
2026年3月1日の日曜日、京都の四条烏丸に、若手芸人のためのお笑いの拠点「楽屋W」が誕生しました。場所は、わかさ生活が手がけるブルーベリー専門店「WAKASA&CO.(ワカサアンドコミュニティ)京都四条店」の2階にある、わかさの舞台。なんでもプロの芸人だけではなく京都の学生をはじめとしたインディー芸人に門戸を開くというから驚きです。しかも、スタートのきっかけは、この「DEKIRU!」に掲載された1本の記事からでした。
いったいなぜ、わかさ生活がお笑いを? 関係者に笑いの新拠点誕生の背景を訊くとともに、ニュースター誕生の予感をはらむ白熱した杮(こけら)落とし公演のレポートをお届けします。
京都・四条烏丸から発信するインディーズお笑いの拠点「楽屋W」
「京都に新しいお笑いの拠点ができるんだって」
「しかも若手の登竜門として、学生のお笑いにも門戸が開かれるよ!」
この嬉しいニュースが早くもお笑いファンのあいだを駆け巡っています。その新たなベースの名は……「楽屋W」(がくやダブリュ)。
ブルーベリーアイでおなじみの「わかさ生活」本社にて展開する体験型店舗WAKASA & CO. (ワカサアンドコミュニティ)。 楽屋WはこのWAKASA & CO. の2階にしつらえられた舞台 STAGE、通称「わかさの舞台」にて発足しました。学生芸人やフリー芸人たちがチャレンジできる場所として2026年3月1日より本格的に始動したのです。
スタートのきっかけとなったのが、実はこの「DEKIRU!」に掲載された、こちらの記事。
大阪のお笑いを終わらせたくなかった ―「楽屋A」オーナー・加藤進之介さんの挑戦
“笑いの聖地”と呼ばれる大阪のミナミにて、お笑いライブバー「舞台袖」と劇場「楽屋A」の二か所を運営するオーナーの加藤進之介さん。彼を取材したこの記事を発端として京都開催の機運が盛り上がり、WAKASA & CO. ✕ 楽屋A ✕ DEKIRU!のトリプルコラボが実現。京都にもインディーズお笑いの拠点「楽屋W」が誕生した、というわけなのです。
伝統と文化の発信地であり、チャレンジのステージでもある「わかさの舞台」

さて、楽屋Wが幕を開けた「わかさの舞台」とは、そもそもどんな場所なのでしょう。
わかさの舞台があるのは京都の中心繁華街、四条烏丸(しじょうからすま)。2025年3月20日、阪急「烏丸」(からすま)駅から徒歩30秒という交通至便な場所に本社兼複合型体験施設 WAKASA & CO.が誕生しました。
ブルーベリーを見て味わって楽しむ総合体験ストアWAKASA&CO.京都四条店オープン!
わかさの舞台は、このWAKASA & CO.の2階にあるのです。
一歩、足を踏み入れれば、厳かな雰囲気のなか、縦2.4×横6.4メートルという目を見張るほど大型の高細密LEDパネルビジョンが施された檜(ひのき)舞台がどぉーん! とお出迎え。

左右にはブルブルくんとアイアイちゃんがお座りし、見守ってくれていました。


ここで音楽や演劇、能や落語など伝統芸能、工芸のワークショップなど幅広い内容のイベントを開催。アフタヌーンティーラウンジとオリジナルクラフトジンを提供するバーラウンジともつながっており、創造の楽しさと癒しをともに味わえる広々とした多目的空間なのです。
ブルーベリー&京都を心ゆくまで。五感で味わう体験型空間
大阪・楽屋Aの精鋭たちが京都を笑わせにきた
では、楽屋Wが第1歩を踏み出す記念すべき2026年3月1日(日)のレポートをお届けしましょう。
第1部は「楽屋W 杮(こけら)落としライブ!!!」。
日ごろは大阪の楽屋Aに出演しているプロの芸人と学生芸人の団体戦です。事務所に所属せずフリーで活動するボニーボニーのMCで幕を開けました。

