50代でポエトリーリーディングに挑戦し、優勝を重ねている詩人、アステリズムさんにインタビュー!

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言の葉を紡ぎし者たち

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50代でポエトリーリーディングに挑戦し、優勝を重ねている詩人、アステリズムさんにインタビュー!

イントロダクション

HAPPY! 三度の飯より「本」と「ことば」が大好き、いっちーです!
……と、この挨拶をイントロダクションで言い続けて、早一年。
ついに「ことば」をテーマにした連載を立ち上げました!

その名も【言の葉を紡ぎし者たち】
本連載もどうぞよろしくお願いいたします。

~言の葉を紡ぎし者たちとは~

本という形にはなっていなくても、言葉を使った表現は、私たちの身近にたくさんあります。
詩、俳句、短歌、朗読、ラジオ、パフォーマンスなどなど……。
本連載では、本以外のかたちで言の葉を紡ぎ、挑戦を続けている人たちを取材していきます。

今回取材するのは、アステリズムさん!
なんと、50代でポエトリーリーディングをはじめ、数々の大会で優勝されているすごい方なんです。
50代で挑戦しようと思った理由や、作品、そして詩そのものへの思いについて、じっくりとうかがっていきます。

それじゃ~、いってみよう!

自己紹介~私は言葉を○○し者です~

アステリズムさんは言葉でどんなことをされている方ですか?

はい。私は“言葉を受けとり、かたる者”です。

 

その心は……?

私は自分が話したい言葉や、心の中から「これを伝えたい」というものがあって活動をしているわけではありません。
どちらかといいうと、自分のものではない言葉を受け取って、語り、伝えることがしたいんです。

常に、だれかの言葉を借りること。引用すること。
それが、自分の中では大きなテーマにもなっています。
それを一言でまとめると、“言葉を受けとり、かたる者”になるかなと思います。

アステリズムさんプロフィール

スポークンワードアーティスト、詩人。1973年生まれ。新潟県出身、京都府在住。
50歳を過ぎてからパフォーマンス活動に本格的に取り組み始める。ソロでのパフォーマンスだけでなく、369beats、宮本隆、CLARIらミュージシャンとの共演も多数。

【受賞歴】
声だけ SAN-DAI 2024 5th 優勝。
ニューカマースラム 2025 SPIRIT 鬼門編優勝。
KSJ 名古屋大会 2025 鈴木陽ーれもん賞受賞。
ポエトリー・ナイトフライト 2025 年 9 月、2026 年 1 月優勝。

【作品】
折本シリーズ『キョウソウテキあいうえお』
CD『虚構のボイジャー』など。
アートラボ GAKUSAI-Lab. 文化継承担当。

(1) 言葉との出会いと向き合い方

1――“アステリズム”というペンネームの由来を教えてください。

わたしはクラシック音楽が好きで、そのなかでも、日本の現代音楽家である武満徹さんが好きなんですが、彼の曲の中に『アステリズム』という作品があるんですよね。それがとても好きで、そこから名前をいただきました。

この “アステリズム”は天体用語で、英語にすると“星群”という意味になります。昔から宇宙や星の話が好きなので、そういう意味でも気に入っている名前になっています。

音楽と星……。
言葉の響きだけで、すでに詩情を感じさせるペンネームです。

はは、たしかにそうかもしれません。でも実は、ステージネームにする前から、mixiとかでもこのハンドルネームを使っていたんですよ。

2――どのような幼少期を過ごされていましたか?

音楽と言葉に囲まれた家で育ちました。
9歳離れた兄がいるんですが、兄はフルーティストを目指していたんです。なので、家の中には兄の演奏や、兄が練習のために聴いている音楽がよく流れていましたね。

家の中が音楽であふれていたんですね。
では、「言葉に囲まれていた」というのは?

