イントロダクション
HAPPY! 三度の飯より「本」と「言葉」が大好き、いっちーです!
今回インタビューしたのは、なんと! 左京区役所の方々!
とあるイベントで偶然お会いしたんですが「左京区を本の街に」という言葉を聞いて、胸が熱くなり、
その場で「ぜひ取材させてください!」とお願いしちゃいました。
といいますのも、実はいっちー、左京区には6年ほど住んでいたんです!
しかもそのうち4年間は、区役所から歩いて行ける距離。
まさに青春時代を過ごした思い入れのある場所。
そんな左京区がぼくの大好きな“本”の街になっていくだなんて!
これは話を聞かずにはいられません。
それではいってみよ〜!✨
左京区役所 プロフィール

京都市左京区役所は、京都市の北東部に位置する左京区の行政を担う拠点です。
地下鉄烏丸線・松ヶ崎駅から徒歩約8分の場所にあり、比叡山のふもと、自然と文化が交わるエリアに建っています。
左京区は面積が広く、北は大原や花背、久多といった山間の地域から、南は京大や銀閣寺のある市街地までを含む、まさに“山とまちが共存する区”。
そのため、地域力推進室をはじめとする各課では、まちづくりや地域防災、住民同士のつながりづくりなど、幅広い分野で地域とともに歩む活動が行われています。
本を読むことについて
今日はお時間いただき、ありがとうございます。
よろしくお願いいたします。

よろしくお願いいたします。
まずは本を読むことについて話をうかがっていきたいのですが……。
その前に本と出会う前の松本さんについて聞かせてください。
どんな幼少期を過ごされていたのでしょうか。
現在は京都市役所で働いている私ですが、実は生まれは大阪なんです。
小さいときは図書館が好きで、家族によく連れて行ってもらっていたのですが、『まるさんかくしかく』という紙芝居ばかり借りていたそうです。それをよく読み聞かせしてもらっていました。
小さい頃から本が身近にあったんですね! ということはずっと本の虫だったのでしょうか。
実はそんなこともないんです。
小中学生の頃は本を読んだ記憶がほとんどありません。漫画なら読んでいましたが……。
漫画もれっきとした読書です! どんな作品を読まれていたのでしょう。
『幽遊白書』『ママレード・ボーイ』『ハンサムな彼女』『赤ちゃんと僕』などですね。
女子高に通っていたというのもあって、少女漫画をよく読んでいました。
『幽遊白書』は少年漫画ですが、やはり当時流行っていたというのもあって読んでいましたね。
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ママレード・ボーイ 1(Amazon.co.jp)
ハンサムな彼女 1(Amazon.co.jp)
赤ちゃんと僕 1(Amazon.co.jp)
あ、でも、女子高で流行った漫画の中で変わった漫画もありました。
『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』っていう漫画なんですが、ご存知ですか?
セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん 1(Amazon.co.jp)
もちろんです。うすた京介先生の作品は、自分たちの世代では『ピューと吹く! ジャガー』が流行っていました。
もちろん『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』も伝説的な漫画として有名でしたよ。
そうなんですね。私の周りでは『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』は回し読みして読むほど流行っていました!
まさか女子高でギャグマンガが人気だったとは……意外でした。
それでは文字が多い本にハマったきっかけはどういったものでしょうか。
実は小説にハマったのは、就職してからなんです。
と言いますのも、実は今、滋賀から通っておりまして……京都まで通勤でだいたい2、30分くらいかかるんですよね。
それで、「本でも読もうかな」と思って始めたんです。
まずは有名な本から、たとえば直木賞などの受賞作を片っ端から読んでいましたね。
恋愛がテーマの作品の中だと朝井まかてさんの『恋歌』にハマりました。何度読んでも泣いてしまうくらい大好きです。
幕末が舞台のお話です。主人公は若い女性で、愛する人と結婚したんですが、その相手は水戸藩の藩士で、尊王攘夷の志士。
やがて内乱が起き、夫はその争いに巻き込まれて命を落としてしまいます。
帰らぬ人を想いながら生きる彼女の姿が切なくて、読むたびに胸が締めつけられます。
漫画から時代小説へ。なかなかハードルの高いジャンプですね!
でも、さきほどのお話にあった“少女漫画とのつながり”を思うと、なんだか納得してしまいます。
何度も読み返してしまう、そしてそのたびに泣いてしまう小説。本好きとしてはとても気になります。
『恋歌』で本にハマってからこれまでで、どういった本を読まれてきたのでしょう。
東野圭吾さん、原田マハさんはよく読んでいました。
中でも原田マハさんの京都本大賞も受賞された『異邦人(いりびと)』という作品が好きですね。
あとは絵本ですが、谷口智則さんやミロコマチコさんは絵のタッチが好きでよく読んでいます。
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左京区の本の活動(1)図書館
ありがとうございます。
紙芝居で物語に触れ、漫画で本と出会い、就職してから泣くほど好きな時代小説に出会い、そこから芸術関係の作品、絵本と幅広く読まれるようになった松本さん。
ここからはそんな松本さんが京都市左京区役所で行っている本の活動についてお話をうかがっていきます。
はじめてお会いしたとき「左京区を本の街に!」と聞いて、すごく驚きました。
自分が住んでいた頃はそういった動きはなかったように思うのですが、いったいどういった経緯があったのでしょう。

