銅板がつなぐ技と心 遠山板金店の遠山和憲さん

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ニッポン職人発見記
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銅板がつなぐ技と心 遠山板金店の遠山和憲さん

前回、ご登場いただいた庭師の森本隆嗣さんから、突然、連絡がやってきました。

前回の記事はこちら。

箱根に、ぜひ紹介させていただきたい職人さんがいるんですよ。
銅板屋さんなのですが、とても良い仕事をされる方で。今は箱根神社の屋根の修復をされています。すごい仕事を見ることができる機会なので連絡しました。

浦田さん、まさか、箱根や小田原以外の場所に行こうとしていませんよね?
まだまだうちの近所に素晴らしい職人さんがたくさんいますよ(圧)。

い、いや。このコーナー、「ニッポン職人発見記」だし…。魅力的な職人さんは気になりますが、ニッポン全域を巡りたくて…。

その前に、浦田さんには箱根でやるべきことがあるのです。

遠山板金店でお待ちしています。

意外と知られていない「建物の板金屋」とは

職人さんの横のつながりって素晴らしい。波長が合う人同士は、まさに阿吽の呼吸。

秋も深まった11月中旬。森本さんに促されるがまま、遠山板金店に到着しました。事前にお電話したところ、とても気さくな印象。「おはようございます。今日はよろしくお願いします!」と扉を開けると、すでに森本さんと遠山さんは談笑していました。

初めまして。ところで、お二人はどこでお知り合いになったのですか?

共通の知り合いの電気屋さんがいるんですよ。私はその彼と地区が同じで、最近はお祭りにも一緒に参加している仲です。

その彼は3年ほど前にうちに来ていたことがあって。「毎朝、自分の家に掲げている銅板の看板をピカピカに磨いている銅板職人さんがいる」とよく聞いていました。当時から丁寧な仕事をする方に違いないと思っていました。

早速ですが、板金屋の銅板仕事についてちょっと解説しましょうか。少しでも浦田くんに仕事内容を知ってもらってから箱根神社さんに行ったほうが良いでしょうから。

ぜひ!
その前に遠山さんは板金屋さんなのでしょうか?それとも、銅板屋さん?どちらなのでしょう?
森本さんは銅板屋さんと紹介してくれましたが、名刺には板金屋さんと書かれていますよね。

作業途中の銅板と専用の道具。これから怒涛の解説が始まるのだった。

業種としては板金屋ですね。
みなさんは、自動車修理の板金屋さんを思い浮かべるかもしれませんが、私たちは建物の板金屋です。仕事をする相手が大工さんや社寺なので、あまり世間からは知られていないかもしれません。

具体的には、屋根、雨樋、外壁、キッチン、換気扇周りなど、屋内外で使われる金属板の加工と取り付けを専門にしています。板金屋さんによって何をメインにしているかは大きく異なりますね。地域性もあります。

うちは、銅板と銅板以外の仕事が半分ずつという感じでしょうか。その銅板仕事のひとつに社寺の仕事があります。とはいえ、箱根近辺には社寺が多いので、板金屋の中では銅板仕事は多い方だと思います。

あ、そういうことなんですね。
私も箱根に住んでいてみんなが遠山さんのことを「銅板屋さん」と呼んでいるので、それが職業名かと。業種としては建築板金なのですね。

銅板以外にも、ガルバニウムやコロニアル、ステンレスなどさまざまな材料がありますが、基本は「金属の板を切る、曲げる、取り付ける」ことが主な仕事です。

たとえば、箱根神社さんの屋根は本瓦葺きという方法なので、銅板をこのように切って曲げていくつも縦横に連ねています。

折り曲げた銅板をつないでいく屋根作り。簡単そうに見えるものほど…

あ、なんか楽しそう!
切って曲げてなら私にもできるのかも?