母が本好きだったからですね。学生時代は“文学少女”と呼ばれるほどだったそうです。
私は兄とは年が離れていましたし、父はアートというものにあまり興味がない人だったというのもあって、家族の中では母と過ごす時間がいちばん長かったんですよね。

母はよく読み聞かせをしてくれたり、おしゃべりをしたりしてくれて、とにかく、たくさん話をしてくれました。
それが言葉に自然に親しむようになった理由の一つだと思います。

3――幼少期や学生時代に触れ、今の活動に影響を受けたもの・出来事があれば教えてください。

音楽が好きになっていったのは、先ほどお話した家での兄や母の影響が強いです。

それ以外で言うと小学校の高学年の頃に、さだまさしにハマったことが大きいと思います。
さだまさしは、クラシックにも文学にも造詣が深い方ということもあり、自分と近しいところがあって惹かれたのだと思います。彼が好きなアーティストを聴いたり、彼が影響を受けたものに触れたりしていましたね。

そうやって、好きなものの範囲を増やしていけたのは、自分の中ではすごく大きいです。

Q4――「言葉」というものを意識するようになった、きっかけはありますか?

きっかけはたくさんあります。まずひとつは、やっぱり さだまさし ですね。
それ以外だと 筒井康隆 です。

中学生の頃に兄の部屋で、筒井康隆の『笑うな』というショートショート作品を読んだんですが、こんなわけのわからないこと、突飛なことが、面白おかしく描かれた小説が世の中にあるんだ! 言葉って、こんなことができるんだ!と思えて、ぐっと幅が広がったように思います

小さいころから言葉に囲まれていたとおっしゃっていたので、意識するようになったきっかけが中学生だったというのは、少し意外です。

本自体は読んでいたんですが、実は小さいころから文学によく触れていた、というわけではないんです。
むしろ小学校3年生くらいまでは、フィクションがあまり好きではなくて、どちらかというと学者さんの伝記や科学が好きで、科学者になりたかったくらいなんですよ。

名前のきっかけでも星の話をされていましたが、星が好きなのは子どもの頃からだったんですね。

そうですね。ほかにも、小学校4年生ぐらいにH・G・ウェルズ の『宇宙戦争』にハマったのをきっかけに、児童向けに書かれたSF作品をよく読むようになりました。
そこから、フィクションや虚構の面白さにハマっていきましたね。

Q5――これまでの人生の中で、「言葉の力」を強く感じた経験はありますか?

言葉の力を感じた、というエピソードとは少し違う回答になるかもしれませんが、
大学時代に出演した演奏会で、終演後にお客様からいただいたアンケートの中にあった言葉が、『言葉の力』というものの輪郭を、はっきりさせてくれたきっかけだったので、その話をさせてください。
そのときはクラシックの演奏会だったのですが、あえて久石譲の曲を弾いたんです。

え、久石譲って、むしろTHEクラシックの人!というイメージでした。

今では、あまり垣根もないとは思うのですが、当時は、いわゆる伝統的なクラシックとは違う、挑戦的なことをする、という感じでした。そういう意味で、久石譲はクラシック音楽というジャンルではどちらかというと異端みたいな空気感があったんです。

当時の私は学生らしく、とがっていたところもあったので、あえて久石譲の曲をやりました。
公演終了後にいただいたアンケート用紙の感想の中に、「事故で亡くなった兄が、映画 『風の谷のナウシカ』を観て泣いていたことを思い出しました」という言葉があったんです。
その体験から、言葉が単独で強い力を持つ、という感覚はあまりないなと思うようになりました。

むしろ、いろいろな要素や流れが重なったときに、はじめて言葉が力を持つ気がしていて。その人との関係性や、外側や背景、テキストという意味ではない文脈が大事だと思うようになりました。

それが、「これを伝えたい」という活動をしているわけではない、というところにつながってくるわけですね。

そうですね。これを伝えたい、というよりは、自分が発した言葉が、誰かの中の何かと結びついて、結果的に言葉が力を発揮するように仕向けている、というか。
偶然そうなるのを楽しんでいる、というのが近いかもしれません。

さきほどのお話を聞いていて、言葉がそれぞれの人の文脈と結びついて力を発するのって、感動のような良いものだけじゃなくて、ときどき怖いものでもあるのかなと感じました。
表現をしていて、そう感じる瞬間ってありますか?

