
岩手の風景に差し込む、やわらかな光。
その作品を見たとき、どこか懐かしさを感じたことはないでしょうか。
それは単なる風景ではありません。
そこには、「記憶」と「感情」が重ねられています。
私、デジタルアーティストのHALが描いているのは、景色そのものではなく、「その瞬間に流れていた時間」なのです。
創作は、リハビリから始まった

私がデジタルアートに出会ったのは、創作のためではありませんでした。
下半身不随のリハビリの一環だったのです。
思うように動けない日々。
その中で、「何かできること」として始めたのがデジタルアートでした。
きっかけは、「やってみたら?」という妻の一言。
その言葉に背中を押され、半ば手探りで始めたデジタルアート。
最初は作品をつくっているという感覚ではなく、手を動かすための時間として向き合っていました。
そのためか上手く描けないことも多く、試行錯誤の連続でした。
それでも続けていくうちに、少しずつ変化が生まれました。
気づけば、現住地である岩手の風景を描くようになっていたのです。
日常の中にある何気ない景色。
帰り道に見た空、静かな街並み、ふとした光の揺らぎ。
それらを描く時間は、ただのリハビリではなく、“自分と向き合う時間”へと変わっていきました。
誰かの心に届いた瞬間、本物の作品となった

転機となったのは、SNSへの投稿でした。
何気なく載せた作品に、思いがけない反応が届いたのです。
「ポストカードとして販売してほしい」
「この作品、手元に置きたいです」
その言葉に、「これは、自分のためだけのものじゃないんだ」と気付きました。
リハビリとして始めた表現が、誰かの心に届くものへと変わった瞬間でした。
デジタルアートという選択

私はデジタルという手法を選びながらも、あくまで“手で描く感覚”を大切にしています。
タブレットとペンを使い、何度も色を重ね、光を描き足していきます。
一枚の作品には、時間と感情が積み重なっています。
そしてデジタルだからこそ、その作品をポストカードやインテリアとして届けることができます。
アートはもっと身近でいい。
特別な場所に飾るものではなく、日常の中でふと心を支える存在でありたい。
その想いが、作品の根底にあるのです。

岩手という“選んだ故郷”

私の作品のモデルとなっている岩手県は、元々は妻の故郷。私の出身地は秋田県の大仙市なので、最初から岩手に対して“地元”という感覚はありませんでした。
しかし、妻と息子と3人で暮らすなかで出会った風景や人の温かさが、少しずつ心に積み重なっていき、気づいたら、“大切な場所”になっていました。
生まれ育った土地ではないからこそ見える美しさ。
その視点が、私の作品に独特の深みを与えてくれているんじゃないかと考えています。
また、私の作品を象徴するのが、“光”です。
それは単なる表現ではなく、感情そのものを映し出す手段であります。
何気ない帰り道。
ふと見上げた空に、救われたような気持ちになる瞬間。
その言葉にできない感覚を、光として描きます。
だからこそ、作品は見る人によって意味が変わります。
それぞれの記憶と重なり、“自分の風景”として残るのです。
デジタルアーティスト・HALが描き続ける理由

私にとって創作とは、「生きること」と深く結びついています。
リハビリとして始まった表現。
それが今では、誰かに寄り添うための手段になりました。
ひとりでもいい。誰かの心に届けば、それで意味があると思っています。
そして私は今、明確な目標を持っています。
それは岩手でポストカード個展を開き、海外の人や県外の人にも岩手の風景を届けることです。
ゆくゆくは、さまざまな企業とコラボレーションして、今より多くの人に作品を見てもらい、日常の中にある美しさを、アートとして世界へ広げていきたい。
この想いを胸に、今日も創作活動を続けています。
もし、あなたが何気ない風景を見て、少しでも心が動いたことがあるなら——
それはきっと、あなたの中にある大切な記憶です。
私の作品は、その記憶にそっと触れる。
光は、ただ照らすものではない。
心に触れるものでもあります。
そしてその光は、今日も誰かの中に静かに灯っています。
