世界には、約2,000種類ものオリーブの品種があると言われています。
そんな奥深いオリーブオイルと塩を集めたセレクトショップがあるのが、東京谷中の古民家を改装した複合施設「上野桜木あたり」。その一角にある「おしおりーぶ」は、世界各国から集めたオリーブオイルや塩を、試食しながら選べるユニークなセレクトショップです。 オーナーの畑野さん、石塚さんに、どのような想いでお店を営んでいるのかを聞いてきました。
「ここがないと生きていけない!」スタッフ自らお店を引き継ぐことを決意

「おしおりーぶ」のオープンは2015年。古民家を改修した複合施設「上野桜木あたり」の開業とともにオープンしました。

誕生のきっかけは、前オーナーが人間の身体の維持に必要不可欠である「塩」と「油」を集めるセレクトショップがあるとおもしろいのでは?という発想からだったといいます。

そんな前オーナーの想いを引き継ぐのが、現オーナーの畑野さんと、石塚さん。
おしおりーぶで働いたことをきっかけにオリーブオイルが生活に欠かせないものになっていった石塚さんは、2年前に前オーナーから閉店の話を聞き「ここにあるものがないと生きていけない」と感じ、お店を引き継ぐことを決意。
知り合いだった畑野さんに協力を仰ぎ、力を合わせておしおりーぶを受け継いでいます。
このお店に出会って働くようになってから、オリーブオイルも塩も、種類が豊富で、商品によって個性があることを知りました。次第に、「この食材ならこのオリーブオイルをかけたいな」とか「今日は少し苦味が強いタイプの気分だな」とか、種類を使い分けるほどになって。普段からオリーブオイルを持ち運ぶくらい、生活に欠かせないものになっていったんです。
閉店の話を聞いたときは、ここでしか購入できない商品がたくさんあったので、純粋に「このお店がなくなるのは困る!」と思ったんですよね(笑)。「続けてくれてよかった」という声をいただくこともあるので、あのとき引き継いでよかったなと感じています。
知識よりも「おいしく楽しく」がなによりも大切

おしおりーぶで出会えるのは、世界中から集められたオリーブオイルや塩、バルサミコ酢。添加物を使用しない自然な材料で作られたものを中心に、約60種の商品が並びます。


商品は一度すべて味見し、心から「おいしい」と思ったものだけをセレクト。スタッフが旅先で発見したものを取り入れることもあるそうです。
そこには「塩とオリーブオイルを楽しみながら、生活に取り入れる」という、お店としてもっとも大切な哲学が隠されています。
セレクトショップの店長としてオリーブオイル鑑定士のような資格を取ったり、勉強して専門的な知識を入れた方がいいのではと思っていた時期もあったんですが、おしおりーぶに足を運んでくださるお客さまの多くは、日々の料理や生活に使いたいと思って足を運んでくれる方々。
だったら本当に大切なのは知識より、どんな風に使うとおいしいのかを伝えられることなのではと感じて。そこからより一層、「この食材とこのオリーブオイルは合うな」とか「このオリーブオイルと、バルサミコ酢を合わせたらおいしそう」とか、まずは自分が楽しみながら、試すことを大切にするようになりました。

店内には、おすすめの組み合わせやレシピについて書かれたポップもたくさん。商品を手に取るごとに、おすすめのレシピや使い方を教えてくれるのも楽しいポイント。
畑野さんは、毎日トマトジュースにオリーブオイルを入れて飲むのが習慣になっているそうで、お二人とも日々「楽しみながら取り入れる」ことを大切にされているのが伝わってきました。

試食で、自分にあった塩とオリーブオイルと出会える

「おしおりーぶ」最大の魅力は、店内にあるオリーブオイル、塩、バルサミコ酢、すべての商品の味見ができること。
味の違いで選ぶことが限られるオリーブオイルや塩も、おしおりーぶであれば、好みの味わいを一つずつ試してから購入することができます。

特に印象的だったのが、国ごとでガラリと変わるオリーブオイルの味わい深さ。
店内に並ぶ、ポルトガル、スペイン、イタリア、フランス、チュニジアのオリーブオイルはどれも、色や香り、風味、味わい、後味、苦味のちがいが明確にわかるほどバラバラで、これまで自分のなかにあった「オリーブオイル」の見方が、大きく変わるほど衝撃を受けました。
オリーブオイルは、同じ国のなかでも全くちがった味のものが生まれるのがおもしろいところです。
たとえば、イタリア南部のシチリアで作られた「パンタレオ」というオリーブオイルは、苦味が強いハーブのような味わいが特徴で、地中海の新鮮な魚介や野菜が多く使われるシチリア料理との相性がいいんです。
一方、中西部のトスカーナで作られた「Verde O」は、3種のオリーブオイルがブレンドされていて、香りや苦味のバランスがいい商品。和洋どちらにも合いますが、お肉メインのトスカーナ郷土料理と相性がいい。同じイタリアでもここまで違うんだということが味見をするとより実感できますよね。
どんな料理に使いたいか、自分がどの国の料理が好きかなどをイメージしてもらえると、好みのものと出会えるかなと思います。

