皆さんこんにちは!
ご縁を大切に、出会った人を応援し続けたい。
元気と明るさで人をつなぐ、“サポーター型”人事として発信している杉浦綾です。よろしくお願いいたします!
私はこれまで、わかさ生活の人事として多くの方の人生やキャリアに向き合いながら、スポーツに関わる人たちの「その先の可能性」を応援したいという想いで活動してきました。
今回、人材サービス企業経営者であり、スポーツコーチとしても長年アメリカンフットボールに関わってこられた中村敏英さんにお話を伺いました。
中村さんは、株式会社オンワード樫山、株式会社リクルートスタッフィング、株式会社スピリッツを経て、株式会社グッドコーチを創業。人材エージェント、採用コンサルタントとして22年の経験をお持ちです。
スポーツの世界では、オービックシーガルズ、関西大学アメリカンフットボール部ヘッドコーチ、東京大学アメリカンフットボール部、エレコム神戸ファイニーズ、日本大学アメリカンフットボール部監督など、選手・指導者として第一線で活動されてきました。
そして現在、新たに立ち上げられたのが、プロアスリートの引退後の就業支援を行う会社「つぎのすゝめ」です。
アスリートのセカンドキャリア支援に携わる私にとっても、中村さんのお話は学びが多く、「アスリートの未来を支えるとはどういうことなのか」を改めて考える時間となりました。
プロフィール
中村 敏英(なかむら としひで)

人材サービス企業経営者/スポーツコーチ
【経歴】
株式会社オンワード樫山
株式会社リクルートスタッフィング
株式会社スピリッツ
(兼任:株式会社エグゼクティブボード)
株式会社グッドコーチ創業
人材エージェント、採用コンサル歴22年
【スポーツ指導歴(アメフト)】
オービックシーガルズ
関西大学アメフト部ヘッドコーチ
東京大学アメフト部
エレコム神戸ファイニーズ
日本大学アメフト部 監督
「強い個人と組織」を探求し続ける
人材業界に進んだ理由について、中村さんは「自分がずっとアクティブでいられる仕事」「一生現役でいられる仕事」を選びたかったと話してくださいました。
職種は何であれ、自分がずっとアクティブでいられること。内勤よりも、外に出て人と会う仕事。そして知識や経験を積めば、独立もできるような仕事を選びたいと思いました。
さらに、中村さんの中にはもう一つ大きなテーマがありました。それが「強い個人と組織の探求」です。
自分の興味あることを追いかけ、深掘りし続けたいと思った時に、強い個人と組織の探求って終わりがないなと思ったんです。興味があるし、これをやり続けようと決めました。
人材の仕事も、スポーツの指導も、どちらも根底にあるのは「人」と「組織」への関心です。どうすれば人は成長するのか。どうすればチームは強くなるのか。その問いに向き合い続けてきたことが、中村さんの現在の事業にもつながっています。
指導者を目指した原点は、「人に良い影響を与えたい」という想い

中村さんが指導者を目指すようになったのは、大学時代からだったそうです。中学・高校時代にはキャプテンを経験し、人に何かを伝えたり、後輩を指導したりする中で、人が良くなることやチームが強くなることに喜びを感じるようになったといいます。
教えることが少し得意だなと思いました。人がそれで良くなるとか、チームが強くなることにすごく喜びを感じて、大学の時に明確に指導者になりたいと決めました。
その後、中村さんは多くの指導者から影響を受けます。リクルートシーガルズ時代のヘッドコーチ、日大時代の監督、大学世界選手権で出会った名将たち。
中でも印象的だったのが、リクルートシーガルズ時代のヘッドコーチの存在でした。
彼が、私の成功を私以上に願って指導してくれたんです。俺はお前にこの試合で成功してほしかったんだ、と言われた時、こういう良い影響を人に与えられるようになりたいと思いました。
指導者とは、ただ技術を教える人ではありません。相手の成功を本気で願い、そのために準備し、向き合い続ける人。中村さんのお話から、指導者としての原点にある温かさと厳しさの両方が伝わってきました。
社会との接点を持つことが、良い指導者をつくる

中村さんは、アメフトの世界で100%プロコーチとして活動する道も選べたそうです。しかし、あえて仕事を続けながら指導者として活動する道を選びました。
