もはや、フェス! 庭イベント・レポVol.02「術 2026年5月」

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もはや、フェス! 庭イベント・レポVol.02「術 2026年5月」

結論から書きます!いやはや「術」、すごいです。圧倒的な庭の存在感と遊び心、五感をくすぐる食、アート、音楽、ファッション。それでいてチル空間。見たことがないスタイルのイベントでした。

※記事の最後の締めには、庭師が作ったステージで演奏をされたギタリストのソエジマトシキさんにもコメントをいただきました。ぜひ、最後までご覧ください。

自然素材の魅力たっぷりの会場に潜入!

青葉シンボルロードの向こうの方までブースが立ち並ぶ。すごい規模!

「術 2026年5月」の会場に着いたのは朝。まず感じたのは「おっ!これは良い意味で手作り感が漂っているイベントだ!」ということ。手作りのゲートがあって、それぞれ工夫を凝らしたブースがあって。

会場の青葉シンボルロードといえば、静岡市内でもかなり知られた目抜き通り。その半分以上を借り切って開催するのですから、すごい規模です。

自然素材がいっぱいあふれているのが術の素晴らしいところ。

「術」の最大の特徴は、庭師が中心のイベントということ。自然素材の魅力を、庭師が持つ技と術でふんだんに引き出した会場内の雰囲気は圧巻です。

茅葺きといえば屋根のはずが、なぜか店舗の壁に。アイデアの塊。

もうひとつの特徴は、商業と庭が一体となっていることです。一般的な庭展は、坪庭を作って、その作品を見てもらうことが主な目的。
しかし、「術」では、店舗と庭が一体になることで、お客さんに庭を使ってもらうことも目的にしています。飲食店の場合は、買ったものを庭の中で食べられるブースも多く、これはもう、贅沢の極み!
使う庭という側面をとても大切にしているイベントです。

主催者の一人、水野さんが語る「術」

たっぷりと木々に水をあげていた水野さん。朝一番の仕事だそうです。

歩いていると最初に出会ったのは、なんと主催者の一人、水野造園の水野慎介さん。早速、この「術」というイベントについて聞いてみました。

こんにちは!すごい規模のイベントですね。しかも、庭師の技術でいっぱいです。

そうですか。みんながんばっていますから、そう言っていただけるとうれしいです。

この「術」というイベントですが、なぜ始められたのですか?

庭のイベントには坪庭展などたくさんありますが、なんとなく敷居が高くて一般の方々には縁遠いものになっています。会場にいるのが同業者と玄人さんになりやすくて。ですから、私たちは逆に、「庭なんて興味がない」という人にこそ来てもらえるようにと「術」を始めました。

「私たち」ということは、他にも主催者さんがおられるということですよね。

そうです。最初に始めたのは、空師(木こり)と音楽に詳しいグラフィックデザイナーの3名です。そこからさまざまな術を持つメンバーが合流して、今の運営体制になりました。

確かにライブもあるしアートやファッションもたくさん。いろんな属性の方が交わっているから、多くの人が楽しめる空間になっているんですね。

休憩スペースにドンと配された水野さんの作品、「モテたい。」
みなさん、水野さんをチヤホヤしましょう。

やっぱり、誰しも休日をハッピーに過ごしたいわけですから、楽しくなければ来てくれません。食やアート、音楽など、いろんな楽しいことがあふれかえっている場の中心に「庭」があることで、「庭っていいね」「庭師ってすごいね」となるのではないでしょうか。そう信じて2021年から続けてきたら、最近やっと「庭師さんっておもしろいね」と言ってもらえるようになってきました。

なるほど!来た人が気軽に「庭」と接する機会になっているんですね。それにしても、おもしろい庭でいっぱいです。

それはもう、特におもしろい庭師さんに声をかけていますから。
あと、今年の術のテーマは、「術 庭と建築」。これ、なかなかない構図なんですよ。通常の現場の多くでは、先に家がある状態で後から庭を作ります。でも、これって最近の考え方なんです。

古くは家を建てるときに、お施主さんは、神主さん、大工さん、庭師さんを最初に呼んで計画を立てたと言われます。だから、この庭屋一如の感覚を現代にも取り入れたくて。ですから、「庭」が「建築」よりも先に来ているのです。

確かに、作り込まれた建物を持つお店が多いですね。これらもすべて庭師さんが主導したのでしょうか?

水野さんの作品の向かいにあった店舗。こちらも庭師のパワーでいっぱい。

はい。今回の「術」では、庭師がお店の全体計画を立てています。仮に大工さんに応援してもらったとしても、根っこにいるのは庭師。お店と庭師が一体になって、4m×6mの空間で思いっきり遊んでもらいました。

「遊ぶ」なんですね。

そうです。誰が勝ったとか負けたではなく、みんなで思いっきり遊んで、「庭」の存在を高めていくのが目標です。

まるで、明治維新の時のたかす…

あー!先に言わないで!
高杉晋作の「面白きこともなき世を面白く」ということができればと、がんばっています。(まったく、浦田くん、油断も隙もないな)

そして、下の句の「住みなすものは心なりけり(意訳:物事をどう感じて暮らしていくかは、すべて自分の心次第であるということ)」ってわけですね。(決まった!)

そうです。みんなにこのハッピーな感じを持ち帰ってもらって、「庭っていいなぁ」って思ってもらえたら、庭という業界全体の評判も変わってくると信じています。今日はぜひ、いろんな庭師さんに会ってみてくださいね。

水野さんはこんな人

植和造園・野村和久さんの作品

さらにぶらりと会場を歩いていると、ひょっこりと庭師さんがいました。「術」の会場の中には、本当に庭師さんがひょっこりといるんですよ。

なんだか作品の中に埋もれている感のある野村さん。それほど緑豊かな作品。

こんにちは〜。緑がモリッとしていますね。
ぜひお話をお伺いしたいのですが。お名前からお聞きして良いでしょうか。

植和造園の野村和久です。今日、取材に来られると水野さんから聞いていましたよ。

あ、バレてましたか(笑)。
それにしても、なんとも個性的なお店?お庭?です。どんな構想からこのお庭を立ち上げたのでしょうか?