言葉一つで人を沸かせてしまうようなパフォーマンスや、政治家の発言など、結果的に相手を掌握できてしまう言葉、そしてそこから生まれる熱狂に、怖さを感じていますね。
だから、言葉には力を持ってほしいとも思いますし、同時に、無力であってほしいとも思うんです。

人間が意思を持って利用してしまうことはあるけれど、言葉そのものは、できるだけあるがままであってほしい。
本来、それくらいの距離感が、言葉のあり方なんじゃないか、と思っています。

ご自身が、そういった伝え方にならないように意識されていることはありますか?

これは、とある人からの受け売りなんですが、私は「わからなさや、ややこしさを楽しむ」という感覚を、表現においてとても大事にしています。

というのも、私は言葉がわかりやすすぎることにも、どこか恐怖を感じていまして。
読み方や解釈が一通りしかない状態や、伝わりやすすぎることで、その方向に誰かを誘導しようとしている意思を感じたり、それ以外の解釈を許さない、あるいはそれ以外はおかしい、という空気が生まれてしまうような気がしているんです。
そういうところにも、怖さを感じます。

アステリズムさんが「何かを強く伝えたいから活動しているわけではない」ということがお話をうかがってよく伝わってきました。

Q6――今のご自身に影響を与えているものを教えてください。

大学生時代のとき影響を受けたのが、ピッチャー星野伸之の投球術です。
「速い球が投げられなくても、緩急をつけたピッチングをすれば三振が取れる」というところに美しさを感じました。

ピッチャーと詩人、あまり接点のないような気もするのですが、どういったところに影響を受けているのでしょう。

たしかに、ぱっと聞くだけだと接点がないように感じますよね。

これは私が学生時代にピアノをしていた頃の感覚と重なっているんです。
私は昔からピアノをやっていたわけではないので、ほかの人よりうまくできない、というコンプレックスがありました。柔らかな手つきで大きな音を出す、というのができないんです。
でも、演奏の流れのなかで緩急をつければ物理的に大きくない音でも強く印象付けられる、と気づいたんですよね。

「自分より技術があって上手い人はたくさんいるけど、そこで戦わなくても自分なりに戦えるものがある」という考え方は、50代でポエトリーリーディングを始めた今の私にも言えることです。

Q7――もし、むかしの自分に言葉をかけられるとしたら?

“大丈夫”ですね。
嫌なことや挫折は、これまでにもたくさんありましたし、今も、うまくいっていないことはたくさんあります。
何かを手放してしまったら、もう関われない、触れられないままになってしまうんじゃないか、と思うこともあるんですが、でも、また会えたり、別の形で活かされたりすることもある。
だから大丈夫だよ、って。
かつてのいろんなしんどかった時期の自分に、そう伝えたいです。

(2)言葉を作品にすること(書くこと)

幼少期から音楽と言葉に囲まれて育ち、さだまさしや筒井康隆、SF作品などとの出会いを通して、表現の幅を広げてきたアステリズムさん。
大学時代の演奏会で出会った一つの言葉をきっかけに、言葉は単独で力を持つものではなく、誰かの文脈や関係性と結びついたときに、はじめて作用するものだと感じるようになったといいます。

強く何かを伝えるよりも、受け取る側の中で偶然結びついていくことや、わからなさや余白を残す距離感を大切にしながら、言葉と向き合ってきました。

ここからは、それらの思いが作品とどのように結びついているのかを言葉を書くことを中心についてうかがっていきます。

Q8――最初に書いた作品について、きっかけや、当時のことを教えてください。

小学生の頃ですね。授業で短編の小説を書いたのが、最初だと思います。

どんな内容だったのでしょうか?