杮落としライブは、ボニーボニーのツッコミ・花崎天神の「1階のカフェまで笑い声が響き渡るライブやろうぜ!」の掛け声からスタート。
そう、わかさの舞台があるWAKASA & CO.の1階にはブルーベリーメニューが自慢の「BLUEBERRY CAFE」があるのです。ブルーベリーを用いたベーグルサンドやドリンクをご用意。ぜひ足を運んでみてください。
それにしても、音のよさに感動です。「クラシックコンサートをはじめ、たいていのライブはできる」という音響設備を誇っているとのこと。
第1部の出演者はボニーボニー、たらちね(松竹芸能)、母性人、ハヤイカガヤイ、オーパスツー(松竹芸能)、おばちゃんと炎、フタチ海岸線、おかわりアイロニー、キャサリン、めがねこばすとす、ビブリオム音楽の12組。
いつもは大阪の舞台で活躍している彼らが本物の檜が張られた舞台に立つ雄姿に感動。胸にグッときました。
トップバッターのオーパスツーに続いて登場したのは、以前にDEKIRU!でも取材させていただいたピン芸人のハヤイカガヤイさん。上京して“自称・港区女子”に変わり果ててしまった友人を憐れむネタ。いつもに増して皮肉が効いたスパイシーな作品に仕上がっておりました。

「笑った瞬間、全員“共犯”ですよ」― ハヤイカガヤイが笑いで肯定する「自分の膿」
オフィスで残業する男女の同僚二人が好意を告白しあう、ブルーベリーのように甘酸っぱいコントを披露したキャサリン。

トリは「わかさ生活のCM出演を狙う」という露骨すぎる媚び売りネタで爆笑をかっさらったボニーボニー。貫禄たっぷりな漫才です。「このステージ、ウン千万円もしたらしいぜ!」とドタバタ走り回る彼ら。足音が会場に響き渡るたびにCM出演のチャンスが遠ざかっていく気がしたのは筆者だけでしょうか。

コーナーではプロチームと学生チームに分かれ、「大阪に住んでいる人でも安心できるように、まるで大阪みたいに烏丸駅からわかさの舞台までの道順を案内せよ」という映像対決。なんとイベント当日に即興でプロモーションVTRをつくってしまおうという難易度が高いミッションです。勝者は、四条烏丸を大阪千日前のチープなローカルCMのごとく浪花チックに紹介したプロチームでした。

大喜利の出題は「新しい京都の皮肉を考えよ」。
京都で「ええ時計してはりますなぁ」と言われたら、それは実際には「(長い話や滞在で)時間を忘れていませんか?」「ええ加減、お帰りの時間(話の終わり)ですよ」という皮肉。相手に恥をかかせずに帰宅を促しているのです。こんなふうに上品な表現のなかにイヤミを交えるのが京風のならわしなのです
そして大喜利がスタート。
食べるのが遅いイライラを伝える場合は「あんたと食事をしていたら、何を食べても高級フルコースになるわ~」、やかましいことを伝える場合は「すべての微生物がこっち向いてはりますなぁ」と秀逸なイヤミが続出。MCのボニーボニー花崎も「お前たち、本当にイヤで最高だよ!」と絶賛コメントを連発しました。その声はきっと1階のBLUEBERRY CAFEに響き渡っていたことでしょう。

最後は舞台を演出した楽屋Aオーナーの加藤進之介さん、ブルブルくんとアイアイちゃんを交えて記念写真をパチリ。両手のVサインをくっつけて楽屋Wを表すフィンガージェスチャーもここで誕生しました。

京都の学生お笑いシーンは「これから伸びしろしかない」
盛況に終わった第1部「楽屋W 杮(こけら)落としライブ!!!」。安堵と喜びに浸る間もなく、バタバタと第2部のリハーサルへ突入します。
第2部は「京都学生芸人大祭り」。
出演するのは京都の大学へ通うアマチュア芸人たちなので、加藤進之介さんの演出も懇切丁寧。まるで教鞭をとるように、学生たちにもわかりやすく伝えます。ときおり見せる笑顔は教え子の成長を見守る先生のようです。


