イントロダクション
みなさんは、盲導犬と聞いて、どんな姿を思い浮かべるでしょうか。
目の不自由な方のそばで静かに歩く姿や、街中で見かけたことのある黄色いハーネスを身につけた姿を思い出す方も多いかもしれません。
では、その盲導犬が訓練に入る前、まだ「ただの子犬」だった時間を、誰と、どんなふうに過ごしているのかはご存知でしょうか。
将来、盲導犬になる可能性のある子犬を家庭に迎え入れ、約1年間、一緒に暮らすボランティア――それが「パピーウォーカー」です。
盲導犬としての役割を学ぶ前に、人と暮らすこと、社会の中で過ごすことを教える大切な時間を担っています。
今回お話をうかがったのは、パピーウォーカーとしてバルムちゃんと暮らしてきた大岡さん。
一緒に過ごす日々のなかで感じた喜びや不安、そして、もうすぐ訪れる“別れ”への思いをうかがいました。
バルムちゃんプロフィール

2026年1月に盲導犬総合訓練センターに入学予定。
出会い
今回は取材にご協力いただき、ありがとうございます。
よろしくお願いいたします。

よろしくお願いいたします。
まずはパピーウォーカーになろうと思ったきっかけを教えてください。
定年を迎えて少し時間に余裕ができたので、犬を飼いたいと思うようになりました。ただ、年齢のことを考えると、これから新しく犬を迎えて、最後まで面倒を見られるだろうかという不安もあって。もし一緒に暮らせたとしても、犬の老後の世話まできちんとできるのか、どこかであきらめている自分もいました。
それでも、家族みんなが犬好きで、やっぱり犬と暮らしたいという気持ちは消えなかったんです。もともとパピーウォーカーという活動自体は知っていて、以前から興味もありました。そこで、これなら自分たちにもできるかもしれないと思い、パピーウォーカーになることを決めました。
犬が好きだからこそ、ちゃんと飼えるかどうかを思案されて、パピーウォーカーを決断されたんですね。
今回の子は、何頭目のパピーになるのでしょうか?
実は、初めてなんです。最初は不安でしたけど、なにかあったときでも盲導犬協会の人に相談できるので、ありがたいです。
最初にこの子をお出迎えしたときは、どんな気持ちでしたか?
まず思ったのは、すごく可愛い!ということでした。ただ、その一方で、不安や心配な気持ちも同時にありましたね。
どういうところに不安や心配があったのでしょうか?
ちゃんとしつけができるかどうか、という点です。盲導犬協会の方との面会で、「この子はペットではないので、甘やかしてはいけません」と言われていて。これから盲導犬になるかもしれない犬ですから、もちろん当たり前のことなんですが……。
あまりに可愛くて、ついかわいがりすぎてしまいそうで、そのルールを自分たちがきちんと守れるのか、正直少し不安もありましたね。
一緒に過ごす日々
バルムちゃんはどんな性格の子だなと感じますか?

人が大好きでフレンドリーな子です。誰にでも気さくに近づいていきますし、人見知りしないんです。
でも、かまってちゃんな一面もあります。
かまってちゃんな一面とは?
この子はひとりが苦手で、留守番が大嫌いなんです。私が出かける準備をしていると、悲しそうに鳴くんですよね。
ペットの犬だったら、出かける前に相手をしてあげると思います。でも、この子は盲導犬を目指しているので、そこは心をぐっと鬼にしています。
というのも、その場で相手をしてしまうと、“鳴いたら出かけるのをやめてくれる”と覚えてしまうからです。
あえて出かけるふりをして、鳴かなくなって少し時間をおいてから戻り、ほめてあげるようにしています。そうやって少しずつ留守番の時間を長くしているのですが……やるたびに心が痛みますね。
それはつらいですね……。
はい。でも、訓練がはじまってから苦労するのはバルムなので、ここで甘やかしてはいけないと思っています。
バルムちゃんと一緒に暮らしていて、印象に残っている出来事はありますか?
毎日、印象に残ることばかりです。気づけばスマホの中は、バルムの写真でいっぱいになっていました。
子犬の頃は、甘えてくる姿を見て「かわいいな」と思っていたのですが、最近は体も大きくなり、思春期に入ったのか、ある程度甘えると、すぐにどこかへ行ってしまうようになりました。
それを見て、「ああ、大人になってきたんだな」と感じましたね。
ちょっとさみしい気持ちもありますが、大人になっていく様子がたくましくも感じられますね。
ほかにも、バルムちゃんの成長を感じる瞬間はありますか?
人間の言葉を、だんだん理解するようになってきていると感じますね。
普段から人間の会話をよく聞いているみたいで、自分に関係する言葉には、ちゃんと反応するんです。たとえば「ごはん」という言葉には、すぐに反応しますしね。
バルムが吠えたときに「小さい声にしなさい」と言うと、本当に声が小さくなったこともあります。
そういう姿を見ると、ちゃんと人の言葉を聞いて、理解しようとしているんだなと感じます。
育てながら感じたこと
バルムちゃんを育てるときに、大変だったことや気をつけていることを教えてください。