スポーツをするにしても、社会の一員であることは絶対に外してはいけないと思っていました。社会との接点をなくしたくなかったんです。いい指導者になるためにも、社会とのつながりを持っていた方がいいという持論があります。
この言葉を聞いた時、私はとても腹落ちしました。
スポーツと仕事は、別々のものではありません。競技で得た学びは社会で活き、社会で得た学びは競技にも活きる。中村さんは、ご自身の人生を通じてそのことを体現されてきた方なのだと感じました。
学生を指導していた時も、中村さんは選手たちに留学や就職活動を積極的に経験してほしいと伝えていたそうです。ただし、条件は一つ。その経験をチームに持ち帰り、仲間に共有することでした。
留学に行って得たことを、他のメンバーに伝えるまでやってくれと話していました。グラウンドと自宅の往復だけでは意味がない。社会で得たことをチームに還元できれば、チームにとってもプラスになります。
競技の中だけで完結しないこと。さまざまな経験から学び、それを自分の言葉でチームに伝えること。その考え方は、まさにデュアルキャリアの本質にもつながるものだと思いました。
「つぎのすゝめ」に込めた、アスリートへの想い
では、なぜ中村さんは「つぎのすゝめ」を立ち上げようと思ったのでしょうか。
その背景には、スポーツの世界で多くのアスリートと関わる中で聞いてきた、引退後への不安がありました。
引退直後に、何をしたらいいんだろう、自分なんかが社会に出て通用するのだろうか、という不安や悩みを聞く機会が多かったんです。高いパフォーマンスを出してきたアスリートは、社会でも絶対に活躍できると思っています。ただ、スポーツと仕事の両方を軸で分かっている人でないと、その架け橋にはなりにくい。これは僕の役割だなと思いました。
一方で、人材エージェントとして企業側の声も聞いてきた中村さん。企業は優秀な人材を求めています。特に小売業やアパレルの経営者からは、「団体競技の経験者に来てほしい」という声も多く聞いてきたそうです。
小売業は団体競技と一緒だと、経営者の方からよく言われます。全体の中で自分の役割を理解し、前工程、後工程にどうつないでいくと全体がうまく回るかを考える力が必要なんです。スポーツをやってきた人は、そこに長けていると思います。
チームスポーツでは、自分だけが良ければいいという考え方は通用しません。自分の役割を理解し、仲間を活かし、全体の勝利に向かう。その力は、仕事の現場でも大きな価値になるのだと感じました。
そして中村さんは、個人競技であっても同じだと話します。栄養士、コーチ、スポンサー、家族、応援してくれる人たち。アスリートは一人で戦っているように見えて、実は多くの人に支えられています。
個人競技であっても、チーム形成力だと思います。一人のアスリートが自分だけの力でオリンピアンになる世界はありません。
仕事を紹介するだけではなく、伴走する

「つぎのすゝめ」の大きな特徴は、仕事をただ紹介するだけではないことです。引退後すぐに就職先を決めるのではなく、インターンシップのような形で社会経験を積みながら、自分に合う仕事や役割を見つけていく。
その仕組みのきっかけになったのは、共同経営者でありBリーグの幾つかのチームで経営者をしてきた西村大介さんが経験された、自身のチームを引退することになったバスケットボール選手との出会いでした。
引退後、「指導者になるしかない」と考えていた選手が、まずはバスケットボールチームの法人営業に挑戦。最初の3カ月は、メールも名刺交換も分からず苦労したそうです。しかし、西村さんの伴走を受けながら経験を重ね、6カ月後には営業として成果を出せるようになりました。
そのうえで、その選手は「やはり指導者になりたい」と自分の意思で決断しました。
あのまま指導者になっていたら、逃げるように指導者になっていたかもしれない。でも、営業もやってみて、やればできると分かった。苦手なことを克服できた自分を知った今の方が、いい指導者になれると思ったそうです。この経験が、伴走型インターンのきっかけになっています。
遠回りに見える時間が、実はその人の人生にとって大切な意味を持つことがあります。
私自身もキャリア支援の中で、「やりたいこと」「できること」「求められていること」はそれぞれ違うと感じています。すべてが重なることは簡単ではありません。だからこそ、頭の中のイメージだけで決めるのではなく、実際に体験してみることが大切です。