どうでしょうねぇ。

それはないでしょうねぇ。

水を侵入させず、強度を上げる。しかも、現場で取り付けやすい。長年の工夫。

屋根ということで、雨風は大敵です。しかも、箱根には山間部特有の湿気と雪もあり、過酷な環境。その水分を屋根の内側に入れない工夫をした銅板を連ねています。また、今回の銅板の厚みは0.35mmですから、強度を上げる工夫をしないと長持ちしません。

さすがに私にはできなさそうな気がしてきました…。

ちょっと別の作業をお見せしましょうか。これは、屋根の上の棟に取り付ける「丸環」のための雨除けです。大きな枝が落ちた時など屋根を修理する際には、その輪にロープをかけて命綱を確保してから作業をします。屋根の木材が腐ってしまうと大変危険なことになるので、雨を入れないための部材が必要なのです。

まず、型を使って銅板を切り抜きます。それから罫書きをして縁を曲げていくのですが、この段階で銅板全体を伸ばしたり縮めたりしながらフード状のカーブを生み出していきます。

あ、これは修行しないと絶対に無理な作業だ。

(スムーズな手つきにしばらく見惚れて放心)。曲げようとしているのではなく、ただ挟んだ結果、曲がっているようにも見えます。

実際にも、そういう感覚ですね。不慣れな頃は、まず罫書いた線に沿って浅く曲げることから始めます。その時に大切なのは、曲げようと思うのではなく、つかむ感触で挟むこと。一発で曲げるのはある程度、慣れてからですね。

道具に独自性があっておもしろいです。庭師の植木鋏とは全然違いますね。

私は鋏が大好きでいろいろ買ったり作ってもらったりするんですよ。トタンの波型に合わせた刃の鋏とか、ガルバニウムの立体形状に合う鋏などは特に変わっているのではないでしょうか。

どうやって研ぐのかわからない形状の鋏がズラリ。でも、遠山さんは自分で研がれていました。

こんなにたくさんの鋏の種類、初めて見ました。ひょっとしてこれ、切る対象物ごとに鋏があるということですよね?
ということは、この本数を持っていないと板金屋さんの仕事ができないということでしょうか?

うちは何でもやるので特に多いです(笑)。

最近、愛用しているのは鴻巣の直徳さんの道具や機械ですね。火造りで鍛造した一点ものの鋏でも特注で作ってくれるので、本当に助かっています。弱い鋏では仕事になりませんから。

あと、金属の板材を折るための機械も、うちは直徳さんのもの。ちゃんとした板金用の道具を作ってくれるところはもう全国に3社くらいしかなさそうです。

庭師の鋏を作る人も減っていて似たような状況です。お互い困りますね。庭づくりの場合は材料の石を出してくれる山もどんどん減っているんですよ。将来、庭に石を入れられなくなるかもくらいの勢いでなくなっています。

板金屋の業界では細分化が進んでいます。
以前は金属板の加工なら何でも来いという板金屋さんばかりでしたが、だんだん、工場や施設の屋根を施工する専門会社、住宅メーカーだけを専門にする会社、内装関係だけの会社、社寺だけの会社みたいになりつつあります。これでは、ニッチな業界がさらにニッチになるわけで、道具や技術伝承の観点では課題が残りますよね。

遠山さんが作った鶴。鋏を一切使わず曲げるだけで作ったという技術がすごい(驚)。

あらためて基本的な質問ですが、遠山さんは何代目なのでしょうか?

私で4代目ですね。初代から100年程度続いています。3代目の父は今も現場に出ていますので、箱根神社に行ったら会うと思いますよ。あ、ちなみに父は78歳です。

えー!78歳の方が屋根の上に!若い、若すぎです。
今日はどんな作業をされているのですか?

今月末までに工事を終わらせなければならないので終盤戦に入っています。葺いた屋根を拍子木で締める工程で、それが終わった場所は上から足場を取っていき、樋や装飾を仕上げたら完成になります。

拍子木って何ですか?