そんな加藤さんに、楽屋Wをスタートする意気込みをうかがいました。

――楽屋Wの発足が決まった背景を教えてください。
加藤進之介さん(以降、加藤):2025年の9月にDEKIRU!の編集部から取材を受けて、それをきっかけにWAKASA & CO.のマネージャー國松和弘さんとつながりができたんです。國松さんから「うちはステージがある。何か一緒にイベントをできないか」というご提案があり、そこから一緒に「具体的にどうするか」を考え始めたという流れです。
――楽屋Wには学生芸人がたくさん出演します。学生時代に、あんな豪華な檜舞台にあがれるなんて、すごい経験ですね。
加藤:そうなんです。舞台が立派なので、学生はパワーがあるぶん、気を遣います。大阪の楽屋Aは大手事務所に対するカウンターという位置付けもあるので、学生が少々乱暴なネタをしても「ええよ、ええよ」と許している部分はあるのです。しかし、こちらはそうではないので……。今日の出演者には「暴れるネタをやる場合は事前に相談させてね」とは言うてます(苦笑)。
――これから行う第2部は京都の大学へ通う学生のみが出演します。これは京都では画期的なできごとですね。
加藤:そうなんです。京都は大学が多いし、歴史が深いお笑い系サークルもたくさんあるのですが、これまで学生芸人が出演できる劇場が多くはありませんでした。それが理由で大阪と比べて盛り上がり切れてない部分はあったと思います。大阪の大学のお笑い系サークルは、すごい盛り上がっているんです。ただ、京都は学生が舞台に立てる機会が少ないこともあって大阪ほど熱くはなく、そのギャップが「いややなあ」という気持ちがずっとありました。だから、京都の学生たちがわかさ生活さんでネタをやれるのは意義が大きいです。
――京都に、これまでにない若手のお笑いシーンが誕生するなんてワクワクします。
加藤:僕もです。京都はめっちゃ伸びしろがありますよ。これから伸びしろだらけでしょうね。

京都の学生芸人の願いは「M-1の決勝戦をここでやって」
綿密なリハーサルを終え、いよいよ第2部「京都学生芸人大祭り」。
同志社大学喜劇研究会に所属するおかわりアイロニーのMCで開幕しました。第1部で生まれた、指で楽屋Wを表すフィンガージェスチャーは第2部で早くも定着した模様です。

出演者は、フタチ海岸線、おかわりアイロニー、めがねこばすとす、リップオーバー、もこみち研修生、犬も歩けば、ビブリオム音楽、チー鯖、励美(はげみ)、Skystar(スカイスター)、ノコギリモリタの12組。
本来は出演するはずだったコンビ「電ノコ」が、「相方がブルーベリー摂取不足で」との理由で欠席。ノコギリモリタがピン芸を披露することで応急処置しました。他の出演者たちから「摂取不足なんだったら逆に連れてこいよ!」と、しごくまっとうなツッコミの砲火を浴びるハメに。
参加校は先述の同志社大学、立命館大学、京都大学、佛教大学。京都大学からは医学部の学生も出演。メスのように切れ味が鋭い笑いを届けていました。
「デパートへ行く練習がしたい」という、めがねこばすとす。

結成は2017年。結成当時は中学2年生と小学5年生だったという兄弟コンビのSkystar。2018年にM-1グランプリで「ナイスアマチュア賞」を受賞している有望株です。

学生らしい激しいアクションと矢継ぎ早なワードの応酬で観客を圧倒するフタチ海岸線。

「本当にネタが尽きた劇団四季」というタイトルで、バイトへ行く苦痛をミュージカル調に表現した励美(はげみ)。透き通る美声としょぼい日常描写の落差に観客は大爆笑。筆者も「普通にTHE Wの決勝へ行けるレベルでは」と感動しました。

「彼氏の祖母が早い時間に寝るから電話を切れ」という、説明が難しい(文章力不足ですみません……)理不尽なクレームのやり取りで笑わせるチー鯖。

大喜利コーナーでは「京都の本当のあるあるを教えてください」という京都ならではのお題が。
「道が碁盤の目みたいになってて道に迷いにくいと言うけれど、普通に迷う」
「はんにゃりした猫がいる」
「『京都は寒いですね』と言われると『京都は盆地やからね』と返すが、なぜ盆地だと寒いのかは誰も説明できない」
「京都人は性格が悪いというけれど基本、人間は性格が悪い」
などなど、シン・キョウトあるあるの数々に客席からは共感の笑いが。筆者も京都在住なので、胸のもやもやが見事に言語化され、「さすが学生! 優をさしあげる!」と膝を連打していました。

「♪ブルーベリーアイアイ、ブルーベリーアイの替え歌で幸せなことを言ってください」というお題では「♪すぐすぐ会いたい。すぐ会いたい(はあと)」「♪海苔海苔のり弁、海苔多い~」など学生らしい青春の光と影を反映した視点の回答が続々と。紫色のノートの、青春の1ページをめくっているようでした。
最後のコーナーでは、学生たちから、わかさ生活へ「京都学生芸人の願いを叶えて」というメッセージを読み上げます。
「高市総理に会わせて」
「M-1の決勝戦をここでやって」
「鴨川を下って大阪へ行ける船をつくって」
「わかさ生活に就職させて」
「ブルーベリー狩りに連れていって」
と、ド厚かましい希望がこれでもかと。
WAKASA&CO.の5階には「メノコト神社」という、八坂神社のお清めを受けた、目の健康を願う神社があります。願いが叶うよう、そこで手を合わせてみてはいかがでしょう。神様からお目玉を食らうかもしれませんが。


