イントロダクション
HAPPY! 三度の飯より「本」と「言葉」が大好き、いっちーです!
今回、取材させていただいたのは『ヤンデレだらけの乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、美形執着騎士に迫られています』の作者、兎束作哉さん。
実はぼく、本好きと言っておきながら、これまでTL(ティーンズラブ)小説というジャンルを読んだことがなかったのですが、初恋♡生活で働くようになってから興味が湧き、手に取ってみたところ……すごく面白くて!
読み終わった勢いで作者さんに取材依頼を送っていました!
ご快諾いただき、本当にありがとうございます!
それでは、いってみよ~!
兎束作哉さんプロフィール

現役大学生作家 。
普段はweb小説投稿サイトで、 TL やBL を書いています。
スターツ出版 第 2 回 青春 BL 小説コンテスト大賞受賞
アルファポリス 第 12 回 BL 大賞 小説部門「学園 BL 賞」受賞
アルファポリス 第 17 回 恋愛小説大賞奨励賞
Teller Novel 第 4 回テノコン総合特別賞受賞
本を読むことについて
本日は、取材をご快諾いただきありがとうございます! よろしくお願いいたします。

こちらこそ、よろしくお願いいたします。
さっそくなんですが、まずは“本を読むこと”についてうかがう前に、“本と出会う前のこと”から聞かせてください!
どんな幼少期を過ごされていたのでしょうか。
よく絵を描いていましたね。図工も好きで、とにかく何かを作ることが多かったです。
あとは田舎育ちということもあって、外で遊ぶことも多かったですね。虫やカエルを捕まえて遊ぶような、いわゆる典型的な田舎の子どもでした。
その頃のご自身が、いまの創作活動につながっていると感じる部分はありますか。
田舎でしか得られない感性を体験できたのも大きかったですね。
たとえば、薄暗い道のじとっとした雰囲気というか、そこだけなんだか「雰囲気違うぞ」みたいな部分ってあるじゃないですか。田舎で育ったことでそういった感覚を持っているのは、高校生のときにホラー小説を書いたときに役立ってくれました。
ありがとうございます! ぼくもド田舎出身なので、その雰囲気、とてもよくわかります!
陽の当たらないところの木陰とか日中にも関係なく真っ暗で、引きずり込まれそうな恐怖がありますよね……!
さて、ここからはついに“本を読むこと”についてうかがっていきます。
最初に読んだ作品や、本にハマるきっかけなどを聞かせてください!

実は最初に読んだ本は覚えていないんですよ。
というのも、家族全員が本好きで、家にはいろいろなジャンルの本が並んでいたので、小さい頃から本が身近にあってですね……どれが最初か明確にはわかりません。
家にたくさん本があると言いましたが、実はハマったきっかけの本は図書館で借りた西尾維新さんの本なんです。
田舎の図書館と聞いて、なんとなくあまり最新のものは置いていないと思っていたのもあって、西尾維新さんという名前に驚きました!
実は小説にハマる前は漫画やアニメに夢中で……西尾維新さんの作品もアニメから入ったんです。
図書館に行ったとき小説もあることを知って、借りて読み始めました。なによりも最初はその“分厚さ”に驚きましたね。
読むきっかけも、表紙や内容に惹かれたというより、「この分厚さを読み切ったらすごいんじゃないか」という自意識からでした。
でも実際に読んでみると、独特な表現に衝撃を受けました。それまで触れてきた小説にはない言葉づかいで、自分が書き始めた頃は真似しようともしてみたんですけど……無理でしたね。
西尾維新先生の文体や、言葉選び、表現は唯一無二ですよね!
お話の中でアニメの話が出てきましたが、影響を受けた作品はアニメも含めてどんなものがありますか。