これが拍子木。勘が良い人は端が丸くなっている理由が分かるはず。

これですね。私はけっこう拍子木にはこだわっています。

(心の声:拍子木だけちゃいますやん。道具、全部ですやん。)

近くの造園屋さんが樫の木を伐採した時に、太い枝をもらって自作しています。
端っこが少し丸くなっているのが分かりますか?曲げて重ねた銅板を叩き締めるために使うのですが、角が立っていると凹みがついてしまうんです。このアールは私の手癖なども含めて最適な形にしています。重さやバランスで感覚が変わるので、仕事の質を左右するけっこう大切な道具です。

職人は道具を自作すると聞きますが、その通りですね。

あれ?ひょっとして。

この曲げた銅板を次々と連ねていくわけですから、例えば1枚の銅板の左側が重ねの上とするならば、そこが下にある次の板の右側を包むわけで、銅板の厚さ分だけ幅を広くする必要がありますよね?

逆に右側を銅板の厚さ分だけ狭くするか。どちらかをしないと最終的にきれいに連ねられないのではないでしょうか。

別職種とはいえ、さすが職人の森本さん。秘密に気付いてしまった。

どういうこと???

さすが、すごいところに気が付きましたね。その通りです。

1枚の銅板でも片方が包む側、もう片方が包まれる側なので、完全な長方形では連ねられません。箱根神社の屋根材は0.35mmの銅板ですから、純粋な長方形よりも片側の上下がそれぞれ0.35mmずつ狭くなっています。

あ!そういうこと!
それを全部、この作業場で準備して現場で組み立てるわけですね。

そうです。人目に触れる取り付けの作業は全体の工程の2割ほど。8割はそのための素材や環境を準備することに費やします。下手を打つと2割だった取り付け作業が3割や4割になってしまい、工期がズレてしまいます。一緒に働く別の業種の方々に迷惑がかかりますし、何よりも職人としてあってはいけないことです。

屋根だけではなく、棟や鬼(正式名称「鬼飾り」。鬼瓦に相当する箇所)、柱や垂木の装飾、雨樋など、社寺ごとに寸法や様式が異なっています。その設計図を読み解き、必要なすべてのパーツを銅板の厚みまで考えた上で準備しなければなりません。

長くなりましたね、そろそろ箱根神社に行ってみましょう!
森本さんはどうされますか?

私はこれからお客さんと打ち合わせなのでここまでにします。
今日はありがとうございました!

では、神社さんから屋根に上がる許可をもらっていますので、行きましょうか。

え?え?本当ですか?そんなすごいことが!

う、う、う、浦田さん、どんなだったか教えてくださいね。絶対ですよ!絶対にですからね!(車に向かいながら言っていたのでフェードアウトしていく声。千載一遇の機会を逃して悔しそうな表情でした。)

いざ、現場の箱根神社へ!…の前に。

遠山さんの知り合いに会うたびに「よぅ!」と声をかけられつつ到着。

そして、やってまいりました、箱根神社。いざ、銅板ファンタジーの桃源郷へ!!!

どんな現場なのか、そして遠山さんの仕事とはどのようなものなのでしょうか!

ちょっとご飯を食べましょうか。
腹が減っては戦はできぬですよ!

え?
そのセリフ、どこかで聞いたような。

※森本さんの取材時と同じ展開

うますぎる! 権現からめもちの「俺のつけ麺赤®︎」。

ここ、神社の敷地内のうどん屋さんですが、おいしいんですよね。
一番人気は、「俺のうどん赤®︎」です。ほら、日本人以外にもインバウンドの人たちも食べているでしょう?
でも、「俺のつけ麺赤®︎」も捨て難いんですよねぇ。

俺のつけ麺赤®︎に突撃だーーー!!!

ほう、スープが適度に絡む中太ストレート麺。それを受け止めるつけ汁は和の方向性。辛いのが苦手な人にはちょっと辛すぎるくらいの辛党には適度な辛さ。これでもかと入った揚げ玉が麺を放り込むたびに絡みつき、海苔やワカメの周辺に配された魚粉が寄せる波、返す波かの如く味に彩りを添える。うまい!うまい!うまい!

