イントロダクション
こんにちは! 名物書店員を目指しているでおなじみ、いっちーです!

すでに『はつ恋生活』っていう素敵な本屋さんで働いているぼくですが……
なんとこのたび、プライベートで小さな本屋さんをやることになりました!
えー!って感じですよね! この浮気者!って怒ってくれるお客様がいたとしたら、それはもう『はつ恋生活』の良い常連さん!(いつもご来店ありがとうございます)
でもご安心ください。
「小さな本屋さん」と言いましたが、今回ぼくが新しく始めるのは、シェア型書店の“一つの棚”を借りることなんです!
なんだよ~と肩透かしを食らった気分でいるそこのあなた!
実は今、本好きのあいだではこの『シェア型書店』が大ブームなんですよ!
新しいお店ができるたび、棚の応募は即埋まっちゃうほど。
今回ぼくが棚を置かせてもらう『一乗寺BOOKAPARTMENT』も、
ずっと「やりたい!」って言っていて、ようやく願いが叶ったくらいです!

「どういう棚にしようかな~」って考える時間は、本好きにとってはたまらない至福のとき。
参考に他の人はどんなふうに棚を作っているんだろうと気になって検索してみたら――
なんと出てくるのは、すでに完成された棚の写真と、お店の紹介ばかり!
「もう全然参考にならないじゃん!」って叫びかけたその瞬間……ピキーンときましたね。
「棚を作ってる途中の様子、記事にしたらいいんじゃない……!?」
と、いうことで今回の記事では、『一乗寺BOOKAPARTMENT』で棚主デビューしたぼく・いっちーが、
リアルな棚づくりの様子をレポートしていきます!
今回は前編『一乗寺BOOKAPARTMENT』に行く前に準備したこと』をお届けします!
棚づくり、うまく……DEKIRUかな!?
さっそく、いってみましょ~!
そもそもシェア型書店ってなに?
いってみましょ~! ……とは言いましたが!
「そもそもシェア型書店ってなに?」って思った方のために、ここで軽くご紹介!
シェア型書店とは「棚貸し」の本屋さんのこと。本棚のひと棚ごとに「棚主」がいて、それぞれが選書をして好きな本(古本、新品、ZINEなど)を売る新しい形態の書店です。
(『一乗寺BOOKAPARTMENT』さんのHPより引用)
つまり、棚を借りて、自分の好きな本を好きなようにセレクトして売っちゃおう!というスタイル。
セレクトの自由度は高く、自分の本棚をまるごとお店に持ち込む感覚に近いかも。
「自分の“好き”で、本屋ができちゃう!」
そんな夢みたいな場所、それがシェア型書店なんです!
棚準備!……の前の準備!~棚を借りる前にやったこと~
「棚を借りるって言っても、何から始めたらいいんだろう?」
そんなふうに悩んでいる人のために、ぼくが実際にお店に行くまでにやったことを紹介します!
(1)店名決定
(2)コンセプト決定
(3)テーマ決定
(4)セレクト本決定
(5)掲示物制作
(6)グッズ制作
(1)店名決定
棚をやると決めたら、まず考えるのはもちろんお店の名前!
でもこれが、悩む悩む……。
「いっちー書店」「市川書房」「CITY RIVER BOOKS」……
自分の名前を押し出した案をいろいろ考えてみたものの、どれもしっくりきません。
そこでChatGPTに相談してみたら、
「知ってる人は嬉しいけど、知らない人には伝わりにくいかも?」と、まさかの核心を突かれてしゅん……。
ならばテーマ重視でいこう!と「痛み書店」なんて案も出たけど、
それだとテーマを変えるたびに名前まで変えることになるし、
「痛み本(=本の状態が悪いもの)」を連想させてしまいそうで、ちょっとマイナスイメージになるかも……と却下。
あまりに決まらないので、いったん頭をリセット!
「せっかく一番下の棚になったんだし、これを活かして、なんか面白いことできないかな」と発想を変えてみることに。
最初は『一乗寺BOOK APARTMENT』の名前にちなんで、
「ドアをつけて本当のアパートみたいにしちゃう!?」なんてことも考えましたが、
棚を改造してしまうことになるので断念。
「じゃあ、引き出しはどうだろう?」と考えた瞬間、
頭の中で、棚の形や本を置いたときのイメージがくっきり浮かびました。
そのとき、「あ、これだ」と思ったんです。
「引き出し書店……のぞきこむ書店……」とノートに書きながら、つぶやいていて、
「しゃがみこむ書店……あ!」
その響きが自分の中でぴたりとはまり、しっくりくる感覚がありました。
名前の響きも気に入ったし、棚の場所の特徴も表現されているし、
なにより、自分が置きたいなと考えていた本の雰囲気とも合っている!
というわけで、店名は――
\『しゃがみこみ書店』に決定!/
(2)コンセプト決定
“しゃがみこみ書店”という名前からには、
やっぱりコンセプトは「心がしゃがみこんだときに読みたい本」がいいよね!
ということで、選書スタート。
まずは読書記録アプリに保存していた750冊以上の本を、下から順にチェック。