松井市政になって、今年3月に新京都戦略を打ち出したというのが大きいですね。
新京都戦略! なんだか壮大な名前でワクワクしますね。どういった内容なのでしょう。
すべての人に『居場所』と『出番』があるというのをテーマにしたプロジェクトです。
今年の4月から全区役所、支所に、地域コミュニティHubが設置されました。
そこでは“人と人をつなぐ事業”を展開しているところで、私もその担当者の一人なんです。
まずは、公共空間を開いていこうということになりまして、いろいろ試しています。
例えば左京区役所でも1階のロビーを交流の場にして、芝生をひいて朝読会をやったことがありますし、同じ場所にはこのあと詳しくお話しする『本の交換所』もあります。
ほかにも図書館を使ったものなども実施したり、そういった感じでゆるやかなつながりを生み出していけたらなと思っています。
ありがとうございます。ではまず、図書館での活動について教えてください。
どういったきっかけで図書館での活動がはじまったのでしょう。
区内に岩倉図書館と左京図書館の二か所も図書館があるというのが大きいですね。
図書館を所管する教育委員会からの呼びかけもあって、それぞれの図書館でまずは企画を行うことになりました。
言われてみれば確かに左京区内には図書館が二つもあります!
それではまずは左京図書館での活動から教えていただけますか。

左京図書館ではPOPUP事業として『&BOOKS』という企画が予定されていたので、それに合わせて「もし図書館で〈○○と本〉というテーマでなにか企画をするとしたら、どんなことができるだろう?」と地域の左京図書館ファンのみなさんと一緒にアイデア出しをしました。
たとえば『ボードゲーム&BOOKS』のように、まったく違うものと本を組み合わせてみるといった感じです。
そうすることで、本好きでない人にも図書館に来てもらえるきっかけづくりになると考えました。
まずはその○○部分の案をたくさん出してもらう企画を教育委員会や図書館と一緒に行いました。
最初に一人ずつ『○○&BOOKS』を発表してもらい、そのあとグループに分かれて意見を出し合って、最後にみんなで“自分が図書館でやってみたい取り組み”を書いて発表してもらう、という流れのワークショップでした。

図書館=本。
だから「私は本を読まないから行かない」となっている方も少なくないはず。
でも、そういう層にもアプローチすることで、すべての人に『居場所』と『出番』が生まれるわけですね!
実際にどういった意見が出てきたのでしょう?
まず“CAMP&BOOKS”。
これは、図書館の中にテントを張ってキャンプをしてみよう、というアイデアです。
次に“Bar&BOOKS”。
これはお酒を飲みながら本を読んだり語り合ったりするというもの。
当日、20名近い方に参加いただいたんですが、みなさんまるで“図書館でやりたい夢”を語るような雰囲気でたくさんの『○○&BOOKS』のアイデアが生まれました。
なかでも子どもの意見はとてもユニークで、“折り紙&BOOKS”という案が出たんです。
図書館にある折り紙の本を見ながら、実際に折り紙を折ってみるという企画で……すごく可愛らしいですよね。
かわいいですね! 子どもらしい観点で素敵です。
話を聞きながら、自分ならどんな意見を出すかな?と考えていたんですが、なかなか本から離れたものが浮かばず……参加者のみなさんのアイデアは本当にすごいですね!
次に、岩倉図書館でされた活動を教えてください!