タイムリープもののSFです。
たしか、タイムマシンで未来に行くと、今の時代で問題視されている社会問題が、すべて解決されている世界だった……みたいな話だったと思います。
そういった作品を書こうと思ったきっかけは、その当時、ドラえもんや H・G・ウェルズ のSF作品にハマっていたからですね。

Q9――そこから、書くことをはじめ、今日まで続けられたのでしょうか?

実は、そういうわけでもないんです。あるとすれば、宿題で詩を書いていたとか、それくらいですね。

高校生のときに文芸同好会に入って、短編小説や詩を書いたりもしたんですけど、そこから文芸的な文章や物語を書く方面には進まず、音楽関連の趣味にのめり込んでいきました。
大学に行ってからは、書くといえば、もっぱら論文や研究結果、現地調査の取材レポートなどばかりで、フィクションは書かなくなりました。

Q10――本格的に書くようになったのは、いつ頃なのでしょうか?

2015年くらいからですね。
きっかけはラジオ投稿です。
ただ、それは文章をそのままテキストとして見せる形ではなくて、書いたものを自分で録音し、音声作品として投稿するという、少し変わった形式だったんです。
このあたりから、フィクションを描く面白さを再確認しましたし、声に出して読むということも始めたと思います。

ほかにも、2021年には短歌を始めて、2024年からはポエトリーリーディングにも取り組んでいます。
子どもの頃からずっと好きで書いていた、というわけではないんですが、今振り返ってみると、小説、研究レポート、短歌、詩と、言葉を書いていない時期はなかったな、と思います。

Q11――どのような作品を書くことが多いですか?

詩ですね。でも、正直に言うと、いわゆる“詩”という言い方とは少し違うな、と感じるところもあります。
たしかに本にすると詩集という名前はつくんでしょうが、最初から“言葉を書こう”と思って始めているわけではなくてですね。
どちらかというと、スタートは声を発することなんです。

声を発することがスタート、といいますと?

私は、詩を書くとき、自分が口にして面白い、楽しいと思える言葉かどうか。口が楽しいか、耳にして楽しいか、というところを大事にしています。
なので、文章を書いてそれを読む、というよりは、声に出したものを文字にして記録していく、という感覚のほうが近いですね。

Q12――作品を制作するときに、大事にしているものはありますか?

二つあります。
一つは、さきほどお話しした、自分が口にして面白い、楽しいと思える言葉かどうか。口が楽しいか、耳にして楽しいか、という点です。

もう一つは、言葉の力についての回答でもお話しした“わからなさや、ややこしさを楽しむこと”ですね。
作品にはどこか一つは引っかかるもの、読みや解釈を少し遅くさせる仕掛けを入れるようにしています。
そうやって、言葉の中に滞留が生まれる感覚が好きなんです。

Q13――「これは言葉にしない」と決めている基準はありますか?

これは使わないでおこう、と思っている言葉は、あまりないですね。
というのも、私は言葉を借り物だと思っていますし、私ごときが言葉を選ぶべきではない、と思っているからです。

それに、作品や技術によっては、使わないと思っていた言葉が、思いがけず効果を発するときもあります。
たとえば“愛してる”という言葉は、あまり使ってこなかったな、と思うんですが、逆に、その言葉を多用している作品もあって。
その作品にとって効果的な言葉であれば、選ぶ、という感じですね。

Q14――あえて書いてこなかったテーマ・ジャンルがあれば教えてください。

これはあります。“恋愛”ですね。
理由は二つあって、一つは、少しカッコつけた言い方をすると、“恋愛は表現するものではなく、体験するもの”だと思っているからです。なので、作品にしてこなかったんです。

もう一つは、作品や表現の中で、自分の話をしたり、自分の気持ちを語ったりすることに、あまり興味がないからですね。

もちろん、効果的であれば使いますし、まったく私情が入らないわけではありません。
ただ、恋愛に関しては、自分にはとくに語るほどのものがないと感じていて。
恋愛って、自分の気持ちを語る最たるものじゃないですか。
だから、意図的に避けているというか、これは自分が書くものではないな、と思っています。

ただの一度も恋愛について書いたことはないんですか?