たくさんあります! 青春わちゃわちゃ系やダークファンタジーが好きで、『TRICKSTER -江戸川乱歩「少年探偵団」より-』や『文豪ストレイドッグス』は大好きでよく観ていました。
特に『文豪ストレイドッグス』はハマりすぎて、2.5次元舞台を見に行きましたし、作中に登場する文豪の作品を片っ端から読みましたね。
片っ端から!? 日本の作家はもちろん、海外作家もたくさん登場しますよね。
はい。そこから海外小説も読むようになりました。とくにフランスの文豪が好きで、カミュの『異邦人』(新潮文庫)は時代の雰囲気も含めてとても好きです。
本で言うと、『カゲロウデイズ』のノベライズや、辻村深月さんの『きのうの影踏み』(角川文庫)も読んでいました。
特に『きのうの影踏み』は、ホラー短編を書きたいと思ったきっかけになった作品です。
幼少期の体験でも「ホラーにつながった」とおっしゃっていましたね!
では次に、最近読んだおすすめ作品も教えてください。

漫画になりますが、『ブルーロック』(講談社)はリアルタイムで追いかけています。
小説だと『半魔の竜騎士は、辺境伯に執着される』(アルファポリス)ですね。
『半魔の竜騎士は、辺境伯に執着される』(Amazon.co.jp)
この作品は「いつかこの本と同じレーベルから出したい!」と思ったくらい大好きなんです。
なんていったって関係性の描き方がとにかく良いんですよ。悪役の執着の描き方も好みで、主人公がいろんな人から執着される。しかも男前主人公っていうところも最高です!
ここまでのお話の中で、好きなジャンルやポイントとして「青春わちゃわちゃ系」「ダークファンタジー」「フランスの雰囲気」「関係性」といろいろ挙げていただきました。
改めて、“こういう作品が好き”というジャンルやシチュエーション、キャラクターのこだわりや推しを教えてください。

幼なじみ、先輩後輩、年下といったキーワードが好きですね。青春わちゃわちゃ系や青春BL、学園BLにもよく惹かれます。それから“周りから溺愛されているけれど、本命は一人”という関係性もたまらないですね!
作品を書くことについて
ここまでは“本を読むこと”についてうかがってきました。
これからは“作品を書くこと”についてお話を聞いていきます。
まずは先生の『兎束作哉』というペンネームの由来を教えてください。

話せば長くなるのですが……まず“作哉”からできたんです。
インターネットでUP主のことを“うぷぬし”と呼ぶ文化があるんですが、それと似た感じで、最初は“さくぬし”と名乗っていました。そこから“作哉”と変わっていったんです。
“兎束”のほうは、作哉だけでは物足りないなと思ったきっかけがありまして。
朝井リョウさんに作品を読んでもらえる『ぼくのわたしのショートショート発表会』という企画に応募したときなんですが、なんと! 選んでいただけたんです……。
ぼくのわたしのショートショート発表会(岐阜市立中央図書館HP)
あの朝井リョウさんに、作品を読んでもらったんですか!?
そうなんです!
ただその際に「作哉だけだとちょっとな……」って思って、急遽前に足すことにしました。
私はうさぎが好きなので、“うさぎ”のつく名字を調べて“兎束”という名前を見つけて、それを使うことにしたんです。
そちらの作品もとても気になるところですが……次に最初に書いた作品について教えてください!

小学生のときに、おばけの小説を描いたことがあります。リボンをつけたおばけの話だったんですが、長くなりすぎて授業の時間内では書き終わらなかったので、休み時間を使って書き上げました。
ほかにも、天気を変えるおばけの話を絵本にしたこともありましたね……ただ、細かい内容はもう覚えていないです。
なかなか最初に書いた作品は思い出せないですよね。
そのとき「書こう」と思ったきっかけはおぼえてらっしゃいますか。

それはズバリ“夏休みの課題だったから”です。
図工か自由研究かを選べる学校だったんですが、私はもっぱら図工をやっていましたね。
1年生の頃は無難に貯金箱とかだったんですが、中学年のときは絵本、5年生のときは漫画、6年生では小説を書いて出していました。
夏休みの工作って、なんとなく実用的な物を作るイメージがありますが、絵本や漫画、小説も良かったんですね!
さてここからは幼少や小中学校で書いたものというよりは、これまで書いてきた作品全体についての質問になります。
まずは作品を書くときに大事にしていることや心がけていることについて教えてください。

