HAPPY! 三度の飯より「本」と「ことば」が大好き、いっちーです!
今回取材するのは、小説家の神岡鳥乃先生!!

SNSで先生の作品をお見かけして、そのタイトルと、帯の『新感覚ハイスピードラブコメ』という言葉を見て、
恋愛本専門店『初恋♡生活』で働く身としては読まなくては! と手に取りました。
しかし読んでいくと、この作品はライトノベルでも、ミステリーでもなく、ラブコメでもなくて……
ネタバレせずに説明するのがとっても難しいんですが、個人的に今年読んだ作品の中でも5本の指に入るほど、大好きな作品! なのでお話を聞けるのが楽しみです!
それじゃー行ってみよ~!
神岡鳥乃先生プロフィール
神岡 鳥乃(かみおか とりの) 滋賀県生まれ。
大学院在学中に『研究棟の真夜中ごはん』で漫画原作デビュー。
『空冥の竜騎』で第16回講談社ラノベ文庫新人賞《優秀賞》受賞。
『ヒロインが最後に死ぬラブコメ 1~夢の彼女編~』がラノオンアワード2025年8月刊で総合部門、新作総合部門、新作部門の3部門に選出される。
普段はゲーム会社でシナリオライターをしている。
本と出会う前の先生
インタビューをご快諾いただき、ありがとうございます。
本日はよろしくお願いいたします!
よろしくお願いいたします。
まずは本と出会う前、先生の子どものころのお話を聞かせてください!
幼少期はどんな子どもだったのでしょう?
自分ではよく思い出せない部分も多いのですが、親や弟からは“とても自由な人”だと言われましたね。
幼稚園時代には、列から離れてどこかに行ったり、周りとは違うことをよくやっていたそうです。
作品にも通じるような、先が読めない一面をお持ちの子どもだったのですね。
当時は、どんな遊びをされていたのでしょうか?
人形遊びをよくしていました。
戦隊モノや仮面ライダーといった特撮系の人形だったんですが、やたらとオリジナルの設定を作りこんで、物語を作っていましたね。
本と出会う前のことはよく覚えていないのですが、小学校に上がってすぐくらいにはもうすでに小説を読んでいたと思います。
その頃の経験が、いまの創作活動につながっていると感じる部分はありますか?
やっぱり人形遊びですね。小説という形にするのはもっと先ですが、はじめて物語を自分で考えたのはこのころだと思います。
本を読むことについて
最初に読んだ作品や、本を「自分から」読むようになったきっかけの一冊はどんなものなのでしょう?
小学校のときに読んだ『デルトラクエスト』ですね。きっかけは図書館のオススメとしてそこにあったからです。
ほかにも『ハリー・ポッター』などのメジャーなファンタジーどころはよく読んでいました。
自分の想像力でお話を追っていくという体験が楽しかった記憶があります。
そのころに読んだ本で影響を受けた作家やジャンルはありますか?
『ダレン・シャン』ですね。それはもう、衝撃でした。
それまで読んでいた作品は、ハッピーエンドで終わるものがほとんどだったのですが、『ダレン・シャン』はまったく違っていて。こんなに無慈悲な終わり方でもいいんだ、と思わされたのは大きな衝撃でしたね。
自分の作品でつらいシーンを書くときも、『まあ、これくらいなら『ダレン・シャン』にもあったしいいか』と思って書くことがあるくらい影響を受けていると思います。
作家買いをすることはあまりないのですが、ほぼ唯一と言えるのが武田綾乃先生です。
キラキラした物語は読んで元気が出ますし、いわゆる“脳を焼かれる”というか、胸を撃ち抜かれるような話が多くて、好きでよく読んでいます。
武田綾乃先生の作品、面白いですよね!
最近読まれた中でのオススメの本もぜひ教えてください。
『地雷グリコ』(青崎有吾/著〈KADOKAWA〉)ですね。
『地雷グリコ』あらすじ
ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説!
射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。
平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは――ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。
この作品は子どものころにやっていた遊びにギャンブル要素を加えてゲームにしたものです。
代表的なので言うと、タイトルにもなっているグリコですね。じゃんけんをしてグーで勝ったらグ、リ、コと階段を3歩分上るあれです。
ほかに出てくるものもすべて子どものころにやっていた遊びなので、イメージしやすいですし、驚く展開や、スカッとするシーンもあって、オススメです。
名前は聞いたことありましたが、そんな本だったんですね……読んでみます!
