9/22(火)・23(水)の2日間、WAKASA&CO.KYOTO 京都四条店2階「わかさの舞台」にて、「長唄・端唄の調べ」が開催されました。
江戸時代に歌舞伎舞踊の伴奏音楽として発展した「長唄」。そして江戸後期から幕末にかけて庶民の流行歌として生まれた「端唄」。その双方を味わえる本公演に長唄唄方の名跡を受け継ぐ七代目「杵屋和吉(きねやわきち)」さんや重要無形文化財長唄総合認定保持者である五代目「杵屋勝松(きねやかつまつ)」さんなど超一流の方々が集結されました。
さらに、普段は一緒にお目にかかれない先斗町と祇園東の芸妓さんご両名の舞との共演。「わかさの舞台」だからこそ実現した、至極のひとときをお伝えします。
わかさの舞台から、長唄・端唄が響き渡る

「わかさの舞台」は、イベントに応じていろいろな顔を見せてくれる場所。京都の中心部である四条烏丸の交差点からすぐにあり、京都市内だけでなく府外からもアクセスは良好です。阪急なら「烏丸駅」、市営地下鉄なら「四条駅」が最寄駅で、20番出口より徒歩3分で到着します。
シルバーウィークの9/22(火)・23(水)、2日間限定の開催となった「長唄・端唄の調べ」。日本屈指の名手による長唄・端唄と、二花街の芸妓による舞踊がLEDスクリーンに映される風景画と融合した本公演は、「開演11:00/終了12:00」でチケット料金は13,000円、公演後のアフタヌーンティー懇親会「開始12:30/終了14:00」も付いたチケットが18,000円でした。

この日わかさの舞台には金屏風と緋毛氈(赤い敷き物の布)が配置され、会場は厳かな空気と、わずかな緊張感に包まれていました。
公演の属性からでしょうか。お客様の中には、着物をお召しになっている方、髪を結い上げている方、そして外国人の方も多くいらっしゃいました。開場されると客席はあっという間に埋まる盛況ぶりで、公演に対する期待度の高さを感じずにはいられませんでした。

舞台袖には、陰囃子(かげばやし)に使われる太鼓や笛などの鳴り物も。楽器を実際に近くで見てみると、よく使い込まれてきたようで説得力がありました。
囃子方のみなさんの準備も完了し、司会の杵屋松梨(きねやまつり)さんの挨拶で公演開始です。
美しい風景画を背に、上方の「雅」と江戸の「粋」へ誘う

まずは、端唄から堪能していきます。
暗闇の中、お二人が袖から舞台に上がり、静かに中央に座られました。端唄の演奏の際には「鶯聲真毅(おうせいまさき)」と称される五代目杵屋勝松さんが三味線を、「鶯聲真規(おうせいまき)」さんが唄を披露してくださいました。
今回は、上方端唄2曲と江戸端唄3曲の構成。順に聞くことで、上方の「雅」と江戸の「粋」というコントラストが味わえたのが贅沢なポイントでした。
1曲目は「わしが在所」。八瀬の大原女が薪や炭を頭に乗せて、京の町を歩くのどかな姿を唄った曲です。

情趣豊かに唄う真規さんの、唄に寄り添うように音色を刻む勝松さんの三味線が舞台から客席へと響き渡ります。
今回、勝松さんが演奏に使った三味線は、お香などの素材で知られる「白檀」で作られたもの。一般的には花梨や紫檀などで製作されることが多く、白檀のものは日本に数丁しかないとも言われる極めて珍しい三味線だそうです。
勝松さんご本人曰く、「本来は趣味の延長線上にある三味線ではあるけれど、お聞きいただいた通り、なんとも良い雰囲気を醸し出してくれます。普通の三味線よりも柔らかいので、長唄よりも端唄のようにしっとり弾く場合によく合いますね」とのこと。

まるで江戸の日本に戻ったような空間がそこに。曲調に合わせて変化するスクリーンの風景画も、端唄の情緒を底上げしてくれています。袖から聞こえてくる太鼓や笛の音も心地よいです。
2曲目は「わが恋」。端唄を代表する恋の唄です。先ほどにも増して情感たっぷりに唄いあげる真規さんの声が沁みます。背景に映される水面と夕焼けのグラデーションも、曲の雰囲気にマッチしていました。

ここからは打って変わって、江戸端唄が3曲続きます。
1曲目は「木遣りくずし」。木材を運ぶ労働歌であった「木遣り唄」を座敷唄に崩したことから生まれた曲です。
軽妙な曲調や歌い方が特徴的なこの曲には木材を運ぶ際の掛け声のような節回しもあり、江戸の「粋」が伝わってきます。

続いて2曲目は、しんみりとした「秋の夜長」。
「秋の夜長に 主に逢う夜の 短さよ」と、愛しい人との時間は短く感じるという切ない恋心を唄いあげます。実際に演奏時間自体も短いですが、お客さんたちも変化していく背景画に目をやりながら、息を呑んで曲の世界に没入していくようでした。

3曲目は、「春雨」です。
長崎の史跡料亭「花月」で生まれたと言われる名曲。春雨に濡れる梅と鶯の情景になぞらえて、意中の男性を一途に慕う遊女の切ない恋心が唄われています。
美しい梅の背景が映し出されると、なんと鶯の「ホーホケキョ」という鳴き声が。本物と聞き紛うほどの、笛方の妙技が響きます。
先斗町・祇園東の芸妓さんが稀な共演で優雅に舞う