“構成”ですね。とにかくプロットをしっかり作ることを心がけています。
具体的には、この章ではこのキャラクターにこういう感情を抱かせよう、とあらかじめ決めてから書いています。
私の物語はキャラクターが中心にあるので、最初から最後まで“キャラクターがどう変化していくか”を大事に考えているんです。
あとは“読者の感情を置いてきぼりにしないこと”も大事にしていますね。
キャラクターと一緒に物語を進んでもらうためには、その意識は欠かせないです。
ありがとうございます。確かに、先生の作品を読んでいると、キャラクターの気持ちがちゃんと伝わるように書かれていますよね。キャラが悩み苦しんでいるところで、その気持ちがわかるように思えたのは、先生の心がけのおかげだったのだと知って感動しました!
さて、そんな人の心を動かす作品を書かれる先生の、創作の環境も気になります。
執筆のルーティンや、制作環境のこだわりを教えてください!

書く場所のこだわり、ですか……。ここじゃないと書けないというのはないんですが、逆に“こういうところでは書けない”というところはあります。
たとえば、人がいるところでは書けないですね。
そうなると、“ひとりでいられる場所”となるので、必然的に自分の部屋になります。
……あっ、ちなみにこたつで書いています。
こたつ!? まさか一年中ですか……。
はい、こたつ布団もそのままです。
その他の制作環境の話で言うと、創作活動中は“絶対に立ち上がらない”と決めています。
そのために手に届くところに必要なものを置くようにしています。毛布とかふせんとか、あと飲み物ですね。飲み物にいたっては3本くらい準備しています。
絶対に立ち上がらないという強い意思を感じます……! すごい集中力で書かれているんですね。月並みな質問なのですが、疲れたりはしないんでしょうか。

作業時間は細かく区切るようにしています。たとえば13時に起きたとしたら17時までは書いて、18時まで寝て、そのあとご飯を食べて……また19時から20時まで書く、といった感じです。
あとは睡眠はできるだけ長くとるようにしています。やっぱり体が大事ですからね。
作業中も良い座椅子を使ったり、前のめりにならないように体とこたつの間に専用のぬいぐるみを挟んで作業したりと、とにかく体を守る工夫をしながら書いています。
こたつで執筆していると聞いて、腰や背中が心配だったのですが……良い座椅子やぬいぐるみを活用していると知って安心しました。
お話をうかがっていると、たしかにこだわりというよりも、創作にとって最適な条件を探していった結果、いまのスタイルに落ち着いたという感じですね。
そうなんです。
あっ、でも一つだけこだわりと言えそうなものがありました。
それは“蛍光灯の明るさ”です。一番明るい設定にしています。
でも外が明るいのは嫌なんですよね。そのせいか、朝よりも夜に書くことが多いです。筆も夜のほうが進みますし。
ありがとうございます。自分にとって最善の創作環境を見つけることが、創作を形にすること、そしてそれを続けることにつながってくるんだなと話を聞いていて思いました。
こたつの上で一人、黙々と文字を綴り、世界や人の心の機微を描いてこられた先生ですが、これまで発表された作品の中で、特に好きな作品はありますか。

『乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います』と、
『みんなの心の傷になる死にキャラなのに、執着重めの皇太子が俺を死なせてくれない』の二作品ですね。
『乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います』(小説家になろう 作品ページ)
あらすじ
「解釈違いなのよ!」
彼氏と別れて1ヶ月、親友が死んで1ヶ月。
2次元オタクの天馬巡は、いつも通り推し活に精を出していると、突如まばゆい光に包まれて大好きな乙女ゲームの世界に召喚されてしまう。
しかし、転生したのは、いずれ悪女と呼ばれるようになる偽りの聖女エトワール・ヴィアラッテアだった。1年後に召喚されるヒロインが現われる前に攻略キャラの好感度を上げなければ死亡確定!!
とりあえず死亡フラグ回避の為、推しである攻略キャラの皇太子に的を絞るが、実は彼の中身は元彼で……しかも、攻略難易度トップのキャラなのにスタート時点で好感度が70%越え!?「絶対にアンタなんか攻略してやらない!」
よりを戻したい元彼皇太子と、全力オタク聖女の攻防戦!
攻略対象を変えてみるが、他の攻略キャラも癖の強いキャラばかりで、一向に攻略が進まず、元彼皇太子の好感度は上がるばかりで……
エトワールの運命はいかに!?
『みんなの心の傷になる死にキャラなのに、執着重めの皇太子が俺を死なせてくれない』(アルファポリス 作品ページ)
あらすじ
「――このままずっと、セシルの隣にいられますように」護衛騎士のニルは、幼馴染の皇太子セシルとの手合わせ中に前世の記憶を思い出す。ここはBLゲーム『薔薇の学園の特待生』の世界であり、ニルは刺客からセシルを守って命を落とす「死にキャラ」だったのだ。セシルは「自分のせいでニルが死んだ」と責め続け、人を寄せつけない孤独な男になってしまう。運命の日まであと三週間。そんな中、とある事件がきっかけで親友だった二人の仲は急接近し、セシルが一途に迫ってくるようになり……?
選んだ理由は私が書いている作品の“二大巨頭”だから、です。
『乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います』は高校二年生の終わりから、
『みんなの心の傷になる死にキャラなのに、執着重めの皇太子が俺を死なせてくれない』は大学二年生の秋から連載をはじめました。
どちらもすでに本編は完結しているのですが、番外編を毎日更新しています。
毎日二つ合わせて、だいたい1万字くらい書いていますね。
毎日1万字! 総文字数はいったいどれくらいあるんでしょう……。
『乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います』
(4,439,194文字)
『みんなの心の傷になる死にキャラなのに、執着重めの皇太子が俺を死なせてくれない』(2,435,222字)
※9月30日15:30時点の計測

相当な文字数になっていると思います! 本編よりも番外編のほうが長い作品になってしまいまして、これからも毎日増え続ける予定です。
母からは「完結したら読む」と言われているんですが、正直いつ完結するのか……その日がいつ来るのかは自分でもわからないです。
『みんなの心の傷になる死にキャラなのに、執着重めの皇太子が俺を死なせてくれない』の各話の文字数を見させていただいたんですが、ほとんどが5000字越え……。
これを毎日……頭が上がりません。
次の質問がデビューまでに努力されたことだったのですが、このお話自体がもう想像を絶する努力ですね……。

ありがとうございます。もちろん毎日書き続けたというのもありますが、私がデビューするためにした努力はもう一つあります。
それが“研究をすること”です。
私は高校二年生の頃から小説を公募に出し始めました。
でも、あっさり落選してしまって……そこから公募研究をはじめたんです。
まず、出したいところを決めて、歴代に受賞した作品を読んで、どういうものが求められているのかを研究しました。
創作の教室や、小説の書き方などの本ではよく“書きたいことを書け”と言われることが多いので、賞に合わせた作品を書くというのは盲点でした……!
もちろん、それも一つの手だと思います。でも、それと同じくらい賞を研究するのは大事だと思うんです。
私がやったのは研究して、そこに合うものを作って、そのなかに自分の好きなものを織り込んでいくというやり方ですね。あとは、作風を合わせやすいところを探すというのも大事です。それが見つかるまで、とにかく数撃ちゃ当たる精神で頑張って書いて、公募に出し続けるのがいいと思います。
これから賞に応募しようとしている人にはまさに目から鱗な話ではないでしょうか!
たくさん研究され、実際にデビューを勝ち取っている先生の言葉だからこそより響きます。
ありがとうございます。
もう一つ、公募に出すことについてのアドバイスなんですが、送った作品は結果が出るまでノータッチのほうがいいです。気になるとは思うんですが、我慢して、その間に別の作品を書いて、別の公募を目指しましょう。
もし落選の報告がきても、別の作品に取り掛かっていたら落ち込んでいる暇はないですからね。
貴重なお話をありがとうございます!
書くことについてのお話の最後に今後、書いていきたい作品について教えてください。