オリーブオイルのなかでも、とくに印象的だったのが、ポルトガル産の『アゼイテ・ファティマ』。
聖母マリアが出現したと言われるポルトガルの聖地、ファティマのオリーブの木から採れた実を使ったオリーブオイルで、現地でも特別な存在として親しまれているそう。
石塚さんにとっても、この商品は特別な一本。ポルトガル人の義父の親族に聖母マリアの出現に立ち会った方がおり、そのストーリー性や、純粋なおいしさに惹かれ、現地から直接輸入を行うようになったといいます。
日本で購入できるのはおしおりーぶのみ。お店を代表する商品のひとつです。

試食させてもらいましたが、やさしい口当たりでさらりとしながらも、後からコクが広がる味わいで、苦味よりも旨みを強く感じました。
石塚さんおすすめは、アゼイテ・ファティマに醤油を数滴たらしてお寿司やお刺身を食べること。意外な組み合わせだなと思い、自宅で実際に試してみたのですが、オリーブオイルのコクが魚の旨みをより引き立ててくれて、想像以上のおいしさに驚かされました。

テイクアウトOKの「オリーブティー」もおすすめ。
ポリフェノールが多く含まれた、美容と健康にもぴったりな一杯で、オリーブ特有の苦味がありつつも、後味がさっぱりとしていて癖になる味わい。谷中の散策のお供にもぴったりです。
「あったらいいなを実現させるのは楽しい」オリジナル商品化への挑戦

自分たちの「おいしい」と「楽しい」を大切に、世界中から商品をセレクトしている、畑野さんと石塚さん。そんなお二人は現在、オリジナルの商品開発にも力を入れているといいます。

独自に開発した『スモークド・オリーブオイル』は、俳優の木村拓哉さんが来店時に購入した燻製オリーブオイルの製造中止をきっかけに生まれたもの。
お二人とも「こんなにおいしい商品がなくなるのは惜しい…」という想いから、アゼイテ・ファティマをベースにした独自のスモークオリーブオイルを開発。
燻製には無農薬で育てた桜の木のチップが使われ、製造方法にもこだわりがあります。チーズや卵、ポテトサラダ、バケット、お肉、海鮮など、スモークテイストで味わいたい食材との組み合わせがおすすめなんだそうです。

直近では、人気のダークバルサミコ酢をベースにした「スモークバルサミコ酢」を新たに開発。深みと酸味のバランス感が絶妙で、お肉に合わせたくなる味わいでした。
現在は、商品開発のほか、より商品への理解を深めてもらうためにSNSの情報発信にも力を入れています。
おしおりーぶに置かれた商品は、個人輸入業者の方から仕入れることも多いので、繋がりのある方をゲストにお迎えして、商品の魅力や、どんな使い方がおすすめなのかを動画内で解説してもらっているんです。みなさん、商品への情熱が高く、個性にあふれたおもしろい方々ばかりなので、ぜひYoutubeをご覧いただけたらと思います。
現在は女性を中心に、幅広い世代の方にご来店いただいていますが、特に近所にお住まいの方に来ていただけたらなおうれしいですね。日常的に通ってもらうことで、おいしく、楽しく、健康的に塩とオリーブオイルを取り入れてもらえるかなと思います。

取材前まで、オリーブオイルは「パンにつけて食べるもの」、塩は「調味料」くらいの認識しかありませんでしたが、さまざまな種類のオリーブオイルや塩を試食することで、どちらも奥が深い食材なのだと、気付かされました。
特に印象的だったのは、石塚さんも畑野さんも専門的な知識を語る前に、「まずは食べてみてください!」とすすめてくれること。食事は知識や正しさではなく、“楽しむこと”がなによりも食事を豊かにしてくれるのだと、実感するひとときでした。
食の世界を広げてくれる「おしおりーぶ」。ぜひ実際に足を運んで、自分好みの商品を見つけてみてください。

おしおりーぶ(Oshi Olive)
住所:台東区上野桜木2-15-6 上野桜木あたり 3号棟1階
TEL:03-5834-2711
営業時間:11:00-18:00
定休日:月曜(月曜祝日の場合は、翌火曜休)
ONLINE SHOP :https://oshiolive.net/
取材・執筆・撮影:はせがわみき