希少なタイコーヒーから始まった挑戦。京都「Laughter」が紡ぐ人とのつながり

  1. TOP
  2. 街の文化が生まれる場所
  3. 希少なタイコーヒーから始まった挑戦。京都「Laughter」が紡ぐ人とのつながり
街の文化が生まれる場所
  • コミュニティ
  • 暮らし
  • こだわりフード

シェア

X X(Twitter) Facebook Facebook
希少なタイコーヒーから始まった挑戦。京都「Laughter」が紡ぐ人とのつながり

京都・西陣の閑静な住宅地に、日本では極めて希少なタイ産コーヒーを扱うお店があります。「Laughter」は、コーヒーをほとんど飲んだことのなかった2人の学生が、タイ北部で出会った1杯に心を動かされたところから始まりました。

オープンから、もうすぐ6年。それまでの歩みには、学生での起業やタイ農園での買い付け、コロナ禍での店舗開業の白紙など、数々の転機があります。そしてそこには、どんな状況でも自分たちなりの答えを探し続けた、Laughter代表の三輪さんの姿がありました。

そんな三輪さんに、1杯のコーヒーから始まった挑戦と、積み上げることで見えた景色について聞いてきました。

プロフィール

三輪浩朔(みわこうさく)さん

1997年生まれ。愛知県名古屋市出身。龍谷大学政策学部卒業。2018年、コーヒー豆の輸入・販売を行う「株式会社アカイノロシ」を創業し、2020年、1号店となる「Laughter  NISHIJIN」を開業。同時期に焙煎を学び、Laughterで取り扱うコーヒー豆の焙煎をすべて担当。自身のnoteでは日々コーヒー屋店主としての気づきや学びを発信。連載をもつこと、本を出版する夢も同時に追いかけている。

すべてのはじまりは、タイ北部で出会った「1杯のコーヒー」

三輪さんとタイコーヒーとの出会いは、大学3年生の頃。

ゼミ活動の一環でタイ北部を訪れ、その土地が約40年前まで麻薬(アヘン)の栽培地だったことや、中毒に脅かされた人々を救うべく王室による作物転換プロジェクトでコーヒー栽培がスタートしたこと。そこに住む人たちは、今、自分たちの手でおいしいコーヒーを作ることを誇りに感じていること

コーヒーを通してその土地の歴史に触れた三輪さんは、「日本でのタイコーヒー市場を開拓したい」と、共同代表の矢野龍平​さんとともに、起業を決意します。

しかし、当時の日本でのタイコーヒーの流通はほとんどなく、ある種「無謀」と言われる挑戦。それでも起業へと突き進んだのは、文化を未来に紡ぐ「挑戦」にロマンを感じていたからでした。

授業の一環で、人口が減りつつある京都北部の地域を調査したことがありました。当時はまさに「地方創生」の重要性が訴えられている時期でしたが、生まれが名古屋の中心部だったこともあり、あまり自分ごとに置き換えられてなかったんです。
 
でも、そこで暮らす人たちの話を聞いているうちに、地域から人がいなくなることは、まちが無くなるだけでなく、その地域で育まれた歴史・文化・方言…そのすべてが消えてしまうことなんだと知って。
 
タイコーヒーの歴史を聞いているときも、同じような感情が芽生えたんですよね。この人たちの生活に自然に根付いた「コーヒー栽培」が、この土地の文化を紡いでいるんだなと。
 
このストーリーごと日本に持ち帰れたら、タイコーヒーの文化を守ることにつながるのではないかと思いましたし、まだ誰も手をつけていない市場という可能性にもロマンを感じて。
 
