こんにちは!DEKIRU!ライターのみおです。
世界各地で、それぞれの問いやテーマを抱えながら学ぶ若者たち。「留学対話」はそのリアルな声を記録していく連載です。
第2回となる今回はポーランドの都市ポズナンで社会的弱者の支援を学ぶ細渕真理菜(まりな)さん。
日本では岡山大学法学部に在籍し、現在は交換留学生としてアダム・ミツキェヴィチ大学に留学しています。
中学時代の家庭環境の変化をきっかけに、相対的貧困や社会的弱者の存在に関心を持つようになった真理菜さん。ポーランドでは、EUの社会保障制度を学ぶとともに、フードバンクを運営するNGOでの活動にも参加し、現場から支援のあり方を考えています。
行政と民間の連携、難民支援の制度設計、そして地域に根ざした支援のかたち。日本とは異なる社会の中で見えてきたものとは何だったのでしょうか。
今回は、ポーランドでの学びと実践、そしてそこに至るまでの個人的な経験や葛藤について、じっくりとお話を伺いました。
プロフィール
真理菜さん

岡山大学法学部3年。現在、ポーランドのアダム・ミツキェヴィチ大学に交換留学中。EUの社会保障制度や多文化主義を学ぶとともに、フードバンクを運営するNGOでボランティア活動に参加している。趣味は編み物。


社会的弱者支援への関心の原点
みお:社会的弱者支援に興味を持ったきっかけは何だったんですか?
真理菜さん:中学3年生のときに両親が離婚して、母と私と妹、弟の4人暮らしになったことが大きいです。それまではあまり意識していなかったのですが、大学受験のときに私立は受けられない、国公立に落ちたら自宅浪人と言われて、実際に浪人を経験しました。そのときに初めて、自分はお金がない側なんだと実感しました。生活できてはいるけれど、何かを選ぼうとしたときに選択肢が制限される。そういう相対的な貧困に関心を持つようになりました。
みお:ご自身の経験がテーマにつながっているんですね。
真理菜さん:はい。弟も小さい頃から家族旅行の経験が少なかったりして、そういう日常の中の差も強く感じてきました。
ポーランドで学ぶ支援のかたち
みお:ご自身の原体験が留学テーマとも重なると思うのですが、現在ポーランドではどんなことを学んでいるんですか?
真理菜さん:大学ではEUの社会保障法や多文化主義について学んでいます。EUは人の移動に合わせて保障も動く仕組みがあるので、日本とは全く違う考え方で面白いです。保障される仕組みが整っていることで、EU全体の移動がより盛んに行われることにつながっています。それと並行して、フードバンクのNGOで活動しています。
みお:NGOではどんなことをしているんですか?
真理菜さん:スーパーの前で食品を集めるキャンペーンなどをしていますフードバンクを通じて支援したい人がチラシに書かれた食品を買って、そのまま寄付する仕組みなんですが、地域の人が自然に参加できる形になっていて、日本ではあまり見ないやり方だなと思いました。

みお:現場で見て印象的だったことはありますか?
真理菜さん:NGOの近くで、無料の野菜を配るトラックに人が並んでいる光景を見たことです。ウクライナから来た方たちが多くて、少しでも良いものを取ろうと血眼になっている姿が印象的でした。貧困が目に見える形で存在していることを強く実感しました。

ポーランドでの生活
みお:普段はどんなスケジュールなんですか?
真理菜さん:月曜から木曜は授業、金曜日はNGOの活動というスケジュールです。授業とボランティアで活動する日を分けて生活しています。
みお:住まいは寮ですか?
真理菜さん:はい、2人部屋の寮に住んでいます。大学から徒歩10分くらいで、とても便利です。

みお:生活の中で驚いたことはありますか?
真理菜さん:お店の人があまり笑わないことです。最初は怖いなと思っていたんですが、それが普通だと分かってからは気にならなくなりました。
みお:数ある国の中でポーランドを選んだ理由は何だったんですか?
真理菜さん:ポーランドは共産主義の歴史の中で、助け合いの文化が根付いている国だと思っていて、その点に興味がありました。また、自分の大学の交換留学制度で行ける国だったことも理由の一つです。

留学に挑戦した背景と、現地でのチャレンジ
みお:留学はもともと考えていたんですか?
真理菜さん:大学に入った頃から漠然と行ってみたいとは思っていました。ただ、自分の環境では難しいと思っていました。
みお:それでも挑戦しようと思ったきっかけは?
真理菜さん:奨学金があれば留学できると知ったことと、留学生と関わる中で海外に興味を持ったことです。最初は軽い気持ちでしたが、留学準備をする中でも機会の不平等に気づき、自分の探究したいテーマにもつながっていきました。
みお:大変だったことはありますか?
真理菜さん:最初は英語が聞き取れなかったり、日本人が自分一人だったりして、かなり孤独でした。でも今は、自分から話しかけられるようになって、だいぶ慣れてきました。
みお:ヨーロッパ旅行もされましたか?
真理菜さん:はい。フランス、デンマーク、ドイツ、チェコに行きました。チェコの街並みは本当に綺麗で、絵本の中みたいでした。

みお:残りの留学生活でやりたいことはありますか?
真理菜さん:授業でしっかり成果を出すことはもちろんですが、NGOではもっと主体的に動いていきたいです。ワークショップなどにも関わっていきたいと思っています。
留学を迷っている人へ
みお:最後に、留学を迷っている人や、海外に一歩踏み出したい人にメッセージをお願いします。
真理菜さん:地方にいるからとか、お金がないからといって、留学は無理だと思いすぎないでほしいです。私自身もそう思っていましたが、制度や機会を知ることで可能性が広がりました。それから、留学はアメリカやイギリスだけではなくて、東欧もとても面白いということを伝えたいです。

真理菜さんのインタビューの中で印象的だったのは、自身の経験から生まれた問いを出発点にしながらも、それを個人的な問題にとどめず、社会の構造として捉え直そうとしている姿でした。相対的貧困という目に見えにくいテーマに対して、ポーランドでの学びやNGOでの実践を通して具体的な手触りを持って理解しようとしている様子が強く伝わってきました。
私自身も地方出身者であったため、インタビューの中でも共感することばかり。奨学金制度が充実してきたとはいえ、まだまだ留学できることは限られた人の選択肢として捉えられているのが現実だと感じています。だからこそ、真理菜さんが語ってくれたように、制度に出会い、自分の意思でその機会を掴みにいくことの大切さが強く印象に残りました。
ポズナンという日本人がほとんどいない環境での学びでありながら、その視点は確かに日本社会へとつながっている。地方出身であることや経済的な制約を越えて、自分の問いを広げていくその姿は、これから留学を考える人にとっても、一つの道しるべになるのではないかと感じました。
ライタープロフィール
みお

富山大学人間発達科学部4年。2024年に銘傳大学(台湾)、2025年にノルウェー北極大学への留学を経験。現在チャレンジャー応援メディアDEKIRU!で学生ライターとして活動するほか、自身のInstagramやnoteで留学体験を発信している。