「これも沁みた」「あれも良かった」「これは有名だし入れておくか」──そんなふうに心に引っかかった本を拾っていったら、あっという間に400冊超え。さすがに多すぎる!
そこから「今の自分が“ほんとうにいい”と思えるか?」を基準にふるいにかけて、約200冊に。
次は、それらを◎〇△□の4つに分けていく工程へ。
◎は「めちゃくちゃ良かった」、〇は「棚に置いておきたい」、△は「悪くなかった」、□は「判断がむずかしい」。
最初はわりとサクサク進むけど、△や□に入れた本がどんどん気になり始めて、ふたたび迷いのループへ。
ここからはもう、本たちが棚の座をかけて争う“脳内オーディション”の開幕です。
「これは◎だったかも」「いや、あれは今こそ読んでほしいかも」と、再評価の連続。
しかも一度落選した本たちが「やっぱり戻して!」と訴えかけてくる“敗者復活戦”まで始まり、もうカオス……。
それでも、何度もオーディションをくり返し80冊前後までしぼることができました……。
(3)テーマ決定
「心に響く本」っていうコンセプト、めちゃくちゃ気に入ってるんですけど……
それだけだと、正直どの本も当てはまりそうで、
棚に並べる本をしぼるにはちょっと決め手に欠けるな〜
ということで「今回はこのテーマで選びました!」って言える、もうひとつの軸『テーマ』を作ることにしました。
つまり、“どの本も心には響くんだけど、今回はこの切り口でいくよ〜!” ってやつです!
まずはノートに、思いつく言葉をひたすらメモするところからスタート。
なんとなく気になる単語とか、ふと浮かんだフレーズとか……ひたすら書いてたら、ノート3ページがあっという間にびっしり。
なのに、最終的に選んだのは、なんと一単語目に書いてた「痛み」でした!
というわけで、しゃがみこみ書店の記念すべき第1テーマは――
\『痛みを読む』に決定!/
(4)セレクト本決定
テーマが「痛みを読む」に決まったことで、選書の基準がグッと明確に!
「この本、“痛み”に関係ある?」という視点で見ていくと、それまでの迷いが少しずつ整理されていきました。
80冊から30冊までしぼるのはわりとスムーズ。けれど、本当に難しいのはそこから先。
ここからは“最終選抜”の時間。
好きだけどテーマにちょっとズレがある本、逆にテーマには合ってるけど推しきれない本……候補たちがせめぎ合います。
しかも、並べ方のバランスやジャンルの偏りなんかも気になってくる。
ひとりで悩んでるとぐるぐるしてきたので、ここで再びChatGPTに相談。
すると返ってきたのは、
「中には“好きで勧めたい本”と“テーマに沿っている本”があるよね。で、中にはその両方を満たしている本もあると思う。 まずはその両方を満たしている本を基準にしてみたら?」
という、なるほどすぎるアドバイス。
「それ、いいね!」とほめたら、すかさず
「ありがとう!……で、実際何冊入る予定なの?」と返されて――
……盲点でした。
ほかの棚主さんの例から「20冊くらいかな?」と予想してたけど、うちの棚は引き出し型。
あまり詰めこむと重くて引き出せなくなるし、幅も限られてる。
そこで急いで引き出しに本を並べてみたところ……
入るのは、なんと10冊前後!
面陳スペースを削っても15冊が限界。自作本も置きたいので、セレクト本としては10冊が現実的なライン。
というわけで、テーマに沿っていて、かつ「今の自分が“読んでほしい”と思える本」を中心に、最終リストを調整。
「物語が少ないな?」と気づいて加えたり、逆に専門書に偏りすぎていたところは削ったり……
バランスを見ながら何度も微調整をくり返して、ようやく決まったセレクト本10冊がこちら。

吃音-伝えられないもどかしさ-/近藤雄生/新潮社
かんもくの声/入江紗代/学苑社
注文に時間がかかるカフェ/大平一枝/ポプラ社
人間失格/太宰治/新潮文庫
ミモザの告白/八目迷/ガガガ文庫
わたし、虐待サバイバー/羽馬千恵/ブックマン社
なぜあなたばかりつらい目にあうのか/加藤諦三/朝日新書
死にたくなったら電話して/李龍徳/河出文庫
八月の母/早見和真/角川書店
その生きづらさ「かくれ繊細さん」かもしれません/時田ひさ子/フォレスト出版
画像の左6冊が専門書、右4冊が小説です。
(5)掲示物制作
さてさて、本が決まり、店舗名とコンセプトも固まったら……
次は、それをお客様にしっかり伝えるための掲示物づくり!
作ったのは主に3つ。
1. 棚の紹介カード
2. 店舗ロゴ
3. 本の帯
まず取りかかったのは、1. 棚の紹介カード。
コンセプトや名前の由来、ちょっとしたルールなんかをまとめた
『しゃがみこみ書店案内』を作りました!

