『みんなのこだわり大図鑑』作者、みくさんにインタビュー

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『みんなのこだわり大図鑑』作者、みくさんにインタビュー

イントロダクション

HAPPY! 三度の飯より「本」と「ことば」が大好き、いっちーです!

今回取材させていただいたのは、京都芸術大学・こども芸術学科に通う“みくさん”
前回取材したはるさんのときと同じく、学祭で作品を見た瞬間に衝撃を受け、気づけばその場で取材をお願いしていました。

その場で少しだけお話も聞かせていただいたのですが、
「あ、これ……感情移入して泣いちゃうやつだ……」と確信し、
急遽、別日でじっくり取材させていただくことに!

それではさっそく、いってみよ〜✨

みくさんプロフィール

京都芸術大学こども芸術学科こども芸術コース3回生

幼少期〜表現との出会い

取材をお受けいただき、ありがとうございます。
学祭で少しお話をうかがっただけでも、自分と重なる部分が多くて、
もっと深くお話を聞きたいと思っていました。
ですので、今回こうして時間をいただけて、本当にうれしいです!
どうぞよろしくお願いいたします。

よろしくお願いします!

まずは、幼少期のお話からうかがえたらと思います。
みくさんは、どんなこどもだったのでしょう?

母やおばあちゃんからは、「とにかくおだやか」「きつい言葉をつかわない」「優しい子」とよく言われていましたね。

展示を拝見したとき、制作された方はきっとやさしい方なんだろうなと感じていましたが、幼少期からそうだったんですね!

ちなみに、絵と出会ったのはいつ頃だったのでしょう?

小さいころからずっと絵を描いていましたね。
むしろ、どれだけ描いても苦痛に感じなかったくらいです。

それはもう、いろんなところに描いていましたよ。
家の階段の壁や机の上に、油性ペンで描いてしまって、よく怒られていました。

怒られるほど夢中で描いていたんですね!
そのころは、どんな絵を描かれていたんでしょうか?

人物画ですね。といっても、今のようなちゃんとしたものではなくて、こどもらしい絵でした。
お母さんや家族、友達の絵をよく描いていましたね。

そんなふうに絵に夢中だった一方で、絵以外ではどんな遊びをされていたんでしょう?

公園や学校の隅に秘密基地を作って遊んだりもしていました。
友達とどんぐりや葉っぱを集めて、秘密基地のインテリアにしたり、お金に見立ててお店屋さんごっこをしたり。

私、田んぼが広がる“ド田舎”で育ったので、そういう遊びが多かったんです。
もちろん秘密基地とはいえ、結局バレちゃうんですけどね。
バレたらまた別の場所を探す……そんな感じで遊んでいました。

自分も田舎育ちなので、同じようなことをたくさんしていました。
秘密基地って、意外とすぐバレちゃうんですよね……わかります!

そうしたこどもの頃の遊びや体験の中で、
「これは今の自分につながっているな」と感じる出来事はありますか?

人に喜んでもらえること、ですね。
小さいころから絵を描くよりも、喜んでくれる表情や反応を見るほうが好きだったんです。

例えば、お父さんの絵を描くときは、お母さんに“お父さんが好きなもの”を聞いて、それをこっそり絵に入れていました。
完成した絵を見たお父さんに「ありがとう」って言ってもらえたときが、本当にうれしかったです。

人に喜んでもらえることが創作をする理由で、それが今もつながっているというのはとても素敵です!

ありがとうございます。ただ、すごくいい子だったっていうわけでもないんです。というのも、当時の私はこだわりが強いこどもだったので、“ダメ”と我慢させられることに不安でいっぱいだった時期もありました。
自分の“好き”や“こだわり”をそのままにしていいのか、わからなくなることも多くて。

今回インタビューいただいた作品も、作っていくうちに、不安でいっぱいだったあの頃の自分にも届けたいと思うようになっていきました。

喜んでもらえるうれしさも、こだわりに抱えていた不安も、どちらも今につながっています。

大学で学んだことについて

ここまでは、みくさんの幼少期についてお話をうかがってきました。
穏やかでやさしい一面と、しっかりとした“こだわり”を持っていた一面——
その両方が、今の作品にもつながっていることが少しずつ見えてきた気がします。
 
ここからは、大学での学びや経験についてうかがわせてください。
まず、京都芸術大学のこども芸術学科を選ばれた理由からお聞きしてもよろしいでしょうか。

とにかく「絵を描いていたい」という気持ちが強かったので、芸大に行こうとは思っていたんです。
でも、こども芸術学科の存在は、高校二年生になるまで全然知らなくて。

オープンキャンパスに行ったときにいろんな学科を見て回ったんですが、
その中でも、こども芸術学科の作品や教室の雰囲気がすごく印象に残って、それで入学を決めました。

なので、もともと保育士を目指していたというわけではないんです。

そうしてこども芸術学科に入って学ぶ中で、特に印象に残っている授業や体験はありますか?