たくさんあります!
TL(ティーンズラブ)小説はまた書きたいですし、BL小説も出したいです。やっぱりその分野で生き残っていきたいと思いますし、少女小説、全年齢向けのものも書きたいですね!
どの作品も読める日を楽しみにしています!
『ヤンデレだらけの乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、美形執着騎士に迫られています』について
ここからはついに先生のデビュー作『ヤンデレだらけの乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、美形執着騎士に迫られています』についてのお話を聞いていきます!
この作品はどういった経緯で生まれたものなのでしょう。

この作品はTL作品を描き始めて三作品目なんです。
今流行っている悪役令嬢を描いてみようと思ったのと、年下のわんこ系という設定が好きだったので、それらを組み合わせた結果、悪役令嬢×年下ヤンデレという形になりました。
流行りの中に、自分の好きなものを入れる、まさにデビューまでの努力の場面でおっしゃっていた『賞に合わせて、そこに好きなものを混ぜる』を体現されているわけですね!
素人質問になってしまうのですが、この作品は賞に応募したというわけではないのでしょうか。掲載されていたともお聞きしたのですが……。
答えとしては“掲載することが応募になる”ですね。
掲載した作品にタグをつけることで応募したことになるんです。
募集期間、投票期間、選考期間があるんですが、募集期間中にタグをつけて作品を掲載するんです。投票期間では、読者にどの作品が良いかを投票してもらいまして、編集部内での選考期間を経て結果発表となります。
お客様が商業出版されるかもしれない作品を選ぶというのが面白いですね!
はい。でも同時にとってもシビアだなとも思います。毎日ランキングは変動しますし、数字は嘘をつきません。
実は途中で数字が見えなくなるんですが、そうなったらなったで毎日ドキドキです。
その不安と期待を何度も乗り越えられ、見事受賞されたわけですね!
そこがちょっと違いまして、私は大賞には一歩及ばず……奨励賞をいただきました。
編集さんに見つけていただき、拾ってもらってデビューした形になります。
そうだったんですね……。
しかし、編集さんに見つけてもらえるようなすごい作品だったからこそ、こうして本という形になったのだと思います。
そうして完成した本を手に取った瞬間のことを教えてください!

やっぱりうれしかったです。
自分の作品が紙の本になっているというのもそうですし、書店で並んでいるのを見て、ちゃんと商業出版にされている!と感動しましたね。
完成した本を手に取った瞬間はやはり感動に尽きるんですね……!
その一冊が仕上がるまでには、さまざまな苦労や挑戦もあったのではないでしょうか。

Rシーンをどのタイミングで入れるかをとても悩みましたね。3回は入れようと決めていたのですが、TL小説を書くのはまだ3作品目だったというのもあって、どの位置にどう描けばよいかがわからず、何度も研究を重ねました。
自分の知識だけではわからないものが多くて、わからないものをそのまま描くわけにはいかないですし、そもそも描けないので、本当にたくさん研究しました……。
制作の大変さで言えば、やはり校正作業です。いくら探しても誤字が見つかってしまうんですよ。
もちろん改稿を重ねるごとに作品が良くなっていくのは楽しいんですが、同時に「なんで最初からこの言葉が出てこなかったんだろう」と悔しくなることもあります。
研究と修正を何度も何度も重ねてついに完成された今作。
やはり「ここを読んでほしい!」というこだわりのポイントもあるのではないでしょうか。
セリフには特にこだわったので、注目してほしいです。
あとは……私自身、ヒーローのファルクスが好きなので、ご褒美に「足を舐めさせてください」とお願いするくだりはぜひ読んでほしいですね。
……いや、読んでほしいというより「笑ってほしい」という気持ちに近いかもしれません。
え! 笑ってもいいんですか!? 確かに思わず笑いそうになったシーンなんですが、同時にファルクスが初めて主人公のスティーリアに感情をぶつける名シーンでもあるので、作者様から「笑ってほしい」と言われて驚きました!
はい。たくさん笑ってください!