そういうわけではないですね。
“愛”についてであれば、さきほど話した、“愛してる”という言葉を多用する場面で出てきますし、高校の文芸同好会では、失恋のショックから立ち直るために書いた恋愛の詩もあります。

ただ、多分今読み返したら気恥ずかしいと思うので、そういう意味では、まあちょっとした黒歴史かもしれません(笑)。

Q15――執筆時のルーティンや、無意識に続けているこだわりがあれば教えてください。

とくに決まったルーティンはないですね。
ただ、シャワーを浴びているときや、車を運転しているときに、変だなとか、面白いなと思うアイデアが浮かぶことは多いです。

共通しているのは、どちらも大きな声を出してもいい状況だ、ということかもしれません。
ルーティンというほどではないんですが、そういうときに新しいアイデアが生まれがちで。
そこで生まれたものをいったん大事にして、あとから、どう生かしていくかを考えるようにしています。

たとえば、『ゆうぐれの鉄塔売り』という作品も、車を運転しているときに鉄塔が目に入ったのがきっかけでした。

『ゆうぐれの鉄塔売り』あらすじ
ゆうぐれ時になると、「てっとおぉ」という声とともにどこからともなく「鉄塔売り」が現れる。人々は「鉄塔売り」から鉄塔を買い、夜にはそれぞれの家のちゃぶ台の上に広がる世界に、おもいおもいに鉄塔を立てていく。

ゆうぐれの鉄塔売り イメージ(ChatGPTにて生成)

豆腐売りみたいなテンションで、「鉄塔~」って言ってみたら、それがやけに面白く感じたのをきっかけに作品を作りました。
そういう感じで、作品が生まれることが多いですね。

Q16――書いている最中と、書き終えたあとで、気持ちに違いはありますか?

特にないですね。
というのも、“これで完成”という感覚があまりないんです。

もちろん、本にしたりするときには、一度“完成形”にはするんですが、それも作品ではあるけれど、完全にできたものではなくて、プレイしていくうちに変わっていくもの、という認識なんです。
なので、あくまで“いったんの完成”という感覚ですね。

次に予定していた質問が、完成した作品を手に取った瞬間の気持ちだったのですが、まだ完成していない、という認識だと、あまり達成感もないのでしょうか?

そうですね。達成感というよりはライブが始まる時間などの“締め切り”に間に合った、という安堵が一番大きいですね。

Q17――これから先、どのような作品を書いていきたいと考えていますか?

ずっと書いていきたいと思うのは、聞いた人が、ちょっと驚くようなもの。
「この人、何を言っとるんや?」と思われるような作品がいいですね。

あとは、わからないことや、ややこしさを大事にする、という姿勢は、これからも持ち続けていきたいですし、そのときに思いついたアイデアを軸にしながら、どんどん広げて形にしていきたいとも考えています。

(3)作品を表現にすること(人前・人に見せる形での表現)

Q18――現在、主にどのような形で表現をされていますか?

詩人、ポエトリーリーディング、スポークンワードとしては、テキストを読む形ですね。
自作の作品を読むこともありますし、誰かの作品を朗読することもあります。
いずれも、声での表現を用いています。
ソロで語ることもあれば、ミュージシャンの方と組んで、音楽にのせて語ることもあります。

Q19――その表現方法を選ばれたきっかけを教えてください。

最初のきっかけは、文化放送で鷲崎健さんという方がパーソナリティをつとめていたラジオ番組への音声ファイル投稿でした。
書いたものを声に出して読んで、それを送る、という形式ですね。

そこから、それをライブでやってみたらどうなるんだろう、と思うようになって。
生の場で、自分はどこまでできるんだろう、という興味もあって、試してみたのが始まりです。

Q20――いつ頃から、人前で表現するようになりましたか?