はい。岩倉図書館では「居心地のいい図書館にするには?」と「図書館でコミュニケーションが生まれる仕掛けってどんなものだろう?」というテーマでグループワークを行いました。
いろんな世代の方が集まってくださって、100以上のアイデアが生まれたんです。
100以上! いったいどんなアイデアがあったのでしょう。
ここは市内でも珍しくウッドデッキテラスのある図書館なんですが、
「ウッドデッキテラスを使ったコミュニケーションで地域コミュニティを作れたら」という意見や、
「東側の土のあるスペースで園芸や野菜づくりをしてみたい」という、
本とはまた違った観点の案もたくさん出ました。
左京図書館のときと同様、「図書館を本好きな人以外にとっても開かれた場にしよう」という気持ちが表れているのが素敵ですね……!
さきほど、「いろいろな世代の人が集まってくれた」とおっしゃっていましたが、世代ならではの印象的な意見などがあったら教えてください。
中学生から70代の方まで、本当に幅広い世代が参加してくださいました。
中でも私が印象に残っているのは中学生たちの意見です。
「部活が終わると図書館が閉まっていて行けない」という声を聞いて、「確かに!盲点だった」と思いました。
他にも、「図書館に自習OKの勉強スペースが欲しい」という意見も出てきましたね。
中学生ならではのリアルな悩みと紐づいた、とても切実な意見ですね。
確かに今の時代、 “自習禁止”“読書禁止”“おしゃべり禁止”といった空気があるように思います。
子どもたちの「息苦しい」という感覚が、松本さんの言葉からも伝わってきました。

そうですね。ほかにも中学生から、「勉強しているときに誰かに『がんばれ』って言ってほしい」という意見が出たのが印象的でした。
かわいらしい意見ではあるんですが、図書館という“近くに誰かを感じる場所”で勉強することのメリットをついているような気がするんです。
ほかに「大学生に教えてもらえたらうれしい」なんて声も上がったんですが、確かによく考えたら左京区には多くの大学があるので、図書館が大学生と中高生が関われるような場になればいいなと思いました。
いろんな人に開かれていくための課題が、 中学生の声からどんどん浮かび上がってくるのがすごいですね!
そうなんです! 実は印象的な意見がまだまだたくさんありまして……。
たとえば
「中高生は図書館の子どもスペースには入っちゃいけない雰囲気があるけど、本当は子どもたちと関わりたい」
「静かにしないといけない雰囲気があるから、しゃべっていい日がほしい」
「BGMを流してほしい」
「友達と教え合う場としても図書館を使いたい」
など、本当にたくさんの意見をいただけました。
左京図書館では“『&BOOKS』でやりたいこと”を、岩倉図書館では“コミュニケーションが生まれる仕掛け”というテーマで区民の皆さんと図書館のこれからを考えてこられた松本さん。
挙がった意見や思いが今後どう活かされ、左京区がどんなふうに変わっていくのか、とても楽しみです。
次に、図書館を使った素敵な活動を始めようと思われたきっかけや思いを聞かせてください。