実はそれまで、コーヒーをほとんど飲んだことがなかったんですが……(笑)、気になると根詰めたくなるタイプなこともあり、一気にコーヒーの世界へのめり込めました。

とくに難航したのは、日本で勝負できる品質のコーヒー豆を探すことだったといいます。

なかなか条件に合うものとは出会えず、「これで見つからなかったら諦めて就活しよう」と諦めムードで訪れた2度目のタイ。とあるカフェで飲んだコーヒーのおいしさに感動し、山中を歩き回ってついに出会ったのが、現在まで取引が続く「チャーリー農園」だったそうです。

印象的なイラストは、チャーリー農園の「チャーリー」さんをモチーフにしたもの
三輪さんに入れていただいた深煎りのタイコーヒーは、あまみがありほっとする味わいでした

チャーリー農園のコーヒーは、マイルドで甘さがある味わいが特徴。コーヒーのおいしさと、あたたかく迎えてくれたチャーリーさんの人柄にも魅了され、幾度となる交渉の上、農園から直接コーヒー豆を輸入できることに。

「無謀」と言われた挑戦が、花開いた瞬間でした。

コロナ禍で実感した「ヒトはヒトでモノを買う」という事実

起業後は、焙煎所への卸売や、ポップアップやイベントでの販売など、認知拡大を目指し、一歩ずつ確実な活動を続けていってた三輪さん。

1年後には、観光地に近い理想的な物件が見つかり、実店舗の開業へ向けて動き出します。しかし、残すは契約のみ…というタイミングで、新型コロナウイルスの流行が拡大。

先行きが見えない状況での開店はリスクが高いと判断し、契約を見送らざるを得ませんでした。

当時は、ここまで積み上げたものが一度ゼロになった感覚でした。焦りというよりも、そっちの感情の方が大きかったですね。

一方、Laughterの今後を決める上で、大きな気づきを得たのもコロナ禍のことでした。

コロナ禍は、カフェ業界全体が厳しい状況にあるなかでも、「おうちカフェ」需要を背景にコーヒー豆の売上を伸ばしたお店がありました。そうしたお店の共通点は、単にコーヒーがおいしいだけでなく、日頃からお客さんとの関係を大切に築いてきたこと

その状況を通して、人やブランドへの「共感」が購買行動につながる、「ヒト消費」の重要性を実感したそうです。

コロナ禍で人と人との距離が生まれたからこそ、「あのお店から買いたい」という心のつながりを求める購買が明確になった気がしました。
 
Laughterも同じように「ヒト」で買ってもらいたいと思いましたし、なによりぼくたちが届けたいタイコーヒーは、特別な日の一杯というより、毎日気軽に飲み続けてもらいたいコーヒー。
 
だからこそ、日常のなかでコーヒーを届ける場所が必要だと感じて、改めて店舗を探すことにしたんです。西陣の店舗は、住宅地のなかにあって、まさに地域に根をはれる場所だと感じました。
 
コロナ禍は正直大変でしたが、自分たちが目指したい方向性を改めて確認できた時間でもありましたね。

大きなガラス戸が印象的な「Laughter NISHIJIN」店舗入り口

2020年10月。さまざまな困難を経て、京都西陣の住宅地に1号店となる「Laughter NISHIJIN」をオープン。当初は、地域の人に受け入れてもらえるか不安な気持ちもあったそうですが、現在は地域のイベントに出店するほどの存在に。

ふらっと立ち寄れる「街の縁側」のような場所として、小学生からご年配の方まで幅広い人たちが訪れる、西陣の暮らしに根づいたコーヒー屋さんになっています。

明るくて開放的な店内

積み重ねの先にある「声をかけられる存在」

2021年には、老舗生花店「ちきりやガーデン」とのコラボ店舗『Laughter × CHIKIRIYA GARDEN』、2022年には、鴨川を一望できる『Laughter KAMOGAWA stand』をオープンし、着実に活動の幅を広げてきたLaughter。