お店は麻辣湯屋さんで、最初にイメージしたのは「ジャックと豆の木」みたいに、屋根から木が突き抜けているお店です。私にはたまたま建築設計の知り合いがいたので、デザインをしてもらいました。この屋根、月をイメージしているんですよ。

なななんだ、この屋根は! 月から草が生えている!

水野さんから、1エリア4m×6mと伺っていますが、これはお隣に越境しているような…。

隣り合う人と「こっちはこうしてみるよ」みたいなことを話すと、「じゃぁ、うちはこうしてみようか」みたいに、セッション感覚で境目のことが決まっていき、おもしろかったです。だから境界は曖昧。こういう掛け合いがあったから、隣同士がつながって会場全体がひとつの空間になるのだなと。
決められた四角形の中ではなく、なんとなく面積を守りながらバランスを取り合って共存するって、自然のあり方そのものですものね。

その曖昧な境界ということが通路ひとつにしても現れていますね。まっすぐ歩いてもらうのではなく曲がり道になっていたりして。

そうそう。お店や看板を見て立ち止まる人がいると、後が詰まって滞留してしまうのですが、その人たちは「待つなら庭を見てみよう」という感じでじっくりと庭を見てくれます。

迷路みたいになっている通路。前が詰まっていても、風景があると「楽しい」に変化。

野村さんは静岡の方なんですか?

いえ、私は神奈川県の川崎から来ています。我々も溝の口で「動く森展」というイベントを主催しているので、その広報として他の庭展にも参加していて。今年は「天空の坪庭展(静岡)」、「尾張でお庭展(愛知)」、「なにわの坪庭展(大阪)」、「庭展なら(奈良)」を経由してここに来ているんですよ。

もはや有名バンドの全国ツアー状態じゃないですか(笑)。
そんなに出ていて、本業の庭作りをしている時間はあるのでしょうか…。

ですから、それはもう…。日頃はあくせくと働いていますよ(笑)。

すごく真摯な方に見えつつも、実態は超オフェンス型の行動ですね。

はい、スケジュールやら何やらめちゃくちゃです(笑)。
今年、特にがんばっている理由ですが、来年の「GREEN×EXPO 2027」では坪庭展合同組合として、複数の庭展が一致団結して出展します。だから、今年は無理にでも走り切るしかないんですよ。

横浜市瀬谷区で開催される2027年国際園芸博覧会ですね。確か、テーマは「幸せを創る明日の風景」ですから、これはもう、庭展の方々に超期待☆

ところで、野村さんはこの作品のどういうところを見てほしいですか?

(急にキリッとして)これだけいろいろ環境が変わってきている世の中ですから、最も感じてほしいのは「緑の大切さ」です。木陰の下で風がそよぐだけで、人の気持ちは大きく変わっていく。実際に、この直射日光の中でも、これだけの木々があるだけで快適になっています。

確かにすごく気持ち良いです。今、私は野村さんと話すために数歩動いて木陰に移動しましたもの。一説ですが、周囲が暑くても木陰の下は28度程度になるとも言われていますよね。

おっと!
このかわいいキャラクターは何ですか?

かわいい! 大きな目玉の苔玉がこっちを見ている!

私の庭展に必ず登場するトレードマークのキャラクターです。妻が作ってくれました。

愛妻家ですね。野村さんの作品のタイトルは何でしょう?

(またキリッとして)「創生」です。
これまで「生命力」とか「破壊と再生」とか、いろんなタイトルで庭展に参加してきました。その流れの中で、今回は作り直すという時期だと感じて名付けました。

ありがとうございます。
「GREEN×EXPO 2027」での成功も願っています。

植木屋わかぞう・若尾千尋さん&Beggarticks・朝日宏和さんの作品

あれ?ビーチみたいな庭があるぞ?

こんにちは!この作品を作られた庭師さんですか?

誰もが思い浮かべるThe日本の庭ではない、ドライ・ガーデンの作品を発見!

はい。「植木屋わかぞう」の若尾千尋です。取材の方ですよね?よろしくお願いします。
早速ですが、この庭は私と「Beggarticks」の朝日宏和さんで作りました。ちょっと今いないんですけど、すぐ戻ってきますよ。

スカッと広々した空間で思い切りの良さを感じます。

静岡県にビーチを持って来ました。サンフランシスコのビーチです!
実際は、愛知県の砂だけど(笑)。セメントを練るための左官砂を使いました。

ビーチの庭にサングラス屋さんってすごくマッチします。素晴らしいセンス。

ビーチ!?!?
そういえば、あの手作りの看板も、西海岸という感じがします。

はい。車のペイントを専門にする女性がいて、その人が作ってくれました。あと、このポスターも「術」の主催の方がおもしろいからと作ってくれました。

なんだか人に恵まれていますね。

本当にそう思います。一緒に庭を作った朝日さんにも感謝しています。

噂をすれば何とやら。ここで朝日さんが登場!