書くことについて
ここまでは先生の幼少期や読書遍歴についておうかがいしてきました。
ここからは先生の書くことについてお話を聞いていきます。
まずは先生のペンネームの由来を教えてください。
説明が少し難しいんですが、端的に言うと、素粒子の『ニュートリノ』と、それを観測する施設『スーパーカミオカンデ』からいただきました。
もともと自分が理系の大学出身でして、院では研究をしていたんです。なので、興味があるものから拝借して名前をつけました。
理系の大学出身だったんですね!
先生が最初に書いた作品はどんなものでしたか?
実はわたしの商業デビュー作は小説ではなくて、『研究棟の真夜中ごはん』という漫画の原作なんです。
これは私の大学院生の思い出を面白可笑しく書いたものになっています。


『研究棟の真夜中ごはん』 あらすじ
理系女子(リケジョ)ふたりのお夜食グルメ
昼夜逆転の研究生活を送る大学院生の塔山うららは、ある日、深夜の研究棟で刃物を持った幽霊と出くわします。
――が、その正体は同じ院生の鳥見川氷彗でした。
彼女はマイ包丁を手に、夜食を作ろうとしていたのでした!
そんな出会いをきっかけに、2人は深夜の研究棟で一緒にご飯を食べるようになります。
さぁ、理系女子の今夜のメニューは何でしょうか♪(Amazon.co.jpより引用)
もともとはWEBで連載していた小説だったんですが、編集の方に見つけていただきまして、漫画での出版が決まりました。
最初の商業出版は小説ではなく漫画だったのは驚きです!
これはグルメもので、一話一話がコンパクトだったので、小説よりは漫画のほうが相性が良かったんですよね。
『研究棟の真夜中ごはん』を書こうと思ったきっかけはどんなものだったのでしょう。
大学院は「自分の好きなことを研究できる面白さ」ばかり取り上げられがちですが、実際には研究したいことに研究費が下りなかったり、こんなことをしていて卒業後に社会に出ていけるか心配だったり、周囲の「まだ大学に通っているの?」という目があったりと、いろいろ知られてない部分が多くあります。
これらを面白可笑しく描けたら、あまりスポットが当たっていないところにスポットを当てるような作品があったらと思ったのがきっかけです。
実際に出版されて反響はいかがでしたか?
いろいろあるのですが、一番は同じ大学院の研究員が読んでくれたことですね。
しかも「読んで元気が出た」と言ってくれたんです。経験に基づいて書いていたのもあって、同じ立場の人に面白いと思ってもらえたのはうれしかったです。
もちろん、理系でなくても楽しめる作品になっているので、ぜひ読んでみてください。
先生が小説や漫画を描かれるときに大事にしていることを教えてください。
読者目線に立つことです。
書き手のやりたいことと、読み手の読みたいことって違ったりするじゃないですか。
「こんなに設定考えたんだから全部出したい」と作者は思いがちですが、読者からするとそんなのは望んでいない、なんてこともあります。
なので、いったん自分が書きたいことは置いといて、まず読者目線で立って、読者が退屈しないか、面白いと思ってもらえるかを考えるようにしています。
先生の作品の読みやすさと面白さはそんな思いから生まれているんですね!
次は先生の執筆時のルーティンやこだわりを教えてください。
『ヒロインが最後に死ぬラブコメ』のあとがき部分には「このあとがきは駅のホームで書き上げました」と書いてあって、衝撃でした。
私は基本、どの作品も駅や電車の中で書いています。
これは私だけの持論かもしれないんですが、執筆環境は悪ければ悪いほど良いと思っているんです。
執筆環境が悪いほど良い!?
はい。電車で書いているということからもわかる通り、私はスマホで作品を書いています。ですが、あえてSIMを入れていない執筆専用のスマホで書いているんです。
スマホってSNSやゲームなんかの欲が多いじゃないですか。SIMがないと、どれも受け取ることはできないですし、閲覧することはできません。
私は副業で作家をやっている身で、本業は別にあるんです。で、その本業の移動中に作品を書くんですけど、そんなに長い時間は書けないじゃないですか。そうなると、意地でも集中しないといけなくなります。
それに、私は座り心地のよい椅子だと気が抜けてしまうところがあるので、そういう意味でも電車で書くのが適しているんですよね。
すごいストイックな執筆環境ですね……体を壊さないかが心配です。
この書き方をしていて体を壊したことは今のところないですね。むしろ、体を壊したときこそ、書くチャンスだと思っています。
体を壊したときこそ、書くチャンス!?
