東京・青山の閑静な路地に店を構える青山グルメマートは、従来の飲食店や食料品店の枠を超えた斬新な業態で注目を集めています。食料品販売、ワインショップ、レストランが一体となったこのお店に足を運べば、これまでにない自由で楽しい「美味しさの体験」ができるのです。
「グルメマート」と呼ばれる「食」カテゴリーのミックス業態を日本でいち早く展開した背景やビジョンについて、店長の酒井大輔さんにお話を伺いました。
アメリカの新たな「食」シーンに着想を得た店舗コンセプト

青山グルメマートが提案する複数の業態をミックスするというアイデアは、店舗の代表がアメリカを訪れた際にインスピレーションを得て生まれたものだといいます。
2020年前後のアメリカ西海岸において、飲食店に食料品店、酒屋、衣料品店などが一つの空間に共存する「グルメマート」という新しい商業形態が広がり始めていました。こうしたお店のあり方に感じたおもしろさを日本に持ち込みたい--そんな思いが結実し、2023年9月に青山グルメマートがオープンしました。
食料品店、酒販売、レストランが一体化することのおもしろさはどんなところにあるのでしょうか。青山グルメマートの最大の特徴は、単に複数の業態を組み合わせただけではなく、それぞれが有機的に連携し合う設計に見出せます。
例えば、レストランエリアで食事をされた方が、もう少し小腹を満たしたい……と感じられたら、食料品エリアで販売しているおつまみ的なものを購入して、お酒といっしょに楽しむこともできます。
それからワインについては物販価格のまま、抜栓料なしで店内で提供しているんですね。一般的なレストランにワインを持ち込む場合の価格設定とはかなり違いますし、ワイン好きな方も大いに楽しんでいただけると思います。
「美味しさ」にとことんこだわる商品セレクト


店名に「グルメ」というフレーズを掲げる背景には、食料品に対する徹底したこだわりがあります。食料品エリアで取り扱うすべての商品は、スタッフが実際に試食・試飲を行い、心から美味しいと感じたもののみを採用するという厳格なプロセスを経ているのだそう。
食料品のリサーチと選定にはものすごく時間をかけていますね。良さそうなものがあったら取り寄せて、同じカテゴリーの他の商品といっしょにスタッフみんなで試食してみる。全員が本当に美味しいと思えるものだけを扱うようにしています。大変ですけど、その過程を省いてしまったら、お客さまに対して自信を持っておすすめできないですから。
そうしてセレクトされた商品の多くが、一般的なスーパーマーケットでは見かけることのない希少なもの。大量生産されていない小規模生産者の商品を中心に取り扱うことで、他では味わえない特別な食体験を提供しているのです。
また、添加物の少ない商品が選ばれる傾向も見て取れますが、それもあくまで美味しさを追求した結果なのだそう。
オーガニックであることを特別に意識しているわけではないんです。こだわっているのは〈美味しさ〉だけかもしれません(笑)。ただ、本当に美味しいものを探していくと、不思議と添加物が少ないものにたどり着くことが多いんです。そういう発見がありました。
「日常使い」のワインが充実

ワインのセレクトは、酒屋での勤務経験も持つ酒井さんの豊富な見識に支えられています。食料品同様に、これまでに自身で飲んだワインの中から本当に美味しいと感じたものを厳選してラインナップに加えているとのこと。
ワイン選びの基準としては、ワインだけで味わっても美味しいということを重視しています。料理との相性も重要なのですが、それ以上にワイン単体での完成度を見ている。個性が強すぎて特定の料理としか合わないワインよりも、様々なシーンで楽しめる汎用性の高いワインを提供したいと考えています。
価格帯についても明確な方針があります。一万円以内のワインを中心に扱っており、日常的に楽しめる価格帯のワインを中心に選定しています。これは〈日常使いのワイン〉というコンセプトを大切にしているから。特別な日だけでなく、普段の食事でも気軽にワインを楽しんでもらいたいという思いがあるんです。
料理も素材にこだわり抜く

食料品エリアを抜けた店の奥に位置するレストランエリアの厨房を預かるのは、久保雄之介シェフ。福岡のイタリアン「ピッツェリア・ダ・ガエターノ」出身であり、その経験を基盤にしたパスタや多彩な前菜などの料理で楽しませてくれます。

シェフ自らが毎朝、豊洲市場へ足を運び、新鮮な食材を仕入れているのだそう。こだわり抜いた素材を使った料理には、やはりお店の厳選ワインを合わせたいところです。
「グルメマート」を体験しよう

アメリカで生まれた複合業態のコンセプトを日本の食文化のなかに持ち込む青山グルメマート。その取り組みは先駆的で、ある種の挑戦という意味合いもあるかもしれません。
こういうお店のスタイルの楽しさをどう説明すればいいのかって……なかなか難しいですよね。やはり、体験していただくのがいちばんわかりやすいと思うんです。ですので、ぜひ一度、お店に足を運んでいただきたいですね。
酒井さんはそう話しますが、週末のお店では午後3時頃のアイドルタイムに軽くワインを楽しむお客さんが多いのだとか。そのような時には、食料品エリアの商品と組み合わせて楽しむスタイルが人気だそうで、「グルメマート」という業態ならではの新しい楽しみ方は、着実に浸透しつつあるようです。

青山グルメマート
東京都港区南青山2-10-11 A青山ビル 1F
TEL:03-6388-1400
営業時間:
物販/酒販11:00〜22:00
レストラン(平日)12:00〜15:00(LO14:30)、17:00〜22:00(LO21:00)
レストラン(土日祝)12:00〜22:00(LO21:00)
定休日:月曜日
撮影:後藤秀二