だからラジオはビジネスに効く! 声の力×信頼性でファンを生む仕掛けとは

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「音」の挑戦者たち

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だからラジオはビジネスに効く! 声の力×信頼性でファンを生む仕掛けとは

こんにちは、DEKIRU!編集部のHIROです。前回は「わかさ生活ラジオ」の魅力について、放送局であるKBS京都側の視点からお伝えしました。今回はテーマを変えて、ラジオというメディア自体の持つ魅力や可能性に迫ります。

前回も書きましたが、取材を担当した私は京都出身。中学生のころ深夜のラジオ番組を聴くようになって以来、KBS京都を通じて徐々にラジオ好きになっていきました。だから私にとってKBS京都ラジオは常に身近な存在であり、ラジオファンとしての原点とも言える放送局です。今は横浜在住なのですが、KBS京都の好きな番組はradikoでいつも聴いています。

そんな「思い入れ強め」な私ですので、湯浅さん・堀士さんという長年KBS京都ラジオを支えてこられたお二方は、私にとってレジェンド的存在…緊張しつつも、ラジオについて深堀り質問してみました。

今回いただいた、KBS京都ラジオのプログラムガイド。森谷威夫アナウンサーの新番組「となりの森谷さん」が特集されていました。

ファンを生み出す「声の力」

ラジオという媒体が持つ強みについて、たとえばブランディングやマーケティングの視点からはどのようにお考えですか?

ラジオはファンと結びつく力が非常に強いメディアです。パーソナルな語りかけの感覚を提供できるからこそ、深い関係性を築けるんです。

なにげなく聴いているだけでも、耳に残りますよね。

はい、それに関して最近あったエピソードをひとつ。
高松伸さんという、大阪・関西万博でパビリオンの設計もされている著名な建築家がいらっしゃいますが、以前(2011年)、KBSで「高松伸の建築物語」という番組を放送していたんですね。この番組が今年、「高松伸の建築物語II」として10数年ぶりに復活することになったんです。

(番組表を見ながら)ありました。4月からの新番組ですね。

はい、面白かったのがその再開のきっかけなんです。
高松さんが京都でタクシーに乗っていて、運転手さんと何気ない会話をしていたら、「あれ、もしかして高松伸さんとちゃいますか?『建築物語』、よう聴いてましたよ」と言われて、びっくりしたそうなんです。つまり声だけで認識されたんですね。
運転手さんから「あの番組、また始めてくださいよ」と言われたらしく、それをきっかけに高松さんのほうからKBSにお声がけいただき、再開することになりました。

10数年前の番組なのに、声だけで覚えていてくれたんですね。

そうです。これこそラジオリスナーとの強い結びつきを示す実例、「声の力」の証明だと思います。言葉の力、発する人間の言葉が残るというのが、他のメディアにない強みなんですよ。

はい、ラジオリスナーとしてよく分かります。
あとラジオ向きの声のトーンだったり、リスナーに向き合う語り口だったり、そういったパーソナリティの特性も大事なんだと思いますが、いかがですか。

そういう意味では、「わかさ生活ラジオ」の角谷代表はまさに…「ミスター・ラジオ」だと思います。言霊(ことだま)というか、言葉の力を持っていらっしゃる。だからこそ、リスナーの方々に強く響いているんだと思います。

「ミスター・ラジオ」!その表現、ええね(笑)。確かに角谷代表ってそんな感じがします。
長くお付き合いしているから分かるのですが、最初の番組のころは、今のような語り口ではなかったと思いますね。以前は何というか…もう少し経営者としての部分もあられたかも知れません。
収録の数を重ねる中、企画・構成を社員さんにお任せする体制も定着し、番組の雰囲気は和気あいあいとしたものに変化しました。角谷代表もリスナーへの語りかけ方がより柔らかくなり、言葉に丸みが出てきたように感じます。いま現在の角谷代表の「語り」は、ラジオというメディアとの相性がすごくいいと感じてます。

語り手の人格がそのまま伝わると言いますか…
前回のインタビューで「ごまかしがきかないメディア」というお話がありました。まさにそういうことなのでしょうか?

その通りです。ラジオは「ごまかしてるな」というのがすぐわかってしまう、だから怖いメディアとも言われます。でもだからこそ、やりがいがあるんです。
よく笑福亭鶴瓶師匠が「ラジオのリスナーはほんまのファンになってくれる」と言っています。テレビで認知しているだけだと「知ってる芸能人」止まりですが、ラジオを通じて人間関係を築いたリスナーは、本物のファンになる。

そうですね。ラジオではその人の本音が、自然と表れてしまう。角谷代表の場合、商品紹介をするときの目の輝きがすごいんです。単なる宣伝ではなく、開発者との対話を通じて苦労やコンセプトを語る。そこに本物の情熱が感じられるから、リスナーの心に響くんでしょうね。

本音で付き合うからこそ、企業とリスナーの間に信頼関係が生まれます。そういう意味で、企業がファンを作る上でとても価値のあるメディアなんです。

報道機関としての信頼性が生み出す安心感

リスナーとの信頼関係、というお話が出ました。信頼性という観点から、ラジオ局の強みをお聞かせいただけますか。

私たち地上波ラジオ局の強みは、何といっても「報道機関」であること。報道機関であることが、信頼性の源です。例えば記者クラブに記者を派遣し、行政からの公式発表を報道する責務を持っている。だからこそ、信頼性が非常に高いんです。
今はSNSなどでさまざまな情報が氾濫し、真偽不明なものも多い時代ですよね。そんな中で、信頼度の高い、信憑性の高い情報を届けることが私たちの責務だと考えています。

地域密着型メディアとしての強みもあると思うのですが、実際にはどのように活かされているのでしょうか?