はい。以前、体調不良で一週間ほど会社を休んだことがあったんです。
そのとき「やった! これで小説が書けるぞ!」と思ったくらいです。
もはやストイックを通り越していますね……! そうして出来上がった作品のレベルの高さにはそんな裏話があったんですね……。
デビューまでにどんなことに努力されましたか?
自分の好きなものを信じて書き続けたことですね。
最初、自分は電撃小説大賞に応募したんです。一次で落ちたら記念応募でいいやくらいに思っていたんですけど、なんと三次までいったんですよね。
それがきっかけでいろんな賞に応募するようになったのですが、結局デビューまで8年くらいかかってしまいました。
最終選考では作者に電話がかかってくる時期というのがあるのですが、その時期は夜も眠れませんでしたね。
連絡が全くなく、あぁダメだったんだと放心するという生活をずっとしていました。
そこで自分の書いている作品に自信がなくなってしまうことも何度もありました。
自分の好きだったりやりたいことよりも、受賞している作品や流行っている作品に寄せたほうほうがいいのではという悩んだ時期もあったんです。
そんな風に悩まれながらもついに小説でのデビューをされました。その話も聞かせてください!
小説デビューしたのは講談社の作品で『空冥の竜騎』(講談社ラノベ文庫)です。

『空冥の竜騎』あらすじ
感覚を同期させた《竜》に乗り、空の戦場を駆ける兵士――竜騎。
竜騎が本格的に実戦導入された世界大戦が終結して数年後、エースパイロットであるロナード=フォーゲルは、あることがきっかけで危険な飛行を繰り返していた。
任務中、取り返しのつかない失敗をしてしまったロナードは、勤めていた基地を追われて士官学校へ左遷されてしまう。
学校の先生という新たな立場に戸惑うロナードだったが、女子生徒・シエルを筆頭に、なぜか教え子たちから慕われて――?
士官学校ものの作品です。が、ネタバレをすると最後に学校が壊れるんですよね。
士官学校は学校が象徴なので、シリーズを通して象徴的なものになる。しかしあえて壊しました。
こうすることでジャンルのお約束を破ったんです。ほかにも予測不能なことをいくつもして。テンプレから外れた作品になっています。
とげを取り除くのではなく、研ぎ澄ます方向を信じてやり続けた結果、デビューできたと思っています。
これまでコミックの原作、ファンタジー作品、そして今作とたくさんのジャンルで作品を執筆された神岡鳥乃さんですが、ご自身の中で転機となったはどちらになるのでしょう?
やっぱり今作『ヒロインが最後に死ぬラブコメ』ですね。いろんな人に読んでもらえるようになった作品という意味でもそうですし、自分の信じていたものが評価されて自信がついたという意味でも転機になったと思っています。
苦労や努力の末に、完成した本を手に取った瞬間は、どんな気持ちでしたか?
形になってうれしいというのが半分、もう半分は読者に受け入れてもらえるのかという不安でした。
実際に自分の本が置いてある書店には行かれたり、読者からの反応はいかがでしたか?
いろんな書店をめぐりましたね。中にはすごくプッシュしてくれる書店もあったんです。
ラブコメやラノベが好きな人からすると、異色な作風なので受け入れられるか心配だったのですが、その棚の担当さんがプッシュしてくれたというのは本当にうれしかったですね。
ほかにもSNSで感想をあげてくださる人もいて、届いているんだと実感できてホッとしました。
信じていたものがちゃんと形になって、いろんな人に届いているという現状……!
苦労された話を聞いていたのもあって、多くの人に反応をもらえたと聞いて、自分もうれしくなりました。
『ヒロインが最後に死ぬラブコメ』について
ここまでは先生の書くことについてのお話をうかがってきました。
ここからはついに先生の作品『ヒロインが最後に死ぬラブコメ』についてお話を聞いていきます!