2024年の6月ですね。
はじめてオファーをいただいて、大阪の野田にあるMaga-Yuraというライブハウス で表現したのが、本格的に始動したきっかけでした。

それ以前にも、KOTOBA Slam Japan(KSJ)に出演したことはあったのですが、本格的に人前でやるようになったのは Maga-Yuraでのそのライブからだと思います。

さらに前だと、オンライン上での オープンマイク にも参加していました。
KSJ以降にも、gallery yolchaで毎月開催されているイベント「まちのひ朗読舎」でのオープンマイクに参加させてもらったり、そこで知ったMaga-Yuraでのオープンマイクイベント「ぽえゆら」に毎月のように行くようになったりして、そういったことがきっかけで、 Maga-Yura主催のイベントからのオファーにつながっていきました。

Q21――言葉か、それとも身体や声が先に動くことが多いのか、感覚的な順番はありますか。

どちらかというと、体や声が先ですね。
声、音声ありき、という感覚が強いです。

ただ、そうは言いつつも、書き言葉の面白さや、文字そのものの面白さも好きなので、作品のアイデアのスタート地点が、紙の上になることもあります。
どちらの瞬間も、逃さずにとらえたいと思っています。

Q22――声を使った表現の中で、苦手なものはありますか?

モノマネです。
嫌いというわけではなくて、自分にはできないという意味の苦手ですね。

先ほどお話ししたラジオ番組のコーナーで、出会った人や、嫌いな人のものまねをする、という投稿を見かけるたびに自分にはできないなって感じていました。
聞いた音声をモノマネしたり、聞いた声を再現したりするのが、どうも得意ではないんですよね。

それは自分の声であっても同じで、まったく同じように再現することはできません。
似た感じにはなるけれど、限りなく同じ、というところまではいかない。
そういう部分で、プロの朗読家や声優さんと比べてしまうこともあります。

でも、自分が面白いと思った感覚を、そのままパフォーマンスにすることはできる。
やりながら、こうしたほうが面白そうだな、と感じた方向に、少しずつ調整していく、という形で表現しています。

Q23――言葉が、身体や感情に影響していると感じることはありますか?

それは、いつも感じていますね。
声にすること、音声を体から出すこと。
それがまた、自分の耳に返ってくる、その往復の感覚も含めて、好きなんです。

私は自分の声が嫌いじゃないというのもあると思うのですが、
声を出して、それを聞いて、ということをやっていると元気になるので、ある種、療法に近いところもあるかもしれません。

Q24――ここまで言葉の“音”の話を中心にされていましたが、言葉の“意味”に引っぱられるようなことは、あまりないのでしょうか?

言葉の“意味”は好きなんですが、意味そのものに強く引っ張られることは、あまりありません。
なので、言葉の意味が直接、感情に影響する、という感覚は少ないです。

ある種の虚構として言葉を扱っている感覚があって、意味から影響を受けることは、あまりないように思いますね。

Q25――人からいただいた感想の中で、特に心に残っているものがあれば教えてください。

CLARIさんという、東京で活動されているパフォーマーの方からいただいた感想ですね。
「作品の背後にある知性を感じられて、そこに感動した」といった言葉をもらったことが、とても印象に残っています。

私はその感想をもらうまで、自分が書いているものが、本当に詩なのか、ポエジーや詩情をきちんと作れているのか、正直なところ自信がなくて。どこかに詩や詩情に対する苦手意識がありました。

でも、知識や知性を頼りに書き上げてきたものでも、人の心を動かすことができて、詩情を感じてもらえるんだ、と気づけました。そのことが、すごく大きかったですね。

まさに、星野の投球術でアステリズムさんが感じられた、
「速い球を投げることだけがピッチャーじゃない。やり方はいろいろある」という感覚と近いですね。

たしかにそうですね。
ほかにも印象的だった感想で、「アステリズムさんは人類だ」と言われたことがありました。

アステリズムさんは人類!?

はい。もちろん私は人間なのですが、そういう意味ではなくて、私がとある作品において、人類の愚行も、技術や社会の進歩も、どちらも含めて、大きな叙事詩のように読み込みたい、という思いで書いていたので、それが伝わって出た感想だと思います。

そうした解釈に出会うことで、自分自身も、そういうものを描いていきたいんだ、という気持ちを改めて自覚した部分もあるので印象に残っていますね。

Q26――ご自身の想定とは違う解釈や、批判的な受け取り方をされたとき、どのように感じますか?