若者がいつかこの舞台に立った日のことを思い出す場所にしたい
では最後に、楽屋Wの発足に尽力した、わかさ生活WAKASA&CO.マネージャー國松和弘さんにお話をうかがいました。

――なぜWAKASA&CO.の館内に舞台をつくろうと思われたのですか。
國松和弘さん(以降、國松):さまざまな世代、界隈が集うコミュニティの場を創りたいという想いがありました。京都という歴史を紡ぐ意味でも、ただのステージではなく「舞台」を、という、つくったと言うよりも必然として生まれたものと感じています。
――この舞台は、どのような公演に使っているのですか。
國松:たとえば、LEDビジョンに世界の名画を映しながら生演奏による芸術没入体験をしていただくコンサートや、絵本を上映し、ナレーターの方が読み聞かせしながら音楽を演奏する音楽会など、ファミリー層をはじめ幅広い世代の方に楽しんでいただいております。様々なワークショップも開催しており、本格的な公演から気軽な体験イベントまで色々な楽しみ方をご提供しています。
――アットホームで楽しそうです。そして、過去にお笑いの公演はあったのでしょうか。
國松:毎月第1金曜日、落語の寄席を開いています。ただWAKASA&CO.が進む道の一つとしてDEKIRU!と同じように「次世代を担う若者を応援したい」という気持ちがあり、あえてベテランではなく若手の落語家さんにお集まりいただいております。とは言え、確かな実力をお持ちの方が揃い、これから、どんな落語家さんになっていくのかワクワクさせてくれる方ばかり。お客さんとともに、これから羽ばたく人たちを応援する。ここは、そんな場所でもあると考えています。
――若い落語家さんは、特に京都では高座に上がる機会がなかなかないので、とても素晴らしい方針だと思います。そして、いよいよ漫才、コント、ピン芸など若手が腕を振るう「楽屋W」が始まりましたね。
國松:「チャレンジする人たちを応援したい。埋もれてしまっている若い才能に光を当てたい」という加藤さんの想いは僕たちも目指すところなので、親和性が高かったんです。なので、なんの違和感もなく「うちでやりたい」と思いました。
――今日、杮落し公演が無事に終わりました。若手や学生たちのネタをご覧になって、いかがでしたか。
國松:一言で言えば「参りました」。控えめに言っても「最高!」でしたね。若者のパワーやアイデアって今、日本が最も欲しているものでしょう。ここは京都の烏丸という小さな場所ではあるけれど、そこから若い才能を発掘して発信できるって最高です。今後は日本中の人たちが視聴できるよう、配信にも力を入れていきたいですね。胸に刺さっちゃう人は全国にいると思うし、そこからどんどん新たなコミュニティが生まれていってほしい。それが願いです。
――ここから新たな笑いのムーブメントが生まれることを期待します。実際、かなりレベルが高かったですね。若手や学生のお笑いって今、こんなにおもしろいんだって改めて驚きました。
國松:わかさの舞台・楽屋Wを、ひとつのチャレンジの場として、どんどんと新しい事に挑んでいただきたい。そしていつか大舞台で活躍される日がきたら、歩まれた道を振り返ったときに「わかさの舞台・楽屋Wに立ったな」と思い出してもらえると嬉しいですね。

京都の新しいお笑いの拠点「楽屋W」。“わかさ”とセンス、パワーがみなぎった2本のイベントを観て、学生芸人のレベルの高さにたじろぎ、加藤さんがおっしゃった「伸びしろ」を感じずにはいられませんでした。将来の賞レースチャンピオン、お笑いで天下を取る逸材が京都のこの劇場から誕生するかもしれません。
プロとアマチュアのWの笑いが味わえる楽屋W。百聞は一見に如かず。ブルーベリーアイで瞳に安らぎを与えながら、伝説の目撃者となってください。今後の公演スケジュールはInstagramやXなどでチェックしてくださいね。

WAKASA&CO.京都四条店
住所:京都府京都市下京区四条烏丸長刀鉾町22 三光ビル
アクセス:阪急「烏丸」駅から徒歩30秒、地下鉄「四条」駅20番出口から徒歩3分
電話番号:075-213-7727(代表)
営業時間:7:00~21:00
定休日:不定休
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楽屋A・舞台袖・楽屋W
取材・執筆・撮影:吉村智樹