グラレコプレイヤー・ネコっちさんの「グラレコ脳」大解剖!
こんにちは、DEKIRU!編集部のぷーちゃんです。
突然ですがみなさん、こんな経験ありませんか?
2時間のセミナーを受講して……
「結局、なにが大事なんだっけ?」
盛り上がった会議の議事録を見て……
「あのバイブスどこいった?」
ためになる話を聞いて……
「自分の言葉で説明できない(致命傷)」
どれだけ身になることを経験しても、数日後に人に伝えようとしたときに全然伝わらない。説明の二度手間、三度手間……、泣きたくなりますよね。
そこで登場するのが……
そう!
最近(僕の中で)流行中のグラレコ(グラフィックレコーディング)です!
SNSやイベントレポートで「文字とイラストがギュッと詰まった“1枚のまとめ”」を見たことはありませんか?
それが、今じわじわ広がっているグラレコ(グラフィックレコーディング)なんです。
「絵心ないし関係ないかも」
「こっちはマジメな話をしているんだ!」
「マンガとか絵とか、興味ないんで」
と思ったそこのあなた、ちょっと待ってください。
グラレコの本質は、絵が上手い/下手という部分ではなく、“伝わらない”を“伝わる”に変える編集技術だということなんです!
話の内容を、その場で「文字」「図」「イラスト」で可視化して、「要点」と「流れ」……そして「その場の空気感」まで、1枚にまとめちゃう。これがマジでいい感じ。面白いし、その場のこと思い出せるし、何より「人に伝えやすい」。存在を知ってから、色んな「グラレコ」を見ました。
その中で、ふと思ったことが……
「グラレコ描ける人、頭の中どうなってんの?」
という疑問でした。
いや、めちゃくちゃ難しいんですよ、グラレコ。自分で描いてみようとすると、非常によくわかります。
話しを聞きながら、絵と文字を書きながら、全体の流れを1枚の絵に「伝わる様に」丁寧に配置していく。
…………。
ムリムリ(ヾノ・∀・`)
そして、
「たぶん、同じ話を聞いてても“脳内で起こってること”が全然違う」
「同じ世界を見ている、聞いているとは思えない」
「たぶん、“脳が独自の進化”を遂げているに違いない」
という仮説に辿り着きました。
それを、「グラレコ脳」とでも呼ぼうか。
この謎を解くべく「この人に聞きたい!」と突撃したのが、僕が(一方的、かつ個人的に)激推しだったイラストレーター兼グラレコプレイヤー「ネコっち」さん。ドキドキしながらインタビューをお願いさせていただいたところ、快くOKをいただけました!
そしてお話を伺うと……
「この方、話がめちゃくちゃ面白い」
「喩え、比喩がうまい……」
「言葉選びに強いセンスを感じる……」
やはり「グラレコ脳」は存在する。という結論に辿り着きました。
そして、ネコッちさんの「グラレコ脳」を
・可能な限り「言語化」して
・(可能な限り)誰でもわかる
ように、対談形式でまとめさせていただきました!
是非これを読んで、あなたも「グラレコの世界」にハマってみてください!
グラレコをつくるとき、どんな世界が見えているのか?
はじめまして、ぷーちゃんです。
このたびは「グラレコ脳」というテーマのインタビューに協力していただいてありがとうございます!
どうかよろしくお願い申し上げます。
こちらこそありがとうございます。
どうかよろしくお願いします。
グラレコって、2時間くらいのセミナーを横でずっと聞いて、ライブドローイングしたりして、その後、絵という形で再構成するじゃないですか。
絶対「見えてる世界」が違うんだろうなと思って。
場の雰囲気、お客さんの顔、話の流れ、盛り上がった空気感……。そんな情報の連続を受けながら、判断し続けないと描けないんじゃないかと思っているんですが、ネコっちさんがグラレコを書くときに「考えていること」や「脳内のビジョン」って、どんなものがあるか教えていただけませんか?
はい。
このお話をいただいて、それこそ自分で考えてみたんです。
そして、それを「絵」にまとめてみました。
さっそく!