『ヒロインが最後に死ぬラブコメ』あらすじ
これは妄想か
それとも現実か!?
「昨日会ったんだよ。夢に出てきた女の子と」
高校2年生の赤月楓は人形劇部の部員たちにそう語る。
残念なやつだと冷ややかな目で見られていたが、なんと夢に出てきた女の子そっくりの雲見早希が転校してくる。
しかも、引っ越してきたのはアパートのお隣だった!?
生活力皆無の早希を見かねて、楓は何かと世話を焼くのだが……。
「今から、わたしの家……来ない?」
新感覚ハイスピードラブコメ、ここに開幕!
ネタバレなし部分
まずはこの作品の制作のきっかけや経緯を教えてください。
ジャンルのお約束をあえてやって、そこから豹変させるということをやってみたいと思ったのがきっかけですね。もともと自分が、予測不可能なものが好きなので、いろいろアイデアはあるのですが、そのうちの一つを形にしたのが今作です。
執筆中にはどんなことを工夫されましたか?
とにかく“先が気になる”流れを作ることですね。
テンポ感を意識して展開を早めつつ、ひとつの謎を明かしたら、すぐに次の謎を置く。その配置やバランスにはかなり気を配りました。
読者の手が止まらないように、“常に次を用意しておく”感覚で書いていました。
今作で、読者に「ここを読んでほしい!」というポイントを教えてください。
主人公とヒロインが結ばれて、家に行くシーンですね。
そこまで読んでいただけたら、きっと「ここでやめられない」と思ってもらえるはずです。
ぜひそこまで読んでみてほしいです。
今作で、好きなキャラクターやエピソードは?
早希が好きですね。個人的に、何かに強く執着しているキャラクターに惹かれるところがあって、気づくとそういう人物を多く書いてしまいます。一方で、読者の方からは「蘇芳が好き」という声も多いです。
ライトノベルのレーベルから出していることもあって、ラノベ好きな読者さんに読んでいただくことも多いのですが、今作は意外とミステリー好きの方や、これまでラノベをあまり読んでこなかった方から「面白かった」と言ってもらえることも多くて。
年齢や性別を問わず、いろいろな方に楽しんでもらえていると感じています。
この作品を通して、作家活動にどんな変化がありましたか?
自分の作品が受け入れられて、これまで信じてきた“面白さ”は間違っていなかったんだと思えるようになりました。今まで挑戦して、苦労してきた分、報われたような気持ちがあります。
今作のサブタイトルが『夢の彼女編』ということは、次回作があるのでしょうか。
はい。あります。次は、夏の思い出編を刊行予定です。
『夢の彼女編』のコミカライズも予定しておりますので、そちらもぜひ手に取ってみてください。
次回作では、今作のキャラクターたちにまた会えますか?
それは……お楽しみに、ということで!
ネタバレあり部分
ここからは作品のネタバレを含みます。
未読の方は、作品を読んでからこちらを読むのをオススメします。
ネタバレ注意!(クリックしてお読みください)
今作のタイトル『ヒロインが最後に死ぬラブコメ』の意図についておうかがいします。
途中で早希が死んでしまったとき、「え、途中で死んでるんだけど、タイトル詐欺!?」と思ってしまったんです。
しかし実際は「実は雲見早希にとってのヒロインが最後に死ぬ」という意味だった、と気づいたときには鳥肌がたちました。どの時点でこのタイトルや設定を考え付いたのでしょうか。
すべて、最初からこういう形で書こうと決めていました。私は書きながら模索するタイプではないので、まずアイデアからストーリーを組み立てていき、最後にタイトルを付けています。
描かれるときに大事にしていることについておうかがいしたとき、「読者目線に立つようにしている。出したくなっても設定をあまり出さないようにしている」とおっしゃっていましたが、今作は設定も出しつつ、読者を飽きさせない工夫がふんだんに入れ込まれていて、本当にすごかったです。
今作ではライトノベルあるあるが多く登場しますが、それらを利用したトリックはいつ、どの段階で思いつかれたのでしょうか。
これも最初ですね。企画段階です。ジャンルを転移する作品にしようと思っていたので、まずはそのジャンルの“あるある”をきちんと踏襲しないといけないと考えました。
そこで、ライトノベルらしいジャンルって何だろうと考えて、最終的にラブコメを選んだんです。
今人気のラブコメ作品は、最初から両想いで始まるものが多いですよね。
付き合ってはいないけれど、読者は「ああ、この二人は付き合うんだろうな」とわかっていて、だんだん惹かれ合っていくよりも、最初から両想いで、あとはどちらかが踏み出すだけ。そのじれったさを楽しむスタイルです。
それを、今作では“あえて”装う形にしました。
確かに最近アニメ化しているラブコメ作品は、そういった形のものが多い印象があります。10年ほど前は、最初はいけ好かない関係だけど、一緒に過ごしていくうちに好きになっていく、という作品が多かったですよね。
もちろん、そういうラブコメもあります。ただ、今作ではラブコメの要素は、あくまで転移するための前振りなんです。最初はお互い嫌いという方向にしてしまうと、どうしても時間がかかってしまい、ページ数も多くなってしまいます。そうなると分量のバランスが崩れてしまうと考えて、あえて最初から両想いという形を選びました。
考え抜かれて選ばれたスタイルだったんですね! 前半部分はまさに王道のラブコメって感じだったので、すっかり騙されました!
