皆さんこんにちは。野球が大好きなシオマルです!
さて今回は8月21日~27日まで開催されていた「第10回全日本中学女子軟式野球大会」の開会式、そして決勝戦「三重高虎ガールズ VS オール栃木」の試合に行ってきました。
全日本中学女子軟式野球大会とは?

平成28年よりスタートしたこの大会の目的は、以下の通り。
- 軟式野球に親しむ中学生女子野球のレベルアップをすること
- 全国的な女子野球の振興を図ること
残念ながら予定が合わず、開会式と決勝戦しか観に行けませんでしたが、その2日でもたくさんの収穫がありました。
開会式
8月21日(木)
開会式は、慣れ親しんだわかさスタジアム京都 にて行われました。
実は今大会、わかさ生活から出場全チームに女子野球に関する本を数冊ずつ献本したり、当日球場前でグッズ販売ブースを設けていたりと関わりが深く、私シオマルはお昼前から球場入りしていました。
まだ誰もいない球場で設営をしながら、事前に大会関係者の方からいただいたパンフレットを見て、全国からたくさんの女の子たちが集まるんだなぁとは思っていたのですが…。
開会式の時刻が近づくに連れて続々と敷地内に入ってくるバスの数を見て、圧倒されることになります。
今年の大会は記念すべき第10回大会、初めて全国47都道府県から代表チームが選出され、東京、京都からは各2チームが参加したことで計49チームでの争いとなりました。
つまり、各チーム平均20名が登録されているとして、1000名近くの野球を愛する女の子たちが一堂に会しているのです。
そして全員、地方大会を勝ち抜いてきた猛者たち。
ここにいる約1000名だけではない。全国に、悔し涙を呑んだ野球女子たちがもっといる。
この大会は軟式野球大会ですが、中学から硬式チームに所属している女の子たち、男子シニアに交ざって野球をしている女の子たちも、もちろん全国に存在します。
球場に到着し、楽しそうに撮影したり、大きな声を出しながら行進の練習をしたりしている彼女たちの姿、そしてその周りで引率している指導者の方、保護者の方の笑顔は、女子野球の明るい未来を体現しているようでした。
決勝戦の対戦カード
開会式から5日経った8月26日(火)、ついに決勝戦の組み合わせが決定しました。
三重高虎ガールズ(三重)VS オール栃木(栃木)
両チームとも今大会にて優勝経験のある強豪校で、小学部からチームに所属し、中学部でも野球を続ける少女たちが多く所属していることが特徴です。
普段は各々が在籍している中学の野球部で練習していて、週に数回の練習、合宿などを重ねているよう。
そのため個々の実力も高く、そしてチームの結束力が強い。 練習試合でも公式戦でも何度も対決をしているチーム同士が、共に二度目となる全国制覇を目指して決勝戦でぶつかるという熱い展開に。
シオマルの注目選手
決勝戦に至るまでの試合結果は、全日本軟式野球連盟の公式HPや各チームのSNSを通して、ずっと追いかけていました。
その中で私が特に注目していたのが、オール栃木のエース・小口 菜々花(コグチ ナナカ)選手です。
小口選手は、オール栃木にとっての初戦である2回戦・オール鹿児島ガールズとの試合でノーヒットノーランを達成すると、その後の3回戦、準々決勝、準決勝と立て続けに先発投手として相手打線を沈黙させ続けた正真正銘の「エース」。
小学生時代(栃木スーパーガールズ所属)の成績を遡ってみても、防御率が低く、幼い頃からずっと制球の良さが光っている選手です。
手に汗握る決勝戦。その行方は…

決勝戦で小口選手が三重高虎ガールズを相手にどんな試合展開を見せてくれるだろうかとワクワクしていたところ…先発投手は、なんと、2年生の坂口 裕愛(サカグチ ユア)選手だというアナウンスが聞こえてきました。
小口選手は球数制限だろうか、怪我をしているのだろうか、野手としても出ないのか…などと考えながらも、切り替えて先発・坂口選手の情報を追いかけます。
決勝のマウンドを2年生で任されているということは、絶大な信頼があるはずです。
実際に、3回戦、準決勝では先発の小口選手からバトンを繋ぎ、リリーフとして活躍している。
今大会のように日程の詰まったトーナメント戦では、選手の厚みが重要になります。
オール栃木は、ここまでチームを牽引してきた小口選手に代わって、坂口選手がどんな試合展開をつくっていくのか。
対する三重高虎ガールズは、ユーティリティープレーヤーが多く、決勝までエースの柴田和奏(シバタ ワカナ)選手を休ませながら起用している印象でした。
そして何より、ここまで全試合で安打を記録している原 紗彩(ハラ サアヤ)選手、同じく安打を量産しているキャプテン・小森 椎奈(コモリ シイナ)選手、初戦で本塁打を記録している捕手・鶴見 虹菜(ツルミ ニナ)選手など、打撃が光る選手がとても多く在籍しています。
条件としては、三重高虎ガールズのほうが優勢なのでは…と考えているうちに、試合が始まりました。
試合を動かしたのはあの選手!
