マンガのテーマ曲を制作!「花鈴のサウンド」プロジェクト とは? サウンドマーケティング秘話

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マンガのテーマ曲を制作!「花鈴のサウンド」プロジェクト とは? サウンドマーケティング秘話

甲子園を目指す「高校球女」を描く青春マンガ『花鈴のマウンド』。本作を音楽で広げようというプロジェクト「花鈴のサウンド」が立ち上がりました。このプロジェクトから生まれた『花鈴のマウンド』テーマ・ソング「希望のFLAG」はSNSでも大反響。アニメならぬ「マンガ」の音楽を作るという、この大胆な試みはどのようにして生まれたのでしょうか?

作曲者の山田智和さんに登場いただいた前回に続いて、今回は編集者の立場で「花鈴のサウンド」プロジェクトに携わった志摩晃司さんをフィーチャー。氏の視点から「花鈴のサウンド」と「サウンドマーケティング」について語っていただきます。

『花鈴のマウンド』に込められた壮大な想い

TikTokで34万再生を超えている(2025年6月20日時点)「希望のFLAG」、この楽曲、動画はどのようにして生まれたのでしょうか?

@karin_no_sound

甲子園をめざす、少女たちの戦いが始まるーーー‼️ 『花鈴のマウンド』 オリジナルテーマソング 「希望のFLAG」 (作曲:山田智和、作詞:PA-NON) #甲子園 #高校野球 #花鈴のマウンド #山田智和

♬ 希望のFLAG – 花鈴のサウンド

わたしは株式会社わかさ生活の社長と10年ほどお付き合いがあるのですが、その方は「社長」というか「自由人」といった感じの人で。昔から「実は、自分が原作を書いているマンガがある」という話を聞いていたんです。それが『花鈴のマウンド』というマンガでした。

社長の方がマンガを?
それはどのようなマンガなんですか?

そのマンガは、女の子が高校野球で甲子園を目指す、というストーリーなのですが、連載が始まった当時はまだ「甲子園は女人禁制」という時代だったんです。
 
わたしが、
「なんでそんなマンガを作っているんですか?(社長のただの趣味かな?)(昔マンガ家になりたかったのかな?)」
 
と軽い気持ちで聞くと、想像以上に深い答えが返ってきたんです。

想像以上に深い答え……。
どんな答えだったんでしょうか?

社長は、軽い気持ちで聞いたわたしに対しても真面目に答えてくれましたーー
 
「わたしは子どもの頃、野球が大好きだったんですが、病気のせいでやらせてもらえなかった」
 
「でも、野球は本当に好きで。特に『高校野球』『甲子園』は憧れの対象だった」
 
「実は、病気の都合で自殺未遂をしたことがあるんだけど、その時も甲子園を見ることでその気持ちを吹っ切れたことがある」
 
「おかしな話に聞こえるかもしれないけど、わたしは『野球』に命を救われたと思っているんです」
 
「だから、今でも『高校野球』『甲子園』は本当に好きなんです」
 
「そんななか、ある日、女の子の高校野球の全国大会を見ることがありました」
 
「それが、山奥の田舎の球場で、『えっ、これが全国大会?』と驚いたんです」
 
「周りの人に話を聞くと、いろいろと事情が知れました」
 
「簡単に言うと、昔から女の子は『危ない』『女の子らしくない』『やる場所がない』と野球がしづらい、続けづらい環境にあるということでした」
 
「でも、そんな中で高校生にまでなって野球を続ける女の子たちの『野球愛』は、本当に純粋ですごい」
 
「その子たちも、男の子と同様に『甲子園』には憧れている」
 
「でも、当時の甲子園は『女人禁制』でした」
 
「わたしは『この子たちも、甲子園で試合ができるようにしてあげたいな』と考えたんです」
 
「会社経営で繋がりのあった人達を伝って色々と働きかけをしましたが、一企業にできることは限界がありました」
 
「長年積み重なっていた『業界の常識』や『しきたり』というものは、そんなに簡単に変えられませんでした」
 
「そこでわたしは『現実世界が変わらないなら、まずフィクションから変えてしまえばいい』と考えたんです」
 
「『鉄腕アトム』や『ドラえもん』、あれは当時『そんなこと、あり得ない』と言われるようなフィクションのマンガでした」
 
「ですが、『現実がマンガに追いつく』『マンガの世界でしかなかったことが、現実に起き始めている』という感覚は昔からありました」
 
「なので、フィクションの世界、マンガの世界から『女の子も甲子園で試合をする世界』を描いていけば、現実が追いつく流れが生まれる、と考えて、このマンガを作り始めたんです」

 
ーーと。
軽い気持ちで聞いた自分は、その想像を超える想いとストーリーに驚き、やっぱり起業して成功するような人は発想力と行動力が違うな……と感銘を受けました。

いや……本当に想像以上のお話ですね……。
「社長がマンガを作る? 趣味かな?」という勝手に想像したことを遥かに上回る想いというか、使命感のようなものを持たれていると感じました。
それが、今回の「希望のFLAG」にどのようにつながってくるのでしょうか?

