イントロダクション
HAPPY! 三度の飯より「本」と「ことば」が大好き、いっちーです!
今回取材させていただいたのは、京都芸術大学 こども芸術学科に通われている“はる”さん!
学祭にお邪魔したとき、はるさんの作品に衝撃を受けた私は、その場で取材を依頼してしまいました!
急なことにもかかわらず、ご快諾いただけてよかった~!
それじゃ~いってみよ~✨
はるさんプロフィール
京都芸術大学 こども芸術学科 3回生(取材時点)

幼少期~芸術表現との出会い
まずははるさんの幼少期について聞かせてください!
やはりこども芸術学科に通われているということは今の活動ともルーツがあるのではないでしょうか。
外や体育館で遊んだり、どぶ川をジャンプで飛び越えたり、体を動かしたりするのがとにかく好きでしたね。とても活発なこどもだったと思います。

活発な幼少期! そこから芸術の道にすすむことになるのが少し意外です! もしかして小さい頃からものづくりなどもされていたのでしょうか。
はい。家の中に段ボールで家を作ったり、新聞紙を足に巻いて靴にしてみたり、ビニール袋で服を作ったり、こどもらしい工作をよくしていましたし、絵も描いていましたね。
小学校4年生のときに柔道の巴投げの絵を描いて褒められたのを覚えています。
褒められるほどの素敵な絵だったんですね!
幼少期のものづくり体験で今とつながっているな、と感じる部分はありますか?
やっぱり、作り終わった後の達成感ですね。今もクセになっていて、それを追い求めて作っているところはあります。
大学で学んだこと・感じたこと
ここまでは幼少期のことをお伺いしました。
ここからは大学時代のお話をうかがいます。
まず、“京都芸術大学 こども芸術学科”を選んだ理由を教えてください。
理由は二つあります。
まず、“こどもの面倒を見るのが好きだから”です。
幼稚園の頃から柔道をやっていたんですが、うちの道場が「年下の子の面倒を見れてこそ武道」という理念があって、上の中学高校生からよくかわいがってもらっていたんです。
自分も年齢があがるにつれて、年下の面倒を見るようになったんですけど、そこでこどもの面倒を見るのが好きだと気づきました。

“年下の面倒を見れてこそ”という精神、とても素敵ですね。
もう一つの理由はどういったものなのでしょう。
もう一つは私が高校生の美術学科に通っていたからです。ですのでもちろん芸大の進路も視野に入れていました。
でも、こども芸術学科を見つけてくれたのは親だったんです。
こどもが好きというのと美術が好きなのもあって、私に合っているんじゃないかってパンフレットを持ってきてくれて、はずかしながら、そこで初めてこども芸術学科の存在を知りました。
美術学科の高校に通われていたんですね!
小学校のときから絵やものづくり自体は好きだったんですが、そのときは正直、芸術がどうこうというよりはただ好きでやっているだけでした。
美術学科のある高校に通おうと思ったきっかけは中学校のときです。
柔道をやりたかったので、みんなが行くのとは違う中学校へ進学したんです。
でも、そこではすでに同じ小学校から進学した子のグループが出来上がっていたのでうまくなじめなくて、友だちもできなかったんですよね。
そうなると自然と空き時間が多くなるじゃないですか。私はその時間でよく漫画やアニメを観ていたんです。そのうち自分も書いてみたいと思うようになりました。
当時は、どんな作品を描かれていたんですか?
最初は好きなアニメの模写から始めました。特に『化物語』っていうアニメが大好きで、その模写をたくさんしていましたね。
模写をしているうちに自分のオリジナルも描きたいと思って描くようになって、そこから美術学科への進学を考えるようになったんです。
といってもまだこのころは芸術作品というよりは自分の好きなものをただ描いていたという感じで、実際に芸術を意識するようになったのは、美術学科に入ってからです。
授業で昔の絵画を見たり美術館に行く機会が増えて、芸術作品に触れているうちに、「こういうのもいいな」と思ったんですよね。