試合は序盤から動きます。初回、栃木の連続エラーが絡み三重が2点を先制。さらに3回には捕手・鶴見が一発を放ち、リードを広げます。序盤の流れは完全に三重のものといえました。スタンドには「このまま押し切るのでは」という空気さえ漂っているものの、栃木側の応援団は大きな声を上げ、少女たちを鼓舞し続けていました。
その応援に応えるように、栃木の選手たちも粘ります。投手の好投、野手の好守備で三重の追加点を許しません。
6回裏1アウト、ついに栃木が反撃の狼煙を上げます。皮切りとなったのは、なんと冒頭でご紹介した小口選手。
代打で登場した選手の背番号「1」を確認した瞬間、ハッと心が躍りました。ここまで膠着していた試合状況を変える起爆剤として十分すぎる存在感です。
これは何か起こるぞ、と思わず前のめりになりながら打席に見入りました。
2ボール1ストライクから小口選手が放ったのは平凡なサードゴロ。
「あぁ…」と思ったそのとき、サードの選手の送球がランナー側に逸れ、ファーストの選手とランナー・小口選手が少し交錯しました。
…審判の判定は走塁妨害。タイミング的にはアウトだったものの、小口選手はセーフとなりました。塁上で大きく両手を挙げてベンチを鼓舞する小口選手の姿に、栃木側のベンチ、スタンドは大盛り上がりです。
「ほら…!ほら…!」
横に誰もいないのに、思わずそう呟いてしまうほど。何かが起こるぞという予感が的中したのです。
次の打者は2年生にしてチームの主砲を任される蛇石 桜彩(ヘビイシ サアヤ)選手。
この緊張の場面を楽しむかのように笑顔で打席に入る彼女の姿からは、4番打者のオーラを感じざるを得ません。
対する三重側も、マウンドに集まる内野手のもとに小河内監督が歩み寄ると、さっきまで深刻そうな顔をしていた内野手全員が、満面の笑みで会話を交わします。監督が去るとみんなで円陣を組み、柴田投手を鼓舞。監督の言葉と笑顔が少女たちに前を向かせていました。
監督の言葉が効いたのでしょうか。バッテリーは強打者 蛇石選手をなんと三球三振で仕留め、ツーアウト1塁で続く5番DHの藤田 幸来(フジタ サキ)選手を迎えます。
徹底して外角を狙うバッテリーでしたが、藤田選手も負けじと1ボール1ストライクから外角低めの球をすくって右中間に運びます。
その間に一塁ランナー・小口選手が颯爽と本塁に帰還。終盤にきて点差を1点に縮めました。
さらに大きく盛り上がる栃木サイドでしたが、さすがの三重高虎ガールズ。 落ち着いたピッチングと守備で、逆転は許さず最終回を迎えます。
少女たちの熱戦に、シオマルの目にも涙が
7回表、栃木バッテリーがテンポ良く高橋 羅々(タカハシ ララ)選手をレフトフライ、県 蓮未(アガタ ハスミ)選手をサードゴロに抑え、完全に栃木に流れがきていると思ったそのとき…
球数制限でしょうか。これまで好投を続けてきた栃木の先発投手・坂口選手がマウンドを降ります。代わりにマウンドに立ったのは3年生の秋元 香乃(アキモト カノ)投手。
野球が好きなひとなら何となく分かるであろう「流れ」が変わってしまうのではないか、やはり決勝は一筋縄ではいかないな、と思っていたそのとき、
ここまで全試合で安打を記録している原 紗彩(ハラ サアヤ)選手がレフトにヒットを放ち、続く前川 倖愛(マエカワ コノア)選手も右中間に2塁打となるゴロを打ち込みます。
ツーアウト2、3塁。最終回の攻撃前にこれ以上点差を広げたくない栃木としては、大ピンチです。でも、手元のパンフレットを見る限り、栃木にはこれ以上投手で登録されている選手がいません。どうするのだろう…とソワソワしていると、ベンチから川村監督が出てきました。