本って、何かと組み合わせても相性が良いんですよね。
だからこそ、これまで関わりのなかったものと組み合わせることで、本をあまり読まない人にも興味を持ってもらえるんじゃないかと思いました。
ただ、実際にはそうした交流の場はまだ少ないのが現状です。
だからこそ、「公共空間を開く」という目標もあわせて、場として図書館がとても良いと思いました。
図書館のような“本のある場所”って、一人でいても居心地がいいんですよね。
周りに人がいながらも「孤独を感じなくていい」という、その不思議さも面白いなと思っています。
たしかに本を読んでいると、周りに人がいても一人の時間を過ごせますよね。
それでいて「孤独を感じなくていい」という視点が、とても素敵だと思います。
次に、準備や開催の中で苦労したこと、そしてやりがいを教えてください。
図書館でのワークショップは、初めての試みということもあって、「正解が分からなかった」というのが一番大きかったですね。
たとえば、どんな方に来ていただくのか、どんな問いを立てるのかといったことを教育委員会や図書館と何度も会議を重ねながら考えていきました。
結局、最後まで「これで合っているのか」という手応えがないまま、とりあえずやってみたんですが、
終わってみれば発見も学びもたくさんあって、結果的には正解だったなと思っています。
そういう意味では、苦労でもありつつ、やりがいでもあった取り組みでしたね。
ありがとうございます。実際にやってみて、参加者からの反響はいかがでしたか。
どちらのワークショップも、いろんなアイデアが出て大盛り上がりでした。
先ほど挙げたもののほかにも、「図書館の中の本のシーンを絵に描く」という企画や、「市民が選書した棚を作る」、それから「昔ながらの掲示板を設置する」といった案も出ました。
本当に多彩な意見があって、聞いていて楽しかったですし、実現したいなと思いましたね。
どの案も、図書館をもっと自由に、身近に感じられるものばかり。
参加された方々の「自分も関わってみたい」という思いが伝わってきますね。
そうなんです。区内の方々に喜んでもらえたのはもちろん、誰とでもオンラインで簡単につながれる時代に、あえて“リアルで面倒なこと”が求められていると実感できたのは、本当にうれしかったですね。
お話をうかがっていて、“面倒なことをあえて選んで行う”というのは、読書とも通ずるものがあるような気がしました!

そうですね。また、実際に開催してみて、もう一つ印象に残ったことがあります。
それは“本好きというだけで自然と生まれる連帯感”です。
図書館のイベントには新刊書店やシェア型書店、古書店の方々も来られていて、立場はそれぞれ違うのに、「本を守っていこう」という思いで敵味方なくつながれる。
その空気に、“本好き”ならではのあたたかさを感じました。
この“本好きの人たちのコミュニケーション”の形って、
これからの時代の“つながり方”の最前線にあるんじゃないかと思うんです。
インターネット社会の中で、“遅れたコンテンツ”や“オールドメディア”と言われてきた本が、
これからの時代の“つながり方”の最前線にあるというのは意外なようで、とてもしっくりくる考えだと思います!
左京区の本の活動(2)本の交換所について
ここまでは図書館での活動についてお話をうかがってきましたが、ここからは左京区役所内で行われている本の交換所『本を紡ぐ屋台』についてうかがっていきます。
「本を自由に持ってきても、持って行ってもいい。もちろん左京区役所内で読んでもいい」という、ユニークな取り組み。こちらをはじめるにあたってのきっかけや思いを聞かせてください。

実は『本を紡ぐ屋台』を始めたのは私ではなく、森元区長なんです。
きっかけとなったのは“左京モバイル屋台部”という、組み立て式の屋台を使った活動でした。

5月に鴨川に出店して、「左京区のおすすめの場所や良いところをお客さんに聞く」という活動をしました。そのとき隣にいた方がとても面白いことをされていまして。
“おすすめの本”を店主に教えることが代金の代わりになっているという、面白い本屋さんでして。
それを見た区長が「これは面白い」と感じて、ある日突然200冊の本を持ってきたんです!
それが本の交換所のはじまりでした。
200冊! それはすごい! 区長さんもよほどの本好きですね……!
最初にそんなに本を入れたら、まだ残っているものもあるのではないでしょうか。
それがですね、実は目を離したすきにほとんどの本が持っていかれてしまうという事件がありまして……。
最初は奥まった場所にあったんですが、そのことがきっかけになって、人の目が届きやすいようにと区役所のロビーに移して、そこから『本を紡ぐ屋台』という名前になりました。





___と、ここまできっかけについてのお話をうかがっていたところ、なんと実際に区長さんにインタビューに加わっていただくことになりました。
区長の思い~左京区は本が似合う街~
まさか、区長さんにお話を聞けるとは思っておらず、恐縮です。よろしくお願いいたします。