美術学科のある高校を経て、現在はこども芸術に入って頑張られているはるさん。
こども芸術学科の授業で印象に残っている授業や体験はありますか?
保育の実習の授業で、こどもたちから「先生」と呼ばれた瞬間が、とても印象に残っています。
私としてはただ“授業の一環”として行っただけなんですけど、こどもたちにとっては“園にいる大人=先生”なんですよね。
そのとき、自分が本物の先生になれたような気がして、すごくうれしかったんです。

とても微笑ましいエピソードですね! でも、「こども芸術学科として必要な一歩目!」って感じがします。
ありがとうございます。もう一つ印象に残っていることがあります。これは、先ほどとは違ってあまり微笑ましい話ではないのですが……。
養護施設に実習で行ったとき、こどもたちと接する中で、昔の自分がしてしまった過ちに気づかされたんです。
中学生のころ、私の身近に施設で暮らしている子がいたんですが、私はその子に「施設にいるってことは、お母さんがいないってこと?」と無神経に聞いてしまったことがあって……。
当時は何気ない言葉のつもりだったんですが、実習で施設のこどもたちと向き合っているうちに、その言葉がひどいことだったと気づけました。
どちらのエピソードも、こどもとかかわっていく中でとても重要なことですね……。
そうやってこどもたちと関わる学びの中で、こどもに対して気づいたことや変わった考え方はありますか?
こどもたちと関わってみると、本当にたくさんの気づきがありました。
大人の表情をよく見ていたり、想像以上に深く考えていたりして、「大人顔負けだなぁ」と感じる瞬間が多かったんです。
最初は「面倒を見てあげよう」と思っていたけれど、気づけば私のほうがこどもたちからたくさんのことを教えてもらっていました。
まっすぐな姿に触れる中で、自分の見方が少しずつ変わっていった気がします。
こども芸術学科で過ごすうち、素敵な気づきがたくさんあったんですね……!
そうして過ごしてきた学科の雰囲気や、仲間をどう感じていますか?
学科の雰囲気は、小学校から高校まで過ごしてきた環境よりも、ずっとやさしいと感じています。
入学したばかりのころは、みんなが互いの“良いところ”を積極的に褒め合う空気があって、逆にその明るさにうまく合わせられず、はしゃぐことが苦手だなと思うこともありました。
でも一緒に過ごすうちに、そのやさしさが“無理をさせないやさしさ”なんだと分かっていったんです。
誰かに優しくしなさいと強要されるわけでもなく、ただ自然とそこにあるやさしさに、何度も救われました。
お話を聞いていて、自分も“こども芸術学科”に通ってみたくなりました!
作品の制作について
ここまでは幼少期のこと、大学でのことをお伺いしました。
ここからはついに学祭に出されていた作品についてのお話をうかがいます。