そのなかでも大切にしているのが、目先の数字や効率に振り回されず、信頼や発信を地道に積み上げること

コロナ禍で来客が減った時期にはポッドキャストを開設し、お店のことや日々感じていることについて発信。三輪さんは、個人でもほぼ毎日noteを書き続けています。

今って、いかに早く人の心を掴むことが求められる時代だと思うんですが、だからこそ、時間をかけて深く誰かに刺さる発信を諦めたくないと思っているんですよね。
 
人との関係性を時間をかけて育てるためには、数字だけの反応に流されることなく、愚直に積み上げることが大切なのかなと。
 
焙煎を教えてくれた師匠から、「ちゃんとやっているところにはいずれ声がかかるようになるから、声をかけてもらえる場所になるまで頑張りなさい」と言われたことがあるんです。強引につかんだ営業先は、力技で取られる。だから無理に営業をかけるんじゃなくて、信頼を積み上げていけばいいと。
 
お店を開けて、接客して、手を抜かないという、お店として当たり前のこと」の積み重ねや、自分たちが感じていることを「発信」の積み重ねの毎日が、Laughterの信頼につながり、「あのお店で買いたい」と思ってもらえるような関係を築けたらいいなと思っています。

現在、Laughterから焙煎豆を仕入れる人の多くは、かつてお客さんとして通っていた人や、noteやSNSで発信を見ていた人、友人づてにコーヒーを飲み、その味や想いを覚えていてくれた人たち。どれも、人との縁から生まれたものばかりです。

「声をかけてもらえる存在になる」師匠から受け継いだその言葉は、日々の営業や発信を通して、少しずつ形になり始めています。

目指すのは、全国に「Laughter」でつながる人がいる未来

Laughterが卸すすべての焙煎豆を手がける三輪さんが目指すのは、全国47都道府県にコーヒーの卸先をつくること。

卸先には一度は足を運ぶことが三輪さんのポリシーであり、仕事を超えた楽しみのひとつ。そこには、ただコーヒーを届ける場所を増やしたいのではなく、顔の見える関係性を全国に広げたいという想いがあります。

そんな夢を抱える三輪さんが、最後にコーヒーへの想いも語ってくれました。

僕ら自身、コーヒーのことを全然知らないところからスタートしているので、小難しくコーヒーを語りたいというよりは、ちょっとでも楽しい一日とか、豊かな暮らしの中に僕らのコーヒーがあればいいなと思っているんです。

だから、Laughterのコーヒーを飲んで『なんだか今日はいい日だったな』とか、お店に来て『ちょっとリフレッシュできたな』って思ってもらえたら、それが一番うれしいですね。日常の中に自然と溶け込んで、気づけば手に取ってもらえる。そんなコーヒーでありたいなと思っています。

店名である「Laughter(ラフター)」は「笑顔」という意味。チャーリー農園をはじめて訪れた際、コーヒーの存在が言葉の壁を超えて笑顔をもたらしてくれた経験をもとに付けられた店名。年齢や国籍に関係なく「一杯のコーヒーからたくさんの笑顔が生まれるように」という意味が込められています

今回、三輪さんに取材を申し込んだのは、1本のnote「コーヒーショップ「Laughter」ができること!&皆さんと描きたい未来」を読んだことがきっかけでした。

「全国に卸先を作って、会いに行ける場所を増やしたい」「noteを通じて書く仕事もしてみたい」という三輪さんの挑戦に心が惹かれ、気がつけば取材を申し込み、多岐に渡る想いを聞かせていただきましたが、この出会いも三輪さんが愚直に積み上げてきた先にあったものだと考えると、実に感慨深いです。

1杯のコーヒーから始まった三輪さんたちの挑戦は、今日も西陣の住宅街で、静かに積み上がり続けています。

Laughter  NISHIJIN

住所:〒602-8498 京都府京都市上京区西熊町289

営業時間:10:00-19:00

定休日:なし


HP:https://laughter-coffee.com/

instagram:https://www.instagram.com/laughter_nishijin/

取材・執筆・撮影:はせがわみき

シェア

X X(Twitter) Facebook Facebook