こんにちは、今日はよろしくお願いします。早速ですが、わかぞうさんと組んで出ようとなった経緯を聞かせてください。

ひょっこり庭師撮影。左がわかぞうさん、右が朝日さん(お二人がいるのは隣のブースです)。

いや、出ようとは思っていなかったのですが、ステージを作った仲佐修二さんから「わかぞうくんと一緒に出たら?」と言われて…嫌だなと思った(完全にわかぞうさんが目の前にいる前提の冗談です)。

え…(真に受けるから、イジられている模様)。

(笑)。
ようするに、わかちゃんが出たいなら出るよ、と。そうしたら、わかちゃんから「ぜひ、やりたいです!」と電話がかかってきたので出ることになりました。

ところでこの作品ですが、砂と黄色い鉄骨の小屋で変わっていますね。庭というと、緑があって苔が生えていてというイメージですが。

お客さんが入れ替わり小屋に入ってサングラスを試着。

浦田くん、それは「いかにもな庭」という固定概念にとらわれていますね。

まず「術」で大切なのは、お店の庭ということですからね。

最初に計画を考える時にわかちゃんにも伝えましたが、お店はサンスキーさんというサンフランシスコのサングラスメーカー。おもしろそうな二人が立ち上げたブランド。来た人が思わずサングラスをかけてみたくなる庭って何?ということです。

朝日さんには最初に「自分がやりたいことを詰め込もうとするな」と釘を刺されました(笑)

実際に、お金や時間の持ち出しもあるでしょうから、普段できないことをやるという考え方もありますが、お二人はサンスキーさんに特化したのですね。

サンフランシスコのサングラスメーカーさんの魅力を存分に打ち出す!

普段から「庭師の仕事って何?」という根っこのところを大切にしています。

お庭の中にサングラスが展示されているということは、中にも入って良いということ?

当然、OKです。ビーチですからね。足跡も景色のひとつ。
初日の昨日はほぐしていましたが、今は足跡がついて、さらにだんだん踏み固められている段階に入りました。木漏れ日で凹凸がチラチラと見えるのが良いですよね。

むしろ、空き缶が捨てられているくらいの方が、それっぽいですよね。

隣のブースとの境界は竹穂を使った抜け感のあるもの。これもビーチらしい。

徹底していますね(笑)。
ところで、お二人は静岡の方ですか?

東京都の八王子です。

愛知県常滑市ですね。

え?
二人とも遠い上に開催地のここから考えると真逆ですよね? それで連携できるのですか? 普段からずっと一緒に仕事をしているとか。

そもそも「術」を知ったのも、仲佐さんや朝日さんと知り合ったのも、昨年の「術」に遊びに来たからです。その出会いから仲佐さんや朝日さんが作る庭の仕事に呼んでもらえるようになって、今回はなんと一緒に出ることができました。
ですから、この一年間は私にとってとても密度が濃い時間になっています。

今はいろんなものでつながれる時代だけれども、庭師は現場がメインですから。
この前の宮古島の仕事では、住み込んで共同生活でしたから一気に距離が縮まりました。職人にとっては、現場を共にするというのはかなり大切なことなのです。今回の「術」は、わかちゃんにとって良い経験になっていれば成功ですよ。

はい、とても良い経験になりました。

いいお話だなぁ。
貴重なお時間をありがとうございました。

美香造園・望月美香さんの作品

お、女性の庭師さんがおられますね。男性ばかりにインタビューをしていたので、ぜひ女性からも話が聞いてみましょう。こんにちは〜。

こんにちは、取材の方ですね。どうぞどうぞ。

お名前、屋号、作品についての解説をお聞かせください。

美香造園の望月美香です。作品は、こちら!

かなり建物の作り込みがしっかりしたものですね。そして、足下に景色が広がっています。

作品タイトル「集景」。景色がすべてつながるようにという想いからつくられたそうです。

ここはビルに囲まれているけれども、大きなケヤキの木があって、という場所ですよね。来てくださっている方、庭を作った人、出店者さん、すべてのものがつながってひとつの景色になればと思ってつくりました。

販売されているものは何でしょう? 古物でしょうか?

キャンドル屋さんですね。古物に見える調度品とか漆器なんかはキャンドル屋さんの持ち物です。こういう出店にとても慣れた方なので、ディスプレイのセンスがとても良いですよね。

私はやはりこの建物に目が奪われますね。これも美香さんが作られたのですか?

はい、これは大工さんと一緒に作ったものです。最初に私が足下を庭にして小屋を浮かせたいとアイデアを出して絵を描きました。ですからスリットなどは私の案なのですが、そこからどのようにして強い構造にするのか、そしてシンプルに組み立てられる構造にするのかは、大工さんが検討をしてくれてできあがりました。

組み立てできるようにしたのですね。それにしても、下には庭が広がっていて、頭上は青空。そして、背面パネルのスリットはなんだか掛け軸にも見えてきます。

いろんな意味や思いを込めているので、浦田くんが話してくれたのはその一部なのですが、それぞれの人で受け取り方が違って良いと思います。

この足下の大きな石がインパクトありますよね。

大胆にドンと据えられた沓脱石。味わい深い色合いです。

建物の下に庭を展開しているので、どうしても建物が浮いているというか高くなります。だから、段差を解消するために沓脱石は必須アイテムですね。この建物の構造が難しかったです。

ウッドデッキとかなら根入れできるのですが、ここは下が公園の石張りですから固定できなくて。壊れたり倒れたりしてはいけませんから、重量を増やして頑丈な作りになりました。

けっこうこの建物は目立ちますし、実際、今もチラチラ見ていく人がすごく多いですよね。

はい、それは正直にうれしいところですが、私は作り終わった瞬間だけ「やった!」と思うのですが、時が経つほど、もっとこうすれば良かったと反省が多いタイプです(笑)。

それが職人さんなんでしょうね。「次はもっと良いものを」の連続というか。

なんだかこの小屋をほしいと言ってくれた人がいたみたいで、それもうれしかったことでしょうか。

私も家にスペースあったらほしいです(笑)。
お話を聞かせていただき、ありがとうございました。

望月美香さんはこんな人

植清・小橋百年さん&影山庭店・影山幸一郎さんの作品

ふー、けっこう歩き回って疲れたのでコーヒーでも飲もう。

コーヒー屋さんですよ、これ。ここでコーヒーが飲めるなんて至福空間すぎるっ!