とにかく、はしゃぐ子なので、けがをしないように気をつけています。一度、家の階段を3段ほど落ちてしまったことがあって……。
2階に上がるとき、ついてこようとしたので、階段の途中で「ストップ」と言ったんです。そしたら、その拍子にバランスを崩して落ちてしまって。
それ以来、階段には近づけさせないようにしています。
預かっている犬ですし、盲導犬になるかもしれない大切な子なので、絶対にけがはさせてはいけないと思っています。
お話をうかがっていると、パピーウォーカーとしての責任の大きさを感じます。
その一方で、大変なことだけでなく、バルムちゃんと暮らす中で救われたり、うれしくなったりする瞬間もあるのかなと思いました。
「バルムちゃんがいてよかった」と感じた瞬間を教えてください。
特定の瞬間があるというよりは、毎日そう感じています。
バルムが来てから、家族の会話が自然と増えて、気づけば話題の中心はいつもこの子になりました。
さきほど大変なことを聞かれましたが、そう感じたことはあまりありません。不安や心配事があっても、盲導犬協会の方がすぐに相談に乗ってくださいますし、ひとりで抱え込まずにいられるんです。
それに、バルムは“何かをしてくれる存在”というより、ただそこにいるだけで、家族みんなの気持ちをやわらかくしてくれる存在です。
バルムちゃんはもうすぐ大岡さんのもとを離れ盲導犬としての訓練がはじまっていきます。
そのことについて、どんな思いがありますか。
正直、さみしさがないと言えば嘘になります。でも、それ以上に、この子がこれから先、どんな道を歩いていくのかを思うと、ちゃんと前を向きたい気持ちのほうが大きいです。
盲導犬になれるかどうかは、私たちが決められることではありません。大切なのは、この子にとって幸せな場所や役割が見つかること。
バルムがバルムらしく生きられる道に出会ってくれたら、それでいいなと思っています。
未来への願い
最後にパピーウォーカーをやってみたいと考えている人にメッセージをお願いします。

不安は、あまり感じなくて大丈夫だと思います。盲導犬協会の方の後押しやフォローが本当にしっかりしているので、時間に余裕があって、「やってみたい」と思ったら、ぜひ挑戦してみてほしいですね。
パピーと過ごす時間はとても楽しいですよ。
ただし、仕事をしながらの“片手間”でできるものではありません。ペットとは違うので、長時間の留守番が続く生活は向いていないと思います。できるだけ一緒に過ごしてあげられる環境が大切です。
初めての方には、雌犬がおすすめだと思います。体も少し小さく、引く力も比較的おだやかなので、扱いやすいんです。実際、協会の方も、初めての場合は雌犬を勧めてくださいます。
それでも、雌犬でも引っ張る力は想像以上なので、雄犬はもっと大変だと思いますね。
私自身、また2頭目を預かる機会があればやってみたいと思っています。でも、やっぱり自分の年齢のこともあるので雌犬がいいですね。
取材協力してくださった中部盲導犬協会について
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