やってみて初めて、「好きかもしれない」「向いているかもしれない」「やっぱり違うかもしれない」と分かる。その期間を持てることは、アスリートにとっても企業にとっても、とても大切なことだと感じました。
アスリート採用に必要なのは、正しい理解
中村さんは、アスリートが社会に出た時にうまくいかない理由の一つとして、企業側の理解不足もあると話してくださいました。
スポーツをやっていた人は辛いことに耐えられる、という一元的な理解で受け入れてしまうと、お互いに不幸になることがあります。
たとえば、サッカーに憧れて日本代表を目指してきた選手に、明日から野球の素振りを1000回しなさいと言っても、心から頑張ることは難しい。アスリートは辛いことに耐えられる人だから、どんな仕事でも頑張れる、というわけではありません。
さらに中村さんは、競技と仕事では喜びの順番が少し違うとも話します。
アスリートは、自分が成長し、活躍することで人々に勇気や感動を与えてきました。でも働くということは、自分の達成が先ではなく、お客様の喜びに対して対価をいただくことです。人を喜ばせることが先に来て、人が喜んでいることが自分の喜びになる。そこを理解してもらう必要があります。
この言葉は、とても大切だと思いました。
アスリートの強みを活かすためには、本人が社会の仕組みを理解することも必要です。そして企業側も、「アスリートだからこうだろう」と決めつけるのではなく、一人ひとりの個性や背景を理解することが必要です。
明るい人もいれば、寡黙な人もいる。人前で話すのが得意な人もいれば、苦手な人もいる。アスリートという大きな枠ではなく、その人自身を見ていくことが、ミスマッチを防ぐ第一歩なのだと感じました。
日本一の先にあった「寂しさ」

取材の中で、私が特に心に残ったのが、中村さんが日本一を達成した時のお話でした。
12歳から日本一を追いかけ続け、29歳でようやくその夢をつかんだ中村さん。満員の東京ドームで試合終了のカウントダウンを聞いた時、そこには大きな喜びだけがあると思っていたそうです。
しかし実際に湧き上がってきたのは、喜びと同時に、少しの寂しさでした。
あの寂しさは何だろうと考えて、ふと分かったんです。もう、どうやったら勝てるかなとみんなで考える時間がないんだと。幸せは、物質的なものを得ることではなく、自分がありたい姿、成し遂げたいものを本気で追いかけている時間だったんだと思いました。
この言葉を聞いた時、胸が熱くなりました。
アスリートは、幼い頃に憧れた選手を追いかけ、夢中で練習し、悔しさも喜びも積み重ねながら競技に向き合ってきました。その夢中になれる時間を、引退後の人生でも見つけてほしい。中村さんの支援には、そんな願いが込められています。
ビジネスの世界にもロールモデルは必ずいるはずです。ただ、20年、30年見たことがないから知らないだけ。早くそれを見つけられた方が、幸せな時間が早く来ると思います。
競技人生が終わっても、幸せな時間は終わらない。新しい場所で、新しい憧れを見つけ、また本気で追いかけていく。その姿こそ、アスリートの次の可能性なのだと思いました。
アスリートだったからこそできる支援、支える側だからこそできる支援
今回、私自身がどうしても伺いたかったことがあります。
私は大学時代、野球部のマネージャーとして選手を支えてきました。キャリア支援の仕事をする中でも、相手に寄り添うことや共感することは大切にしています。
一方で、私はトップアスリートとして競技を極めた経験はありません。アスリートだったからこそできる支援と、支える側だったからこそできる支援には違いがあるのではないか。そんな問いを中村さんに投げかけました。
中村さんの答えは、とても温かいものでした。
スポーツを経験がないと語れない、ということはないと思います。アートでも音楽でも、自分の殻を破って成長している人はいます。何かを極める過程で葛藤を乗り越え、自己成長した経験がある人なら、伝えられることはあると思います。
アスリートだからこそ分かることはある。けれど、アスリートでなければ支援できないわけではない。
大切なのは、相手の可能性を信じ、その人の良さを活かしながら、良い影響を与えたいと思って関わることなのだと感じました。
社会で活躍するために必要な「言語化」