想定外の解釈でも、批判でも、無視されるよりは、良いと思っています。
というのも、そこには何かしらが“動いた”という事実があるからです。
受け取ってもらえた、反応が返ってきた、ということ自体がまずうれしいですし、
むしろ、肯定だけよりも、何通りもの解釈が生まれたということに価値を感じています。

(4)言葉の挑戦者として

Q27――これまでで、もっとも勇気が必要だった「言葉」は何でしたか?

テーマとまでは言わないんですが、震災や地震にまつわることは、作品の中で自然と書いてしまうことが多いですね。
これについて書いているときは、自分の身体や生命が欠けてもいい、という感覚がどこかにあって、寿命を差し出すような気持ちで書いている部分があります。

というのも、1995年の阪神・淡路大震災は、京都にいながら神戸の地震を感じましたし、3.11のときも、余震が続く中で、約一か月後に仕事で東北へ行き、津波にあった場所での現地調査などを行いました。

被災者ではありませんが、その時代を現場で目の当たりにしてきた、という感覚があるからだと思います。

Q28――言葉に向き合うなかで、迷いや立ち止まった時期はありますか?

今のところは、まだそういう時期はないですね。
詩人としては、まだ始めたてなので、純粋に楽しい、という感覚のほうが強いです。

今の自分のパフォーマンスを、面白がってくれる人がいる、ということ自体が励みになっています。

Q29――いま、一番怖い言葉は何ですか?

“みんな”ですね。これは昔から怖い言葉です。
“みんな”でくくられたときに、無視されてしまう個々人のそれぞれのものがある。
それが消えてしまうことに、怖さを感じます。

日常的には使いますし、忌避しているわけではありません。
ただ、作品の中にはあまり出てこないですね。
“人”や“人々”という言い方をすることのほうが多いです。

また、これは言葉ではないのですが、怖いなと思うことに「自分はこの世に望まれずにやってきた」という感覚があります。

家族から愛されて育ってきたという自覚はあるんですが、それとは別に「望まれていないのだから、自分は何かをしていないと生きてはいけない」という思いがずっとあるんです。
でも、だからこそ、ライブやこういった取材のオファーをもらえると、うれしく感じるんだと思います。

この感覚は最近少し軽くなっていて、それは妻から「この世界にフィールドワークをしに来ているんだと思えばいいんじゃない?」と言われたのがきっかけで、だいぶ楽になりましたね。

Q30――これからやってみたい言語表現はありますか?

全く別ジャンルのものをやりたい、という気持ちは、今のところあまりないですね。
ただ、言葉を使った表現に関しては、まだやっていないことは、全部やってみたいと思っています。

たとえば、辻説法のようなことを、街でいきなりやってみて、どれくらいの人に興味を持ってもらえるのか、とかには興味がありますし。
腹話術師が今、日本に10人くらいしかいないと聞いて、それをやってみたいと思ったこともあります。

(5)特定の作品について

『虚構のボイジャー』

こちらは、アステリズムさんがはじめてライブのオファーをいただいたイベントにて、30分の持ち時間のなかで読んだテキストに加筆修正をして、2025年の10月に自主制作のCDとしてまとめたものです。

ベーシストでサウンドクリエイターの369beatsさんが即興的に作り出した音楽に合わせて、アステリズムさんがテキストを読んでいます。

Q31――こちらの作品を制作された経緯を教えてください。

私は昔から星が好きなのですが、なかでも1977年に打ち上げられた惑星探査機、特にボイジャー1号に強い思い入れがありました。
この作品は、自分自身が惑星探査機になって、地球を離れていきながら、自身が打ち上げられてから地球で起こったさまざまな情報を受け取っていく、という構成になっています。

地球から遠ざかっていくにもかかわらず、天変地異や災害、戦争といった地球の情報を受信し続けている、という構成で描けるものがあるのではないかと思いました。

もちろん本来、惑星探査機というものは、地球からの命令信号は受け取りますが、ニュースのような情報を受け取る存在ではありません。
ですが、これはあくまでフィクション、虚構です。
だからこそ、“虚構のボイジャー”というわけですね。

Q32――今作では、どんなことに挑戦されたのですか?