あれ、浦田くんという方ですか?
作品のことを聞いて回っているという。

あ、あの根掘り葉掘り聞いてくると噂になっていた人?

アヤシマレテマスネ…

いえ、違うんですよ(笑)。私たちも探していたんです。

岡山から参加しているので、せっかくだから記録に残ればと。

おぉ、それはすごく遠方ですね。

ご指名、ありがとうございます!!!
では早速、岡山のどちらからでしょう?

ひょっこり登場!
左:影山庭店の影山幸一郎さん、右:植清の小橋百年(ももとし)さん。

私は早島というところです。倉敷の近くですね。

私は津山で山の中です。

え? 同じ岡山とはいえ県の南北ですから、かなり遠いのでは?

70km離れていますが、年齢的に私が後輩なので打ち合わせに通いました(笑)。

そもそも、どうして遠い静岡県のイベントに出ることになったのですか?

2024年の「術」を見に行って衝撃を受けたんです。こんなにみんな楽しんでるの?って。見たことがない種類のイベントで衝撃を受けました。

我々は中堅の世代ですから、まだまだ働くわけで「造園業の未来」をいつも考えています。10年後、20年後にこの仕事はまだあるのかなと。でも、「術」を含めてさまざまな庭展を見に行く中で、その道は自分たちで切り拓くべきだと考えるようになりました。

手仕事だからできる仕上がりを常に考えて追い求める。それが庭師。

コーヒー屋さんとのコラボはどのように決まったのでしょう?
主催の水野さんがマッチングした人たちが多いと聞きますが。

私たちは遠方からの参加ということもあり、何店舗か提示していただいた中から、静岡駅北口エリアにある複合施設「cosa(コーサ)」さんを選ばせていただきました。せっかくの機会ですから、大きな企業さんとコラボレーションをしたくて。

その段階では、cosaさんの中のどのお店かは決まっていませんでしたが、打ち合わせを経て『PART COFFEE ROASTER』さんに決まったという経緯です。

コーヒー屋さんのロゴがそこにありますが、静岡市の鳥として登録されているカワセミがモチーフ。ですから、この建物の中を巣の中に見立てた世界観の庭です。屋根を全面に張っているのは、巣穴だから外の世界と分けるためと、暑くなる季節を先読みしてのことです。

確かに日陰なので涼しいですね。

鳥の巣穴だから土を見せたいということで、カウンターに版築土塀を作り、背景を土壁で作りました。

チームで作る時に役割分担はあったのですか?

特にありません。二人できちんと話し合うことを大切にしました。

あと、せっかく遠方から参加するので、「これだけはやろう」というお互いの目標を実現することを目指しました。

巣穴ということで、土をたくさん使いたかったのですが、なにぶん遠方からの参加です。思い切って10トン車をチャーターして、積載制限まで積んで持ってきました。

自然な割れが味に。手前に緑があって、茶色と緑が美しい!

お金…、大丈夫ですか?

はははは(乾いた笑)、せっかくですから思い切っちゃいましたね。

影山さんがこの臼の石を持っていたので、これは目玉になると考えました。

もともと日本にはこのサイズがないそうで、「おそらく中国から流れてきたのではないか」と石に詳しい人が言っていました。

とにかく、持っていたのですから、使わない手はありませんよね。普段、使う機会が滅多にないサイズですし(笑)。

あと、ハンドドリップにこだわっているコーヒー屋さんということで、その様子を抽象化したのが、ポタポタと天井から落ちている水です。

ただの天井かと思ったら、配水管が裏に通されて水が滴り落ちていました。

浦田くんもカワセミの気持ちになってきたのでは?

ピーピー(笑)。カワセミってけっこうかわいい声で鳴くらしいですね。

そういえば、「お店を作る」という経験なんて滅多にないことと思いますが、何か苦労されたことはありますか?

カウンターの大きさや高さ、販売の空間の在り方、あとは使いやすい棚をどう作るかということですね。その上で「建物&庭」という感じでなく、どう一体化させるか。良い感じで曖昧にしたいとデザインを固めました。

「曖昧さ」ということは、庭師のみなさんがおっしゃるキーワードですね。だから、馴染むようなやさしい感じがみなさんの作品から感じるのかな。

それでいて、森の中にポツンとあるというよりは、生活の中の一部に寄り添っているコーヒー屋さんというコンセプトを明確にしました。カワセミの寝床、家族感、団欒、つまりは最も来た人自身が落ち着ける空間にしたいなって。

大きな石はテーブルにもベンチにも。庭ってかなり「自由」だ!

実際に参加してみてどうでしょう?