まずは今回の作品を作ろうと思ったきっかけを教えてください。
私は、生活のふとしたときや、散歩したりする中で、ふとした空気や風景がきっかけで「あの時こんな話をしたな」と記憶がよみがえることがよくあります。
そのときの懐かしいという感情には、“エモい”だけじゃなくて、少しさみしさも混ざっているように感じるんです。
それは“思い出した景色を、もう一度そのままの形で見ることはできないから”だと考えています。
“戻れない時間に向けて手を伸ばしたくなる気持ち”や、“思い出の輪郭が少しずつ薄れていく寂しさ” そういう感情って自分だけじゃないと思ったのが制作のきっかけです。
お話を聞いているだけで、わかる……わかる……! となりました。
ぼくがはるさんの作品に惹かれたのもまさにそこです。
ありがとうございます!
もうひとつ作品の特徴として、過去の“良いところだけ”を描いてしまうところも、私らしいのかなと思います。
嫌なことだってたくさんあったはずなのに、戻りたいと思えるのは、当時のつらさが今の自分にはもうそこまで重くないからなんでしょうね。だからこそ、「こうすればよかったな」と振り返る余裕も生まれてくる。
その感覚が作品づくりとつながっていったと思います。
とても素敵です。
次はそんな素敵な作品の制作方法を教えてください!
まず、絵から描き始めました。こどもがいる絵は地元の小学校の通学路です。
自転車に乗っているのは大学の近くの絵です。
そして最後のぐちゃっとなっている絵なんですが……これだけ現実ではないんです。
確かに! この作品だけ、抽象的なのが気になっていました。
それまでの作品が過去の思い出だったり、実際に現地に行ってみたりして描いたものに対して、この作品だけ抽象的なのは“あえて”なんです。いや、というよりは“結果的にそうなってしまった”というのが近いかもしれません。
それまでが小さい頃の絵だったり、最近見た風景だったりしたので、最後は未来や現状を書いてみようと思ったのですが、ぜんぜん上手くいかなくて、その結果、抽象的なイメージのようなものになっていきました。
過去と今という構成になっていたんですね! それは言われるまで気づきませんでした。
ほかにも今作にはこだわりがあるのではないでしょうか。
はい。今回は絵本のような形にしたんですが、それは“ページをめくる”という体験をしてほしかったからなんです。めくれば物語が進む。戻れば物語が戻るという本の特性が今回の作品のコンセプトともあっていると思ったんですよね。
なるほど! これもまた言われて初めて確かに! となりました。それを知ってから作品に触れるともっと面白いですね!
この作品に込められた工夫やこだわりをもっと教えていただけますか?
はい。一つは、本をあえて“閉じている状態”で飾ったことです。
美術館とかにあるような“ただ飾られている絵”だと触ったらいけない気がするじゃないですか。
触ってもらうためのしかけが必要だと思ったときに、閉じた本の形の展示を思いつきました。

そうした理由は、“なによりもこどもに触ってもらいたかったから”です。
こどもって親に連れてきてもらって作品を見る人がほとんどだと思うんですけど、たた絵が飾られているだけだと退屈じゃないですか。絵本だったら触っていいってこどもならすぐわかるし、めくるという体験もしてもらえる。
そう思ってこの形にしました。
この作品はどこか、“大人がこどものころを思い出す”といったことがコンセプトじゃないかと思っていたので、まさか見に来るお子さんのことも考えられていたと聞いて驚きです。
もちろん、その意図もありました。
例えばこの絵本、大人が持つにしても大きなサイズじゃないですか。
これは「小さい頃って本ってこれくらいのサイズに見えてたよね」という思いからなんです。
こどものことも考えていたのは、大人に長く触れてもらうためでもあります。こどもが興味を持てないものに親御さんは時間を割くのが難しいですし、やはり、こども芸術学科としての作品ですから。
コンセプトやテーマだけでなく、思いやりまでもがふんだんに詰まった作品と知って、ますます感動しました。
お客様や仲間、周囲の方からの作品への反響はいかがでしたか?
同い年くらいの子やちょっと年上の人たちが「懐かしい」「こういうことやってたなぁ~」とおっしゃっていましたね。
本の飾りとして、自分が小さいころ好きだったレースやチェック柄、リボンなどをつけていたんですが、それを見た当時の自分くらいの子が「可愛い~!」と言ってくれたのも印象に残っています。
今の子も同じように思うんだなって。

自分が制作したものが、多くの人に届く瞬間、これは何にも代えがたい感動ですよね!
ほかにも制作してよかったと感じたことはありましたか?
これは今作に限らず、どの制作にも共通していることなんですが、絵や作品をつくることで「自分にはこれがある」と思える瞬間があることです。
ほかのことでうまくいかないことがあっても、「ここを頑張ればいいや」と気持ちを立て直せる。自分にとっては、一つの逃げ道でもあり、支えでもある存在ですね。
なので、もしこの「つくりたい」という欲求がなくなってしまったら……と思うと、正直ゾッとします。
表現がなくなったら、自分には何も残らないんじゃないかという恐怖があるんです。
自分のアイデンティティがもしなかったら……たしかに、考えるとゾッとします!
将来の夢、これからの挑戦
ここまではるさんの過去や作品についてをうかがってきました。
ここからは未来について聞いていきたいと思います。
まず、今後どんな表現や活動をしていきたいですか?

