ハヤイカガヤイさんに取材をしていた時、楽屋Aの加藤さんが丁度ポスターを張り替えていた。
それを見た彼女は「またクジラ会館か!!!ほんと凄いな!負けていられない」と悔しそうにしていた。クジラ会館について彼女は「今関西でもっとも勢いのある学生芸人コンビ」と教えてくれた。
たしかに彼らの実績は凄まじかった。
ラランドや令和ロマンも出場していた「大学生芸人グランプリ」の2025年大会にて、審査員特別賞を受賞。ミルクボーイやナイチンゲールダンス、ストレッチーズらが歴代の優勝者に名を連ねる「大学芸会個人戦」では準優勝を果たしている。そんな華々しい結果を残す彼らはどんな人なのか、今後どう進んでいくのか取材した。
対照的なふたりでコンビを結成

ーー おふたりの出会いとコンビ結成のきっかけを教えてください。
カレー:大学のサークル(近畿大学お笑いサークル こども帝国)ですね。
北山:サークルに入ったときに、カレーが後輩にいびられてたのを僕が助けたのがきっかけです。
カレー:ちょっと待って。大分飛躍してるから僕から話させて。まず、僕が1年の4月から先にサークルに入ってたところにほぼ1年遅れで北山が入ってきました。その頃、僕はなんでだったか先輩と組んでBL漫才をしてたんです。「面白くないなぁ」と思っていたので2年生のときに解散したんですけど、「解散して今後どうしようかな」って考えてたときに後輩から「面白くない」っていじられるようになってしまって、悩む日々が続いてました。大学お笑いには演者と裏方の2種類があるんですけど、「裏方に転向しようかな」って思っていたほどでした。
北山:そしたら突然カレーが僕に「裏方って靴も黒じゃないといかんのかな」ってなんの脈略もない連絡がきたんです。「裏方さんは基本服が黒やけど靴もそういう縛りあるのかな」って。「えらいこっちゃや」と思い、僕も前のコンビを解散するタイミングだったんで、コンビを組もうと誘いました。
ーー北山さんはなんで前のコンビを解散したんですか?
北山:僕はサークルにプロになるために入ったんですよ。だからそうなれないなら組んでる意味なかったんです。前の相方とやってるのも楽しかったんですけど、プロになる気がなかったので解散して、3年の4月にカレーとコンビを組みました。
ーーおふたりが出会う前は、それぞれどんなことに打ち込まれてたんですか?
カレー:僕はとにかく運動ばっかりでしたね。中学の頃は、クラブチームで野球しながら、部活で陸上部に入ってました。野球がメインで、陸上は趣味みたいな感じ。ただ野球は大好きだったんですけど、残念なことにあまり上手じゃなかったんで、レギュラーには入れなくて。ずっとベンチなのがつまんなくて、1回遊びで陸上の試合に出てみたんですよ。そしたらなんか凄い記録を出しちゃったみたいで。それで強豪高校からスカウトをもらえて、そのまま入学したんです。でも、やっぱ強豪だけあって練習は鬼ハードでしたね。朝4時に起きて朝練に行くわ、スマホは禁止だわ……そんな感じで高校は遊ぶ暇もなく部活ばっかしてました。3年間で地球半周分の距離走りましたもん!!!
北山:その頃僕は、ゲームばっかりしていました。夢中になってやりました。

大会で結果を残している彼らだからこそ会える憧れの人たち
ーー対照的な学生生活を送られてきたんですね。お笑いはいつ頃からどんなのが好きだったんですか?
カレー:小学生の時はコロコロコミックの「絶体絶命でんぢゃらすじーさん」がめっちゃ好きでした。中学生からは部活で忙しくなりましたが、夕ご飯を食べながら家族でテレビでお笑いを観てましたね。父も母もお笑い好きだったんで、家ではなにかしらのお笑い番組がずっと流れてる状態。ネタ番組と、父が好きな明石家さんまさんのテレビはとにかく全部録画されてました。だから「さんまのお笑い向上委員会」とか「千原ジュニアの座王」は初回からずっと観てます。
北山:僕も小学生の時は「絶体絶命でんぢゃらすじーさん」や、ディズニーチャンネルの「フィニアスとファーブ」が好きでした。あとうちのお母さん、昔は吉本の「心斎橋2丁目劇場」に通っていたくらい筋金入りのお笑いファンなんですけど、当時「あんた、野生爆弾と、天竺鼠は観とき!」って勧められたので観てました。ただ僕の中でのお笑い好きはここで一旦幕をおろします。中学くらいからはゲームにとにかくのめりこみつつ、「オモコロ」っていうWEBメディアが好きで、今でもそれは楽しんで読んでいます。
その後、高校くらいからまたお笑いにハマりはじめて、芸人さんのラジオを聴くようになりました。TBSラジオの「おぎやはぎのメガネびいき」とか特に好きでしたね。ちょうどその頃、東京ホテイソンが相方掲示板っていうサイトを通じて知り合って、お笑いコンビを組んだことを聞いて。「そんなのあるんだ、面白そうだな」と思って、僕も使ってみたんです。それで会った人が近大の先輩で「大学にこんなサークルあるよ」って教えてくれてそこから「やるからにはプロになろう」って大学お笑いに向き合うようになった感じです。
ーーおふたりとも「絶体絶命でんじゃらすじーさん」がお好きだったと。確かに当時小学生男子から絶大な支持を受けてましたよね。クジラ会館のネタからもどことなく「コロコロコミックのようなくだらなさを愛しているんだな」と感じます。
カレー:ちなみに、そんな大好きな「でんぢゃらすじーさん」の作者、曽山一寿先生とは2025年12月に行われた「全日本アマチュアお笑いNo.1決定戦」でお会いできたんですよ!!! 先生も僕らのこと「面白い」って思っていてくれたみたいで、写真とサインをいただきました。めっちゃ嬉しかったです!
ーーえぇ!?めっちゃ凄い! 他に大会で結果を残せているからこそ会えた憧れの方っていますか?
北山:ふたりともマセキ芸能社に所属しているフランツってコンビが大好きなんですけど、たまたま僕らが決勝に残っていた「大学芸会」っていう大学生のお笑いグランプリをボケの土岐さんが見にいらしてたみたいで。その後、フランツさんとボニーボニーさんのツーマンライブが楽屋Aで開催されたタイミングで、直接お会いすることができて「クジラ会館、面白かった」って覚えててもらえた上に、褒めても貰えて。もう僕らめっちゃファンだから、嬉しくて仕方なかったです。