まず、これだけ足を運んでくれているお客さんたちに感謝したいです。そして、仲間の庭師さんたちに対しては「すごいなぁ」と。この「術」という空間と、それぞれの庭師さんの作品に魅了されています。

この場に出させてもらって、感謝しかないです。

あらためて感じたのですが、庭師さんはブランドを外の空間でアウトプットすることが得意です。もっとお店の外部空間を庭師さんに依頼してくれたらと。お店はもちろん、周辺地域にも良い波及効果があることを証明できたイベントになっていると思います。

私はそこまで庭に詳しいわけではないのですが、歩いていると目の前にこの大きな石がドンとあることに何よりもインパクトを感じました。楽しいというワクワクする気持ちというか。

やはり大きな石は、エネルギーが大きいですよね。自然物のエネルギーをみなさんに感じていただきたいと常に考えています。ですから、浦田くんがそう言ってくれてちょっとうれしいですね。

あと、庭師さん全体的にそうですが、我々も目立ちたいという気持ちがありますから(笑)。

最初は二人でやり切れるのだろうかと不安に思っていましたので、手伝いに来てくれた奈良のヤマカ造園土木の盛石田さんと、水野さんに紹介していただいた静岡の若手庭師さん2人には、とても感謝しています。

仲間同士で助け合う中で、表現の密度が高まっていくそうです。

庭師さんって、かなり助け合っていますよね。ライターにはまったくそういうものがないので、ちょっとうらやましいかも。

実は、我々、イベントというものに対して肯定的になれなかったんですよ。数日で壊すものを作るわけですし、何よりも残るものを作りたいわけですから。

でも、参加して分かることが本当に多かった。実感が何よりも学びの素ですね。

自分の限界を超える努力、そしてそこで得た経験がその後の考え方すら変えていくのだなと。人生が変わる気すらします。

で、数年経ったら進化とともに新たな疑問や悩みが出てきて、また参加する、と。

それ、本当にありそうですね(笑)。

こういうことが岡山県でもできたら良いなと思います。さすがに「術」の規模は大変そうですが。

岡山県の役所さん、企業さん、団体さん、ここにおもしろい庭イベントを開催したい岡山県の庭師たちがいますよー!!!

ということで、お二方、ありがとうございました!

庭工房茶和・酒井浩光さんの作品

会場を歩いていて、さっと立ち話をさせていただいた庭師さんもいます。庭工房茶和の酒井さんです。

おや、カンナ屑が花みたいになっているおもしろいところがありますね。庭師さんはどこかなっと。

浦田くん、こんにちは!

こんにちは。
とても賑わっているブースですね。

鉋とか大工さんの体験ができるブースを建築会社さんと作りました。建築会社さんだから、建物がとても立派です(笑)。

建物が立派だからこそ、しっかりと庭を作ることを心がけたそうです。

とはいえ、随所に庭師の技と術が入っていると思います。解説をお願いします。

体験型のブースなので、中は見えた方が良いというのが最初に考えたことです。植栽をするにしても、ある程度の抜けが必要と思いました。ですから、この程度に抑えています。

「あ、大工道具を使えるブースだ!」とか「パンフレットがあるならもらっていこう」みたいにならないと、ブースの意義が減少してしまいますから。その上で、大きめの石を据えてインパクトを出すなど工夫をしました。

私はこの鉋屑の花がブースの中身を表すアートで好きです。

体験した人にとっては記念にもなる鉋屑の花。そして、時を追うごとに花が咲いていく。おもしろいです!

実はこれ、建築会社さんがアイデアを出してくれたんですよ。それならばこんな樹種はどうだ?と、コラボレーションの形で作れたので楽しかったですね。

みんなで楽しむ庭づくりですね。ありがとうございます!

東芳庭苑・木目田裕一さんの作品

何やら先ほどから、美味しい匂いが漂ってくるんですよね。そして、私はハンバーガーが大好き。よし、ここに入ってみよう。

右が庭師の木目田さん。この後、ハンバーガーのカロリーを上回る庭解説が始まる。

浦田くん!待ってましたよ。

何バーガー食べますか? チーズバーガーとかおすすめですよ。

で、では、チーズバーガーで。

あの、あなたは?

私は東芳庭苑の木目田裕一です。この庭と建物を作りました。

実はですね、朝からずっとこのお店&お庭が気になっていました。なんというのでしょう、ちゃんとしているところと砕けているところのバランスというか、まとまりの素晴らしさというか。曖昧な表現になっちゃいますが。

外観。実は朝からこのお店&お庭を取材したいと目をつけていました。

曖昧! そこに気付いていただけるとは。

私たち庭師は庭だけのプロと思われていますが、実は違います。それだけではなく、門などの木工もしますし、何よりも内と外の境目をつなげる役目も担っています。その際には、曖昧ということも非常に大切なんです。浦田くーん、わかっていますね!

(心の声:いや、本当に曖昧な意見を言ったから謝っただけなのですが…気に入ってくれたみたいだから、そっとしておこう)
作品名は「市中の山居」なんですね。参加の経緯と作品の解説をお願いします。

まず、この機会、誘ってくれた水野さんに感謝しています。

「市中の山居」ですが、大井川や安倍川なんかの支流にある竹林の中の小屋をイメージしました。昔は、水場の側に人の営みがありました。そこに石の鳥居やお社があったと。時代が流れてお社は朽ちて、石の鳥居は折れてしまった。そこにまた人が住み始めて居を構えたというストーリーです。あの石の柱は、実際に鳥居の一部として使われていた石です。

すごい!(全部を記憶しきれなかったけど)情景が思い浮かんできます。

お店の入り口から前庭を見る。確かに界隈の喧騒から離れた感覚になります。

だから、「市中の山居」というタイトルにしました。本来の意味では都会の中にある山の中の景色ですが、この会場自体が静岡のど真ん中ですし、そういう山中の営みを感じられるかなと。

素材としては、その市中の山居の周辺には竹が生えているので、竹を多く使っています。壁もそうですし、水場の蛇籠(昔の土留めや川の堰き止めに使ったもの)も竹で作りました。また、数寄屋建築や茶室で強度を高めるために本来は外で使う力竹というものをあえて内側で使い、それを削り込んで花入に見立ててお花を活けたりもしています。

天井は漆喰落としの二段格天井風。真ん中は空が抜けていて明かり取りになっていて、水場からはその風景が反射して見えるようにしています。

天井を見上げて気が付いた。このカウンターも何もかもすごい作り込みだ!