浦田さん、大丈夫ですか?(笑)
せっかくなので食後に抹茶も飲んでみましょうか。おいしいですよ。

なんと抹茶のストローはハート型。アラフィフ男性同士で、もはやデートだ。

今度こそ、現場の箱根神社へ!

職人さんの半纏姿、好きなんだよなぁ。遠山さんで「と」なのですね。

そういえば神社の本殿って神様がおられるわけですよね?
作業とはいえ、そんな大切なところに上がっても良いのでしょうか。

今は改修工事なので、神様は別の場所に移動していただいているので屋根に上がることができます。

では、行ってみましょう!

ババーン!
まさに銅板仕事の桃源郷!輝く新品の銅板で葺かれた屋根!

うわぁ、圧巻。
これ、新しいところ全部、遠山板金店さんが担当されたんですよね?
ただただ、美しい…。

そうですね。木の部分は足場になります。完成したら足場を片付けるので、今、見えている場所は一面銅板のきれいな色になりますよ。上がってみましょう。

まだ拍子木で叩き締める前なので浮いているところも。もちろん、すべて手作業です。

銅板の屋根には歩き方があります。縁ではなく、真ん中を歩いてくださいね。瓦と逆です。
瓦は真ん中に乗ると割れてしまいますが、銅板は端に乗ると折り返しの部分が割れてしまうんですよ。

私、ちょっと体重あるので心配ですね。真ん中をそろり、そろり。

これもね、一枚ずつ切って、折って、つなげて二枚にして。二枚と二枚を合わせて四枚にして…という手法で作っています。カーブのところはもちろん計算して作っています。

新旧の対比。時代を超えた仕事を通して、遠山家の各世代がつながっている。

修復しないところもあるんですね。

そうですね。今、見えている緑青の古いところは、1代目と2代目が作業したところと、3代目の現在の親方が作業したところで、修復の必要がなかった箇所です。
場所によっては銅板の裏側にうちで働いていた職人さんの名前が書かれていたりして。感慨深いです。

これまでの代の方々がした仕事で、すごいなと思ったことはありますか?

「降り棟鬼飾り」という、今見えている鬼があるじゃないですか。ここってけっこう壊れやすいんですよ。雪が降って溶け始めたらその重量が全部この鬼にかかってしまいます。だから折れやすい。

でも、修復で銅板を剥がしてみたら、「ほぞ」で強く補強されていました。先人の知恵ですね。これまで他の場所で見たことがありません。

こちらも新旧の対比が美しい。この左側の格好良い造形物が「降り棟鬼飾り」か。

こんな工夫があったのか!という発見になるのですね。

そうやっていろんな人の工夫を学べたり、それをいつかどこかの現場で使うことになったりするのが職人のおもしろさですね。

これまでの世代の仕事を知ることができるのは豊かですね。

銅板ってだいたい何年くらい持つものなのでしょうか。

場所によって全然違ってくるんですよ。日向と日陰だけでもまったく異なります。
修復になるのは、雨風ですり減るからですが、剥がすときはペラペラの紙みたいになっていますね。

もはや達人技。蒲鉾型の曲げ、屋根の反りへの合わせ、面が切り変わる接点。

今、何か音がしませんでしたか?
カチカチとかパキパキみたいな音が聞こえたような。

太陽が当たっているので銅板の伸縮ですね。銅板は熱でかなり膨張したり縮んだりします。ですから、遊びの作り方がかなり大切。叩き締めても可動するようにうまく調整しなければ、暑い日に膨張した銅板同士が干渉してボコっと膨らんでしまいます。

電車のレールが隙間を空けて設置されているような感じでしょうか。

そんな感じですね。
途中に水が入らないようにしながら「切子」という切れ目を入れているところがあります。先ほどの蒲鉾型のところは特に発見しやすいですね。

あ、親方がいました。

なんと御歳78歳。現役の銅板職人が登場。3代目の遠山正憲さん。

これは一番上の大棟を叩き締めているところですね。親方には親方のペースがあるので、じっくりやってもらっています。私は年齢的に積極的に動きながら作業をするのが担当ですね。