先ほどセリフへのこだわりのお話が出ましたが、ぼくが個人的に大好きなシーンがあります。
物語後半、聖女のメイべが婚約者のレグラスに勇気を出して行動する場面です。そのときのセリフが本当に良いんですよね。
これまで謎めいた印象のあったメイべですが、そのセリフを通して彼女の背景や抱えてきたものが一気に見えた気がして、一気に彼女が好きになりました。もちろん、その後のファルクスのかっこいい場面でも胸が熱くなりました。両方合わせて、大好きな名シーンです。
……それに比べてレグラスは……あっ、すみません、作者様の前で!
いえいえ! そういう感想をいただけるのもうれしいです。それに実は、「レグラスは嫌い」と言う読者も多いですよ。
そうなんですね! 物語を動かすうえで欠かせないキャラクターですし、嫌われるということはキャラ造形がうまいからこそだと思います。
セリフで言えば、メイべの行動に対してレグラスがスティーリアに放つセリフは、本当にゾッとしました。“身の毛がよだつ”というのはこのことかと思ったくらいです。
これもまた、セリフにこだわって書かれた結果なのだと感じました。
次が『ヤンデレだらけの乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、美形執着騎士に迫られています』についての最後の質問になります。
この作品を通して、作家活動にどんな変化がありましたか。

編集さんが指導してくださったおかげで、それまで「表現したいけどできない……」と思っていたものが、形にできるようになりました。
さらに「こうすればいいんだ」というやり方が分かったことで、他の人の作品も楽しんで読めるようになりましたし、公募に出した際に「なぜ落ちたのか」を分析して次につなげられるようにもなりました。
もちろん不安がなくなることはありませんが、少し余裕が生まれましたね。
メッセージ
ここまでインタビューに回答いただきありがとうございます。
デビュー作『ヤンデレだらけの乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、美形執着騎士に迫られています』の話だけでなく、その制作の裏話や創作論といった貴重な話まで聞かせていただき、この記事を読んだ本の挑戦者が、新たな一歩を踏み出せるようになると確信しました。
そんな素敵な作品を描かれ、これからも書いていくであろう兎束作哉さんにとって「本」とはなんでしょうか。

“誰かを楽しませるもの”ですね。
せっかくお金や時間を割いて読んでもらうわけなので、その気持ちは大事にしています。
話すだけでは伝わりづらい自分の“好き”を、伝わるように形にするのが本ですから。
「話すだけでは伝わりづらい自分の“好き”を、伝わるように形にするのが本」、またもやハッとさせられる言葉でした。
ここまでずっと本の挑戦者へのメッセージを要所要所にちりばめていただきましたが、改めて最後に、これからの“本の挑戦者”へメッセージをいただけますでしょうか。

作家活動は長期戦です。何よりも“続けること”が大事。好きという思いを持ち続けてほしいです。
そして、いろんなことを調べて、いろんなものを取り入れて、いろんなものを描いてほしいです。きっとその積み重ねが、次につながっていくと思います。
SNS・リンク・新作情報
作者SNS
X(旧:Twitter):@natutuzi_0803
お仕事の依頼はLit.Linkまで:https://lit.link/UdukaSakuya
新作情報
アルファポリス第12回BL大賞 小説部門「学園BL賞」受賞作
『みんなの心の傷になる死にキャラなのに、執着重めの皇太子が俺を死なせてくれない』
12月10日ごろ発売予定
兎束作哉/著
南城/イラスト
(&arche HP 発売予定書籍 より引用)
スターツ出版 第2回青春BL小説コンテスト大賞受賞作
『君と同じ気持ちになるその日まで』
12月20日発売予定

ツンデレ一途な後輩男子×チョロ過ぎる陽キャな先輩2人の、放課後ピュアきゅんBL!
兎束作哉/著
イラストレーター/いくたはな
特典情報
【一部書店限定特典】ステッカー 予定
【コミコミスタジオ限定有償特典】アクリルコースター 予定
【電子書店限定】書き下ろしSS 予定