そこまで考えて作られているのですね。
「術」に参加したきっかけは何だったのでしょう?

毎年4月に静岡駅ビルのPARCOの屋上で開催されている「天空の坪庭展」にはルーキー枠があります。私には弟子がいるのですが、「せっかくだから出て腕試しをしてみたら?」と彼に促しました。その手前、「じゃぁ、親方はイベントでどんな庭を作るの?」となるだろうなと思い、本気で一回だけ出てみようとなったのがきっかけです。

私は普段のイベントでは手伝いに徹しているのですが、今回は特別に出てみました。

タッグを組んだハンバーガー屋さんからはオーダーが何かあったのですか?

どんな方たちだろうと思っていたら、すごく良い方々で。結果的に全権を私に委ねてくれたので、思いっきり作ることができました。

お店とのタッグですが、何屋さんかによって必要なことがかなり変わりますね。ハンバーガー屋さんの場合は、ガスコンロを置く場所や調理台が必ず必要になります。

なるほど。
あ、風が出てきましたね。とても気持ち良いです。

見えるようで見えない、見えないようで見える爽やかな風が流れ込む竹の壁。

もー、浦田くん、実は庭のこと分かっているんじゃないですか?

この竹の壁に注目してくれましたか。見た目と風を通す壁、つまり抜け感については、とても意識して作りました。機能を満たしながら、野暮ったくならないように。通常は昔から伝わっている一寸五分や三寸の間隔が視覚効果として良いものになります。
でも、そこをあえて尺二寸にしてみたり三寸三分にしてみたりして、ちょっとだけ手を加える。それだけで雰囲気がガラリと変わるんです。

そうですかぁ、風のことまで分かってくれていたんですね。

(どうしよう、たまたま言っただけだなんて、今さら言えない。そうだ俗っぽいことを聞いてみよう)
バックパネルが金色というのが、渋くて良いですよね。

あー、お目が高いですね。素人のフリをしちゃって人が悪いなぁ、浦田くんは。じつは庭専門ライターなんじゃないですか?

あの金屏風は、下村観山の絵からインスピレーションを受けたものです。さまざまなものの影がチラチラと映るようになっているんですよ。そこまで分かってくれる人はなかなかいないのでうれしいですね。

これが和のお蕎麦屋さんだったら「なんだ金屏風か」になるかもしれませんが、ハンバーガー屋さんにストーリーがある上で入れていることに気付くなんて、驚きましたよ。

(心の声:こっちが驚くわ!なんで物知りになっちゃってるの…(泣)。よし、もっと分かりやすいものを聞いたら、「あー、素人さんだからそこに目がいきますよね」となるはずだ)

あ、あの…、あそこの自転車の車輪とかは(ハンバーガーのバンズが丸いからとかですか?とか、洋風にするためですか?と聞こうとしたら)

そう! そこ!
あの車輪は、元々オーナーが自転車屋さんだったということと、何よりもあれを月に見立てているんです。で、あちらにある車輪は太陽。市中の山居に流れる24時間や1年という時の経過を表現しているのですが、よく見抜きましたね。さすが浦田くんだ。

上を見上げた人だけが見えるお月様。どれだけ隠れキャラを仕込んでいるのだろうか。

(心の声:ミヌケテイナイデス。よし、もっと普通の話題に戻そう)
かなりの手間とかお金がかかったのではないですか?

今回だけと思っているので、思い切っちゃいましたね。全国各地から10人も手伝いに来てくれたんですよ。彼らはそれぞれかなりレベルが高い庭師さんですから、目を離すと勝手にやっちゃうところがあっておもしろかったです。私はメインのところを一生懸命やりつつも、ずっと周囲を見張ってなければいけません(笑)。

でも、それが功を奏したのは、石のベンチの上にある屋根ですね。私が描いた図面にはないものですが、「あったほうが良い」とみんなで話し合って決めました。作ってみたら断然、ある方が良いですね。本当に仲間たちには恵まれています。

=ここで、「ちょっとだけ質問したいことがあるのですが」という方が登場。=

(このままだと庭のことがすごく分かっている人になってしまう。いったん離れよう)
お忙しくなってきましたね。では、私はこれで。良いお話を聞けました。
ありがとうございます!(スタコラ)

えー! 宝篋印塔(ほうきょういんとう)の話がまだなのに!
浦田くんとは語り合えると思うので、また帰りに寄ってくださいよ!

これが宝篋印塔。この後、木目田さんとは再会できずでした。

Niwanotoki Design・仲佐修二さんと仲間たちが作ったステージ

歩いていたら端っこまで辿り着きました。なんと、ここではライブを開催しています。

って、うわっ!すごいステージだ!腰を抜かしそう!

あの人がステージ作りを主導した仲佐修二さんです。もう、浦田くんが来ることは話してあるので、合間を見て声をかけてくださいね。

完全に音楽にノリノリの仲佐さん。

うわっ! 水野さんですか、びっくりした!

今、仲佐さんは音楽でノリノリですね。ちょっと時間を空けてお話を聞いてみます。ありがとうございます。

=バンドの演奏が終了した30分後=

すみませーん、仲佐修二さんですか?
お話をお伺いしたくて。

はい、Niwanotoki Designの仲佐修二です。水野さんから取材があると聞いています。

早速ですが、どのようにしてこの圧巻のステージができたのでしょうか?

割った石を組み上げたステージ。こんなステージ、見たことがない!

今年のステージに関しては、昨年の「術」直後に依頼されていました。デザインや設計に着手したのは2月頃です。僕のスタイルは「何をしたいか」でないかではなく、「何をしなければいけないか」「何をすべきか」ということを最も考えて庭をつくります。

今回の「術」のメインステージにおいて、「すべきこと」とは何だったのでしょう?