作ったデータはポストカードサイズで印刷して、ポストカードケースにINしています。
これを見れば、しゃがみこみ書店のすべてがわかるといっても過言じゃないので、ぜひ見に来てくださいね!
次に取りかかったのが、2. 店舗ロゴ!
これは、コンセプトやテーマを相談していた流れで、ChatGPTの画像生成サービスに「ちなみにロゴも作ってくれたりする?」と聞いてみたところ、ご快諾いただきました!
そこから出てきたのは、なんと2案。

ひとつは、人がしゃがみ込んで棚をのぞいているような姿。
もうひとつは、膝を抱えてしゃがみ込んでいるポーズ。
どちらも、ぼくのやりたい棚のコンセプトを完璧にとらえています。
さすがに長い時間、ああでもないこうでもないと言って、相談し合った仲。なかなか良い案を出してくれます……。
どちらかに決めきれず、ためしに両方を組み合わせてみたところ、

びっくりするくらい、しっくりきました。
まるで、箱の中でしゃがみこんでいる小さな自分を、そっと見ているような感じ。
パッと見ただけでも「かわいい!」ってなるのに、
じっと見ていると、そこにちいさなストーリーが浮かび上がってくるようなデザイン。
完成したロゴを見て、思わずひとこと――
「いやぁ、ちゃんと本屋さんっぽいぞ……」
次に取りかかったのが…… 3. 本の帯!
これ、何気に一番時間がかかりました!!
「この本の魅力を伝えたい!」という気持ちはあふれるほどあるのに、いざ言葉にしようとすると、思いが強すぎてどんどん長くなっちゃうんです。
文章はスラスラ出てくるのに、「どれを残す?」「どうやって削る?」という作業にめちゃくちゃ時間がかかりました。
紹介文って短ければ短いほど、難しいですね……!
でもやっぱり、どの本も「この一文で気になってほしい!」という思いがあるので、最後は納得いくまで何度も直しました。
気づいたら、完成した帯を自分でもじっと読んじゃってて、「あれ、これ本当に面白そう……!」ってまた買いそうになったのは内緒です(笑)。

最初に作った帯、文字の長さを模索中です……。

推しすぎて長くなってしまったけど、やっぱり削れなかったパターン。

後半になって、少しデザイン力が上がった感じがします。
(6)グッズ制作
棚主としての覚悟を決めて、いざ、棚準備へ! とその前に、ノリでグッズを作っちゃいました!
ひとつめはしおり!

やっぱり、本のグッズといえばしおりですよね……。
文言を考えるのはPOPや帯を考えるのともまた違った楽しさでした!

そしてトートバックまで!
いっちーの『しゃがみこみ書店』ってどんな棚?

(1)どんな棚?
年間120冊以上本を読む無類の本好きなぼく『いっちー』がテーマを決めてセレクトした本を置く棚です。
他の方の棚と違うのは、引き出し型になっていること!
(2)名前の由来
棚の名前は、引き出しを開けてみて、のぞきこむときにしゃがみこむことから。
そして、この名前の由来は、実はもうひとつあります。
それは――ぼくにとって、本を読むということが“しゃがみこむ”ことだから。
落ち込んで、心がしゃがみこんだときに、
素敵な本や、いい言葉に出会って、何度も助けられてきた経験があります。
それに読書って、「ちょっと立ち止まって、ぐっと沈みこむ」ような時間だと思いませんか?
その“しゃがみこむ時間”こそが、ぼくにとっては、心が落ち着く、大切なひとときなんです。
ぼくの棚ではそんな時間を大事に過ごしてもらえたら、という思いを込めて
この『しゃがみこみ書店』という名前にしました。
(3)セレクトテーマ
そんな思いではじめた『しゃがみこみ書店』。
記念すべき第1弾のテーマは――『痛みを読む』!
その名のとおり、いろんな「痛み」について書かれた本を集めてみました。
というのも、じつはぼく、“痛みの本”がいちばん好きなんです。
ぼく自身が、ちょっと傷つきやすい性格で、
だからこそ、他人の痛みにもぐっと惹かれてしまうことが多くて。
そういう本を読むと、なんだか仲間を見つけたような気持ちになるし、ちょっとだけ救われたりもするんです。
読んで傷つく。でも、読んで救われる。
ちょっとちぐはぐだけど、きっとその繰り返しこそが、自分を強くしてくれるし、誰かにも優しくなれるんじゃないかなと、そう信じています。
前編のまとめ
ここまでが、前編! “棚づくりの準備編”でした。
名前を決めて、テーマを決めて、本を選んで、案内カードやロゴや帯まで整えて……ようやくスタートラインに立てた気がします。
さあ、次回はいよいよ後編、“棚づくり編”!
今回つくったあれこれをぜんぶ持ち込んで、いざ! 実際に棚を仕上げていく作業に入ります。
果たしてちゃんと並ぶのか!?
引き出しは引き出せるのか!?
緊張とワクワクを胸に、いっちー、ついに『一乗寺BOOKAPARTMENT』に』現場入りします!