ぼくが個人的に好きなシーンが、序盤に登場する『泣いた赤鬼』の伏線が、楓の独白で回収されるところです。
楓の独白は謎解きの答えだと思っていたので、その真意に気づいたときに、こちらも鳥肌が立ちました!
こちらはどのタイミングで入れようと考えられたのでしょうか。
これも、書き出す前から考えていました。今作では、登場人物たちはみんな嘘をついています。
なのでラブコメのパートでは、キャラクターの本当の心情をそのまま描くことができないんです。
そこで小道具を使って、あとから振り返ったときに、「あのときこのキャラクターはこう思っていたんだ」と心情を察せるようにしました。
まさか楓以外にも伏線が……!?
はい。例えば、人形劇の演目として挙げているタイトルは、すべてそのキャラクターを表しています。
来海が『ごんぎつね』を挙げていましたが、『ごんぎつね』は、きつねのごんが罪悪感に苦しむ物語なので、事件に対して罪悪感を抱いている来海の心情とリンクしています。
蘇芳が『さるかにがっせん』なのは、計画を立てて復讐するという部分が同じだからです。その点が、ラストシーンとも重なっています。
お話を聞いて、本当に細かいところまで考え抜かれていると知って、読んだときと同じくらい鳥肌が立ちました! 今作のような壮大な設定、ドラマがどこから紡ぎ出されたのか気になります。
書き出したシーンとしては偽装自殺のシーンですね。
実は、表紙がそのシーンをイメージしたイラストでもあるんです。
うわ! 言われてみれば確かにそうですね! これも気づきませんでした……。
表紙の話でもう一つお話しすると、彼女がつけているイヤリングをよく見てほしいんです。
実像と、鏡に映っている虚像とで、イヤリングが違いますよね。この時点で実は二人が別人だとわかるように描いてもらっています。
これもまた気づきませんでした!
まだ見つけられて伏線がたくさんあるかもしれないと思うと、もう一度読んでみたくなりますね。
うれしいです。今作はすべてを知った状態でもう一度読むと、気づけるところがたくさんあるので、ぜひ何度も読んでみてほしいですね。
今作が単なるハッピーエンドで終わらなかった点がとても印象的でした。
蘇芳の設定やラストシーンには、どのような意図があったのでしょうか。
すべての関係が修復してしまうと、作り物じみたハッピーエンドになってしまうと思ったんです。
たとえば『ブレイブストーリー』という作品では、主人公は物語の最初と最後で、置かれている状況自体は変わっていませんよね。母子家庭であることも、そのままです。
ただ、自分なりの答えを出しているという意味では、あれはハッピーエンドだと思っています。
今作も同じで、置かれている環境はぐちゃぐちゃなんですが、記憶を取り戻し、執着や罪悪感から解放されているという意味では、人の心は変わっていますよね。それは彼彼女らにとって、ハッピーなことだと思うんです。
確かに、すべての謎が明かされてすっきりする一方で、モヤモヤもあって、ただそれでもこの子たちなら、この先も笑顔で生きていけるんじゃないか。そんな希望すら感じるラストでした。
“実は全員裏がある”という展開もとても印象的で、正直、震えました。
入れ替わりがあり、なおかつ登場人物全員に裏の顔があるにもかかわらず、キャラクターを混乱することがなく、キャラ変後もすんなり受け入れられるように作られていたのがすごいと感じています。
キャラクター造形の段階で、どのような工夫をされていたのでしょうか。
早希と菊乃は双子なので、入れ替わりを描くなら、似た性格にしてしまうとかえって分かりにくくなると思いました。なので、あえてまったく別の性格にしています。
新幹線に乗ったあとで早希が再登場する場面は、とくに分かりにくいところなので、「あれ、どっちでしたっけ?」と作中でキャラクターに言わせることで、読者に分かりやすいようにしました。