中村さんがアスリートに大切にしてほしいと何度も話されていたのが、「言語化」です。
スポーツをやるだけではもったいない。新しい自分になるために、果敢に新しいことを吸収し、試してみること。そして勝った経験も負けた経験も言語化して、第三者に伝えるところまでやるべきだと思っています。
競技で経験したことを、自分の中だけで終わらせない。なぜ勝てたのか。なぜ負けたのか。自分は何を感じ、何を学んだのか。それを言葉にして伝えられることが、社会で活躍する力につながっていきます。
面接でも同じです。中村さんは、学生やアスリートに対して「初めましての大人と、しっかりお話ができること」が大切だと伝えているそうです。
現役時代から、あらゆる業界の人と大人としてお話ができること。そして聞いたことに対して、自分ならどう考えるかを言語化する習慣を身につければ、セカンドキャリアは高い発射台からスタートできると思います。
正解か不正解かではなく、自分が何を感じたのかを言葉にすること。これは、アスリートだけでなく、私たち社会人にとっても大切な力だと感じました。
「つぎのすゝめ」は、部活のような集団でありたい
中村さんに「今、何をしている時が幸せですか」と伺ったところ、「アクティブで、一生元気でいたい」という想いがもともとあり、それを多くの人と一緒にやりたいのだと話してくださいました。
「つぎのすゝめ」は、部活のようでありたいと思っています。いろんなバイタリティやバリアリティに富んだメンバーがいて、それぞれの得意分野を持っている。でもアスリートのためとなった時には、ぎゅっと集結できる。そんな集団でありたいです。
また、中村さんは若い世代との接点をとても大切にされています。
若い人たちに誘われなくなったら終わりだなと思っています。「つぎのすゝめ」をやっている限り、引退する22歳から35歳くらいのアスリートと、ずっと初めましてで関われる。それは僕自身にとっても大きな喜びです。
人に良い影響を与えること。その人が、これから良い時間を過ごしていくきっかけになること。
中村さんは「おせっかいかもしれないけど、僕と接した時間が少しでもプラスになればいい」と話してくださいました。その言葉から、指導者として、人材のプロとして、そして一人の大人として、相手の人生に誠実に向き合ってこられた姿勢が伝わってきました。
現役アスリートへのメッセージ
最後に、現役アスリートへのメッセージをいただきました。
アスリートを続けられているということは、その人が頑張ってきた証であり、皆さんが期待してくれている限られた機会です。まずは現役生活を本当に悔いのないように全うしていただきたいです。できればその経験を言語化して、良かったことも悪かったことも人に伝えられるようにして、引退していかれるのがいいと思います。そこからでも、社会で自分がなりたい姿を見つけて、幸せになることは可能です。
競技人生は、いつか終わります。
でも、競技で培った力は終わりません。
仲間と目標に向かった時間。悔しさを乗り越えた経験。自分の役割を理解し、チームのために動いた日々。そして、自分がなりたい姿を本気で追いかけた時間。
それらはすべて、次の人生を支える大切な力になります。
アスリートが、引退後も自分らしく輝き続けられるように。競技で培った力が、社会の中で新たな価値となるように。
中村さんの挑戦は、アスリートの未来だけでなく、スポーツ界と社会をつなぐ新しい一歩なのだと感じました。
【つぎのすゝめ】が気になる方はこちらから
https://tsuginosusume.jp
編集後記
今回の取材で強く感じたのは、中村さんが「アスリートを就職させる人」ではなく、「その人が本当に望む人生に向かうための良い導き手」でありたいと考えていることでした。
競技を終えたアスリートに必要なのは、すぐに正解を見つけることではなく、自分の経験を言葉にし、社会を知り、自分の可能性を信じ直す時間なのかもしれません。
そして、その時間に伴走してくれる大人がいることは、アスリートにとってとても心強いことだと思います。
私自身も、スポーツを支える側として、選手たちの競技人生だけでなく、その先に続く人生にも寄り添える存在でありたいと改めて感じました。
中村さんの「つぎのすゝめ」が、これから多くのアスリートの未来を照らしていくことを、心から応援しています。