ご縁を大切に、出会った人を応援し続けたい。
元気と明るさで人をつなぐ、“サポーター型”人事として発信しています。杉浦綾です。
今回は、滋賀ハイジャンプス代表・大八木大介さんにお話を伺いました。
野球経験者ではない立場から球団運営に携わり、さらに子どもたちの遊び場づくりにも取り組む大八木さん。そこには、スポーツの世界に新しい風を吹かせる視点と、「人が挑戦できる環境をつくりたい」という強い想いがありました。
プロフィール
大八木大介

日本地域プロ野球リーグ機構 日本海リーグに所属するチーム、滋賀ハイジャンプスの球団代表。
「地域とともに、挑戦できる環境をつくる」をテーマに、滋賀県を拠点とした球団運営を行う。
野球未経験という立場を強みに、試合を“地域で楽しめるイベント”として再構成。選手一人ひとりのデュアルキャリアにも向き合い、競技と仕事の両面から人生を応援する取り組みを推進。
球団運営に留まらず、子どもたちの遊び場運営にも携わりながら、関わるすべての人が“飛躍”できる環境づくりに挑戦している。
偶然の出会いが、人生の転機になった
滋賀県出身の大八木さんは、高校卒業後、滋賀県の小中学校で事務職員として勤務されていました。その後、かねてから気になっていた“生まれた場所”であるイギリスへ。ワーキングホリデーではなく、「えーい、行ってしまえ」と飛び込むように渡英し、約半年間を過ごしたといいます。
帰国後に関わることになったのが、当時BCリーグに所属していた滋賀の独立リーグ球団でした。きっかけは、前職の入社初日に起きた、まさに偶然の出会い。同じテナントに入っていた球団関係者と知り合い、そこからスポーツ業界への扉が開いていきます。
あの夜、出会っていなかったら、球団には関わっていなかったかもしれません。
そう振り返る言葉からも、人生は思いがけないご縁で大きく動くのだと感じました。
“社長以外の仕事は全部やった”という濃い経験
2017年からは、滋賀の独立リーグ球団スタッフとして5年間従事。肩書きはデザイナーとしてスタートしたものの、実際には運営、広報、現場対応など、幅広い業務を経験されました。
野球だけでなく、サッカーのトップチームやアカデミー、中学生クラブチーム、小学生向け野球塾など、地域スポーツ全体に関わる中で、最終的に野球が残り、2021年には球団代表にも就任されます。
人手が限られる中で、「気づいた人が担当」という環境は決して楽ではなかったそうです。それでも、その時に積み重ねた経験が、今のご自身の土台になっていると語ってくださいました。
子どもの遊び場を運営する理由
球団を離れた後、大八木さんが次に取り組んだのが、商業施設内での子どもの遊び場の運営でした。
これもまた、不思議なご縁から始まった挑戦です。もともとその遊び場は球団が運営していた場所であり、退職のタイミングと契約満了の時期が重なったことで、商業施設側から「やりますか?」と声がかかったといいます。
子どもが好きだったこともあって、ちょうどいいタイミングでした。
大八木さんがこの場所で大切にしているのは、子どもたちが“新しいできた”に出会えること。そして、好きなことや苦手なことに気づけること。さらにそれを、保護者も一緒に見つけられる環境にすることです。
失敗を恐れず、まずやってみる。そんな余白を子どもたちに残してあげたいという言葉が、とても印象的でした。
滋賀ハイジャンプスに込めた想い

「ハイジャンプス」というチーム名には、大八木さん自身の陸上経験が重なっています。学生時代に取り組んでいたのは、走り高跳び。そこに、“関わる人がそれぞれ飛躍してほしい”という願いを込めて、この名前をつけたそうです。
目指しているのは、球団が人生の答えを与える場所ではなく、それぞれが自分の目指す方向へ進むための準備ができる場所。
ここに関わったことをきっかけに、“あれになりたい”“こうなりたい”が見えてくる場所になれば嬉しいです。
チームそのものよりも、関わる人の未来を見ている。その視点がとても大八木さんらしいと感じました。
デュアルキャリアを“当たり前”にしたい