よろしくお願いいたします。
ここまで松本さんから『本を紡ぐ屋台』の経緯を聞かせていただきました。
ぜひ森元区長の『本を紡ぐ屋台』をはじめとした活動についてや「左京区を本の街に」という思いについて聞かせていただけたらうれしいです。
鴨川デルタに出店した際に見た、「自分で丁寧に本の良さを伝えながらお渡しする」という活動がとても面白いと思ったのと、私自身がよく本を読むので、自分の家にたくさんの本があったこと、
そしてもともと“左京モバイル屋台部”で屋台があったこと。この3つが重なって『本を紡ぐ屋台』をはじめとした本を使った活動をはじめました。
しかし、そこで不運にもほとんどの本を持っていかれてしまったんですよね。
なかなか波乱万丈なスタートとなりましたが、そこで活動をストップされなかったのでしょうか。
そうなんです。ですが、それがきっかけで場所を移したこともあってか、本を持ってきてくれる人も現れるようになりまして、おかげで今も続けられています。
本を持っていくし、持ってきてももらえる、こうした“良い循環”が広がって続いていくとうれしいですね。
現在、左京区役所には付近に他の施設がなく、用事がないと来づらい場所でもありますが、
こういった本の活動を通じて、いずれは“来れば何かを知れる”“ゆっくりできる”場所にしていけたらと思っています。
たしかに、ぼくも左京区に住んでいた頃は、すぐ近くにあったのに、転居届を出したり住民票をもらったりといった用事でしか立ち寄ったことがありませんでした。
そうした目的以外でも来ていい場所なんだと、多くの人に知ってもらえたら、周辺ももっとにぎわいそうですね。
区長さんのお話をうかがっていて「本を通じて区役所を人の集まる場所にしたい」という思いが、活動の根っこにあるのだと感じました。
先ほど、本蔵書200冊を持ってきたというエピソードからも、よほどの本好きではないかと思うのですが、よろしければ区長さんの本への思いも聞かせてください。

本はデジタル化の時代に対応しつつも、アナログな部分もあってほしいなと思っています。
たとえばデジタルで言うと、今では書店に行かなくてもネットで本が買えてしまうじゃないですか。ほかにも電子書籍といった手もありますし、図書館に行く人でも、お目当ての本があるかどうか探して予約して取りに行くということが多くなってきていると聞きます。
便利でいいなとも思うですが、その一方で、本屋さんや図書館の棚を歩きながら回って、惹かれる本を探すといったアナログな出会いが減ってきているなとも感じるんです。
だからといって「そういうやり方こそが本の楽しみ方だ」というのも違いますよね。
なので、“デジタルを使ってアナログな体験”ができないかと考えています。
デジタルを使ってアナログな体験!? それはどういったものでしょうか。
たとえば図書館をVRで再現して、家の中に居ながらにして図書館の棚が見られるといったサービスは面白いのではないかなと。
面白いと思った本をクリックすると数ページだけ読めるとか、その場で予約できるとかも面白いですよね。
もちろん実現するのは大変なことだとは思うのですが、今から新しい図書館を建てるよりはコストも時間もかかりません。
“デジタルを使ってアナログな体験”という言葉の真意が見えてきました!
たしかに、実現出来たら面白そうです。

ありがとうございます。ほかにも左京区と本のかかわりという点の話だと、左京区には新刊書店も古書店もあって、学校も小中高大まですべてそろっています。ほかにも資料館などもあったりしますし、大学にも図書館や資料室がありますよね。そういう意味では左京区はとても文化的な資料がある街だと思うんです。
しかし、大学や資料館の本ってなかなか読めないですよね。平たく言えば、一般の人に向けて開かれていません。私はそういった部分を開放したり、例えば区役所のこの部屋でなら閲覧できるとか、それこそ先ほどお話したVRで読めるといった風にしたりして、左京区のネットワークをデジタルとアナログ両方の面で強くできないかなと思っています。
こういう活動は自発的には広まっていきません。だから私たちが積極的にやる必要があると思っています。
いろんな方々に協力してもらって、最終的には「左京区は本の街」と言われるのが目標です。
お話をうかがううちに、「公共空間をひらく」という言葉の具体的なイメージが浮かび上がってきました。
どれも一筋縄ではいかなそうですが、同時に、決して「実現不可能ではない」と希望も感じます。
そうですね……。ただ、実は私、あと半年で定年を迎えるんです。
なので、私がいるうちにすべての夢を実現することはできません。
今はそのための種まきをしたり、方向性を示したり、人材を育てたりしているところです。
こんなにも本と左京区への愛を持った方が区役所を去ってしまうというのは、なんとも寂しい気持ちになります。
夢の実現のための“種まき”や、これからの“アイデア”を、ぜひもう少し教えてください。