若いほど動けるのは確かですね。歳をとると足腰や視力が良くなることはないですし。
でも、親方は凄まじい量の引き出しを持っていそうです。

そうですね。経験値がもの凄いです。あと珍しいことに、うちの親方は老眼がほとんどないんですよ。罫書きも裸眼で行なっています。

ちょっと私も作業をしてみましょうか。拍子木で叩き締めてみます。

山に拍子木の音がこだまして、なんとも言えない厳かな雰囲気に。

こんな感じでいかがでしょう?

銅板の工事って最初に木の屋根にする下書きが最も大切です。ここで仕事のおおよそが決まる。割り付けさえしっかりできていれば、あとはその線に合わせて葺いていくだけですから。

つまり、下書きが最も時間のかかる作業です。箱根神社のように古い屋根の改修工事は、長い年月の中で地震などもあってけっこう歪んでいます。左右の距離が違ったりすることもあるので、気は抜けませんね。

仕事の時に大切にされていることはありますか?

一族が昔から箱根で暮らしているので、みなさんうちのことをご存知ですから、手は抜けません。銅板仕事だけではなく、すべての仕事を見られていますね。

職人仕事は信頼関係が一番大切なもの。特にお寺には檀家さんがおられますし、神社には氏子がいます。みなさんがいるから、うちの仕事があると考えています。

「丸環」を発見!あの雨除けを作業場で作っていたのか!

難しい仕事が多いのでは?
けっこう大変な作業が多いんだなと感じました。

職人はみんな、難しい仕事、好きだと思いますよ。最初だけは何だかんだ言ったとしても、「よし!オレがやってやる」と思いますし。何よりも乗り越えた時の喜びはひとしおです。

では、逆に苦手なことや困難なことはないのでしょうか?

夏の暑さです!
銅板だと屋根の上の照り返しがすごいですし、道具も持てたものではありません。木の道具箱に入れて遮光のためにタオルまでかけているのですが、熱くて熱くて。

見よ、この堂々たる道具箱を! よく見ると、斜面対応の工夫がなされている。

ところで遠山さんって、小中学校の時にどの教科が得意でしたか?

工作と体育ですね。
でも、この仕事を始めると、主要な教科は英語以外すべて必要です。地域の風土や歴史は社会。文献を読むことは国語。図面関係は算数と数学。素材やその活かし方、気候などは理科ですから。私の場合は子どもの頃から親父を手伝っていたので、この道にすんなりと入れましたね。

あれ?親方さんとは仲が良いのですか?
親と子って折り合えないタイプと仲が良いタイプの2パターンですよね。うちは正直、前者です。

うちは仲が良いです。
でも、仕事をはじめた時はあれこれ聞きませんでした。自分で技術を身につけようと、見ては盗んで考えての繰り返し。

代々の仕事が詰まった箱根神社の屋根。現代を生きる二人が今日も歩く。

話は変わりますが、この銅の輝かしい色ってどのように変化してこの落ち着いた緑青になるのでしょうか。

先ほど「どれぐらい持つのか」の話で日向と日陰の話をしましたが、気温などの条件でも緑青になるスピードが大きく異なります。

箱根神社の場合は、向拝の屋根(神様を拝む場所)を3年ほど前に修復したのですが、今は黒っぽくなっていますね。ピカピカから茶色、茶色から黒、黒から自然と緑青になっていきます。しかし、温泉の近くだと硫黄の影響があり一晩で黒くなってしまいます。

真逆の観点だと、小田原って社寺や旧家の銅板の屋根が美しく見えませんか?緑青がとてもきれいなんです。潮風は暮らしに悪いとされていますが、銅板の屋根にだけはすごく良いのだろうなと思います。

おもしろいですね。
例えば今年に七五三の三歳の子が記念写真を撮って、七歳の時はお子さんだけでなく屋根も色が変わって進化しているとか想像してしまいました。

来年の新年ですが、この銅板屋根のストーリーを知っていたら、とってもおもしろく初詣できるかもしれませんね。そして、この銅板色の屋根も来年になると変色しているのですから、まさしく今がチャンス!