最初に出演者であるソエジマトシキさんと打ち合わせをさせていただいたのですが、岩、水、滝というキーワードをいただいたので、そこから広げていきました。

最初から水は必須だと考えていましたが、ソエジマさんから出た「滝」という言葉が、石のサイズ感や水が滴り落ちている箇所に反映されていますね。

それだけを聞くと、山間部で岩登りする場所のようなイメージです。

ステージですから演者がおられるわけで、少なくとも演者の動く範囲内はフラットに作らなければいけません。それを何で実現するのか。木なのか石なのか。そういうところから庭づくりがスタートしています。そもそも、僕は石が得意。素直に演者が動く範囲も石で作ることにしました。

ステージ後ろ側から。コードや機材がフラットに置かれていることが分かる。

図面を描いてもその形のとおりの石なんて世の中に存在しませんよね。

はい。ですから、素材選びには時間をかけました。採石場に行って、ビビビッとくる石を選ぶのです。

「この子だ!」という石を見つけてからが、また大変。12トンを超す石だったので、4トン車で運ぶためには3つに割らねばなりません。

「運ぶ」ということ自体にもストーリーがありそうですね。また、石を割るという作業も、大胆さと繊細さの両方が必要そうです。
どんなステージを目指して作業を進めたのでしょう?

ステージ全体のテーマが「Comfy=心地よい」だったので、この言葉を最重視しました。演奏しやすいとか、見え方の観点もありますが、第一に演者もお客さんも作り手も心地良い空間を作ろうと。

Comfyを生み出すために必要なのは、「つながり」です。人や空間がつながらないと、個々で終わってしまいますから。会場全体の話ですが、入り口からここまで、かなり統一感や一体感があったと思いませんか?
それは、ステージだけではなくそれぞれの庭師さんたちがひとつの景色として関係をつなげてきたからです。このつながりがComfyを生んで、「術」というひとつの価値観に結びついています。

音に、風に、見える景色に。いろんなComfyが空間をひとつにしていました。

確かに、これまでにインタビューした庭師さんも、会場全体がひとつの空間だとお話しされる方がおられました。

じつは、このステージの正面を僕は決めていないんです。
ライブとして見るのは南側からですが、お客さんの流れは北側からやって来ます。ですから、どっちから見ても借景をうまく見せられるように植栽を意識しました。

タープがなければ前の方に、もっと植栽をかける予定でしたが、そこは運営の方々と話し合ってタープが優先になりました(笑)。

普通のステージだったら、背面パネルや天幕で背景が途切れてしまいますよね。このステージは何名で作ったのでしょうか?

私を入れて5名です。
ステージ作りの経験がある人もいれば、せっかくだから若手を入れて学びの場にしようなど、水野さんが目的を持って人選してくれました。

作り手としておもしろかったのはどんなところでしょうか?

演奏する人の気持ちを考え、見ているお客さんが笑顔になるのを思い浮かべながらステージを作りました。今はその答え合わせの時間かもしれませんね。

答え合わせの結果は、100点満点ですか?

ライブは後方まで観衆がぎっしり。みんなこの「時」を楽しんでいます。

点数で考えると、演者さんやお客さんとともに100点になるかどうかであって、庭師だけで100点ではないと考えています。その上で成功かどうかというと、大成功ですね。うれしいです。

ここを見てくれというものはありますか?

いろいろありますが、まずは配置の妙です。植栽や石ひとつにしても、とても心地よい配置があります。それは素材の大きさやシルエット、いろんな要素から来るのですが、常に庭師として気持ち良い空間を作ることを心がけています。

あ、そうだ!
高さの話があります。
ステージを作っている時に「高すぎないか」という声が出たのですが、僕はそうは感じていませんでした。実際に昨日の1日目に演奏を終えた方に聞くと「最高の高さだった」と。あと、「フジロックでもこんなに高くない」というおもしろい意見もありました。価値観は人それぞれですが、たくさんの人に笑顔になってほしくてこの高さにしたところ、演者の方もお客さんも笑顔になってくれたので、この高さで良かったのだと思います。

ステージと仲佐さん。石の凹凸が生む陰影がとても美しいです。

日頃の庭づくりとイベントでは違いがありますか?

どこで何をやるか、何をしなければいけないかで変わるものですね。一発モノにはインパクトが必要だと思いますし、それを壊すとなるとみんなが惜しむじゃないですか。ならば、壊すときに残念だと思ってもらえるレベルのものを作らなきゃいけない。ステージ作りのプロが世の中にはいるわけで、それでも庭師に頼まれたのですから。だから、これは挑戦ですね。石を小さくすればいくらでも平らなステージを作ることができます。でも、この大きさで行こうと決めたのは僕自身。みんなに「やろうと思えばできる」ということを伝えたかったのです。

何か読者さんに伝えたいことはありますか?

このステージには、庭師の技術を使ってメッセージをところどころに込めています。そこに気付いていただけたらうれしいですね。

想像をしてほしいんです。この石をどうやって運んだのだろうとか、どうやって割ったのかなとか。見る人によって受け取り方は異なるでしょうし、何に気付いてもらえるかもバラバラだとは思いますが、すべてに共通しているのはComfyにつながる庭師の術が込められているということです。ステージはもちろん、庭師のみんながそれをやっているのです。

なぜ、「術」に特別な印象を持ったのか、理解できた気がします。お話を聞かせていただきありがとうございました。

ギタリスト・ソエジマトシキさんが感じた庭師のステージ

ステージ横を歩いていたのですが、なんと!
い、今、目の前に有名ギターリストのソエジマトシキさんがいます。これは、ぜひお話が聞きたいところ。でも、突撃というのはちょっと礼儀がない気もするわけで。
困った。どうしよう。困った。どうしよう。

浦田くん、取材は順調?