ドイツに行ったときのことが印象に残っています。

大学の授業でドイツに!?

ドイツには、幼稚園にワークショップをしに行きました。
そこでは驚くことばかりで、とくに“言語の壁を越えて関われたこと”は深く印象に残っています。

ドイツのこどもには英語がほとんど伝わらないので、ドイツ語で話さないといけなくて。
でも、自分があまり勉強できていなかったこともあって、最初はどうしようか本当に悩みました。

それでまずは、“リボン”のドイツ語と自己紹介だけは覚えることにしたんです。

なぜ、リボンのドイツ語を?

自己紹介のときに“好きなものをひとつ伝える”ことになっていて、
私はリボンが好きなので、そのことをうまく表せたらいいなと思ったんです。

せっかくなら、言葉でも気持ちでも伝わるようにしたくて、
まずは“リボン”の単語だけドイツ語で覚えることにしました。

それで、自己紹介のときに使う名札も、リボンの形にして準備していきました。
ちなみに、リボンはドイツ語でSchleife(シュライフェ)って言います。

ものがあることで言葉が通じなくても気持ちが伝わる――その瞬間がすごくうれしかったんです。

そのあと行ったワークショップでは“日本の夏祭りを体験してもらおう”というテーマで、だるま落としや射的、お面作りなど昔ながらの遊びを用意しました。

驚いたことにこどもたちは言葉で細かく説明しなくても自然と遊び始めてくれて。
その姿を見たとき、リボンのときと同じように、言葉が通じなくても、ちゃんと気持ちが通じているんだと感じられて、とても印象に残っています。

ありがとうございます。
このドイツでの経験もそうですが、こどもたちと関わる中での“気づき”がとても多いのが、この学科の特徴だと感じました。
ほかにも、実習などを通して、考え方が変わったことや印象に残っている学びはありますか?

実習に行っていると、こどもって「こんなに小さい体なのに、自分たちよりずっと大きなものを見ているんだな」って思うんです。

大人なら気にも留めないような石や草にさえ疑問を持って、「なんで?」と向き合う姿がある。
そのたびに、私自身がハッとさせられる瞬間がありました。

こどもたちは、わからないことや不思議なことの多い世界を、精いっぱい生きているんだなと感じます。
大人になると“知らないことって怖い”と思いがちですが、こどもは“知らない”をワクワクで受け止めている。
そんな姿を見て、私ももっと“知らない”を楽しめる人でいたいなと思いましたね。

こどものまっすぐさって、時々ドキッとするほど響きますよね。
その「侮れないな」って思う感じ、自分もすごくわかります。

そうなんです。小さなやりとりの中にも、こどもの世界の見え方や価値観がぎゅっと詰まっていて。
研修では、そうした“気づき”にたくさん出会えるのが面白いですね。

作品の制作について

ここまでは、幼少期や大学での経験についてお話をうかがってきました。
自分もかつてはこどもだったはずなのに、こどもの視点から気づかされることが多いというのが、とても印象的でした。

そしていよいよ、ここからはみくさんの作品『みんなのこだわり大図鑑』についてお話をうかがっていきます!
まずはこの作品を制作したきっかけを教えてください。

きっかけは二つあります。

ひとつ目は、福祉の授業を受けていたときのことです。
“こどものこだわりはネガティブに捉えられがち”とか、“直さないといけないもの”という扱いに、ずっと違和感がありました。
もちろん、社会で他者と関わるためには直したほうがいい、という理屈はわかるんですけど、じゃあそのこだわりがなくなってしまったら、「その子の気持ちや、らしさはどこへいくんだろう」って思ったんです。

もうひとつのきっかけは、大学の友達に言われた言葉です。
自分も小さいころからこだわりが強い性格で、今も友達にもそう言われます。
小中のころは思春期だったこともあって、指摘されるとはずかしくて……。
でも大学に入ったら、「変だけど、わかる。私もこういうところが変だよ」と言われて、それがすごくうれしかったんです。

「変じゃないよ」と慰められるんじゃなくて、
「変だよね」と笑い合える感じ――あれがすごく好きだなと思って。
それが、この作品を作ろうと思ったもうひとつの理由です。