一つは、子どもたちの好奇心を育てることだと思っています。
左京区には文化的な資料がたくさんありますが、それは大人だけのものではなく、子どもたちのものでもあります。せっかく子どもたちの好奇心を刺激するものがこの街にはたくさんあるのですから、その好奇心に、ちゃんと応えられる街にしたいと思っています。
たとえば、どこの学校にも本が好きな子がいますよね。
そうした子を“ブックソムリエ”として、休みの日や放課後にイベントのお手伝いをしてもらうのもいいかもしれません。
子どもたちにいろいろな出会いを与えるのも大人の役割だと思っていますし、左京区にはそれを支える土壌がありますから。
また、今は『子育てのしやすさ』というと、交通や医療、お店などの環境面で語られることが多いですが、
それに“好奇心を育てられる場所”という観点が加わったらいいなとも思っています。
「左京区にはそれがあるから住みたい」と思ってもらえるようにしていきたいですね。
そして、その中心にあるのが“本”であるといいなと思っています。
なんていっても“左京は本が似合う街”ですから。
“左京は本が似合う街”! とても素敵な言葉ですね。ぼくももう一度、左京区に住みたくなりました!
それが実現するお手伝いをできたらと思っているのですが、何か方法はありますでしょうか。
もちろんございます。左京カタリストという活動です。
これは左京区が好きな人に登録いただいて、活動の支援をしてもらったり、イベントをする際にはボランティアで参加していただいたり、逆にアイデアを出していただいて、それを実現するように動くのにも協力していただくといったものです。

ありがとうございます。自分も登録させていただきました! ぜひ左京区の力になれたらと思います!
ここまで区長さんの本や左京区全体への思いをうかがってきましたが、これからの左京区役所での展望もお聞かせください。

左京区が“本の街”であること、そして“子どもが好奇心を育てられる場所”と認知されてきたら、転入者も増えると思うんです。そのときにこの街にようこそ! といったイベントができたらいいなと思っています。
たとえば『WELCOME左京区ZINE』を作ってもいいですよね。
そのためにまずは自分たちがZINEを作ったり、地域のみなさんがZINEを作るようなイベントをしたりといったことからはじめていけたらと思っています。
ありがとうございます。実はこの『「本」の挑戦者』の連載第一回がZINEを販売するイベントでした。
そこで得た知識を活かして、自分もWELCOME左京区ZINEにかかわっていきたいですね。
もちろんほかにもいろんな形で協力させていただけたらうれしいです!
ありがとうございます。最後に私どもの活動で大事にしていることを紹介します。
それは“できることはやらせてもらいます、ではなく、出来ることより少し先まで頑張ります”です。
これからの左京区にぜひご期待ください。

みんなの意見を聞きながら、できるだけ“みんながやりたいこと”を形にしていけたらと思っています。
今年度も新しい取り組みを考えながら動いていますし、図書館で出た意見をどう実現していくかも検討しているところです。
もちろん、私たちだけではできないこともあります。だからこそ、市民の皆さんと力を合わせて、“左京は本の街”と言ってもらえるようにしていきたいですね。
そして今回のように、本そのものだけでなく、“本と何か”を通して、人と人との出会いがどんどん広がっていけばうれしいです。
メッセージ
ここまで左京区や、本の活動、そしてこれからについてとても熱く語っていただきました。
最後に二つ質問させてください。
まずみなさんにとって「本」とはどんなものですか。

いろいろなことを教えてもらえるものであり、また、人と人とをつなぐアイテムだと考えています。
いろんな道ヘすすむ道しるべでもあり、心を埋めてくれるものでもあり、いろんなの人生や職業を体感できるものでもあり、何年もかけた知識を少しの時間で手に入れることのできるものでもあります。そういう意味で自分の人生を豊かにしてくれた存在ですね。
なので今後も本の面白さ、とくに活字の本の面白さ、かつて自分が本屋に行くときにしたワクワクや、同じではないにしてもそういったアナログな良さも残っていてくれたらと思います。
本が好きな人間の一人として、共感の嵐です……。
最後に、これからの本の挑戦者へメッセージをお願いします!

一緒に本を介したつながりやネットワークに入っていただいて、人と人とのつながりを深めていく仲間として一緒に歩んでいきましょう!
年代も場所も、なんだったら本が好きかも関係なく、くじけずにいろんなことに挑戦してほしいと思います。ぜひ一緒に挑戦しましょう!