本殿の前で記念撮影。弟子でもある息子と写ることにちょっと親方さんが嬉しそう。

おそらく初詣のこともあって、今月末までの工事なのだと思います。12月は神様にお戻りいただくための行事もありますし。

(「私は、それに呼ばれているんだよ」と親方の声)

いずれにしても、箱根に来てもらうのは住民としては嬉しいことなので、ぜひ、箱根神社で初詣していただきたいです。

そして、仕上げは権現からめもちの「俺のつけ麺赤®️」ですね。

そんなに気に入りましたか(笑)。
でも座席数を考えたら新年は難しいかもしれませんね。なるだけ平日にお休みを取ってきてもらえたら、ゆったりと過ごせると思います。

ポップな記事を目指していたけど、あまりにも格好良くてお二人の手をパチリ。

私の文筆業にもあることなのですが、仕事が終わったそばから反省点とか出てきませんか?

ありますよ。納めた後に、こうしたらどうだっただろうかという仮定が頭をよぎります。毎回その繰り返しですが、最近、テレビで職人さんの特集を見て分かりました。みなさん同じことを考えているのだなと。そう理解したら、それで良いと思い始めました。そして、ずっとそれを繰り返してがんばり続けたら、60代や70代の時に良い職人さんになれるのかなと。

お互いに100点がない仕事ですね。課題がいつどこにでも現れてきます。

3代目さんはやりがいやおもしろさについて、どう考えているのかなぁ。(と思ったら意外と近くにおられたので質問)

おもしろさってあるのかなぁ。
まぁ、何代も仕事が残るからね。それが良いところだね。場所によっては100年を超えて持つものだってあるし。もしかしたら、今の銅の品質ならもっと持つかもしれないね。

あ、30年ほど前の記念事業の石碑に奉納した人の名前が記されているんだけれども、遠山が「と」だから、長嶋茂雄さんの手前なんだよ。ふっふっふ(嬉しそう)。

一般的に知られていない職業なのに、取り付けの作業時はさまざまな人たちからすごく見られる仕事だと思います。今も、ものすごく見られている(笑)。あと、建築の柱や基礎石では聞いていましたが、屋根の職人さんも見えないところに名前を書いたりしておられるのですね。時を超えて噂話に出てくるって、なんだか胸にジンとくる話だなぁ。
あ、帰ったら今日の顛末を森本さんに自慢しなければ。

遠山さん、親方さん、お忙しいところありがとうございました!

今回出会った職人さん

遠山板金店の遠山和憲さん

会社名:遠山板金店

代表者:遠山 和憲

所在地:〒250-0522 神奈川県足柄下郡箱根町元箱根

取材協力

箱根神社

公式サイト:https://hakonejinja.or.jp/

ライター紹介

浦田浩志公式サイトInstagram
得意:インタビュー記事、コンテンツ企画。
兵庫県神戸市出身、神奈川県逗子市在住。大学を卒業して入社した広告代理店で、求人広告の制作を担当。いきなりボスから「女性の求人を書くときは、君は女性になりなさい」という謎の教育を受ける。社長取材などを多数担当したことで、心臓に毛。近年は、初の永世七冠を達成した棋士の方や「宮さんがぜーんぶ破っちゃったの」と語ってくれた方、「問うな、踊れ、そして生きろ」という名言の方など、著名人も取材。一方で、大学時代からバックパッカーとして50か国以上を訪問。子連れでSUPを持ち込みインドへ行くなど神出鬼没。つながりがある造園関係者は100名以上、取材した鍛冶屋は50件以上を数える。

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