監督からの合図でマウンドに歩みを進めたのは、ここまでショートを守っていた2年生の渡辺 萌生(ワタナベ メイ)選手。
栃木側のスタンドからは「メイ大丈夫よ~自信もって!」「メイ気持ちよー!」「恩返しするよー!」といった熱い声援が届きます。
もうこの時点で全然関係のない私ですらも半泣きで、今大会、どっちも優勝!という気持ちでした。
…そんなわけにはいかず、試合は続きます。
続く打者は今大会すでに本塁打を2回記録している捕手・鶴見選手。
ツーアウト2、3塁ですからそれはもう安全策をとって申告敬遠されます。
当たり前です。とても良い打者なのです。
だとしても、次に迎えるのは三重のキャプテンでこれまでも安打を量産している小森選手です。ツーアウト満塁、小森選手が放った打球は、大量得点を予感させる大きな弧を描きます。スタンドがどよめき、走者が一斉に駆け出しました。
が、ライトの選手は背走しながら懸命に追い、最後は伸ばしたグラブに白球を収めた。三重サイドからは大きなため息が、栃木サイドからは歓声が沸き起こります。
どちらも相手に流れを渡さない。これこそ決勝戦だ、と思わされる試合展開です。
青春を詰め込んだ、劇的な最終回
7回裏、打者はオール栃木の捕手・宮田 燎(ミヤタ アキ)選手です。
初回の守備でエラーがありながらも、捕手としてその後の試合をしっかりと構成してきた選手。この回の1人目が宮田選手であることにも、私は意味がある気がしました。
三重高虎ガールズは2年生の高橋選手がマウンドに立ちました。
1ボール1ストライクからの3球目、宮田選手の打球はセカンドベース手前で大きく弾み、ショートの頭上を越えていきました。ハッとしたのも束の間、カバーに入ったセカンドが即座に捕球しファーストに送球します。
「あああ!」と声を出しながらファーストに目を見やると、土まみれになりながらすでに塁に到達している宮田選手の姿が。初回の悔しさを晴らす熱いヘッドスライディングが、チームを勢いづける火種となりました。
続く打者がスリーバント失敗でアウトになるも、待ち受けるのは栃木のキャプテン・飯塚 心音(イイヅカ ココネ)選手。もうこの選手に関しては言いたいことがありすぎるので後で全部言いますが、本当に本当に、素晴らしいキャプテンです。試合が始まってからずっと、私は飯塚選手を目で追いかけていました。
粘って粘って2ストライク2ボールから飯塚選手が放った球はファーストとセカンドの間を抜けていき、ライトが捕球するころには1塁ランナー宮田選手はすでに2塁へ到達していました。
1アウトランナー1、2塁の絶好のチャンスに、再び三重の内野手と小河内監督がマウンドに集まります。表情は真剣そのもの。先ほどのようなあっけらかんとした笑顔ではありませんでした。それでもさすが小河内監督、しばらく話し込み、最後には笑顔で少女たちを元気づけます。
次の打者は2年生の渡辺 萌生(ワタナベ モエ)選手。2回ほどバントを試み、最後はサードゴロを打ち進塁打に。最終回裏、ツーアウト2、3塁で打席に立つのは…
栃木の背番号「1」小口選手です。ドラマが出来すぎていませんか。
ここで、君が、打席に立つのか。さっき反撃の口火を切った君が。
これまでチームを先発投手としてずっと引っ張ってきた君が。
ここでもまた、三重の内野手と監督がマウンドに集まります。
今度は何か、少女たちを諭しているような雰囲気がありました。