ありがとうございます。

「重心を探す」、ここ面白いですね……。ネコッちさんは、セミナーを聞いたり、会議に参加しているときに「重心を探してる」んですね。
そうなんです。「この人の話の軸は何なんだろう」っていうことを、常に考えているなー、と。話している内容そのものより、「一番エネルギー込めた瞬間」とか「繰り返してくる言葉や概念」に無意識に反応してる感じです。
「何がこの人にとって一番大事なのか」「どこが芯なのか」を探している感覚です。「話の内容」というよりは、「エネルギーが高い場所」といった方が正しいかもしれません。
映画『鬼滅の刃 無限列車編』で、炭治郎の「無意識領域」が描かれる場面があるじゃないですか。
「これが……彼の心の中……」みたいなシーン。
そんなイメージで、「その“場”の重心」を探しているようなイメージです。
論理的、事務的な「理性で紡がれた言葉」より、感情的、感覚的な「ポロっと出た本音、声の抑揚」などから重心を探しています。
なるほど……。「内容」より「重心=エネルギー」に重きを置いているんですね。
はい。
そして「ここが重心=エネルギーが高い場所かな?」と感じたら、それを伝えるために話の道順、絵の構造を頭の中で仮置きをします。
前提があって、理由があって、具体例があって、まとめ……みたいな。
そして、それと並行して「読み手の迷子ポイント」を先読みするんです。
「この言い方だと、読み手が迷子になるなぁ」
「たぶん、ここで“?”が浮かぶなぁ」とか。
そこに「案内板」や「思考のマップ」、要は「迷子にならないための絵や言葉」を配置していくイメージです。
「ただ、現場で起こっていることを描く=記録」だけではなく、「あとでグラレコを見る人、読み手の理解を促進するガイド=伝える編集」までされているんですね……。
そうだと思います。
そして、最後に「ビジュアルに落とし込む、絵として描く」という流れです。
「話し手の思考+無意識のエネルギー」×「読み手の理解」をスムーズに表現する構造、配置、ビジュアルを考えて、それを表現していく。
これを並行して、毎秒毎秒繰り返している感じです。
いや……想像を絶します……「毎秒」ですよね?
脳が枯れそう……
でも、「やはり“グラレコ脳”は存在した……これが“グラレコ脳”か!」という感動もあります。
グラレコとは、「“智”と“創造”」の総合格闘技である
グラレコのやり方って色々あると思うんですけど、セミナーとかに参加する場合、ネコッちさんは以下だとどちらがメインなんでしょうか?
・リアルタイムで描く「ライブドローイング」
・メモとかを取って「後日、落ち着いて描く」
両方ありますね。
オファーをくださる企業様、クライアントさんの要望に合わせてどんな形でも対応しています。
「60分の生放送の最後に間に合うように描いて」って言われてやったこともありましたよ。
もうほぼスポーツですよね(笑)。
僕たちのような「文字メディア」の人間は、相手に「いま仰ったのって、こういうことですか?」って確認できたり、取材後にデスクの前で「うーん……ここをこうして……」みたいに落ち着いて作業ができるのですが、グラレコは「反応」「解釈」「構造化」を、リアルタイムで超スピードで繰り返して、しかもそれを「絵」で表現する必要があるんですね……。まるで総合格闘技みたいです。
そうですね。
お仕事のご相談をいただいたら「来たか……」と覚悟を決める感じで(笑)。
イベントやセミナーの当日まで集中力を高めていき、「いざ本番」となると本当に1秒も気を抜けないです。脳をフル回転させて話を聞いて、話し手の無意識化にある「言葉にならない重心」を探して、それを構造化し、「その話の聞き手」と「後でグラレコを見る読み手」の迷子ポイントを予測して「思考のマップ」を配置して、それを「描く」。
ライブドローイングが終わった後は、いつもドッと疲れています(笑)。
グラレコ脳のつくり方
今日お話を伺うまでは、「絵が描ける人」、いわゆる「センスや感覚の人」なら誰でもグラレコをつくれるのかもと思っていたのですが、ネコッちさんのお話を聞いていると「構造化の思考」や「言語化、言葉選び」に人並外れたものを感じます。
なぜ、そんな「言語化」や「思考の構造化」ができるのか、どうやってそれが身に付いたかがすごく気になるのですが、どんな学生時代や社会人経験をされてこられたんですか?
え、今日そんなことまで聞かれるんですか?
なんだかありがとうございます(笑)。
実はわたし、昔からかなりの「ラジオっ子」だったんです。
13歳くらいから20歳ごろまで、色々と投稿をしていた「ハガキ職人」だったんです。
今みたいにネットラジオやラジオアプリがなくて、チューナーを回して周波数を合わせることで聴くアナログラジオの時代だったんですが、地元のFM局がやっていた「まだちゃんとした番組になる前の“実験放送”」の時代から聴いていた番組もあったりします(笑)。
7年もハガキ職人を!?
ホンモノの「ラジオ好き」ですね(笑)
当時のラジオって番組の生放送中に「今回のテーマこれです」って言われたものに対して、それに合ったネタと曲リクエストを考えて、放送中に3つ、4つFAXで送るっていう感じでした。
だいたい1つのメッセージを読むのに45秒くらいだったので「そこに収まるメッセージの量で……」とか考えていましたね。
「瞬間的に考えてアウトプットする」っていう土台が鍛えられそうですね!