例えば、先日高速道路のETCの障害が全国的に発生した際、私たちが真っ先に考えたのは「自分たちが電波を預かっている地域の生活者に、どんな影響があるのか」ということでした。高速道路が使えるのか使えないのか、そうした情報をすぐに現地に取りに行き、ラジオで迅速に伝えることができます。これは地域密着型の報道の責任であり、また強みだと思っています。
もちろん報道機関であると同時に、民間放送としてCMをはじめとする企業発信の情報も届けていますが、そうした情報に関しても、どれだけクオリティの高い、信頼性のある情報を届けられるかを常に意識しています。

ラジオと企業メディアの融合で広がる可能性

最近は企業も独自のメディアを持つ時代ですが、そことラジオとの関係性についてはどうお考えですか?

私はラジオ媒体だけで企業のすべてのブランディングや広告宣伝ができるとは思っていません。いま企業はホームページなど、独自の媒体をお持ちですよね。それとラジオを融合させて、いい化学反応を起こすことが大切だと考えています。
企業のコンテンツをラジオ放送に乗せることで、報道機関が持つ信頼性・信憑性という付加価値がプラスされます。

確かにどの企業も、自らネットで発信できる時代です。

そうなんです。企業が独自で情報発信する時代だからこそ、その情報に信頼性を足すことに価値があるんです。SNSで真偽不明の情報が氾濫する中、報道機関が関わることで信頼性が高まる。それがラジオの強みですね。

企業がラジオとご自身の媒体を組み合わせることで、テレビ広告よりもコストをかけずに全国発信できます。

われわれは地方局ではありますが、「キーステーション」(複数の放送局をつなぐネットワークの中心局)になれるんです。まさに「わかさ生活ラジオ」がやっていることですね。私たちがキーステーションとなって全国ネットワークを組むことで、京都のローカル企業が全国展開する可能性も広がります。テレビネットワークとは違って、ラジオは系列の垣根が低く、より柔軟な展開が可能なんです。

例えば地方の企業が、地元だけでなく日本全国に発信していきたいと思ったとき、ラジオを活用することで、「わかさ生活ラジオ」のように全国発信することができます。ラジオは身軽ですから、テレビと比べてスタッフも製作費もかなり抑えることができます。これからチャレンジしていく企業が全国展開について考える際には、とても魅力的なメディアだと思います。

不信の時代に安心を届けるラジオの価値

改めて伺います。これからの時代における、ラジオの価値についてはいかがお考えでしょうか。

今の世の中、不信感が漂っていますよね。政治や企業に対する不信、人間不信…そんな不信感が広がる中で、私たちは安心を届けるべきだと思っています。角谷代表とも、その点では大きく一致しているんじゃないでしょうか。安心を届けるには、ラジオという声の力が最適なんです。

確かに、安心感がとても価値を持つ時代になってきているような気がします。

そうです。5年後、10年後の話をするならば、この不信の世の中に、安心感を与えられる企業・事業体になっていなければならないと思います。放送局はまさにその役割を担っているという自負があります。

音声メディアが再評価される理由

最近はポッドキャストなど、新しい音声メディアの人気も高まっていますね。

ええ、音声メディアが今、めちゃくちゃ再認識されているんです。単なる懐古趣味ではなく、現代社会に適した特性が見直されているんですね。
音声メディアの最大の強みは、視覚に頼らず、耳だけで情報を得られること。忙しい現代人にとって、移動中や作業しながらでも情報を取り入れられる点は大きな魅力です。また、文字よりも感情が伝わりやすく、パーソナルな関係性を築きやすい。
そして地上波ラジオには、そこに「信頼性」という強力な武器が加わります。音声メディアの優位性と地上波ラジオの信頼性、この二つを組み合わせたものが、いまの地上波ラジオの価値なんです。

確かに、インターネットだと自分から情報を取りに行かないといけませんが、ラジオなら偶然耳にする機会もあります。先日も、タクシーに乗っていたらたまたまラジオが流れていて、思いがけない情報に触れたことがありました。

そうなんです。インターネットでは難しい「偶然の出会い」がラジオにはある。それが地方の企業や文化を全国に、あるいは世界に発信する可能性にもつながるんです。京都ブランドを武器に、日本全国に情報発信して、ビジネスとして繋げていきたいという企業もたくさんある。ラジオにはまだまだ可能性がたくさんあると言えます。

企業が自社の媒体とラジオを組み合わせ、YouTubeやSNSとも連動させる。私は、このスタイルが今後ラジオの主流の一つになってくると思います。そうした多面的な展開がこれからのメディア戦略の鍵になるんじゃないでしょうか。

音声メディアの持つ優位性と、報道機関の信頼性。この二つを組み合わせたのが地上波ラジオだと思うんです。その価値をきちんと押し出しながらビジネスを組めれば、ラジオの可能性はもっともっと広がっていくでしょう。
まさにその成功例が「わかさ生活ラジオ」じゃないでしょうか。われわれKBS京都も、この番組からは多くのことを教えられています。

取材後記

今回のインタビューを通して、ラジオという古くて新しいメディアの可能性を再発見できました。パーソナルな語りかけによるファン作りと、報道機関としての信頼性。その二つを併せ持つラジオだからこそ、不信感が漂う現代社会において、新たな価値を生み出せる…すごく良いお話を伺えました。

ラジオの持つ「ごまかしがきかない」という特性。本音で語り、真摯に向き合うからこそ、「ほんまもん」のファンが生まれる。消費者との関係作り=エンゲージメントを考える企業にとって、ラジオという選択肢は「アリ」なんじゃないでしょうか。

今回、長年愛聴してきた放送局の中で、番組を作る側の視点からお話を聞けたことは、ラジオ好きとしてとても貴重な経験でした。KBS京都の湯浅さん、堀士さん、どうもありがとうございました!

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