私自身、周りから「変な子」と言われて育ってきて、“直さないといけない”と個性をつぶされそうになった瞬間があったので、その感覚、すごくよくわかります。

次の質問は「作品のテーマや伝えたかったことは?」なのですが、お話をうかがっていると、すでにその思いがこの“きっかけ”の中にぎゅっと詰まっているように感じますね。

ありがとうございます。そうですね。きっかけと重なる部分は多いのですが、
作品のテーマとしては“みんな違って、みんな変”にしました。

どんなこだわりも、その人を形づくっている大事な一部であって、無理に直してしまうくらいなら、「みんな違って、みんな変でいいよね」という気持ちで制作しています。

伝えたかったのは「見方を少し変えるだけで、自分たちが生きている世界ってもっと面白がれるんじゃないか」ということです。
他人や家族から「ダメ」と言われたり、友達に笑われたりしても、こだわりにはちゃんと理由があるし、それはその人らしさそのもの。
そのことを知ってもらえたらいいなと思って、この作品を作りました。

ここまでお話をうかがっていて、
“こだわりはその人らしさ”という思いが一貫して伝わってきました。

みくさんも「こだわりが強いタイプ」とおっしゃっていましたが、ご自身では、どんなこだわりを持っていると感じますか?

私のこだわりのひとつは、“白ご飯とおかずは絶対に別々で食べること”です。
具体的に言うと、最初におかずを食べて、最後に白ご飯だけを食べるようにしています。

なので、どんぶりはあまり好きじゃなくて……。
もしどうしても食べないといけないときは、上の具材を全部先に食べてから、
最後に白いご飯だけを食べています。

白いご飯だけを最後に!?
ご飯以外になにも味がしなくて大変そうにも思うのですが、みくさんがイキイキと話されているのを聞いていると、まったく大変そうに感じないのが不思議で……。
その“こだわり”は、どんなきっかけで生まれたのでしょう?

白ご飯を最後に食べるダイエットをしたのがきっかけですね。それに慣れてしまって、癖になったというか、そうできないとうずうずしてしまうんです。

はじめて一緒にご飯を食べに行く友達にはよく驚かれます。でも、“それも個性だよね”って受け止めてくれるので、うれしいですね。

みくさんの“こだわり”についてのお話も伺えたところで、
ここからは作品制作について、具体的にお話をうかがわせてください。
 
こだわりについて書かれた木材、それを閉じるためのリング金具、さらに“こだわり”をかたちにしたフィギュア……と、さまざまな素材で構成されている今回の作品ですが、具体的にはどんな材料や手法で制作されたのでしょうか?

立体作品は、針金とアルミホイル、ねんどの3つで作っています。
まず、針金をぐっと曲げて形をつくって、そこにアルミホイルを巻きつけて骨組みを作っていきました。
その“芯”ができてから、ねんどを少しずつ張り付けて、指でなじませながら形を整えていく感じです。

木材の部分は、自分でのこぎりを使って図鑑の形に切り出しています。文字のくぼみはレーザーカッターでひとつずつ掘りました。

金属のパーツは既製品なのですが、図鑑をぱっと開いたときの“ページが広がる感じ”を出したくて、バインダーリングを選んでいます。

制作工程のお話をうかがっているだけでも、細かな工夫がたくさん詰まっているのが伝わってきました。その中でも、とくにこだわった部分や、難しさを感じたポイントはどんなところでしょう?

こだわったのは、“ネガティブなこだわりでも、面白くて愛しいと思ってもらえる形にすること”ですね。
そのまま出してしまって、誰かが悲しい思いをするのは絶対に嫌だったので、最初は一見ネガティブに見えてしまうこだわりは作品に入れていませんでした。

でも、福祉関係の先生から、「日常の些細なこだわりだけじゃなく、一見ネガティブに見えるこだわりも幅広く取り入れることで、どんなこだわりもみんな同じなんだと思えて、みくさんの伝えたいことがより伝わると思う」というお話をいただいて。
それがきっかけで、思い切ってネガティブなこだわりも取り入れることにしました。

自分の一言で少しでもポジティブに変えられたら、そっと背中を押せたら――そんな思いで、一文一文を考えていきました。

大変だったのは、アンケートを書く場所づくりですね。

来てくれた人にもこだわりを教えてほしくてアンケートを用意したんですが、「書きたいな」と思える空間にするのが難しくて。自分なりに、どんな状態だったらペンを取りたくなるのかをイメージしながら制作していきました。

制作の中で苦労されたことはありますか?

人の立体作品をつくるのは今回が初めてで、“自分の絵柄をどう立体に落とし込むか”がいちばん苦労しましたね。自分の体を撮って、関節の向きや骨格の動きを確認しながら、少しずつ形を合わせていきました。

実は、制作前の段階ですでに“こだわり”を集めるためのアンケートをたくさんとっていたんですが、これもなかなか大変でしたね。最初は、どうしても身内や仲の良い人たちばかりに聞く形になってしまって。

でも、もっと幅広い声を集めたくて、友達に頼んでその友達にまた頼んでもらって……最終的には、大学の友達→別の大学の友達→その友達のお母さん、みたいに、思わぬところまで広がりました。たくさんの人に協力してもらって、ようやく今の形になったんです。

そうした過程のなかで「やっていてよかったな」と思えた瞬間はありますか?