その頃から絵も描かれていたんですか?
そうですね、趣味としてイラストを描いていました。本格的に学んだり部活に入ったりしていたわけではなく、チラシの裏に描くというレベルだったのですが、2015年にペンタブレットを買ったことが大きな転機となりました。
今から10年ぐらい前ですね。デジタルを取り入れることで、どのようなことが変わったんでしょうか。
ちょうどその頃、ネット上にお絵描き掲示板みたいなものができたんです。それまでは「プロじゃないとネットに作品を上げられない」という暗黙のルールがあったんですが、お絵描き掲示板の登場により、アマチュアでも絵が上手くなくてもネットに作品を載せて発信できる時代が到来し、私も自分で描いた絵をネットに載せるようになりました。
そこからどうしようと考えていたときに、社会人向けオンライン学習コミュニティの「Schoo」に入ったんです。たくさんある学びのなかにグラレコもあり、その講座を受けて初めてグラレコの魅力を知りました。
学びはじめてから毎日SNSに自分が描いたグラレコを載せるようになっていて、半年後には最初のビジネスパートナーに出会いました。
え、毎日アップされていたんですか?
ずっとペンタブレットで作業していたので、データが残っていますよ。最初の頃はレベルが低くてお見せするのも恥ずかしいくらいで(笑)。しかもまだ「60分以内に描き切る」ということもできなくて、時間をかけてつくっていました。
いやいや、どんなレベルだとしても毎日描いてアップし続けるって誰にでもできることではないですよ。しかも半年後にはお仕事にもなっているんですよね。
私がSchooでグラレコの講義を受けはじめてから毎日SNSに投稿しているということを先生やスタッフの方が知ってくださっていたんです。最初のお仕事も、先生から声をかけていただいたことがきっかけでした。
その先生は、自分の講義が終わったらその内容がグラレコになっていることを見て大変驚かれて、気に入ってくださいました。お仕事の際にも、ビジネスのことをよくわかっていない私の代わりに価格設定もしてくださり、最初にこういったかたちでサポートいただいたことがラッキーだったなと振り返ってみて思います。

それはすごい!
最初に制作費が発生するお仕事をされたときってどういう気持ちだったんですか?
私の場合、「対価をいただいているんだから、本気でのびのびとやれる」というように感じました。うまく言語化できないのですが、「対価をいただくのだから、やらなきゃいけない」とは少しニュアンスが違うと言いますか……。
面白い考え方だと思います。
グラレコをお仕事にされるようになって、壁を感じられたことってありますか。
グラレコって一口に言っても、描く人それぞれのやり方があるんです。最初に「グラレコ脳」って言ってくださいましたが、レコーダーの一人ひとりがそれぞれ違う「グラレコ脳」を持っていると思います。ですので、「あの人みたいなグラレコを描いてほしい」という依頼の場合、求められているものとこちらができるものとが噛み合わないということはありますね。
大体、グラフィックレコーダーはSNSやHPに自分の画風やポートフォリオを載せているので、あらかじめ自分のイメージと合うかを確かめてからご依頼いただくと、こういったミスマッチは減ると思います。
確かにそうですね。
先ほど「ライブドローイングが終わった後は、いつもドッと疲れる」と言われていましたが、どのような部分が大変なんでしょうか。
ほとんどが「リアルタイムで、ライブ形式」なので、ものすごくエネルギーと集中力を使うんです。
「マグロの解体ショー」と同じで「絶対に戻れない」作業をしているわけですから、プレッシャーがえげつないです(笑)。特に「生放送の終わりまでに描き上げなければならない」という制約がある場合は、すごく体力を使いますね。
今いただいているお仕事は7割くらいが「何日までに」と余裕があるもので、3割くらいが「イベントが終わるまで、60分以内に」とか時間制限付きのものです。「時間制限付き」のご依頼が続くと、ちょっと「うっ……」となります。そんなにマグロは解体できないんで(笑)。
「余裕あり」のご依頼だと、セミナーとかの動画を見て、うんうん考えて、ちょっと寝かせて、考えて……と2日間くらいかけてつくっています。
先ほどから比喩がとてもユニークだと感じるんですけど、このあたりはラジオで培った感覚なのでしょうか。
ありがとうございます(笑)。
無意識だとは思うんですけど、「言い換え」とか「表現」っていうのは常に気にしているかもしれません。「そのままではなく、少し形を変えて、面白く伝わるようにする」というのは、グラレコを描いている時にも常にやっていることですので。
グラレコは社会との接点
ちなみに、ネコっちさんは「グラレコ業界で1位を目指そう!」みたいな思いとかはありますか?