また、前半と後半でキャラクターの印象が大きく変わらないようにも工夫しています。完全に別人になるのではなく、実はそう演技していた、ということに説得力が出るように、先ほどお話しした人形劇のくだりなど、さまざまな仕掛けを入れました。そのおかげでキャラ変後も違和感なく受け入れてもらえたのだと思います。
今作は読み返してみると、ラブコメパートにも伏線があって、前半部分が後半にじんわり効いてくるという構成になっているので、ぜひもう一度読んでみてください。
メッセージとこれから
ここまで、神岡鳥乃先生のことや『ヒロインが最後に死ぬラブコメ』のことをたくさん聞かせていただき、ありがとうございます。
お話を聞いていて、また読み返したくなってきました。次回作も本当に楽しみです。
これから続編やコミカライズも控えている先生ですが、今後どんな作品を描いていきたいですか?
“予測不可能なもの”を書いていきたいと思っています。
たとえば恋愛であれば結ばれる、ミステリーであれば謎が解決するなど、そのジャンルのお約束ってありますよね。
そういうお約束がしっかりした作品って、面白いんですけど、目が肥えた読者には先を読まれてしまったり、見透かされてしまったりするじゃないですか。
なので、そういうお約束を破ったり、読者の予想とは違う方向に行ったり、まったく違う予想できない展開にしたりといった作品をこれからも書いていきたいですね。
インタビューの中で一貫して、予測不可能と挙げられていた神岡鳥乃先生、これからもその予測不可能な物語や細部までこだわった設定、徹底された読者目線の作品を読めるのが楽しみです。
そんな神岡鳥乃先生にとって「本」とはどんな存在でしょうか?
自分ひとりでは出会えない知らない世界へ連れて行ってくれて、自分の世界を広げてくれるものです。
ここまで長い時間、インタビューにご協力いただきありがとうございます!
最後に、これからの“本の挑戦者”へメッセージをお願いします。
私の大好きな作品に『響け!ユーフォニアム』というものがあります。
作者の武田綾乃先生はこの作品を書かれるうえで次のようなことを言われています。
“努力は報われる、ただしそれは本人が望む形とは限らない”……確かにその通りだと痛感しました。
実際、自分もデビューまで何年もかかりましたし。
でも、こうして作品を皆さんにお届けできた今、こうも思っています。
“努力は何かしらの形で報われる。だから、止まらないで”
こちらをメッセージとさせていただければと思います。
最後まで、読んでいただきありがとうございました。
SNSやおしらせ、宣伝物など
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現在連載中の『冷血伯爵の料理人~異世界転移してスパダリたちの胃袋つかんだら溺愛されちゃいました~』(神岡鳥乃/原作 朱肆/漫画〈クロスフォリオ出版〉)では原作を担当をされています。

『冷血伯爵の料理人~異世界転移してスパダリたちの胃袋つかんだら溺愛されちゃいました~』あらすじ
「私と共に来い。」ホスピスで調理師として働く姫路香織は、仕事から家に帰る途中トラックに跳ねられ異世界に転移してしまう。そして、森の中で気を失って倒れていた香織を酒場の店主・カペラが見つけ介抱したことをきっかけに、香織はそのままカペラの店で働くことになる。香織の料理の腕前により、カペラの店は繁盛し人気店となった。その評判を聞きつけ、ある日、香織の前にある一人の男が現れる。その男は冷血伯爵と人々から畏れられるアルファルド・ブランペインであった。【第一話】知らない部屋、知らないベッドの上で目を覚ました姫路香織。森で倒れていたという自分を見つけ介抱してくれた酒場の店主・カペラによると、どうやらここは異世界のようで・・・。