偶然の出会いから生まれた「希望のFLAG」

それ以降、わたしにできることでこのマンガ『花鈴のマウンド』をサポートするようになったんです。知り合いのマンガ家を紹介して作画チームのサポートをしたり、イベントの紹介をしたり。
 
常に頭の片隅にこのマンガのことがあって、何か繋がりそうなことがあったら「あ、これ社長に伝えてあげよう、何かプラスになるかも」と考えるようになっているんです(笑)。
 
今回の「希望のFLAG」が生まれた背景にも、そんなことがありました。
 
ある日、仕事の一環で「市民ホールを使った地元住人向けの音楽イベント」に行ったんです。それはローカル×シニア層×音楽を掛け合わせるというアイデアで成功しているイベントで、わたしは仕事のヒントを探しに足を運びました。
 
そこで、偶然隣に座っていて、ご挨拶をさせていただいたのが作曲家の山田智和さんでした。
 
とても気さくにお話をさせていただき、イベント前にお名前を伺って休憩中にお名前を検索すると「乃木坂46」などのトップアイドルグループ、大人気アニメ「ラブライブ」、人気声優「小野大輔」さんの曲など、錚々たる楽曲の作曲をしていると知り「うわ! ホンモノの作曲家の人だ!」と驚きました。
 
その時は特に何も考えていなかったのですが、休憩中にまたお話をした時に山田さんからーー
 
「去年、体を壊して多くの人に支えられた」
 
「考え方が180度変わり、感謝という考えが強くなっている」
 
「その考えから、実はいま『企業の取り組み』やボランティアに興味がある」
 
「実は今年から、自分が所属していた作曲家事務所を引き継いで社長になった」
 
「企業の取り組みや社会貢献活動に、自分が持っている『音楽を作る能力』を繋げられないかと考えている」
 
ーーという話を聞いたんです。
 
その時、わたしの中で繋がりが生まれました。
 
「この人に、『花鈴のマウンド』の音楽を作ってもらえないだろうか?」と。
 
イベントの後、「この後で、もっとお話をさせていただけませんか?」
と近くのカフェにお誘いして、そこで『花鈴のマウンド』のことや、楽曲提供をしていただけないかといったことを相談したんです。
 
山田さんは「そのような、『人のため』に取り組んでいる企業のお手伝いをしたかったんです」と嬉しい言葉をくださいました。
 
その後、マンガ『花鈴のマウンド』を読んでいただいて、作曲に取り組んでいただき、誕生したのが「希望のFLAG」という楽曲です。

では、本当に「偶然の出会い」だったんですね。

はい。
あの日、イベントに行っていなかったら。隣に座っていなかったら。挨拶をしていなかったら。休憩中に検索をしていなかったら。またお話をしていなかったら。
 
いま流れている「希望のFLAG」という楽曲は生まれていませんでした。
 
楽曲が完成したので社長にご紹介したところ、大変喜んでもらえて。『花鈴のマウンド』のテーマ曲として正式に採用いただけることになりました。
 
その後、山田さんのご人脈でプロの作詞家さん、ボイストレーナーさん、歌い手さん、動画制作者さんたちとも繋がりをいただいて、今の動画に至りました。

「希望のFLAG」で見えた「これから」

これからの展望はありますか?

「希望のFLAG」という曲は、『花鈴のマウンド』というマンガのテーマ曲ですが、そこに込められているのは、社長が根っこの部分に持っている「頑張る女の子のための応援」という想いです。
そして、この楽曲は「すべての『頑張る人』に向けた応援歌」です。この曲が1人でも多くの人に聴いてもらえて、心に残るものになれば嬉しいですね。
 
また、このような「企業の活動の広がりを『音楽』で加速させる」ということの魅力も、もっともっと広げていけると楽しいだろうなと考えています。

「希望のFLAG」をきっかけにして、ビジネスと音楽を繋げることの可能性に目を向けられているわけですね。
そのような取り組みとして、いま他に手掛けている「音楽」はあるのでしょうか?

はい、山田さんと一緒に色々な「音楽」を作っています。
老舗企業さん、地方自治体さん、町のお医者さん、インフルエンサーさんといった方々の音楽に携わっているところです。

完成、リリースされたら、そういったお話もぜひ聞かせてください。
ありがとうございました!

編集後記

「高校球女」の青春と成長を描く『花鈴のマウンド』。それは単なるスポーツマンガという枠組みを超えて、原作者の抱く壮大なビジョンと想いを形にしたものでした。

そんな『花鈴のマウンド』のテーマ曲にして、「頑張る女の子の応援歌」として生み出された楽曲「希望のFLAG」。SNSでバズを引き起こした同曲をひとつのきっかけにして、作曲者の山田智和さんと編集者の志摩晃司さんは、さまざまな取り組みやビジネスを「音楽の力」で広げるという「サウンドマーケティング」の開拓に挑んでいます。

彼らが見据えるその先にはどんな光景が広がっているのでしょうか?

次回の「音の挑戦者たち」では、山田さんや志摩さんらが開催した「音楽×ビジネス」にまつわるイベントのレポート記事をお届け。サウンドマーケティングが持つ大きな可能性を紐解いていきます!

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