この話を聞いた数日後、彼らのSNSで、その憧れのフランツと東京・新宿の「ハイジアV-1」という会場でツーマンライブの開催が決まっていた。驚いて連絡すると、筆者よりも衝撃を受けていて「急遽決まったんです!嬉しいです!」と興奮気味に返信があった。このライブは彼らに大きな影響を与え、芸人としてのこれからにより一層の期待感を持てるようになったようだ。
今の関係性、結構イイ感じ
ーーここまで実績を残せるネタをどう作っているんですか?
北山:基本は僕が書いてるんですけど、「こいつがこんなこと言ったらおもろいな」って相方ありきで考えています。いわゆる当て書きですね。こいつはきっとこういう印象を持たれる、だからこんなことを言わせようって作って、あとは実際に試してみて、叩いて微調整を繰り返しています。僕はクジラ会館以外にもコンビを組んでいるんですけど、そっちとはネタの毛色は違いますね。人ありきなんで。
カレー:僕が坊主なのは北山の指示ですし。
ーーブレーンは北山さんでしたか。よくネタを書いてる側とそうじゃない側とで力関係がある話をテレビなどで見ますが、クジラ会館はそのあたりどうなんでしょうか。
北山:特にそういうのはないですね。ただ、お互いがお互いを出し抜いてやろうって気持ちはあります。
カレー:北山はやっぱネタ書くの上手いし、面白いです。でも、僕の特技は別のところにある。例えば、ライブのコーナーなどの平場。僕あれ、正直ネタよりも好きなんです。だからそこでちょっとでも面白いと思ってもらえるように頑張っています。勝ち負けじゃなくて、お互いがお互いの得意分野で力を発揮して、相手に「おっ。ええやんけ、負けてられん」って思ってもらおうと励む。仲いいながらもお笑いの場面ではひとつピリッとした緊張感は持っていますね。あと、遠方にいった時に目的地までの道案内も僕がやっています(笑)。
ーーお互いが依存しあうのではなく、役割分担していい関係性ですね。対極の人生を歩んできたとは思えない。
カレー:真逆な感じはもうあんまなくて。多分僕が環境に影響されやすい人間だからかもしれないですけど、僕たちベースが仲いいんでずっと一緒にいるんです。だから考え方も似てきて、今はむしろ近い考え方をお互い持っていると思います。

賢い進路選択をしたふたりのこれから
ーーここまで話を聞いていて、失礼ながら勉強している様子がまったくうかがえないんですけど、近畿大学にはどうやって入学したんですか?
カレー:僕は指定校推薦です。高校のレベルがそんなに高くなかったんですが、短期記憶が得意だったんで、僕の定期テストの平均点は98点くらいでした。だから指定校「京都産業大学」、「近畿大学」、「甲南大学」、「龍谷大学」の所謂「産近甲龍」と呼ばれる中の文系学部ならどこでも選べたんで、近畿大学の「総合社会学科 社会・マスメディア系専攻」が面白そうでそこに決めたって感じです。
北山:僕は中学の時に宿題や提出物がすっごい嫌で、しなかったんですよ。ただ授業聞くのだけは我慢できたんで、塾行かせてもらって塾と授業だけで済まそうって思って。それでなんとか最低限を保てるようにしていました。あと塾って合格実績出すじゃないですか。それ見てたら、近畿大学附属高校の合格者「1,000人」って書いてあって。ここに行ったら、高校は塾と学校の授業を聞いていたら勉強しなくても近畿大学に進学できるんだと考えて、高校からそこに行きました。
ーーおふたりとも、自分のことをよく分かって戦略的に進学されていますね。賢い…! にしても、なぜここまで本気でお笑いをしているのに、大学在学中に養成所などへ行かなかったのでしょうか。
カレー:大学お笑いにいないと、獲れないタイトルがたくさんあるからですね。
北山:僕もそうですね。ほんとは在学中に吉本に入ろうと思っていたんですけど、「NOROSHI」とか養成所入ったらもう出れない賞レースがあったんで。

ーー最後に、今後の進路はもう決まっていますか? また目標も教えてください。
北山:大阪でフリー芸人としてもう1年活動してから、東京に行こうと思っています。東京はライブが多くて楽しい! 会場も事務所も沢山あって楽しそうですし、尊敬する先輩が多いです。だから、東京に行きます。大阪にいる残り1年は毎月ライブを開催しますので、是非近隣の方は観に来てください。目標は…とにかく人気者になりたいですね。賞レースも獲りたいし、メディアにもたくさん出たいです。
カレー:僕も大阪での残り1年はやりたいことを全部やります! 東京では、大好きな「さんまのお笑い向上委員会」の収録もあるので、どんな形でも出られるように、売れたいです。「ウレッコ」になりたいです!

ライター紹介

後藤華子
サブカルと外食が生きがいのアラサー人妻ライター。
ライブハウスと居酒屋が実家です。
短所は好きなものの話になると、早口になるところ。