さて、舞台セットの変更を挟んだ後は、芸妓さんの舞踊が披露されます。「お茶屋」さんでしか観る機会のないお座敷の風情が開きます。
ご出演は、向かって左が祇園東の「富多愛(とみたえ)」さん、右が先斗町の「市笑(いちえみ)」さん。舞台から近いのもさることながら、異なる花街の芸妓さんが並んで舞うのを見られるとても貴重な時間がゆったりと流れていました。

曲目は、「京の四季」。京都の東山や円山、祇園の名所や風物を春夏秋冬の順に優美に唄う一曲で、お座敷遊びの定番曲としても有名です。
抑揚の効いた端唄の演奏が伝わる中、お二人の異なる舞いにお客さんも釘付けに。背景画が春夏秋冬に合わせて変化していく様子も相まって、四季を存分に感じられるひとときでした。京都にある「わかさの舞台」で演じるからこそ、より一層意義のある演目と言えますね。
そうそうたる演者が揃った長唄に酔いしれる

休憩を挟んで最後は、長唄「松の翁」です。三代目杵屋正次郎が作曲したと伝わる曲であり、荘重な本調子から始まり、長い三味線の合の手が特徴的です。
三味線は五代目杵屋勝松さん、二代目「杵屋禄宣(きねやろくのぶ)」さん。そして長唄唄方の名跡を2022年に襲名された七代目杵屋和吉さん、二代目「杵屋禄三(きねやろくぞう)」さんが唄方を務めます。

舞台には、鳴り物の「藤舎清鷹(とうしゃきよたか)」さん、「藤舎成光(とうしゃせいこう)」さん、「藤舎伝生(とうしゃでんしょう)」さんも。 長唄を唄う伸びやかな声、端唄よりも強く弾いた三味線の音、「いよーっ」という掛け声と鼓をリズムよく叩く音。唄・三味線・囃子が一体となった華やかな世界が、松の木の背景とともに迫ってくる圧巻のひとときでした。
五代目杵屋勝松さん「いろいろなお客様に聴いてもらえる場に」

公演後、杵屋勝松さんにあらためてお話をうかがいました。
——本日のわかさの舞台での「長唄・端唄の調べ」はいかがでしたか?
長唄や端唄、芸妓さんの舞踊を、あまりご覧いただく機会のない方々にも届けることができたので良かったと思います。普段は金屏風などを背に演奏していますが、曲に合わせて風景画が変化していくなんて、時代が変わったなと(笑)。これまでとはまた違った魅力がありますね。
——今後に向けて、わかさの舞台に期待することなど一言お願いします。
今後もお客様へ新たな魅せ方をできる公演を続けていきたいなと思います。舞台の音響に関しては、スクリーンを活かしつつ何かしら衝立を置くなど、音が吸われすぎないための改善策も検討してみたいですね。
いずれにしても、もっといろいろなお客様に聴いていただける場を増やしたいなと考えています。そのためには、長唄や端唄の世界も伝統を守りつつ、時代に合わせて新しい演出にも取り組んでいくつもりです。「わかさの舞台」でまた演奏できる日を楽しみにしております。
最後はアフタヌーンティーと、芸妓さんとの親睦でゆるり

WAKASA&CO.KYOTO 京都四条店2階には、「わかさの舞台」とは別にアフタヌーンティーを楽しめるラウンジがあります。公演後は、該当チケット購入者だけに、懇親会としてアフタヌーンティーを召し上がっていただきました。
わかさ生活と言えば、目の健康を助けるブルーベリーは外せません。ブルーベリーとシャインマスカットをふんだんに使ったスイーツがお客様の前に並べられます。

シャインマスカットのゼリーに、シャインマスカットのタルト、ブルーベリーとホワイトショコラを合わせたムースに、ブルーベリーとシャインマスカット両方が入ったシフォンロールなど。
好みのドリンクと合わせて、量も味も大満足のスイーツが並びます。みなさん食べ切れるか心配されながら、存分に味わっていらっしゃいました。

途中からは、素敵な舞いを披露してくださった富多愛さんと市笑さんも親睦に。当日の公演や伝統芸能について楽しくお話された後は、記念写真を撮影されるなど、みなさん満喫されていたのが印象的でした。
こうして「長唄・端唄の調べ」は、大盛況のうちに閉幕。
超一流の出演者、他に類を見ない演出、そして、伝統芸能の新たな可能性を開いた舞台。
そこには、長唄や端唄にこれまで敷居の高さを感じていた方にも、その魅力を存分に楽しんでいただける、特別な2日間がありました。
次は、どんな「本物」と出会えるのか。
皆さまもぜひ、わかさの舞台へ足を運んでみてください。
取材・執筆・撮影:ノクオ
わかさの舞台で京都の伝統工芸と出会う
わかさの舞台で毎月開催されているのが、京都の伝統工芸職人を招いて行う体験と作品販売が同時に楽しめる「京都伝統工芸体験会」。
10月17日(土)、18日(日)にはミニ和傘や卓上照明、キーホルダー・アクセサリーなど、さまざまな工芸品の制作を体験できます。
ぜひご家族やお友達とご参加ください。