作っているあいだは、うまくいかないことも多くて 「うーん……」と悩む時間ばかりだったので、なかなか良かったとは思えませんでした。
作り終えて展示してみて、ようやく「ああ、やっていてよかったな」って思えましたね。

大変な制作を終え、ついに展示された作品。
多くの人の目に触れ、さまざまな反応が寄せられたと思います。その中でも、特に印象に残っている声はありますか?

こだわりを提供してくれた方が展示を見に来て、「自分のこだわりが素敵な展示になっていてうれしい」と言ってくれたことが、本当にうれしかったです。

実際に展示の近くに立って、お客さんともお話したんですが、みなさん「すごいね」とほめてくださって、それもうれしかったです。

制作したものに対して好意的な意見をもらえるのは本当にうれしいですよね!
先生からは、作品を見てどんな言葉をかけてもらいましたか?

「みくさんのこだわりは何なの?」と聞かれて、自分のは入れていないんですと返したら、「この作品自体がこだわりだよね」と言ってくださったんです。これも本当にうれしかったですね。

それは素敵ですね!
たしかに、私も最初に展示を拝見したとき、「作品ひとつひとつにこだわりを持って制作されていて、この作品こそがこだわりだな」と感じていました。

ありがとうございます。ほかにも印象に残っている反応はたくさんあるんですが、最後にこどもからの反応も紹介させてください!

学祭前日に、プレオープンとして、こども芸術大学付属の幼稚園のこどもたちに来てもらったんです。そこで、アンケート用紙を書いてもらいました。

ピーマンは絶対に食べないといったわかりやすいこだわりもあった中で、ひとり、“自分の中にずっといるキャラのこだわり“を書いているこどもがいたんです。

それを見たとき「あっ、これもこだわりと呼んでいいんだ」と思えたんですよね。

学祭当日も、その子のこだわりを読んだお客様に「自分もこういうふうに描いていいんだ」と思ってもらえたんです。おかげで集まったアンケートのこだわりはすごく自由になものになりました。

将来の夢、これからの挑戦

今後どんな表現や活動をしていきたいですか?

まだ全然、明確なことは決まっていないんです。
でも、やっぱりものづくりや絵を描くことが好きなので、作品を通して人と人をつなげるようなものを作っていきたいと思っています。
これまで自分がしてきたことを、大切にしながら、続けていけたらいいですね。

メッセージ

ここまで、みくさんのこれまでの歩みや作品、そして将来のことまで、たくさんお話をうかがってきました。
最後に二つ、質問させてください!
 
みくさんにとって、「表現」とは何でしょうか?

人と人をつなげるものだと思います。自分と誰かでもいいし、誰かと誰かでもいい。ときには、過去の自分と今の自分をつなげてくれるものでもあると感じています。

ありがとうございます。
他者とつながるためというところには、幼い頃からの「誰かを喜ばせたい・驚かせたい」という気持ちが息づいているのを感じましたし、
いつかの自分ともつながるという部分には、その思いが『みんなのこだわり大図鑑』という形になって現れていると感じました。

最後に、これから何かに挑戦したいと思っている人に、メッセージをお願いします。

自分が何かを始めるとき、心の中に置いているおばあちゃんからもらった言葉があります。
「迷ったら、自分がワクワクするほうに行けばいい」です。

授業で海外に行くときもこの言葉を思い出しました。
無理かもしれないなと不安になるときでも、選んだ先を想像して、ワクワクする気持ちが大きいほうを選ぶようにしているんです。

うまくいかなかったら、それはそれでいい。面白そうって思えるほうを、信じて進んでみてほしいです。

まとめ

保育士になりたいわけではなかったけれど、直感を信じてこども芸術学科に進んだみくさん。

こどもたちや過去の自分、そして「こだわり」を悪いものとして正そうとする周囲の圧力と向き合いながら、その歩みを『みんなのこだわり大図鑑』という形にされました。

実際に作品を拝見したり、みくさんや作品についてインタビューする中で、過去の自分が救われるような感覚を覚え、会場でもインタビュー中にも目頭が熱くなった瞬間が何度もありました。

学祭で作品に触れた皆さんにも、同じように感じた方がいるのではないでしょうか?

彼女がワクワクする方向を選び続けた先には、たくさんのこだわりやうれしい、すごいという声と笑顔が息づいていることでしょう。

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みくさん

sun poという名前でお友達とのんびり気ままに様々な活動を行っています。
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