こんにちは!DEKIRU!ライターのみおです。
今回から新企画「留学対話」をスタートします。
世界各地で、それぞれの問いやテーマを抱えながら学ぶ若者たち。そのリアルな声を記録していく連載です。
記念すべき第1回は、台湾・台北芸術大学で舞踊を学ぶ平山茜(あかね)さん。
日本ではお茶の水女子大学大学院に在籍し、振付と創作研究に取り組む彼女は、台湾で「伝統と現代のダンス」というテーマを探究しています。
伝統と現代のあいだを行き来しながら踊る、彼女の現在地を聞きました。
プロフィール
平山茜さん

お茶の水女子大学大学院 修士課程1年。
現在、台北芸術大学 修士課程に交換留学制度で留学中。
趣味は踊ること全般と茶道。
バレエとモダンダンスを幼少期から高校まで続け、茶道は高校1年生の部活動をきっかけに始めた。
ダンスの発表会など、作品創作のご依頼はInstagramのDMで受付中!

振り付けという創作の面白さ
みお:振り付けに興味を持ったきっかけは何だったんですか?
茜さん:1年生のとき、複数人で作品を創作する授業があって、半ば強制的に振り付けに関わることになったのが最初で、本当に面白いと思えたのは2年生のときでした。
2年生の時、岡本太郎をテーマに振り付けを作る機会があったんですが、良い作品をつくるために、岡本太郎の本を読んで、美術館や展覧会にも何度も足を運びました。思想や芸術観を理解した上で、それをどう身体表現に落とし込むかを考える過程が本当に楽しくて。
どんな身体の使い方が合うのか、どんな音楽がいいのか踊り手一人ひとりにどんな振りが合うのかを考えるうちに、振り付けは感覚だけじゃなくて、リサーチや知識とも深くつながっていると気づきました。

みお:そうなんですか、面白い! 振り付けって裏付けがあるクリエイティブな活動なんですね。台湾留学のテーマも振り付けに関連しているんですよね?
茜さん:そうですね。伝統と現代を掛け合わせたダンスシーンを研究していて、修士論文のテーマでもあるんです。現在留学中の台北芸術大学では、モダンダンスだけでなく、中国由来の伝統舞踊や太極導引、そして原住民の舞踊など、歴史的な身体文化も体系的に学べています。
台湾の授業で感じたこと
みお:印象的だった授業はありますか?
茜さん:原住民についての授業ですね。舞踊はもちろん、衣服の意味や文化背景、習慣についても学ぶ機会があって、実際に現地のお祭りに参加するフィールドワークにも行きました。原住民のお祭りって厳粛なものもあれば、フェスのようなオープンな雰囲気のものもあるのですが、担当する先生たちが実際に部族の方たちと交渉して、参加できるお祭りを選び、慎重に調整してくださいました。その姿勢自体がすごいと感じましたし、実際に参加してみると、その調整に見られるように、ポップさの度合いというか、同じ「伝統」でも、部族や地域によってバランスが異なることを知る機会になりました。

みお:まさに伝統と現代のグラデーションを体験されたんですね。
茜さん:本当にそうですね。どこまで外部を受け入れるか、どこまで変化を許すかも、それぞれの部族の判断で決まっていると感じました。
台湾を選んだ理由
みお:舞踊を学ぶ留学先として、なぜ台湾を選ばれたのですか?
茜さん:最初は単純に台湾が好きだったからです。高校生のとき家族旅行で来て、食べ物が本当に美味しさに感動しました。特にダンピン(小麦粉の生地に、たまごやハム、チーズ、ウィンナーなどを巻く、定番の朝ごはん料理)が好き!(笑)
また、東アジアという文化的な距離感も理由の一つでした。精神的に通じる部分があるのではないかと思ったんです。そしてもう一つ大きいのは、茶道とダンスを掛け合わせた作品をつくりたいという目標です。台湾には古いものを再解釈し、現代的にリノベーションする文化がある。そのマインドを知りたいと思いました。
みお:大学の時間割は、日本とあまり変わらないんでしょうか? どのようなスケジュールで過ごされているのか知りたいです。
茜さん:授業は週5日、午前から夕方まであります。さらに期末公演のための練習や、他学生の作品への出演、ワークショップ参加などもあるというようなスケジュールです。

茜さん:寮が大学内にあり、費用は月1万5千円ほど。東京より圧倒的に安いので助かっています。キッチンはなく、大学内の食堂や朝ごはん屋、コンビニ、Uber Eatsを活用しています。少し辺鄙な立地なので、移動にタクシーを利用することもあります。

茶道を通して日本を外から見る
みお:台湾に住んでみて、日本との違いって感じますか?
茜さん:中国からの留学生と話していたときに、台湾の「どんなものでも取り入れる姿勢」について話題になったことがあります。台湾の文化って、良くも悪くも外のものをどんどん吸収していくんです。それを聞いたとき、日本は逆に混ぜずに守ろうとする文化が強いんだと気づきました。茶道でも家元制度の中で形式を守る意識が強いので、台湾に来たことで日本の「守る力」の強さを再認識したかたちです。どちらが良いという話ではなく、異なる考え方もあるんだなと勉強になりました。
みお:茜さんは茶道が趣味ですよね。台湾で茶道を披露する機会はありましたか?
茜さん:先生の家でお茶を点てたこともあり、お茶を通して距離が一気に縮まる感覚がありました。台湾にもお茶文化があるので、「茶道」という言葉がすぐ通じます。言語は違いますが、お茶は表現であり、コミュニケーションでもあるな感じました。今後は台湾でお茶に関するワークショップもやってみたいと思っています。

みお:留学生活は、踊りとお茶の二軸なんですね。留学生活は残り半年ですが、これからの活動の抱負を教えてください。
茜さん:卒業論文で「茶道のパフォーマンス性」について書いているんですが、それを創作でも表現したいと思っています。茶道には、身体所作で時間を共有し、道具を回し、場をともにつくる構造があるので、その構造をダンスに応用したいと思っています。トライアルとして前期の期末作品でやってみたのですが、場所が広すぎて、参加の仕組みを十分に作れなかったんです。この反省を活かして、観客も一緒に時間を進めていく作品にしたいです。

茜さん:あとはやっぱり言語面で成長したいですね。中国語や英語だと、自分が思っていることの5パーセントくらいしか話せなくて。その悔しさも創作として昇華していきたいです。


茜さんのインタビューの中で印象的だったのは、理論に裏打ちされた創作への確かな手応えを感じながらも、実践のなかで自身の直感を何度も問い直している姿でした。茜さんは台湾留学の中で、原住民文化や茶道の所作の分析の中で知識や文脈を積み重ね、創作を理論化していく一方で、それを舞台の上で試し、うまくいかなければまた解体するという過程を繰り返し挑戦しています。
また、常に柔らかな表情でインタビューに答えていて、言語の壁がありながらもクラスメイトとすぐに打ち解けられる協調性も、彼女の創作活動の強みです。
伝統と現代のあいだで学び、自分なりの接点を探すという営みは、まさに留学という環境の中だからこそ可能になっていると感じました。
ライタープロフィール
みお

富山大学人間発達科学部4年。2024年に銘傳大学(台湾)、2025年にノルウェー北極大学への留学を経験。現在チャレンジャー応援メディアDEKIRU!で学生ライターとして活動するほか、自身のInstagramやnoteで留学体験を発信している。