉選びもすごくて……本当に完成された文章だなと思っています。

デビューのためにどんな努力をされましたか。
デビューのためとは少し違うかもしれませんが、「どうしたらこのサイトで多くの人に読まれるのか」という分析はかなりしました。
作品そのものを良くすることももちろん大事なのですが、良い作品でも読まれなければ意味がないので、「読んでもらうにはどうしたらいいか」を考えて実行していましたね。
たとえばタグを工夫したり、2時間に1回はトップページに載るように更新したりして、とにかくBerry’s Cafeやベリーズ文庫が好きな読者さんに、自分の名前を覚えてもらえるようにしていました。
デビューの話で言うと、コンテストのテーマも分析しました。それでいて、自分らしいものを上手く取り入れたこともデビューにつながる行動の一つだったのかなと思います。

実際の本が完成して、手に取った瞬間、どんな気持ちになりましたか。
“自分が書いたお話が本になっている”という事実に、ただただ、わあ……という感じでした!
感動ももちろんありましたが、それよりも驚きの方が強かったです。
実際に書店にも見に行かれましたか。
もちろん、見に行きました。本屋さんに並んでいるのを見たときはひたすらに感動でしたね。
自分がデビュー前というか書く前から読んでいた作家さんたちの本と一緒に、自分の本が並んでいるのを見て、「すごい、すごいじゃん私」って思いましたね。
実際に本が売れる瞬間を見たり、サインをされたりしたのでしょうか。
一度だけお客さんが私の作品を持ってレジに並んでくださっているところを見ました。
そのときは恥ずかしすぎて、心の中でこっそりありがとうと言うのが精いっぱいで、話しかけることなんてできなかったです。
あと、サインとは違いますが、本屋さんで領収書をお願いするときに名刺を出して、「蓮美ちまでお願いします」と伝えたら、店員さんに「あっ」って言われたことがありました。
あ、知ってくれてるんだと思ってうれしかったんですけど、そのときは私も「あっ」と返しちゃいました(笑)。


ご自身にとって転機となった作品を教えてください。
転機になった作品は二つあります。
一つは『怜悧な外交官が溺甘パパになって、一生分の愛で包み込まれました』ですね。
これは初めて編集さんから設定をご提案いただいた作品でした。自分が書きたいものを書くというより、「こういうものが売れ筋ですけど、どうですか」というところから編集さんと一緒に考えて作ったので、なんだか「作家っぽいな」と思ったのを覚えています。
もう一つは2作目の『婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~』ですね。
この作品はデビュー作のスピンオフで、初めて編集さんにプロットを見ていただいた作品です。
「今こんな作品を書いています」とお見せしたら、「せっかくだから出しましょう」と言っていただけたんですが、プロットを見ていただいたら結構大きく直しが入りました。お気に入りのシーンをばっさりカットされたり、構成にも変更が入ったりして、初めてしっかりとダメ出しを受けました。
それまでは一人で全部作っていたので、プロットの段階から他の人の手が入るのは初めてで、「自分の作品だけど、自分一人で作るものではないんだな」「仕事にするってこういうことなんだな」と実感したんです。
もちろん、愛のあるダメ出しでしたし、その作品は後々コミカライズもされたので、当時の編集さんには本当に感謝しています。


(ベリーズ文庫)

今後どんな作品を書いていきたいですか。
児童文庫で出してみたいです。
多くの人が初めて触れる本は絵本だと思いますが、それは親に読み聞かせしてもらう本で、その点、児童文庫は初めて“自分で選んで読む本”なんですよ。
子どもの頃の読書体験って、想像力だったり、子どもが育っていくうえでの土台だったり、そういうものにすごく関わってくるんじゃないかなって思っているので、そのうちの一冊になれたらいいなって思うんです。

もう一つ理由があって、娘が今ちょうど児童文庫にハマっていて、たくさん読んでいるんですよね。
いつか娘が夏休みの読書感想文を「ママの作品で書いてくれたらいいな」なんて思ったりもしていて。チャンスの期間はものすごく短いんですが、なんとか間に合ううちに児童文庫を出したいなと思っています。