みぃぃずぅぅぅのおぉぉぉさーーーん、多分、あと何回も言うであろう一生のお願いがあるのですが聞いてくださいー。ソエジマさんにインタビューしたいですっ!

=カクカクシカジカ=

なんだ、そんなことですか。早く言ってよ〜。ソエジマさーん。

=カクカクシカジカ=

OK出ました。はい、どうぞ。

え? 即決まり?

私は忙しいので本部に戻りますね。あとはご自由に。

というわけで、ソエジマさん、インタビューよろしくお願いします!

(ステージの熱気冷めやらぬまま汗ばんだ感じのまま)
どうぞどうぞ〜。

ズバリ、いつものステージと違いましたよね? どう違いましたか?

何もかもが違いますよ(笑)。自然の中で演奏している感覚とでも言うのでしょうか。僕、庭師さんが具体的にどんな仕事をしているかということを、このイベントで初めて知ったんです。職業として、こんなにも格好良い人たちがいることを知らなくて。

石のステージで気持ち良さそうに演奏するソエジマさん。

普通に街を歩いていても、庭って見えるのは外側だけですし、ましてや仕事をしている姿はなかなか見られませんものね。

はい。本気の庭師の仕事を初めて見ました。すごくシンプルに刺激をもらったという印象です。
特にこのステージはNiwanotoki Designの仲佐さんを筆頭に5名の庭師の方々が手掛けられたので、その方々をイメージしながら弾きました。

いつものステージとの具体的な違いはどんなところにありましたか?

まず、足下がゴツゴツしているのですが、それがむしろ心地よくて。それでいて、モニターも置けるし演奏もスムーズにできますし、ストレスはありませんでした。その上でこのステージでしょう?
とても、おもしろかったです。

演奏中の様子を背後から。この抜け感こそが「術」のステージ!

高さはどうでしたか?

はい。高いと噂がありましたが、とても良い感じでした。後ろにいた方々にも、演奏をよく見ていただけたと思います。「今年は岩だったから、来年は樹木だったらどんなだろう?」みたいなアイデアが思い浮かんじゃうくらいインスパイアされるステージでした。

ライブを拝見しましたが、会場内の一体感がすごかったですね。

それは、とてもうれしい感想です。今思うと、ステージとフロアの境目がいつものように一直線で区切られていなくて、凹凸で曖昧な感じになっているのが良かったのでしょうか。バックメンバーが前にいるということも、とても珍しいことでおもしろかったです(笑)。

バックメンバーさんがソエジマさんの前に。楽しそうな表情で演奏されていますね。

うわっ、ソエジマさんからもついに「曖昧」のヒトコトが(笑)。

「曖昧」ってキーワードになっているんですか?

はい。もう、インタビューした何人もの庭師さんが「曖昧」ということを話されていて。ついにソエジマさんまでおっしゃるのでビックリしました。

そうだったんですね(笑)。
今回ステージをつくってもらうときに、「あまり演奏のしやすさとかは考えないで、直感的に思いついたものを形にしてほしい」と伝えていました。そうしてできたステージに僕らが乗っかって演奏したわけで。今回は映像クルーも入っているので、どんなステージになっていたかを映像で見るのがとても楽しみです。

何かこの場で伝えておきたいことはありますか?

まず、庭師のみなさんが格好良い! もう、本当に、庭師は格好良い! こんなにも格好良いことができる人たちなんだ、と。ゼロをイチにする者同士でシンパシーをすごく感じました。

そして、お互いに作っているのは非言語のもの。だから、国際化の時代に越境ができるノンバーバルなジャンルだなぁと感じました。僕も言葉がないインストゥルメンタルの音楽で勝負しているので。だから、非言語のコラボレーションができて、今日は本当に素晴らしい1日になりました。

これからの益々のご発展、願っています。
お忙しいところありがとうございました。

庭師は本当に格好良い!
ありがとうございました!


取材を終えて思うのは、ソエジマさんの「非言語」、仲佐さんが話した「何をすべきか」、そして庭師のみなさんが話された「曖昧」こそが日本文化のおもしろさで、庭師は「曖昧」と「ちょうど良い」を「庭」で表現しているのかなと感じました。

この「術」は、静岡や庭師という枠に収まらないポテンシャルを秘めています。日本の文化の「庭」を現代の文脈で理解ができる、とても素敵で明るくチルな、本質が垣間見えるフェス!
浦田くんとしてのまとめは、おもしろい庭や人が集まってひとつの大きなことに「挑戦」しているのが素晴らしい!という1日になりました。ぜひ、皆さんも「曖昧」をキーワードに庭を見てくださいね。

今回取材した庭イベント

イベント名:術

開催地:青葉シンボルロード(静岡県静岡市)

Instagram:https://www.instagram.com/ju_tsu.event

ライター紹介

浦田浩志(EDGEs/YouTubeInstagramnote
得意:インタビュー記事、コンテンツ企画。
兵庫県神戸市出身、神奈川県逗子市在住。大学を卒業して入社した広告代理店で、求人広告の制作を担当。いきなりボスから「女性の求人を書くときは、君は女性になりなさい」という謎の教育を受ける。社長取材などを多数担当したことで、心臓に毛。近年は、初の永世七冠を達成した棋士の方や「宮さんがぜーんぶ破っちゃったの」と語ってくれた方、「問うな、踊れ、そして生きろ」という名言の方など、著名人も取材。一方で、大学時代からバックパッカーとして50か国以上を訪問。子連れでSUPを持ち込みインドへ行くなど神出鬼没。つながりがある造園関係者は100名以上、取材した鍛冶屋は50件以上を数える。

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