人前でやることを意識して、はじめて作った作品だった、という点で大きな挑戦でした。
具体的には、30分のパフォーマンスを成立させられるか、そして人に飽きずに聞いてもらえるか、というところですね。

結果的には、音楽の力にも助けられて、手応えを感じることができました。

Q33――今作で、達成されなかったことや、見えてきた課題などはありますか?

達成されなかったことや、課題は特にありません。
というのも、作品を作り上げたことで、自分がやってみたいことや、語りたいこと、
さらには、こうしたら面白いのではないか、という手法がいくつも見えてきたからです。

むしろこの作品は、自分の視野を広げてくれましたし、やりたいことを増やしてくれました。
あとは、人前でやることに自信もつきましたね。

(6)次回作・これからについて・メッセージ

Q34――「DEKIRU!」や「挑戦」「チャレンジ」に、どんなイメージがありますか?

準備さえきちんとしていれば、ちゃんと成功につながるもの、というイメージがありますね。
自分はそれがあまり得意ではないので、そういう姿勢、できる人は素直に尊敬しています。

自分の場合は、即興でやって、なんとか形にしてしまうところがあって。
だから、真の意味で“できる”ようになっているものは、まだ少ないのかもしれません。
どこかで、できるふりをしているだけなんじゃないか、と思うこともあります。

Q35――アステリズムさんにとって「ことば」とは、どのような存在でしょうか?

“借り物”ですね。これに尽きます。

私が好きな短歌に、
“宛先も差出人もわからない叫びをひとつ預かっている”
という一首があります。

昨年惜しまれつつもお亡くなりになられた歌人・奥田亡羊さんの短歌で、言葉を扱うときの感覚として、私の中ではいちばん近くて、これ以上にしっくりくるもの、コアとなるものはありません。

Q36――これから挑戦したい人へ、メッセージをお願いします。

まずは、やってみよう、ですね。

自分の経験上ですが、詩人やポエトリーリーディングの活動もやってみたら、思っていた以上に楽しかったですから。

もちろん、いろいろな文脈や運もあります。
私の場合は、ラジオに音声を送ってみたことが、物事が動き出すきっかけになりました。

とりあえずやってみること。
締め切りを作ること。
そして、誰かに見せること。
この三つは、とても大事だと思っています。

年齢も関係ありません。
なんていったって私は詩人として活動を始めたのが50歳を過ぎてからですからね。

(7)DEKIRU! をテーマに作品を作っていただきました!

おしらせ 宣伝物

一冊に一作品をおさめる折本シリーズの1作目『キョウソウテキあいうえお』が、東京・水道橋の「機械書房」さま、およびBOOTH「リズム家」にて、また、先ほども話題にしましたCD『虚構のボイジャー』が、尼崎の「KOH-GEN RECORDS」さま、およびBOOTH「リズム家」にて販売中です。

4月4日には、高知市の「蛸蔵」にて、私とCLARIさんの共催イベント「SEQUENTIA vol.03」を開催し、高知県で活躍される詩人やミュージシャンの方にご出演いただきます、私も演者のひとりとして出演します。

4月10日には、名古屋市の「御器所なんや」にて開催の「KOTOBA Showcase Night」に369beatsさんとともに出演いたします。

4月23日は京都市の「京都二条 nano」で開催の「Word Parachutes」に出演いたします。ぜひ観に来てください。

各種告知は、私のXおよびInstagramのアカウントで随時おこなっていますので、そちらをフォローいただけると幸いです。

https://x.com/rn_asterism
https://www.instagram.com/rn_asterism/

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