「今勝っているんだぞ、あと一人で全国制覇だぞ、大丈夫だ、ボールを捕ったらファーストに投げるだけだ、落ち着くんだ!」
そんなことを言っているのではないか。
きっと小河内監督も、緊張しているはずなのに。
監督として、選手たちの前で気丈に振る舞うその姿に、また胸を打たれます。
大きく深呼吸をし、打席に入る小口選手。
投手に向かって、自身に言い聞かせるかのように雄叫びをあげます。
対する三重の高橋選手も、息を整え、球をぎゅっと握りしめます。
初球。大きく脚をあげて低めに投げ込んだ球に、小口選手のバットは空を切ります。
高橋選手の優勢を思わせた二球目。キャッチャーはアウトローに構えたが、白球は意図に反してド真ん中へ。打ち返された打球は前衛守備の裏を突き、無人のレフトへと転がっていきました。
チームのエース、小口選手のサヨナラタイムリーヒットです。
同点のホームを踏むのは、ずっとバッテリーを組んできた宮田選手。
そして逆転のホームを踏んだのは、キャプテン・飯塚選手となりました。
瞬間、ベンチで膝から崩れ落ちる小河内監督の姿が目に入ります。
ここまで気丈に振る舞っていた監督の悔しそうな姿に、涙が溢れました。
三重の選手たちも、涙を流しながら、歩くこともままならない様子でベンチに戻ります。
一方の栃木・川村監督は、両手を挙げて、スタンドに向かって大きくガッツポーズをみせます。拍手喝采の栃木側応援団。みんな泣きながらハグし合っています。
スポーツの青春を詰め込んだような瞬間が、そこにはありました。 近くに野球ファンがいなくて共に喜ぶことはできませんでしたが、「やっぱ野球って素晴らしいなぁ」とこの瞬間に立ち会えた喜びを噛み締めたのでした。
中学野球の素晴らしさ
今大会を観戦して私が一番に感じたことは、中学から本気で野球に打ち込める環境を作ってくれる指導者、そして心から応援してくれる保護者の存在のありがたさです。
学校の部活動だけではなく、こうして全国の舞台を経験できるようなチームを作ってくれる指導者は、なかなかいません。
それも、女の子たちに野球を教えてくれる指導者は本当に稀有な存在です。
先ほど私が言及していた栃木のキャプテン・飯塚 心音(イイヅカ ココネ)選手。
試合が始まってからずっと私が目で追っていた理由は「どこからどう見てもキャプテン」の動きをしていたからです。
守備も安定して上手いし、打撃センスもある。でもそれ以上に、キャプテンとしての自覚と責任がある。チャンスの場面でも、うまくいかない場面でも、真っ先に選手に声をかけにいくのは、彼女でした。ずっとみんなを励ましている。
ネクストにいる選手ひとりひとりに声をかけ、背中に手を置き、パワーを送る。
たとえ失敗しても、明るく元気に励ましながら迎え入れる。
わたしには、その場にいた誰よりも野球を楽しんでいるように見えました。
そんな彼女を育てたのは、川村監督、そしてサポートする保護者の皆さんなのでしょう。
彼女の見本になるような存在が、過去にいたはずです。そして飯塚キャプテンを見て育った下級生がまた、誰かの見本になっていく。その環境が丸ごと全部、素晴らしい。
この大会に出場した選手たちの姿は、単なる勝敗を超えて「野球を愛する心そのもの」でした。
彼女たちの背中を見て、次の世代がまたバットを握る。そうして紡がれていく女子野球の未来が、とても楽しみでなりません。
そして、この記事を読んでくださった皆さんも、もし機会があればぜひ女子野球の試合を観に行ってください。きっと「女子野球ってこんなに面白いんだ!」と感じられるはずです。 私は、この夏の光景を、きっと、ずっと忘れないと思います。