滋賀ハイジャンプスの特徴の一つが、デュアルキャリアへの考え方です。
大八木さんは、以前の球団でセカンドキャリアに苦しむ選手を数多く見てきました。
野球一筋で生きてきた選手にとって、突然「次のやりたいことを見つけて」と言われても難しい。学生であれば就職活動の中で自己分析や業界研究をする時間がありますが、選手たちはその時間を野球に費やしてきています。
だからこそ、仕事の経験も通じて、自分の興味や適性に出会ってほしい。その思いが、滋賀ハイジャンプスの文化づくりにつながっています。
野球も100でやって、仕事も100でやる。まずは働いている企業に一番応援される人材になってほしい。
この言葉には、競技だけでなく人生全体を応援する視点が込められていました。
野球未経験だからこそ、できること
大八木さんは、自身が野球未経験であることについて、率直にこう話されていました。
選手の能力を見るとか、技術的な部分は正直わからないです。
一方で、それは弱みであると同時に、強みにもなっています。野球界の常識に縛られないからこそ、試合を“イベント”として再構成する発想が生まれるからです。

実際、昨年の試合では、球場の外も含めて楽しめる空間づくりを徹底。野球好きだけでなく、まだ野球に触れたことのない人たちにも届くような仕掛けが随所に施されていました。

私自身も実際に試合を見に行きましたが、「野球を観る場所」というより、「地域で楽しめる場」が生まれている感覚がありました。これは本当に、野球経験者ではない大八木さんだからこそつくれる景色なのだと思います。
4,358人を動かした、“球場で楽しいことやってる”発想

日本海リーグでの昨季最大集客は、守山市民球場での4,358人。地域リーグでも屈指の数字です。
その要因となったのは、パトカー、白バイ、消防車が集まる「働く自動車大集合」や、約40店舗の出店など、ファミリー向けに振り切ったイベント設計でした。
小さく野球もやってるよ、みたいな形でした。
この表現に、大八木さんらしさが表れています。野球の試合だから野球ファンが来る、という前提ではなく、まず“球場で楽しいことがある”と知ってもらう。そこから野球に触れてもらう。
実際に、「前回見て面白かったから、次も来たよ」と言ってくれる子どもたちもいたそうです。野球の入口を広げていく取り組みとして、とても希望を感じました。
地域とともに、挑戦できる環境をつくる

今後のビジョンについて伺うと、大八木さんは「まず知ってもらうことが大事」と話されました。
応援されるだけではなく、球団として地域にとってプラスになる存在であること。そのために、試合やオープン戦をイベントとして設計し、地域との接点を増やしていきたいと考えておられます。
さらに、そのモデルは野球だけでなく、他のスポーツにも広げられる可能性があるとも語ってくださいました。
競技によって置かれている環境や支援の差は大きい。それでも、「やりきれる環境」をつくることは、地域や民間の力でできるはず。大八木さんの言葉からは、スポーツ全体へのまなざしも感じられました。
応援したいのは、経験に飛び込める人

最後に、「どんな人を応援したくなりますか?」と伺った時の答えも印象的でした。
人は、こうなれと言われても変わらない。自分で気づいた時に変わると思うんです。
だからこそ、いろんな経験に臆せず飛び込める人、チャレンジする人を応援したい。
その言葉は、大八木さん自身の生き方そのものでもあるように感じました。
偶然の出会いをチャンスに変え、未経験の世界に飛び込み、そこから新しい環境をつくってきた人だからこそ、説得力がありました。
編集後記
瀬戸代表のお話では、“人が育つ場所”としてのリーグの価値を感じました。髙山さんのお話では、“誰もがヒーローになれる世界”のあたたかさを知りました。
そして今回、大八木さんから感じたのは、“挑戦できる環境をつくる人”の強さです。
野球未経験だからこそ見える視点。地域の人たちにまず知ってもらおうとする柔らかい発想。子どもたちに失敗できる余白を残そうとするまなざし。
そのどれもが、スポーツの枠を超えて「人の可能性を引き出す」ことにつながっているように思いました。
これからの滋賀ハイジャンプスが、地域の中でどんなふうに飛躍していくのか、とても楽しみです。