これからは、“言葉にできない気持ち”を作品にしていきたいと思っています。
私は油画や日本画も好きなんですが、それは作品の中に“普段は言えない気持ち”が静かに込められていると感じられるからで、自分もそんな表し方に強く惹かれるんです。
これまで作った作品も、今考えてみると、明るいテーマよりも、胸の奥に残っているモヤモヤや、形にならない不安のほうが、作品の出発点になることが多かったように思います。
「これは何なんだろう」と、自分でもまだ説明できない感情です。
でも、その“よくわからないもの”こそ、私にとって作る理由なんだと思います。
作ることで少しモヤモヤが晴れたり、自分の中が整理されていったりする——そんなふうに、表現が自分を支えてくれる時間を、これからも大切にしていきたいと思っています。
言葉にできない気持ち……。今回の作品でいうと、特に抽象的な表現の部分が、その“名前のつかない感情”に一番近いのかなと感じました。
そんな感情を大切にしながら創作を続けるはるさんに、今度は創作以外の未来のお話を伺います。
将来の夢はありますか?
まだ見つかっていません。正直、不安でいっぱいです。
漠然と「楽しかったらいいなぁ」とは思っています。その楽しいことが私にとっては絵だと思うんですけど、芸術じゃ食べていけないですし、社会でも自分の能力をどう活かせばいいか分かりません。
「絵一本で食っていこう」と、考えることもありますが、自分より上手い人なんてたくさんいる世界でずっと生き残れるイメージがわかないので、自信を持ってそういえないのが現状です。
ただ一つ言えるのは、「絵は描き続けるだろうな」っていうことですね、こども芸術学科の進路としては保育士もあると思いますが、もしその道に行ったとしても、全く違う業種に行ったとしても、絵を描いていると思います。
やっぱり自分のアイデンティティですから。絵を描いていない自分なんてイメージできませんね。
メッセージ
ここまではるさんのお話をたくさんうかがわせていただきました。
過去、作品、将来への思い、どこをとっても優しさがにじみ出る素敵なインタビューになったと思います!
そんなはるさんにとって表現とはなんでしょうか。

自分を表すもの、ですね。
隠しているつもりのことでも、作品にすると自然と“要素”や“癖”として出てきます。
あとはやっぱりアイデンティティですね。これがあるから自分だと言える。そういう意味でも、やっぱり“自分を表すもの”なんだと思います。
最後に、これから挑戦したいと思っている人に、メッセージをお願いします。
挑戦したいと思いながら動けないときって、不安やモヤモヤした気持ちがあると思うんです。
でも、まずはその気持ちを“形にしてみる”“少しでも動いてみる”ことで、少しずつ晴れていく気がします。
完璧じゃなくていいから、まず一歩を出してみてほしいです。
はるさんのお話には、過去の痛みや迷い、悲しみ、そこから生まれてくる“やさしさ”が静かに息づいていました。
モヤモヤや不安の感情を否定せず、そのまま作品に変えていく姿勢は、とてもまっすぐで、強い。
「形にしてみることで、少しずつ晴れていく」
その言葉は、挑戦の入り口に立つ誰にとっても、大きな背中押しになるのではないでしょうか。
これから先、はるさんがどんな“言葉にならない気持ち”を描いていくのか。
それがどう見た人の心を変えていくのか。
その瞬間に立ち会える日が、今からとても楽しみです。