全然ないですね。自信がないんで、他の方のおしゃれで素敵なグラレコを見ると落ち込んでしまうと思います。我が道を行くことにしていますし、ありがたいことに私の作品を見て依頼をしてくださる方もいらっしゃるので、これでいいかなと。
得意なジャンルはあるんですか?
得意としているのは「リベラルアーツ」とか、「哲学」「心理学」とかです。
「人の心の動き」とかを扱うものだと、すごくやりやすくて、喜んでもらえるものが描けますね。
私の絵を見てピンとくる人は「ネコっちは《人の心の動き》を表現するのがうまそうだ!」と思ってくれるのかもしれません(笑)。
なるほど(笑)。では「会社の新製品や新技術の発表」とかよりは「社長が語る将来のビジョン」や「新時代の考え方、心の持ち方」のようなものの方がハマりそうですね。
経営者の方が大きなビジョンを語っているんだけど、ちょっと社員の人たちが付いていけてない、「迷子ポイント」が多いケースとかが向いているかもしれません。
私がグラレコを描かせていただいたなかに本を10冊以上出している方がいるんですけど、その方から「今日の講演、言葉で上手く伝えられなかった気がしてたんだけど、グラレコを見ると《この絵はわたしが伝えたかったことを分かってくれている……!》と思えて安心した」みたいなことを言われたことがあります。
「なんか《守りに入った》ような話し方をしちゃったな……と思っていたんだけど、このグラレコを見て《ちゃんと伝わったんだ》と感じて救われた」って。
また、別の講師の先生からも「前に描いてもらったグラレコが、自分が伝えたいことの原点がまとまっていたので今でも講演、講義の前に見返してる」って言ってもらったこともありますね。
これらの言葉をいただいてから「なにか《専門的な内容》や《抽象度の高い考え方》を伝える人が「この話、ちゃんと伝わっているのかな……」と不安になるようなときに、グラレコが伴走できればいいな、と思うようになりました。
グラレコが、ただ「議事録をビジュアル化する」ようなものでは無くて「頭の整理」「自分を見つめなおす」「自分を成長させる」ツールになっているということですね。
「今後のグラレコの世界」はどうなっていくと思いますか?
2020~2022年くらいに「グラレコって流行ってるんですよね」とよく言われる時期があったんですけど、最近ある会社の方から「グラレコ部っていうのをつくって、社内の有志でやっているんです」という話を聞いて、もう一過性の流行ではなく、文化として根付きはじめたんだと感じました。
これからの広がり方は2種類あると思っています。
1つは「場を設計できるグラレコ」です。
話し手の意図を理解し、聞き手の理解も想像して、その場で構造化をできる。いわば「グラレコ×編集×ファシリテーション」ですね。
もう1つは「思考翻訳型のグラレコ」。これは、私が主にやっているものです。
話し手の持っている抽象的なコンテンツを、他人が理解できる形で翻訳、変換しているものです。
どちらも「アウトプットそのものよりも、プロセスに価値がある」っていうものだと思います。
最近は生成AIが驚くべきスピードで進化していますが、「ただ情報を記録するだけ」、「情報を写すだけ」、「見栄えが良いだけ」のグラレコはAIとの勝ち目のない競争になると思っています。
生成AIはツールとして便利なものですが、人の心を動かすのは、生成AIにはつくれない「人間的な部分」じゃないかなと思っています。ですので、これから先に残っていくグラレコは、「情報的価値」と同時に「情緒的価値」も望まれるものなんじゃないかと考えています。
ネコっちさんにとって、グラレコはどのような存在なんでしょうか。
もちろん仕事ではありますが、それよりも広義で考えると、私と社会との接点なんですね。グラレコがあるから、私は社会とつながっていられる。それはすごく大きな役割だと思っています。やりたい、やりたくないではなく、「つながりとして持っておかなくちゃならないもの」でしょうか。
ここ数年、「いつ辞めようか」と考えることも正直あるんですけど(笑)、そうすると私は社会との接点をなくしてしまう。それは大変ですよね。嬉しいことに描くと「ありがとう」と喜んでくださる方もいらっしゃるので、そう言っていただける間は続けていこうと思っています。
貴重なお話をありがとうございました!
プロフィール

ネコっちさん
イラストレーター、グラフィックレコーダー。
タレント、俳優の大泉洋氏と同じ北海道江別市出身。
これまで制作してきた「グラレコ」は2,200枚越え。
書籍へのイラスト提供、イベントのグラレコ化、”みんなで学べる”ライブ動画学習サービス「schoo」パーソナリティなど幅広く活動。
好きなマンガ家は高橋留美子。