“DIY”と聞くと、服飾やアクセサリーを制作したり、リフォームで理想の部屋を作ったり。そういう「手を動かす」もののイメージを持たれる方も多いかと思います。
元々の意味はDo it your self、つまり自分のことは自分でする。
音楽の歴史を遡ると、「DIYスピリット」が大きく影響していたのが、1970年代に誕生したパンク・ロック・シーン。多くのミュージシャンたちは大手メーカーと契約をしないと自身の音楽を届けることができないという既成概念に捉われることなく、「自分のことは自分で」という信念に基づいて活動をしていました。
音源を録音・販売するためにレーベルを起したり、ライブをできる場所を作ったり、ツアーには自分たちの運転するバンドワゴンで向かったり。こういった「DIYスピリット」は、今の音楽シーンにも脈々と受け継がれています。
この連載では「自分たちの力で何かをしているミュージシャン」にフォーカスし、彼らの活動を追っていきたいと思います。
「DIYスピリット」を持っているミュージシャンとは?
フェスを主催しているミュージシャン
1999年以降に急速に拡大した屋外フェス。出版社やプレイガイドによる主催がメインで、ミュージシャンは出演する側でしたが、自分たちでフェスを開催するミュージシャンも増えてきています。
最も著名なのは、10-FEETが主催する「京都大作戦」。2007年の初回から台風の影響で中止になるという伝説からスタートし、2025年で19回目を迎えます(2007年以外にも中止となった年はあり)。もはや夏の京都を代表するフェスに成長したと言っても過言ではないでしょう。今年は7月5日・6日の開催が決まっています。
他にも、くるりによる「京都音楽博覧会」(京都府)、MONGOL800による「What a Wonderful World!!」(沖縄県)、ギターウルフによる「シネマジェットフェス」(島根県)など、数え上げれば枚挙にいとまがありません。
レーベルを運営しているミュージシャン
自身の音楽をそのまま届けたいというミュージシャンの中には、レーベルを自分で立ち上げる人も少なくありません。
1999年に設立された「PIZZA OF DEATH RECORDS」は、言わずと知れた日本を代表するパンクバンド、Hi-STANDARDの横山健が代表を務めています。近年ではレーベルだけでなくマネジメント業務にも取り組んでおり、WANIMAやサバシスターなど後進のミュージシャンを輩出しています。
他にも、サニーデイ・サービスの曽我部恵一による「ROSE RECORDS」、元the pillowsの山中さわおによる「DELICIOUS LABEL」、芸人としても活躍する藤井隆による「SLENDERIE RECORD」など、こちらも数え上げるのが困難なほど。
上記に挙げたのはほんの一例。
ライブハウスの運営や飲食店の経営、他の仕事との兼務など、さまざまなことにチャレンジしながら音楽活動をする、「DIYスピリッツ」を持ったミュージシャンは多いんです。
「DIYスピリット」によって生まれた場所
前述したHi-STANDARDのヴォーカリストである難波章浩は、ミュージシャンとして活動しつつ、地元の新潟で愛するラーメン店が閉業すると知ったことをきっかけとして、新潟ラーメンの味と文化を守る「なみ福プロジェクト」を立ち上げました。
ラーメンづくりの修行から、店舗の補強工事、クラウドファンディングの実施などをすべてプロジェクトとして進行し、2022年に「新潟ラーメン なみ福 角田浜本店」をオープンさせました。
当時の模様は、クラウドファンディング「MAKUAKE」にて詳細が綴られています。
そして今年の6月。
前回同様すべてを自分たちのプロジェクトで作り上げた「新潟ラーメン なみ福 浅草店」が、東京・浅草に誕生します(ちなみに、社員&パートさんを絶賛募集中です)。
彼のチャレンジは、ラーメンの味を受け継ぎたいという最初のステップから、今は地元の人たちと協力しながら愛する新潟を盛り上げたいというフェーズに移行しています。浅草への出店も、ラーメンを通じて新潟の歴史と文化を届ける場所にしたいと考えているようです。この根底にあるものこそ、まさに「DIYスピリット」だと思うのです。
ミュージシャンの「DIYスピリット」を応援したい!
音楽を聴くことで、人は元気になったり勇気をもらったり、あるいは涙を流したりと、さまざまな影響を受けています。救われたと感じたことがある方も多いのではないでしょうか。
そんな音楽を生み出しているミュージシャンたちの「DIYスピリット」を紹介することで、彼らの力になれたら良いなと考えて、この連載を立ち上げました。
次回もまた、自身の想いを届けるべく「DIYスピリット」を持って活動しているミュージシャンをご紹介したいと思います。どうぞお楽しみに。